パレスチナ自治政府のアッバス議長は25日、国連総会一般討論でビデオ形式の演説を行い イスラエルが続ける大規模軍事攻撃について「単なる侵略ではなく、戦争犯罪であり、人道に対する罪だ」と非難し、ガザでの即時の恒久的停戦と十分な人道支援の確保、人質の解放などを改めて要求しました。
米政権がビザ(査証)発給を拒否したため、事前収録の演説となりました。アッバス氏は、英仏などが新たにパレスチナを国家として承認したことに「深く感謝する」と述べ、「まだ認めていない全ての国に承認するよう呼びかける」と訴えました。
ガザ地区の著名な政治評論家ムスタファ・イブラヒム氏が24日、しんぶん赤旗の取材に応じ、パレスチナ国家承認の意義について語りました。
トランプ米大統領が23日、「ガザ戦争は終わらせなければならない。生死を問わず、すべての人質を取り戻したい」と発言したことについては、「同じ文言を繰り返すだけで、絶滅戦争の認識も解決策を探る姿勢も見られません」と述べました。
国家承認の動きは、2年に及ぶジェノサイドを経た西側諸国の戦略転換を示すもので、国家承認は疑いもなく影響力を持ち、例えばEUは西岸併合の動きに反発し、貿易協定の見直しや経済協力の制限に踏み切る根拠になるし、パレスチナの正統性を高め、国際法廷での立場を強めるのに対して、ネタニヤフ首相とイスラエルの国際評価は急落し、とくに欧州、ラテンアメリカ、アラブ諸国では冷酷な戦争犯罪者と見られていると述べました。
以下の7つの記事を紹介します。
・全ての国が国家承認を パレスチナ議長訴え
・象徴でなく実質的な圧カヘ
・米MS、イスラエル軍向けプ部事業停止 「パレスチナ人監視に利用」 報道受け
・スロベニア、ネタニヤフ氏入国禁止
・イスラエル孤立さらに 国連総会 首相演説中、各国が退席
・ジェノサイドやめよ NY米市民らガザ侵攻抗議
・自宅にミサイル ガザ 家族失った少女と少年
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
全ての国が国家承認を パレスチナ議長訴え
しんぶん赤旗 2025年9月27日
【ニューヨーク=洞口昇幸】パレスチナ自治政府のアッバス議長は25日、ニューヨークの国連本部で開かれている国連総会一般討論で演説しました。トランプ米政権がビザ(査証)発給を拒否したため、事前収録のビデオ形式での演説となりました。アッバス氏は、英仏などが新たにパレスチナを国家として承認したことに「深く感謝する」と述べ、「まだ認めていない全ての国に承認するよう呼びかける」と訴えました。
国連総会でビデオ演説
アッバス氏は、パレスチナ自治区ガザでイスラエルが続ける大規模軍事攻撃について「単なる侵略ではなく、戦争犯罪であり、人道に対する罪だ」と非難しました。ガザでの即時の恒久的停戦と十分な人道支援の確保、人質の解放などを改めて要求しました
イスラエルによるパレスチナ自治区ヨルダン川西岸でのユダヤ人入植他の拡大については、パレスチナ国家樹立とイスラエルとの平和共存による「2国家解決」を「打ち壊すもので、国際法や国連安全保障理事会決議に明確に違反する」と指摘しました。
アッバス氏はまた、22日にフランスとサウジアラビアの共催で開かれた2国家共存を推進する会合での確認事項を実践するために、トランプ米大統領、サウジアラビア、フランス、国連、全てのパートナーと協力すると表明しました。
一方、イスラム組織ハマスについてアッバス氏は、2023年10月にハマスが行ったイスラエル市民への奇襲攻撃や人質拘束を改めて非難。将来のパレスチナ自治区ガザの統治に「ハマスの役割はない」と明言しました。
象徴でなく実質的な圧カヘ
しんぶん赤旗 2025年9月27日
中東各地のメディアに頻繁に登場するパレスチナ・ガザ地区の著名な政治評論家ムスタファ・イブラヒム氏が24日、本紙の取材に応じ、パレスチナ国家承認の意義について語りました。 (カイロ=米沢博史)
ガザの政治評論家 ムスタファ・イブラヒム氏
トランプ米大統領は23日、「ガザ戦争は終わらせなければならない。生死を問わず、すべての人質を取り戻したい」と発言しましたが、同じ文言を繰り返すだけで、絶滅戦争の認識も解決策を探る姿勢も見られません。イスラエルの狙いは、北部を破壊し住民を追放し、南部に大量の避難民を押し込むことにあります。
