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2021年2月16日火曜日

リコール不正 刑事告発に陰謀論を主張し続ける高須院長

 高須・クリニック院長が主導した大村秀章愛知県知事のリコール署名をめぐって、愛知県選挙管理委員会は15日、被疑者不詳というかたちで地方自治法違反容疑で刑事告発する方針を決めました
 愛知県選挙管理委員会2月1日、提出された約43万人分の署名約83%約36万人分の署名が無効で、そのうち筆跡などから同一人物が書いたと疑われる署名が90%、選挙人名簿に登録のない署名が48%、活動の受任者が選挙人名簿に登録されていないものが24%もあったと発表しました。
 リコールは地方自治法で定められた直接請求制度の一つで、知事ら公職者の解職を求めることができる強力な権能なので、その署名において不正があることは許されず、署名の偽造には公選法による不正投票の罰則と同じ3年以下の懲役を科すなどとしています。
 高須院長や同院長と一緒になってリコール運動を進めてきた河村・名古屋市長には、何よりも先ず不正な署名が行われたことに対する説明責任がありますが、高須氏は逆に陰謀論を主張し、河村氏は会見で自分も被害者だと述べるなどしてその責任を果たそうとしていません。
 加えて河村市長には、コロナ禍のなかでやるべきことは県と力を合わせPCRの社会的検査の実施や医療体制の確保、くらしと生業への補償などを行うことでしたが、逆に知事と対立してリコール署名運動にのめり込むことで、感染拡大を収束させる積極的な手立てを怠ったという批判があります。
   ⇒(2月4日)大村知事リコール不正「誰が、なぜ、を究明せよ」と東京新聞+ 
 高須院長も、昨年末に不正告発が相次いだときからそれをリコール潰しの策謀であるかのよう主張し、今年に入ってからも〈僕はコールを統括する最高責任者です。正面から敵の攻撃と謀略を受け止め戦います。僕が全てを引き受けます〉(1月30日)と闘争宣言を繰り返すのみです。
 そして〈独自調査で大量不正署名のトリックの全貌が見えてきました〉〈調査報告のエクセルファイルを入手しました。印象操作のトリックがわかってきました〉として4日会見しましたが、そこではただ荒唐無稽な陰謀論を強調するだけで、「証拠」「トリックの全貌」は何ひとつ説得力のあるものを示すことができませんでした。
 肝心の「エクセルファイル」についても、同席した自分たちの弁護士から半笑いで否定される始末で、どうも高須氏は「エクセル」というものを良く知らなかったように思われます。
 そんな高須氏をTVのワイドショーが批判しないのは、潤沢な資金を使ってCMを流しているためと思われます。
 LITERAが取り上げました。
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リコール不正刑事告発でも陰謀論主張の高須院長を批判できないマスコミ 『スッキリ』では高須に擁護的コメント 番組中にクリニックのCM
                             LITERA 2021.02.15
 愛知県の大村秀章知事のリコール署名をめぐって、本日、愛知県選挙管理委員会は被疑者不詳というかたちで地方自治法違反容疑で刑事告発する方針を決めた。
 当然だろう。昨年末から運動の内部関係者より大村知事のリコール署名に不正があるという告発が相次ぎ、県選挙管理委員会が調査していたが、2月1日、その選管が提出された約43万人分の署名約83%に不正の疑いがあることを発表している。
 選管によると、約36万人分の署名が無効で、そのうち筆跡などから同一人物が書いたと疑われる署名が90%、選挙人名簿に登録のない署名が48%、活動の受任者が選挙人名簿に登録されていないものが24%もあったという。
 これだけ不正が多いとなると、ケアレスミスや個人の問題ではなく、組織的不正の可能性も疑われても仕方ない。民主主義を冒涜する事態であり、徹底解明が必要だ。県選管が刑事告発を決めたことは前述したが、それ以前にリコール署名運動を主導してきた高須クリニックの高須克弥院長や河村たかし・名古屋市長の説明責任が厳しく問われるべきだろう。
 このリコール署名は、2019年の「あいちトリエンナーレ」の「表現の不自由展・その後」をめぐる、ネット右翼や極右安倍応援団による“大村知事バッシング”の延長線上で始まったもの。なかでも、「お辞め下さい大村秀章愛知県知事 愛知100万人リコールの会」なる団体を設立するなどして中心的役割を担ってきたのが、高須クリニックの高須院長だ。そして、河村市長は、名古屋市長という公職にありながらコロナ対策もおざなりにし、街頭演説などでリコール運動を支援してきた。その署名が不正だらけだったのだから、少なくとも2人には調査解明と説明の責任があるはずだ。
 ところが、である。不正8割超という選管の発表にも、河村市長は「僕は被害者、怒りに震える」などと被害者ヅラ。高須院長にいたっては、今月1日、取材に対し「無効な署名には気付かなかった。票を増やそうとした人もいるかもしれないが、活動を妨害するため、わざと問題になる署名を書いた人がいるかもしれない」などと主張。その後も、ツイッターで選管や不正を報じるメディアを批判しまくっている。
〈一人の受任者は複数の署名を集めますから7万人しか有効な署名がなく、残りは全部不正署名だと言う選管の発表はおかしな話しだと思います〉
〈「不正署名の90%は同一人の筆跡」という発表をうけての答えです。そんな神業ができるのはこの世の人ではありません。〉
〈些細な記入記載の誤りも厳密に見つけて無効にしたに間違いありません〉(2月2日)
〈選管は無効署名と発表していますが、不正署名と変換されて報道しています〉
〈悔しいです。「ほとんどが不正署名」と辱しめを受けて怒りに震えております〉(2月3日)
 さらに、高須院長は12日、何者かが運動を妨害するために偽の署名を紛れ込ませたなどとして、地方自治法違反容疑での告発状を名古屋地検に郵送した。

