「憲法9条を守るべきである」という当然すぎる主張に対して、安倍元首相は結構 情緒に訴えるところがあって、「では米国の青年が命をかけて日本を守ってくれるのに、日本は何もしなくてよいのか」と語ったものです。勿論次元の異なる事柄をまぜこぜにした発言なのですが。
それに対して「米国の青年はそんな風には思っていない」という反論は当時もあったし、日本が他国から攻撃されたときに米軍が防衛に駆け付けてくれるかは、その時々で米国の国会が決めるべき事項であるという事実関係の説明も行われてきました。
植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
日米安保条約第五条では、「自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動する」と謳われていて、「日本防衛義務」などどこにも書かれていないと述べました。
米国は台湾の防衛についても、台湾関係法を制定し台湾有事の際に軍事出動する可能性を「選択肢」として残しているに過ぎないことを示し、「台湾有事」が生じても米軍が介入しない可能性があることは明らかであるとしました。
さらに「存立危機事態」は「日本国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」事態を指すのに高市氏の11月7日の国会答弁は、「これを満たすことを示さずに『どう考えても存立危機事態』と述べた」のは誤りであると指摘しました。
こうして「台湾が中国の核心的利益」であることを蹂躙した結果中国が激怒していることは別掲の記事の通りです。
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日米安保第五条の真実
植草一秀の「知られざる真実」 2025年12月15日
日米安保条約第五条の条文は次のもの。
第五条 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
日本が武力攻撃を受けたとき、米国には日本防衛義務があるとよく言われる。
日本の平和と安全は米軍によって守られているとも言われる。しかし、本当にそうなのか。
この主張の根拠とされているのが日米安保条約第五条。条文には
「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」が
「自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め」「自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動する」「ことを宣言する」とある。
何が行われるのかが問題だが、書かれているのは
「自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動する」である。
「日本防衛義務」などどこにも書かれていない。
「台湾有事」とは台湾で台湾と中華人民共和国との間の武力衝突等の事態が発生すること。
このとき、米国が軍隊を展開するのかも分からない。
米国は「一つの中国」を承認している。しかし、「台湾の中国帰属」については「認知(acknowledge)」するが「承認(recognize)」していない。
そして、台湾関係法を制定して、台湾有事の際に軍事出動する可能性を「オプション(⇒選択肢)」として残している。日本の立場とは異なる。
日本は「台湾の中国帰属」という中国の主張を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項の立場を堅持するとした。論理的に台湾の中国帰属を認めた。
したがって、大平外相国会答弁に示されるように、「台湾と中華人民共和国の間の対立は基本的に中国の国内問題である」と認識している。
明らかなことは「台湾有事」が生じても米軍が介入しない可能性があること。
台湾有事に米軍が介入しないことがあり得るにもかかわらず、
「(台湾有事が)戦艦を使って武力の行使をともなうものでれば、どう考えても存立危機事態になり得るケース」とした高市首相発言は完全な「暴言」である。
高市発言は「可能性の存在」を述べたものではない。
最重要の言葉は「どう考えても」。「蓋然性についての判断」を示した。
「どう考えても」は「極めて高い確率で」、「ほぼ間違いなく」と言い換えられる。
「台湾有事が生じれば、ほぼ間違いなく日本の存立危機事態になる」と受け取られる発言を示した。しかも、この発言には米中の軍事衝突という前提が付されていない。
「台湾有事が発生すれば存立危機事態になる」と発言したと受け取られる。
同時に、高市発言の内容は集団的自衛権行使の要件を満たさない。
集団的自衛権行使が認められる「存立危機事態」とは
「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」
事態のこと。
これを満たすことを示さずに「どう考えても存立危機事態」と述べた。
続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第4278号
「米国に擁護されない高市発言」 でご高読下さい。
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(後 略)
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。
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