ある少女が自問していました。「祖国って何? 夢だけのパレスチナ国のこと? 唯一知っているあの街のこと? それとも家庭のぬくもりや食後の笑顔のこと?」-こうした疑問をガザ住民が抱く中、ルビオ米国務長官は15日、イスラエルで「米国は軍事作戦を支持する」と表明。翌日、ネタニヤフ首相はガザ市への大規模な地上侵攻を開始しました。
イスラエルは政策として住宅を破壊し人々を追放し、食料や医療物資、燃料を遮断して飢餓を作り出しています。都市とともに文化や文明、歴史の記憶、さらにはジェノサイド(集団殺害)の証人をも抹殺しようとする今、祖国とは民衆の生命と尊厳そのものです。
国家承認の動きは、2年に及ぶジェノサイドを経た西側諸国の戦略転換を示します。英、仏、豪、カナダ、ポルトガル、マルタなどが次々に承認を発表し、昨年のスペインやノルウェーに
続き、国連加盟国の4分の3が承認しました。しかし日本、ドイツ、イタリアは米国に追随し拒否しており、それが国家承認の影響力を制限しています。
イスラエルは反発しヨルダン川西岸を併合する動きを加速。独自通貨を持たないパレスチナの銀行をイスラエルの金融システムから切り離す動きも見せています。西側外交官からは「安全保障上の爆弾になりうる」との懸念も出ています。
国家承認は疑いもなく影響力を持ちます。例えば、EUは西岸併合の動きに反発し、貿易協定の見直しや経済協力の制限に踏み切る根拠になります。さらにパレスチナの正統性を高め、国際法廷での立場を強めます。
ネタニヤフ首相とイスラエルの国際評価は急落し、とくに欧州、ラテンアメリカ、アラブ諸国では冷酷な戦争犯罪者と見られています。イスラエルももはや国際社会が入植地拡大や併合を受け入れないことを否定できません。
国家承認は制裁などの実質的圧力を伴わなければ象徴にとどまりイスラエルを止められません。しかし象薇自体にも価値があります。それはイスラエルの孤立と国際世論の変化を示し、パレスチナ国家構想が米国やイスラエルの意図に反して主要課題に据えられていることを裏づけるからです。
米MS、イスラエル軍向けプ部事業停止 「パレスチナ人監視に利用」 報道受け
しんぶん赤旗 2025年9月27日
米マイクロソフトは25日、イスラエル軍部隊が使っていた同社のクラウドや人工知能(AI)のサービスを停止、無効にしたと発表しました。イスラエル軍がパレスチナ人の通話を大規模に監視していたとするメディア報道について、社内調査を実施し、暫定的な証拠を確認したためとしています。
英紙ガーディアンなどが8月に発表した共同調査によると、イスラエル軍がマイクロソフトの「アジュール」ソフトウェアを利用して、ヨルダン川西岸地区とガザ地区に住むパレスチナ人の携帯電話の通話記録を無数に保存していました。
マイクロソフトのブラッド・スミス社長によると、社の調査は現在も継続中ですが、イスラエル国防省の「アジュール」ストレージ容量の消費とAIサLビスの使用に関する詳細が報道を裏付けていました。
親パレスチナ団体、アメリカ・イスラム関係評議会(CAIR)ワシントン州支部のイムラン・シディキ事務局長は一部事業停止について「歓迎すべき一歩であり、立ち上がって抗議した勇敢なテクノロジー労働者たちの正当性を証明したものだ」と述べました。マイクロソフトは最近、社内で座り込みなど抗議した従署員の一部を解雇しています。
親パレスチナの諸団体は、イスラエル政府とのすべての関係を断つようマイクロソフトに求めています。 (ロイター)
スロベニア、ネタニヤフ氏入国禁止
しんぶん赤旗 2025年9月27日
【ベルリン=時事】旧ユーゴスラビア構成国のスロベニアは25日、イスラエルのネタニヤフ首相に入国を禁止する制裁を科すと決めました。国際刑事裁判所(ICC)がネタニヤフ氏にパレスチナ自治区ガザでの戦争犯罪などの疑いで逮捕状を出していることから、「国際人道法の尊重」をイスラエルに訴える狙いがあるといいます。
スロベニアは昨年6月、パレスチナを国家として承認。今年7月にはネタニヤフ連立政権に加わる極右のベングビール国家治安相、スモトリッチ財務相の入国禁止を決めました。
イスラエル孤立さらに 国連総会 首相演説中、各国が退席
しんぶん赤旗 2025年9月28日
【ニューーヨーク=洞口昇幸】ニューヨークの国連本部で開かれている国連総会一般討論で26日、パレスチナ自治区ガザでのジェノサイド(集団殺害)で国際社会からの非難が高まり続けているイスラエルのネタニヤフ首相が演説しました。ネタニヤフ氏は、イギリスやフランス、カナダなどのパレスチナ国家承認が続いたことについて、テロを助長する「恥ずべき決定」だと反発し、自ら国際的孤立をさらに浮き彫りにしました。
