核兵器禁止条約の批准国が50か国に達し来年1月22日には発効する運びとなりました。
国民の7割が禁止条約への参加を支持し、署名・批准を求める意見書も約500の地方議会で可決していますが、日本政府は核の傘論を前面に出して参加しようとはしません。
それだけでなく日本は今年も「独自」の決議案の提出にこだわり、3日、「核兵器のない世界に向けた共同行動の指針と未来志向の対話」を提案しました。それ自体は悪いこととは言い切れないので、賛成139カ国(反対5、棄権33)で採択されましたが、賛成国は一昨年の12減少に続き、昨年よりさらに9減りました。共同提案国は、2016年は109カ国だったのに、今回は26カ国へと激減しました。惨憺たるものです。
このように日本の提案が、年々賛成国が減少し共同提案国が激減しているのには勿論理由があります。
日本は唯一の戦争被爆国にふさわしいイニシアチブを発揮することなく、決議案があまりにも米国をはじめとする核保有国寄りで、しかもその度合いを深めているからです。
ニュージーランドは、決議案は「核兵器禁止条約の位置づけを低めている」と批判し、メキシコは 核不拡散条約(NPT)第6条の核軍縮交渉義務や核保有国を拘束するNPT再検討会議の合意を反故にしたいという核保有国の意に沿ったものと述べ、オーストリアも「NPT合意を再解釈し、弱め、これまでの合意や表現と一致しない。真の『橋渡し』を希望する」と批判しました。
昨年賛成したカナダなど6カ国は「核兵器の非人道性への『深い憂慮』を『認識する』へと大きく後退させた」ことなどを問題視し、共同で棄権を表明しました。
核保有国側もロシアと中国は反対し、昨年賛成のフランスは包括的核実験禁止条約発効の位置づけが弱められたことなどを理由に棄権しました。もはや「橋渡し」論など全くの空理空論に帰しました。
日本の立場は世界から見ていまや根本的に破綻していることに気付くべきです。
しんぶん赤旗の3つの記事を紹介します。
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主張 日本の「軍縮」決議 世界から信頼を失うばかりだ
しんぶん赤旗 2020年11月15日
核兵器禁止条約の来年1月発効が確定する中、国連総会第1委員会で、核軍縮に関する諸決議の採択が行われました。そこでは日本政府が提出した決議案に批判が集中する事態となりました。
破綻した「橋渡し」論
菅義偉政権の決議案「核兵器のない世界に向けた共同行動の指針と未来志向の対話」は3日、賛成139カ国(反対5、棄権33)で採択されました。しかし、賛成国は昨年より9減りました。一昨年と比べると21もの減少です。共同提案国は、2016年は109カ国だったのに、今回は26カ国へと激減しました。
日本政府は、禁止条約で対立する核保有国と非核国の「橋渡し」をすると主張し、それを国連の決議案の重要な柱としてきました。ところが、ふたを開けてみると、国際社会の支持を一層失う結果となりました。決議案があまりに核保有国寄りだったからです。
決議案は、核兵器廃絶を「究極」の課題と、永遠のかなたに先送りしています。これは核兵器に固執する姿勢に他ならず、核廃絶を促進する立場とは相いれません。両者を取り持つかのような「橋渡し」論は、そもそも成り立ちません。
決議案は核保有国に配慮して、核兵器禁止条約に一切触れていません。完全無視の日本の態度は、禁止条約を推進してきた国々への重大な挑戦です。日本の決議案に棄権したニュージーランドは、「核兵器禁止条約の位置づけを低めている」と強く批判しました。
