外国人が働きたい国ランキングで日本が最下位から2番目でした。要するに日本の賃金が大幅に下がっていて外国人にとって魅力がなくなったわけです。
1位はスイス、2位はシンガポール、3位はカナダ、4位はスペインでした。因みに ベトナムは10位、フィリピンは24位で、日本はインドネシア(31位)の次で、日本よりも下位は政情不安で知られているブラジル1国でした。
安倍政権は、殆ど環境整備をしないまま漫然と外国人労働者の本格的な受け入れをスタートさせましたが、過去の名声?にとらわれずに各国の労働者が冷静に判断すれば、外国人労働者も来てくれなくなる可能性は大いにあり、逆に日本人が外国に出稼ぎに行くことが求められる可能性が出てきました。
この結果は過去7年近くの安倍政権のあり方を痛烈に批判するものとなっています。安倍政権に全ての責任があるとは必ずしも言い切れませんが、この7年近く無為無策、そして反動逆行の政策を続け、ひたすら軍事費だけを増やしたことで決定的に傷を深くした責任は免れません。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「外国人が働きたい国」で日本が33カ国中32位――この国の“真に深刻な問題”とは
加谷珪一 ビジネスオンライン 2019年09月27日
外国人が働きたい国ランキングで日本が最下位から2番目だったことが話題になっている。簡単に言ってしまうと、日本の賃金が大幅に下がっており、外国人にとって魅力がなくなったという話だが、もう少し掘り下げてみると、このランキングは、日本人の働き方について多くの示唆を与えてくれる。
ポイントは「賃金」と「ワークライフバランス」
英金融大手HSBCホールディングスは7月、「各国の駐在員が働きたい国ランキング」の最新版を発表した。日本は調査対象33カ国(地域含む)中32位という少しばかりショッキングな結果となった。このランキングについては、一方的な評価だと批判する声も聞かれるが、「やっぱりな」「それはそうだろう」と肯定的に捉える人が多かったようである。
HSBCホールディングスが発表した2019年の「各国の駐在員が働きたい国ランキング」
⇒ (表は末尾に掲載しました)
ちなみにこのランキングの1位はスイス、2位はシンガポール、3位はカナダ、4位はスペイン、5位はニュージーランド、6位はオーストラリアで、逆に日本より評価が低かった最下位の国はブラジルだった。
こうしたランキングが報じられるたびに、異なる文化の国を一律に比較しても意味がないといった「国際比較無意味論」が出てくるのだが、こうした意見を条件反射的に口走ってしまう人は、残念ながら物事の表面しか見ていない。ランキングを行うのは、単なる順位付けだけではなく、評価基準をあえて統一することで、これまで見過ごされてきた各国の違いを再認識させるという目的もある。諸問題の解決策を探るにあたって、国際比較ほど有益な情報源は無い。
では、今回のランキングから何が分かるだろうか。
上位に並んでいる国を見ると、2つの特長が浮かび上がってくる。スイス、シンガポールがその典型だが、極めて賃金が高く、完璧なビジネス環境が整備されていることである。個別項目の評価結果を見ると、スイスは圧倒的に賃金のポイントが高いが、幸福感や満足感といった項目のポイントは低い。シンガポールも似たような結果で、賃金では圧倒的な高得点だが、ワークライフバランスは低い。
結局、賃金が低ければ不人気
世の中には、ハードワーカーと呼ばれる人が一定数存在しており、それはそれで1つの価値観である。限界まで働いて高い年収を得ようという人にとって、ワークライフバランスは重要なテーマではない。問題は、各ビジネスパーソンが、自分がどんな人生を送りたいのか主体的に選択できることである。
一方、カナダ、スペイン、ニュージーランドといった国は、ガツガツ仕事をしない国というのが一般的イメージだが、実際、このランキングでもワークライフバランスといった項目の点数が高く、これが総合順位を押し上げた。
筆者が先日、香港に行った時のこと、ホテルのフロントで諸手続きに少し時間がかかり、30代と思われるフロント係と少し雑談する羽目になった。カナダで育った彼は、親族の要請で香港に移り住んだそうだが、「(香港はカナダと比べて)仕事がキツくて大変だ」とこぼしていた。カナダにいた時には、残業することなど考えられなかったそうである。ちなみに香港は全体で15位と中位ランクだが、やはり賃金の高さでポイントを稼いでおり、ワークライフバランスの点数は悪い。
もっとも、カナダ、スペイン、ニュージーランドなど、ワークライフバランスが高い国は、それだけで点数を稼いでいるわけではないという点にも注意が必要である。これらの国の賃金は、最上位でこそないが、相対的な順位はそこまで低いわけではない。いくら残業時間が少なくても、生活が苦しい状況では、満足度は上がらないと思った方がよいだろう。
これに加えてランキングが高い国は、教育環境が充実しているという共通項がある。誰にとっても子どもは大事であり、どれほど高賃金で、ワークライフバランスが良くても、教育環境が悪ければ、やはり総合評価は上がらない。
こうした事実を踏まえて、日本の個別評価を見てみると、厳しい現実が浮かび上がってくる。
日本人が海外で「出稼ぎ」する未来も?
日本のランキングが著しく低いのは、何かが大きく足を引っ張っているのではなく、全ての項目において評価が低いことが原因である。具体的に言うと、賃金については最下位、ワークライフバランスについても最下位、子どもの教育環境についても最下位であった。
この結果を見る限り、国が違っても、ビジネスパーソンが求めるものにそれほど大きな違いはないことが分かる。今の日本でもっとも大きな課題となっているのは、低賃金、長時間労働、子育ての3つであることは誰もが認める事実だろう。日本は全ての項目で評価が低いので、全体のランキングも下がってしまっただけだ。ここで国際比較うんぬんは関係ない。
少々気になるのは、日本よりランクが上位の国の中に、ベトナム(10位)、フィリピン(24位)、インドネシア(31位)といった国が入っていることである。
安倍政権は、深刻な人手不足に対応するため、外国人労働者の本格的な受け入れをスタートしており、日本は事実上の移民政策に舵を切った。日本企業が求めているのは安価に雇える外国人労働者であり、具体的にはフィリピン、インドネシア、ベトナムといった国からの来日を想定している。
だが、外国人にとって日本はこれら3国よりも魅力のない国となっており、このままでは、外国人労働者すら来てくれない可能性もある。このHSBCのランキングは、あくまで駐在員を対象としたものであり、単純労働者にアンケートを取ったものではないが、マクロ的には同じ傾向を示すと考えてよいだろう。
下手をすると、日本は外国人労働者を受け入れるのではなく、外国に出稼ぎに行くことすら求められる可能性も出てきたといってよいだろう。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。