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2025年9月13日土曜日

13- イスラエルのカタール攻撃 停戦プロセスの破壊許されない

 しんぶん赤旗に共産党の小島良一 国際委員会委員が掲題の署名記事を出しました。
 イスラエル軍は9日、カタールの首都ドーハに攻撃をおこない、イスラエルとの停戦交渉のために滞在していたハマスの幹部ら6人を殺害しました。これは、紛争解決の手段はどのような状況下でも確保するという国際慣例を踏みにじるもので、交渉団長の暗殺などは「停戦プロセスそのものの破壊」をねらった暴挙で絶対に許されません。
 それなのに日本はドイツとともに依然として、「パレスチナの国家承認はプロセスの最後の段階」という主張に固執し、国連総会決議がよびかけている対イスラエル制裁にも応じず、イスラエルからの武器購入に意欲を見せるという有様です。恥ずべきことです。

 ブラジル政府、コロンビア外務省、チリ外務省、ウルグアイ外務省は9日、一斉にイスラエル軍によるカタールの首都ドーハへの攻撃を「最も強い言葉で非難する」などと表明する声明を発表しました。

 併せてモハメッド・アメールの記事「イスラエルによるカタール爆撃:中東にとっての転換点」とするブログを紹介します。
 カタールは中東における米国の主要パートナーの一つで、トランプは、紛争の様々な当事者間の仲介におけるカタールの努力を称賛していて、ガザでの停戦交渉への参加を止めないよう首長に求めました。
 それは当然のことですが、この事件はイスラエルに対する米国の影響力の限界を露呈するもので、安全保障を米国に依存し続けるとドーハのような結末を迎えるリスクがあることをこの地域の国々に明確に示しました。
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イスラエルカタール攻撃 停戦プロセスの破壊許されない
                       しんぶん赤旗 2025年9月12日
 イスラエル軍は9日、カタールの首都ドーハに攻撃をおこない、イスラエルとの停戦交渉のために滞在していたハマスの幹部ら6人を殺害しました
 カタールは、ハマスとイスラエルの停戦に向けた仲介工作をエジプトとともに担ってきた国です。攻撃対象となった住宅ではハマス幹部らが米国の新停戦案について協議しているところだったと報じられています。
 今回の攻撃は、主権国家の領土保全をはじめ国連憲章に明記された諸原則をあからさまに課願(じゅうりん)するものです。それだけではありません。紛争解決の手段はどのような状況下でも確保するという国際慣例を踏みにじり、交渉団長の暗殺など、停戦プロセスそのものの破壊をねらった暴挙であり、断じて許すわけにいきません
 国際社会からは、「カタールの主権と領土保全に対する露骨な侵害」(グテレス国連事務総長)、「この攻撃は調停努力を損ない、地域の安定を脅かす」(エジプト政府)など、厳しい批判の声があがっいるのは当然です。

権力維持に固執
 イスラエルはこれまでも、イラン、レバノン、シリアなど脅威とみなす国に国際法違反の一方的攻撃をおこなってきました。しかし今回の攻撃は、和平への希望そのものを打ち砕くものです。そこにはガザでジェノサイドをあくまで強行するねらいがあります。
 なぜイスラエルはこれほどの暴挙をおこなうのか。
 ネタニヤフ首相はこれまでは、ガザ地区全体を制圧する意図を明言する一方、停戦交渉にも応じる姿勢を見せてきました。
 一線を越えたネタニヤフ首相についてドイツの公共テレビARDは、「羊の皮を置いてきた狼」と指摘し、みずからの権力維持にきゅうきゅうとする姿勢をあらわにしたと評しました(9日付)。
 ネタニヤフ政権は国会での議席が野党と同数の「少数内閣」。閣内には、ガザヘの入植やパレスチナ入のガザ以外ヘの追放を主張し、停戦交渉に強硬に反対する極右政党を抱えています。彼らは「戦争が交渉で終わるようなことになれば、政権から完全に離脱する」との脅しを繰り返しかけています。彼らの政権離脱を許せば解散・総選挙となり、ネタニヤフ首相は権力を失う可能性が高い。人質やパレスチナ人の命よりも、自らの権力維持を最優先したのが、今回の行動だといえるでしょう。

具体的行動こそ
 日本政府は、今回の攻撃について「外交努力を妨げ、カタールの主権と安全、ひいては地域の安定を脅かすものであり、わが国として強く非難」するという岩屋外相の談話を出しました。
 しかし、世界中でパレスチナ国家の承認に踏み切る国が急増する中、日本はドイツとともに依然として「国家承認はプロセスの最後の段階」という主張に固執しています。また、国連総会決議がよびかけている対イスラエル制裁に応じず、イスラエルからの武器購入に意欲を見せています。
 イスラエルのジェノサイドを押しとどめるために、日本は、米国に対して対イスラエル軍事・政治支援を止めるよう迫るとともに、実効性のある具体的措置にただちに踏み切るべきです。   (小島良一・国際委員会委員)