また、核不拡散条約(NPT)第6条の核軍縮交渉義務や、「核兵器廃絶の明確な約束」(2000年)など、核保有国を拘束するNPT再検討会議の合意について、昨年の決議案にあった「合意の履行」という記載を削除しました。合意を反故(ほご)にしたい核保有国の意に沿ったものです。これには「(合意を)再解釈し、弱め、無視している」(メキシコ)「これまでの合意や表現と一致しない。真の『橋渡し』を希望する」(オーストリア)など厳しい言葉が相次ぎました。昨年賛成したカナダなど6カ国は、共同で棄権を表明しました。核兵器の非人道性への「深い憂慮」を「認識する」へと大きく後退させたことも問題視されました。
一方、核保有国側もロシアと中国は反対し、昨年賛成のフランスは包括的核実験禁止条約発効の位置づけが弱められたことなどを理由に棄権しました。「橋渡し」論の破綻は明白です。
このままでは日本政府は、国際社会の信頼をますます失います。唯一の戦争被爆国にふさわしいイニシアチブを発揮してこそ、核大国の姿勢を動かし、核兵器廃絶へ前進できます。
野党連合政権で転換を
日本の運動には重要な国際的責務があります。世論調査では7割が禁止条約への参加を支持し、署名・批准を求める意見書も約500の地方議会で可決しています。「日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める署名」が10月29日、被爆者をはじめ、広範な人々の賛同で呼びかけられました。国民的運動の発展が期待されます。
来たる総選挙で菅政権を倒し、野党連合政権を実現しましょう。禁止条約の批准を実行する政権をめざして、市民と野党の共闘を力強く発展させる時です。
核保有が緊張の原因 外務省文書に明記 穀田議員指摘
しんぶん赤旗 2020年11月14日
日本共産党の穀田恵二議員は13日の衆院外務委員会で、米国を含む核兵器の存在や保有が「地域の緊張・対立の原因」と明記した外務省文書を明らかにしました。日本政府は「米国の核抑止が日本の安全保障にとって不可欠である」として核兵器禁止条約への参加を拒んでいますが、核兵器の存在そのものが安全保障上の不安定要因になっているという認識を示したものです。
文書は、国家安全保障戦略や防衛計画の大綱を策定するため、2013年9月12日に開催された「安全保障と防衛力に関する懇談会」で配布されました。「(参考)我が国の安全保障における核軍縮・不拡散上の課題」と題したもので、外務省の平松賢司総合外交政策局長が、安倍晋三首相(いずれも当時)らへの説明資料として使ったものです。同文書は核保有国である米国、中国、ロシア、北朝鮮を挙げ、「核兵器の存在、又は核兵器保有という政策オプションが地域における緊張・対立の原因かつ帰結になっている」と明記しています。
穀田氏は、「核兵器禁止条約が核保有国と非核保有国の分断と対立を深めるのではなく、核兵器そのものが緊張と対立の原因となっていることを示している」と強調。米国の核抑止力にしがみつく日本政府の姿勢を批判し、核兵器禁止条約の速やかな署名・批准を強く求めました。
日本提出の核決議案賛成減少 外相「予想通りでない」 穀田氏に答弁
しんぶん赤旗 2020年11月14日
茂木敏充外相は13日、日本政府が国連総会第1委員会に提出した核兵器廃絶を「究極目標」とする決議案の賛成国数が昨年と比べて9カ国減少したことについて、「予想通りでなかったことは率直に認めたい」と述べました。茂木氏は4日の衆院予算委員会で「(決議案は)昨年よりも多くの国の賛同を得て採択されることになる」と答弁していました。日本共産党の穀田恵二議員の衆院外務委員会での質問に対する答弁。
外務省が穀田氏に提出した資料によると賛成国は139カ国と過去18年間で最少となり、共同提案国も30カ国減って26カ国となる一方、棄権国は7カ国増えて33カ国で最多となりました。反対も1カ国増え、5カ国になりました。
穀田氏は、決議案が核兵器禁止条約に一切言及していないとの失望感がオーストリアなどから表明される一方、核保有国の賛成は米英の2カ国だけだと指摘。「政府は核保有国と非核保有国の『橋渡し』と言うが、実態は『橋』の両端が落ちている。『橋渡し』なるものが国際的に破綻したのは明らかだ」と批判しました。