高野孟氏の連載記事「永田町の裏を読む(日刊ゲンダイ)」を紹介します。
同氏は、平成を総括するに当たり まず「日本株の時価総額」の推移をみると、平成元年(1989)年には、時価総額は全世界の半分を超えていて、時価総額ランキングの上位30のうち21社が日本企業でしたが、平成30年(2018年)には、上位30傑には僅かに29位に入るのみという凋落ぶりだと述べています。
また最新版の世界実質成長率ランキングでは、日本は164位で、アジアの中では17位。下にはブルネイ、北朝鮮、東ティモールがいるだけの最下位集団ということで、「これが平成末の『世も末』の姿である」としています。
それにつけても、安倍首相は何故か日本を30年前の金満国家と勘違いしていたようで、世界各国に出張ってはあたかも自分のポケットマネーであるかのようにして、最初の4年間で40兆円という莫大な血税を世界にバラまきました。それほど野放図なことがよくもできたもので、これも決して許されない大ミステークです。
ネトウヨたちはそれを「外交の安倍」と囃し立てましたが、元々がトランプ追随の一辺倒で海外で別に評価されていたわけではなかったのが、昨年あたり対北朝鮮問題で米とも世界とも齟齬を来たすと、世界の流れから浮き上がったきりで、いまはただ孤影を深めているのみです。
それはまあ当然の成り行きなのですが、いまも何の反省もないまま、トランプ大統領にいわれるがまま平然と数兆円の無用・無益の米国兵器を購入しています。これは軍備費10兆円を主張する安倍政権が続く限り、拡大こそすれ縮小することはありません。
それを一部のメディアを除いて殆ど批判しないのはどうしたことなのでしょうか。
日本凋落の責任の一端はメディアにあります。
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永田町の裏を読む
世界的な波に致命的に乗り遅れて凋落した平成日本の現実
高野孟 日刊ゲンダイ 2019/03/28
間もなく終わろうとする平成という時代を振り返るため、いろいろな分野のデータを集めているのだが、その中でもとりわけ驚いたのは、日本株の時価総額の凋落ぶりだった。
1989(平成元)年はバブルのピークで、その当時の日本株の時価総額は全世界の半分を超えていた。中尾茂夫明治学院大学教授の近著「日本が外資に喰われる」(ちくま新書)に掲げられている分かりやすい図表を見ると、89年の世界時価総額ランキングの断然のトップはNTTで、それに続き日本興業銀行、住友銀行、富士銀行、第一勧業銀行と5位までを日本企業が占め、それ以下も三菱銀行(7位)、東京電力(9位)、トヨタ自動車(11位)、三和銀行(13位)、野村証券(14位)、新日本製鉄(15位)など、なんと上位30のうち21社が日本企業である。
それに対して、2018年のランキングを見ると、最上位を占めるのはアップル、アルファベット(グーグル)、マイクロソフト、アマゾン、テンセントなど米国と中国のIT系企業で、世界トップ30のうち18社が米国、5社が中国。日本はどうしたのかと思えば、辛うじて29位にトヨタが残っているだけである。この一事を見ただけでも、30年間の最後5分の1を占めるアベノミクスを含めて、平成の日本が結局のところバブル狂乱の後の崩壊と収縮に何ら対処することができないままに、世界的なIT化の波に致命的に乗り遅れてきたことが分かる。
国連が毎年発表する「世界幸福度ランキング」でも、日本は15年の46位から下がり続けて19年は58位。近辺にどういう国があるかというと、上にエクアドル(50位)、タイ(52位)、韓国(54位)、エストニア(55位)、下にホンジュラス(59位)、カザフスタン(60位)といったところである。
あるいは、米CIAの「ワールド・ファクトブック」最新版の世界実質成長率ランキングを見ると、日本は164位で、アジアの中では17位。下にはブルネイ、北朝鮮、東ティモールがいるだけの最下位集団である。こうした数字は、たぶん読者の皆さんが抱いている自国イメージとだいぶかけ離れているのではあるまいか。にもかかわらず、総理大臣を筆頭にこの国の人々は、まだ40年も前の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」幻想にとらわれていて、多くの指標で上位にある近隣諸国に軽蔑の言葉を投げたりしている。これが平成末の「世も末」の姿である。
高野孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。