高須院長が「印象操作のトリックがわかった」と言ったエクセルファイルは何の証拠にもならないもの
 高須院長はもともと、昨年末に不正告発が相次いだときから、リコール潰しの策謀であるかのような主張を繰り返し、今年に入ってからも〈たぶん敵は「印象操作の刑事告発」をやってきます〉(1月29日)〈僕は大村愛知県知事リコールを統括する最高責任者です。正面から敵の攻撃と謀略を受け止め戦います。僕が全てを引き受けます〉(1月30日)と、悲劇のヒーロー気取りの闘争宣言を繰り返していた。
 そして、選管が不正を発表したことで、こうした“陰謀論を駆使した闘争”をさらにエスカレートさせているということらしい。
 しかし、高須院長の主張は議会襲撃を「ANTIFAの仕業だ!」と叫ぶトランプ支持者たちと同じで(そういえば、高須院長は〈愛知県は利権で繋がっている田舎のディープステートに完璧に支配されてる 号泣〉ともツイートしていた)、ほとんど中身や根拠のない陰謀論だ。そのことを雄弁に物語っていたのが、4日に高須院長が開いた会見だった。
 高須院長はこのところ、リコール潰し・陰謀の証拠を見つけたと言い出し、それを明らかにすると息巻いていた。
〈いま足跡を追って証拠を押さえつつあります。捕まえて刑事告訴します。〉(1月30日)
〈独自調査で大量不正署名のトリックの全貌が見えてきました。数日中に発表します。〉(2月2日)
〈調査報告のエクセルファイルを入手しました。印象操作のトリックがわかってきました。まもなく記者発表します。〉(2月3日)
 しかし、4日の会見では、「選管があら探しをした結果だ」「選管は無効を増やすのが仕事だと思ってやった」などと選管の調査に難癖をつけ、「誰かが、活動を傷物にしようと妨害したのだろう」「大村知事と津田大介は早くから不正が8割を超えることを知っていた」などと荒唐無稽な陰謀論を強調するだけで、「証拠」「トリックの全貌」は説得力のあるものを何ひとつ示すことができなかった
 ツイッターであれほど息巻いていた、トリックがわかったという「エクセルファイル」とやらについても、同席した自分たちの弁護士に否定される始末だった。
 弁護士は「エクセルの表はですね、高須先生のツイッターを見ると、なんか秘密兵器みたいなことが書いてありますけど(笑)、そうじゃなくて」と半笑いでその重要性を否定。「受領書にある署名総数やナンバリングした番号とかを整理したもの」にすぎないと説明した。弁護士は「エクセルだから並べ替えができ」、どこの選管で多かったか傾向がわかるなどとも話していたが、高須院長はよくそんなもので「印象操作のトリックがわかってきました」などと言ったものだ。

無効票の約4分の1は名簿に登録のない受任者が集めた署名だった
 しかも、会見では逆に運動事務局のずさんな実態が露わになる一幕もあった。
 署名集めを担う「受任者」は自治体の選挙人名簿に登録されている必要があるが、無効票の約4分の1は名簿に登録のない受任者が集めた署名だった。同席した田中孝博事務局長によると、受任者はインターネットやはがきを通じて募集し資格の確認はしていなかったと明かしたのだ。これについても、高須院長は「リコールを成功させようと応募した人は、お互いを信じ合おうとの考えだった」と精神論でごまかすことしかできなかった。
 しかも、会見の最後には、高須院長が病気を理由に撤退を宣言した後も率先して署名集めを続けていたという事務局関係者の実名をあげ、「大村知事から金をもらってる」「明確に敵」などと一方的に糾弾したのだ。
 どうみても、説明責任を果たしているとはいいがたいが、しかし、今回のリコール不正をめぐっては、高須院長らの無責任な姿勢以外に問題はもうひとつある。
 それは、こうしたリコール不正問題や高須院長の言動をメディアがまったく批判しないことだ。
 地方都市のことだからと言い訳するかもしれないが、もっと小さい市町村の議員の細かい不祥事でもワイドショーはよく取り上げているし、それこそ高須院長の話題は「高須院長が全身がん告白」「高須院長がツイッターで○○にコメント」「高須院長が××を太っ腹支援」「高須院長が野党議員に抗議」などとしょっちゅう取り上げている。『バイキングMORE』(フジテレビ)や『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)などは単なる近況報告のような特集をやることだってある。
 しかし、この問題についてはほとんどのワイドショーやニュース番組がまったくと言っていいほど取り上げていない。そして、取り上げた数少ない報道も明らかに及び腰なのだ。
 一体なぜか。ひとつはこのリコールが「あいちトリエンナーレ」の展示をめぐる歴史修正主義の動きと連動したものであることだろう。高須院長らを批判してネトウヨの攻撃を受けることを恐れている可能性もある。そして、もうひとつはやはり高須クリニックがテレビ局にとって大スポンサーだからだろう

