国連本部で18日に行われた安全保障理事会の緊急会合で、ガザでの即時・無条件の恒久的停戦を求める決議案に14の理事国が賛成しましたが米国だけが反対し、その拒否権行使によって決議案は否決されました。 決議案は、8月に国連の専門家組織の報告書が認定したガザ北部ガザ市での飢饉発生について強い懸念を表明。イスラム組織ハマスが拘束する人質の解放とイスラエルによる支援物資搬入制限の解除も求める内容です。
2023年10月のイスラエルとハマスのガザでの戦闘開始以降、ガザを巡る決議案への米国の拒否権行使は修正案も含めて7回目です。
イスラエル擁護に固執する米政府の不当な姿勢が改めて浮き彫りになりました。
しんぶん赤旗の3つの記事を紹介します。
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米国、また停戦葬る 安保理決議案 一国の拒否権で否決
ガザ死者累計6・5万人超す 「世界は虐殺止めて」
しんぶん赤旗 2025年9月20日
【ワシントン=肩口昇幸】米ニューヨークの国連本部で18日、国連安全保障理事会の緊急会合が行われました。イスラエルの大規模軍事侵攻が続くパレスチナ自治区ガザでの即時・無条件の恒久的停戦を求める決議案に14の理事国が賛成しましたが米国だけが反対。常任理事国である米国の拒否権行使によって決議案は否決されました。イスラエル擁護に固執する米政府の不当な姿勢が改めて浮き彫りになりました。
決議案は、安保理非常任理事国10カ国(アルジェリア、デンマーク、ギリシャ、ガイアナ、パキスタン、パナマ、韓国、シェラレオネ、スロベニア、ソマリア)が提出しました。残りの常任理事国の英仏中ロも支持し、採決で棄権する国はありませんでした。
決議案は、8月に国連機関などによる専門家組織の報告書が認定したガザ北部ガザ市での飢饉(ききん)発生について強い懸念を表明。イスラム組織ハマスが拘束する人質の解放とイスラエルによる支援物資搬入制限の解除も求める内容です。
報道によると、2023年10月のイスラエルとハマスのガザでの戦闘開始以降、ガザを巡る決議案への米国の拒否権行使は修正案も含めて7回目です。
米国代表は今回の採決前「決議案はイスラエルとハマスを誤って同列に結び付けている」などと主張。他の理事国にも反対するよう呼びかけました。
イスラエルのダノン国連大使は、SNSに「拒否権を行使したことにお礼を言いたい」と投稿しました。
デンマークの代表は採決前、認定されたガザでの飢饉に加え、「イスラエルはガザ市で軍事作戦を拡大し、民間人の苦しみをさらに深めている」と訴えました。否決後は、「14の理事国は明確なメッセージを送った」と強調し、引き続きガザでの即時停戦などを求めて取り組み続ける姿勢を示しました。
アルジェリア代表は採決後、「イスラエルが国際法ではなく、国際システムの偏向に守られている」と批判。「歴史は私たちの行為を重んじる。私たちは諦めない」と述べました。
ソマリア代表は否決について、「単なる手続き上の過失ではなく深刻な道義的失敗」だと強調。パキスタン代表は拒否権の行使で安保理が使命を果たせないならば「(ガザでの)苦難の継続を容認しているとみなされる危険がある」と述べました。
フランス代表はイスラエルに対して国際的義務の順守と、ガザヘの支援物資搬入を妨げるあらゆる障害を取り除くよう求めました。英国代表は「イスラエルの無謀な軍事作戦の拡大は、人質の帰国やガザでの苦難を終わらせるための合意から、さらに私たちを遠ざけている」と非難しました。
国連に投票権のない「オブザーバー国家」として参加しているパレスチナの代表は「残虐な犯罪についての拒否権の行使は、決して許されるべきではない」と述べました。
西岸併合なら格下げも 対イスラエル関係でUAE
しんぶん赤旗 2025年9月20日
【カイロ=米沢博史】ロイター通信によると、アラブ首長国連邦(UAE)は、イスラエルがヨルダン川西岸の一部あるいは全部を併合した場合、イスラエルとの外交関係を格下げする可能性があると関係者が明らかにしました。
UAEが参加した15日のアラブ・イスラム諸国緊急首脳会議は、最終宣言で各国にイスラエルとの関係見直しを求めていました。両国は2020年の国交樹立後、経済や安全保障分野で関係を急速に拡大しましたが、23年のネタニヤフ政権復帰以降は悪化しました。
UAEは西岸での入植拡大やガザ封鎖などの現状変更を繰り返し批判し、パレスチナ国家樹立の必要性を訴えてきました。
また、9日のイスラエル軍によるカタール空爆を非難し、11月に開催予定の世界最大級の航空見本市「ドバイ航空ショー」へのイスラエル防衛産業の出展を禁止しました。
UAEはイスラエルと正式に国交を持つ数少ないアラブ諸国のーつであり、関係の格下げは、地域におけるイスラエルの孤立を象徴するものになります。
ガザ市侵攻後3542人
しんぶん赤旗 2025年9月20日
【カイロ=米沢博史】イスラエルが16日、パレスチナ・ガザ地区の最大都市ガザ市への大規模な地上侵攻を開始して以降、連日、多くの犠牲者が生まれています。ガザ地区の保健当局は18日、過去24時間に79人が殺害され、負傷者228人が新たに病院に搬送されたと発表しました。さらに多くの犠牲者ががれきの下や救助隊が到達できない場所に取り残されていますが、人数の確認ができません。
保健当局によると、2023年10月7日のガザ地区への侵攻開始以降の死者は少なくとも累計6万5141人、負傷者は16万5925人に達しました。
ガザ地区の広報局は同日、イスラエル軍が8月11日にガザ市への侵攻を開始して以来、38日間で3542人が殺害されたと
発表。うち44%にあたる1558人は、イスラエルが退避先に指定している中部・南部での犠牲者です。
広報局は声明で、「民間人や避難所を包括的かつ計画的に標的にしたジェノサイド(集団殺害)」と非難し、国際社会に対し直ちにジェノサイドを止め、イスラエル指導部を戦争犯罪人として裁くよう改めて求めました。