カタール攻撃に南米諸国が非難
                        しんぶん赤旗 2025年9月12日
 ブラジル政府は9日、イスラエル軍によるカタールの首都ドーハの住宅地への攻撃を「最も強い言葉で非難する」と表明する外務省声明を発表しました。声明は今回の攻撃を「カタールの主権を明白に侵害し、国際法の最も基本的な原則に違反する」と指摘しました。
 声明はまた、パレスチナ・ガザ地区での停戦交渉に参加するイスラム組織ハマスの幹部を狙った攻撃だったことに注目し、「停戦合意への努力を弱めるものだ」と述べています。
 コロンビア外務省も9日の声明で、イスラエル軍の攻撃を「国際法違反」と糾弾。ガザでの紛争における戦闘行動の段階的縮小、中東地域の平和と安定を実現するための努力を強めるよう、国際社会に呼び掛けました。
 チリ外務省は9日の声明でカタールの「領土保全に対する許されない侵害だ」としてイスラエルを強く非難。
 ウルグアイ外務省も同日の声明でイスラエルを批判し、「すでに悪化している中東地域の安全保障状況をさらに悪化させる」と述べています。


イスラエルによるカタール爆撃:中東にとっての転換点
                マスコミに載らない海外記事 2025年9月12日
                   モハメッド・アメール 2025年9月11日
                            New Eastern Outlook
 2025年9月9日は中東史上暗黒の日として記憶されるだろう。イスラエル軍戦闘機15機が、生き残ったハマス幹部を殺害する目的でカタールの首都ドーハを爆撃した。

イスラエル、カタールを爆撃
 状況は奇妙だ。攻撃が行われた当時、ガザ紛争解決に向けたアメリカの計画についてハマス幹部たちが協議していたのだ。トランプ大統領提案は、一日目にハマスが人質全員(生存者20人、遺体28人)を解放し、イスラエルがガザ全域から軍を撤退させ、約1,000人のパレスチナ人の解放を開始するものだった。そして二日目には、トランプ大統領自らガザの政治的移行と再建に関する交渉を引き継ぐことになっていた。

カタール、調停の努力を中断
 ハマス幹部が逃亡したため、イスラエルの攻撃は期待された成果をもたらさなかった。だがカタールが仲介役を放棄したため、ガザ地区に関する交渉は今のところ行われていない。イスラエル空軍によるドーハ⇒カタールの首都空爆は、国際舞台におけるイスラエルの立場を確実に損ない、信頼性を更に低下させた。この国家テロ行為を世界のほとんどの国々が非難した。イスラエルの支援国アメリカでさえ、イスラエルによるドーハ空爆について事前に知らなかったとして、この事件から距離を置いた。
 紛争の様々な当事者間の仲介におけるカタールの努力をアメリカ大統領は称賛し、ガザでの停戦交渉への参加を止めないよう首長に求めた
 テルアビブによるドーハ攻撃にもかかわらず、カタールはパレスチナのハマスとイスラエル指導部との間接交渉で仲介役を果たし続けると多くの専門家は自信を示した。

またもや国家テロ行為
 カタールはこの地域におけるアメリカの主要パートナーの一つだが、イスラエルはアメリカの重要同盟国カタールを爆撃したのだ。わずか四か月前、ドナルド・トランプはドーハ訪問中に1兆2000億ドルに上る複数取引を成立させ、カタール当局は4億ドル相当のロイヤルボーイング747をトランプに贈呈した。この機体は既に「エアフォースワン」への統合が始まっている。中東における米軍の主要基地はカタールにあり、約1万人の兵士と将校が常時駐留している。5月のトランプ中東歴訪後、同基地の発展に約100億ドル投資するとカタールは約束した。

 9月9日の事件は、安全保障をアメリカに依存し続けると、ドーハのような結末を迎えるリスクがあることをこの地域の国々に明確に示した
 イスラエルによる爆撃は、ワシントンにとって不愉快な驚きで、イスラエルに対するアメリカの影響力の限界を露呈した。平和実現のため、アメリカと共に懸命に努力し、勇敢にリスクを負っている国を一方的に爆撃することは、イスラエルとアメリカの目標達成に寄与しないとワシントンは述べた。カタールに対し、今後このような事態は発生しないとトランプ大統領は速やかに保証した。
 イスラエルに忠実なワシントン・ポストでさえ、カタール攻撃を「イスラエルによる稀な戦術的ミス」と評価した。

 カタールにとって、このイスラエルによる攻撃は深刻な裏切り行為だった。同国当局は、ガザ地区だけでなく他の紛争でも、トランプ政権による和平合意の締結を真剣に支援してきたからだ。2025年9月10日、この状況をトランプへの個人的侮辱だとCNNはみなした。過去2つのアメリカ政権がイランによる二度の攻撃からイスラエルを守るため奔走したにもかかわらず、ネタニヤフ首相の狙いをアメリカの最重要安全保障上の優先事項よりも優先させたためだ。

 9月9日の事件は、安全保障をアメリカに依存し続けると、ドーハのような事態に陥る危険性があることを、この地域の国々に明白に示した。従って、カタール近隣諸国は教訓を学ぶべきだ。ドーハの例は、ワシントンにとって、この地域における主要同盟国は一つしかなく、残りの同盟諸国は、たとえ数兆ドル規模の投資や航空機を投入しても、爆撃される可能性があることを示している。おそらく、これは自国の安全保障を単一の保証人に頼るのではなく、多様化するのを余儀なくさせるだろう。
 ガザ紛争解決に向けた平和努力が甚大な打撃を受けているのは明らかだ。ガザ地区でのネタニヤフ政権によるパレスチナ人虐殺は未だ処罰されていない。この虐殺は、飛び地の破壊と数万人もの罪のない子どもや女性の死をもたらした。この罪は終結させなければならない。これは必要な国連安全保障理事会決議を採択し、国際社会全体が力を合わせた努力によってのみ実現可能だ。
 ムハメド・アメルはシリア人ジャーナリスト

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/09/11/israel-bombs-qatar-a-pivotal-moment-for-the-middle-east/