『スッキリ』では高須院長に擁護的なコメントも 番組中に高須クリニックのCMが
 その構図が垣間見えたのが、1日放送の『スッキリ』(日本テレビ)だった。同番組はめずらしくこの問題を取り上げ、元受任者や勝手に名前を使われた地元議員の証言を紹介したのだが、同時に高須院長の「僕は不正が大嫌いですから。正々堂々と法律通りにやってる。不正とはまったく無関係」などという主張を放送。MCの加藤浩次や橋本五郎・読売新聞特別編集委員がこれを受けて「高須さんの名誉を考えたら、調べた上でちゃんとやるのが大事」「選挙管理委員会は説明が必要」などと、選管に苦言を呈したのだ。
 いやいや、説明しなくてはいけないのは、高須氏のほうだろう。選管はすでに不正の告発を受け、異例の全数調査をし、その結果を発表している。いかにして不正が起きたかは刑事告発し捜査に委ねるか、署名を集めた人間のほうが説明する責任があるのは明白だ。
 にもかかわらず「高須院長の名誉を守るために選管が説明しろ」という加藤や橋本。まさかこの人たちは、選管の管理のもと署名がなされたとでも勘違いしているのだろうか。あるいは選管へ提出後に不正が発覚したなどという陰謀論まがいのことが起きたとでも考えているのだろうか。
 と首をひねっていたら、この日の『スッキリ』の合間にはなんと、おなじみの高須クリニックのCMが流れたのである。
 この日の『スッキリ』で加藤らが高須院長に擁護的な発言をしたことが、番組中に高須クリニックのCMが流れたことと関係があるかどうかはわからないが、しかし、テレビ局がこの問題をまともに取り上げなかったり、両論併記的に高須院長の支離滅裂な言い分を垂れ流したりする背景に、高須院長がテレビ局にとって大スポンサーであるということが関係しているのは間違いないだろう。
 実際、これまでも、ワイドショーは高須院長に対して、明らかに配慮しているとしか思えない報道を繰り返してきた。民進党(当時)の大西健介衆院議員が国会で美容整形CMを問題にした発言を名誉毀損で訴えた際、『ミヤネ屋』でコメンテーターが「名誉毀損に当たらない」旨の発言をしたことについて、高須院長は「明確な名誉毀損」などと猛抗議。問題のコメントはごく真っ当な指摘であり、そもそも論評にしかすぎず名誉毀損などあり得なかったにもかかわらず、『ミヤネ屋』は翌日の放送でひれ伏すように謝罪したこともある。高須院長のナチス礼賛発言が国際的な大問題になった際もまともに取り上げず、同時期に爆破予告されたことだけを取り上げたこともあった。

リコールを後押ししながら不正発覚にだんまりの百田尚樹、有本香、吉村知事
 金を持っているためいくらでも裁判でも起こすことができるうえ、大スポンサーで、ネトウヨのファンもついている高須院長は、テレビにとっては一種のタブーになってしまっているのだ。
 そのため、高須院長は、これまでも金の力を盾に、差別発言や歴史修正発言でも撤回も謝罪もなく開き直ってきた。
 しかし高須院長は、ただの美容クリニック経営者ではなく、歴史修正主義、政権支持を盛んに発信しているきわめて政治的な存在だ。ましてや、今回のリコール運動では市民運動を率いて現実政治にコミットし、そこで前代未聞の不正が起きたのだ。言っておくが、リコールは単なるアンケートなどではなく、民主主義において選挙と同等の価値が置かれ、署名偽造には懲役刑も課される重大な違反だ。いくらスポンサーだからといって、このまま放置することは許されない。

 いや、高須院長だけではない。いまは他人事を決め込んでいる百田尚樹氏、竹田恒泰氏、有本香氏らネトウヨ文化人や、吉村洋文・大阪府知事ら維新の会(ちなみに田中事務局長は維新の次期衆院選公認候補予定者でもある)など、この運動をバックアップしてきた連中の責任もきちんと追及すべきだろう。(編集部)