同日一般討論での1人目の発言者でネタニヤフ氏が登壇すると、多くの国の代表団が議場から退席し、ガザでの軍事攻撃に対する抗議の意思を示しました。
同氏はパレスチナ国家樹立とイスラエルとの平和共存による「2国家解決」に反対する立場を改めて主張。イスラム祖織ハマス根絶のために残存勢力が潜むガザでの軍事行動を強める姿勢を見せました。
また、ガザでのイスラエルの無法を擁護し、対イランでも強硬路線で歩調を合わせるトランプ米大統領への謝意を表明。6月のイラン核施設などに対する国際法違反の軍事攻撃を改めて正当化しました。
ネタニヤフ氏の演説に対し、パレスチナを国家承認したばかりの地中海の島国マルタのアベラ首相は、同日の一般討論演説で、ガザでの即時の恒久的停戦を要求。「2国家解決はハマスヘの報酬ではない。ハマスの悪を根絶する唯一の方法だ」と反論しました。
カリブ海の島国ジャマイカのホルネス首相も同演説で、2023年のハマスのイスラエル襲撃を改めて非難した上で、ガザ問題の「公正で平和的な解決は、外交と対話によってのみ可能だ」と訴えました。
ジェノサイドやめよ NY米市民らガザ侵攻抗議
しんぶん赤旗 2025年9月28日
【ニューヨーク=洞□昇幸】イスラエルのネタニヤフ首相の国連総会一般討論演説の時間帯に合わせて26日、国連本部があるニューヨークに多数の米市民らが結集し、イスラエルのパレスチナ自治区ガザでのジェノサイド(集団殺害)への抗議の意思を示しました。
「パレスチナを解放せよ」と声を上げ、世界各地で団結してイスラエルヘの圧力をさらに強めようと訴えながら、国連本部付近までデモ行進しました。
中心部タイムズスクエア付近に、反戦団体やユダヤ教団体の人たちも含む市民がプラカードや横断幕を掲げて集まりました。
マイクを握った発言者の1人は「ガザでの軍事攻撃は人間性への攻撃だ」「明日ではない、今すぐジェノサイドをやめろ、米国はイスラエルヘの武器支援をやめろ」と訴えると、参加者全体から大きな歓声とシュプレヒコールが沸きました。
行進ではパレスチナの旗や「ガザに連帯する」「戦争犯罪人を逮捕せよ」などと書かれたプラカードが林立。イスラエルを擁護するトランプ米大統領とネタニヤフ氏の似顔絵と血塗られた手錠のかかった手の巨大なイラストを掲げながら行進する人々もいました。
参加したメアリー・ミシェルさん(62)は「ガザで女性、子ども、住民が毎日、爆撃で殺害されている状況を今すぐとめたい。トランプ政権がイスラエルを助長させている。パレスチナを国家承認する国々を増やすことや、世界各地のさらに多くの市民がガザ問題で団結することを呼びかけたい」と語りました。
自宅にミサイル ガザ 家族失った少女と少年
しんぶん赤旗 2025年9月28日
【カイロ=米沢博史】パレスチナ・ガザ地区のジャーナリスト、アムル・タバシュ氏によれば、南部ハンユニスで25日、ワディ家の自宅がイスラエル軍のミサイル攻撃を受け、4歳の少女ファティナさんと9歳の少年カイスさんが両親と兄弟を失いました。母親は妊娠6ヵ月でした。
駆けつけた近隣住民に発見されたファティナさんは、部屋の片隅で小さな手で顔を覆い、恐怖に震えていました。周囲には父の切断された遺体や母と兄の亡きがらが横たわり、硝煙が漂っていました。「泣きも叫びもせず、ただ母を捜すように目を動かしていた姿は一生忘れられない」と住民は語りました。
タバシュ氏は本紙に「ワディ家の悲劇は特別ではない。2年近く続く爆撃で多くの家庭に似た物語がある、両親を失った子ども。幼いきょうだいを支える少年少女。悲劇は繰り返されている」と指摘。続けて「虐殺を生き延びた子どもは悪夢や不眠、安全感の喪失など長期的な心の障害に苦しむ。専門的な心理支援や長期的な回復プログラムが欠かせない。ファティナさんとカイスさんはガザにおける暴力を告発する生きた証しだ。子どもたちは数字ではなく、守られるべき顔と名前を持つ存在であることを世界に訴えたい」と話しました。
イスラエル軍はガザ地区北部のガザ市制圧作戦で住民に南部への退避を命じていますが、その南部でも空爆を続けています。ガザ保健当局によると、25日だけで南部で少なくとも11人がイスラエルの攻撃で殺害されました。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。
ページ
▼