中国を訪問中のドゥテルテ比大統領が、「フィリピンは軍事的にも経済的にも米国と決別した」と宣言しました。これは米国の武力と経済力の前にひたすらひれ伏している日本やEUの指導者たちにとっては仰天動地の出来事でした。
元外交官の天木直人氏は、いまのフィリピンにとって中国との経済関係強化は死活的に重要なので(漁民の安全も同時に図れるとして)、リーダーとして極めて冷静で現実的な判断であると評価しました。
安倍政権はいま売国の協定であるTPP協定の批准に血眼になっています。この時点で何故そんなに焦るのか全く理解できませんが、ヒラリーが大統領に当選する前に批准しておくように命じられたからという説もあります。いずれにしても対米絶対服従の発想に基づいていることだけは疑う余地がありません。
彼に比大統領のこの英断で目を覚ませと言っても無理でしょうが・・・
比大統領は本来なら「訪日」が先だったのに、米国への意趣返しに「訪中」を先に選んだとされています。
日本はこれまで米国の意を体して南シナ海で覇権を進める中国を牽制しようと、領土問題で中国と闘うフィリピンを支援し、経済的・軍事的(練習機の貸与、大型巡視船の供与など)な対比援助を合意しています。
そのフィリピンが中国と手を打ってしまうのでは何のためのものかわからないということになりました。
ドゥテルテ大統領はまもなく日本を訪れます。「はたして安倍首相はそれでもドゥテルテ大統領を前にして対中包囲網を説くのだろうか」。天木氏はそうブログを結んでいます。
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一面トップで報ずべきドゥテルテ大統領の対米決別宣言
天木直人 2016年10月21日
今朝早朝のNHKニュースが、中国を訪問中のドゥテルテ比大統領の言葉を繰り返し報じた。
フィリピンは「軍事的にも経済的にも米国と決別したことを報告する」と。
これは歴史的な一大衝撃発言だ。
今朝の各紙は一面トップでこの発言を報じるべきだ。
これほど衝撃的な一国のリーダーの言葉を私は知らない。
これほど明確に、世界一の軍事的、経済的大国である米国との同盟関係を一変した言葉を知らない。
しかも、この言葉は習近平主席との首脳会談の直後に北京で開かれた経済フォーラムで発せられた公開発言である。
フィリピンをめぐって、この一年の間に展開された米国と中国の外交戦における米国の敗北である。
その米国に従属するしかない日本外交の大敗北である。
しかしドゥテルテ大統領のこの発言は、決して奇人、変人の発言ではない。
みずから語っているように、フィリピンと言う国と国民の利益を考えた上での、フィリピンのリーダーとしての極めて冷静で現実的な発言である。
フィリピンの安全保障を考えた時、いまの米国との軍事同盟を優先させていいことは何もない。
中国との経済関係強化は、いまのフィリピンにとって死活的に重要だ。
だから中国との関係を重視するのはフィリピンのリーダーとして当然の外交だ。
しかも南シナ海問題で中国にベタ降りしているわけではない。
別の機会での発言であるが、南シナ海をめぐる国際仲裁裁判所の判決を振りかざしながら、この中にすべての判断があるとその判決を支持しながら、いまは南シナ海の問題は優先事項ではないと棚上げ宣言した。
これこそが正しい外交だ。
暴言を吐きながらも、7割とも9割とも言われる熱狂的な国民の支持を得ている理由も頷ける。
このドゥテルテ大統領の決別発言にも関わらず、それでも米国はフィリピンとの同盟関係は米国とフィリピン双方に重要であると言うほかはない。
誰が首相になっても対米従属一辺倒の日本にとっては羨ましいほどのリーダーシップだ。
そのドゥテルテ大統領がまもなく日本を訪れる。
はたして安倍首相はそれでもドゥテルテ大統領を前にして対中包囲網を説くのだろうか。
「くそ馬鹿野郎」、「地獄に落ちろ」と言われないように気をつけたほうがいい(了)