芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で展示された昭和天皇に関する映像作品などを巡り、反大村知事の意向を強めている高須・高須クリニック院長が主導したリコール運動において、愛知県選管が、提出された署名の約83%に不正が疑われるとの調査結果を公表し、地方自治法違反での刑事告発も検討していることについて、東京新聞が「リコール不正 誰が、なぜ、を究明せよ」とする社説を出しました。
県選管の調査によると、複数の人が何筆も書いたと疑われる署名が全体の9割もあるほか、選挙人名簿に登録されていない者の署名も5割近くあったということで、驚くべき内容です。
リコールは地方自治法で定められた直接請求制度の一つで、知事ら公職者の解職を求めることができる強力で重要な権能なので、その署名において不正があることは許されず、署名の偽造には公選法による不正投票の罰則と同じ3年以下の懲役を科すなどしています。
社説は、告発がなされた場合に捜査機関は、誰がなぜこのような大掛かりな不正をしたか、全容解明に全力を挙げてほしいとしています。
一方 高須院長は29。30日のツイッターで、「早速始まった印象操作。この動きは想定内です」「正々堂々と受けて立ちます」「僕は大村愛知県知事リコールを統括する最高責任者です。正面から敵の攻撃と謀略を受け止め戦います」と徹底抗戦の意向を示しました。
明らかに思われる署名の不正について、「想定内」の「印象操作」「敵の攻撃と謀略」というのはどういう意味なのか理解に苦しみますが、告発されればいずれ明らかにされると思われます。
高須院長は勿論、共にリコール運動を主導してきた河村たかし・名古屋市長は、先ずはしっかりと説明責任を果たすべきです。
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社説 リコール不正 誰が、なぜ、を究明せよ
東京新聞 2021年2月3日
愛知県で民主主義の根幹を揺るがす事態が明らかになった。知事のリコールを求めた署名の八割余に無効の可能性があるという。県選挙管理委員会などは事実関係の徹底究明に全力を挙げるべきだ。
同県選管は、「高須クリニック」の高須克弥院長らが大村秀章愛知県知事のリコールに向け提出した署名の約83%に不正が疑われるとの調査結果を公表。地方自治法違反での刑事告発も検討する。
リコールは同法で定められた直接請求制度の一つである。原則として有権者の三分の一以上の請求で、知事ら公職者の解職を求めることができる有権者にとって強力かつ重要な権能である。
それだけに、署名の大半に不正が疑われることは前代未聞であり、断じてあってはならない。大村知事が会見で「民主主義の根幹を揺るがす由々しき事態だ」と厳しく批判したのはもっともだ。
県選管の調査によると、県内六十四の選管に提出された約四十三万五千人分の署名(住民投票実施に必要な法定数は約八十六万六千人)のうち約三十六万二千人分が無効と判断された。一筆の署名に複数の不正が確認されたケースが多く、複数の人が何筆も書いたと疑われる署名が全体の九割もあるほか、選挙人名簿に登録されていない者の署名も五割近くあった。
民主主義の基本は公平な選挙である。それを補完するのが、住民投票で公職者を解職することもできるリコールだと言える。
今回の不正は、こうした民主的な制度を愚弄(ぐろう)するものである。県選管などの調査にリコールを推し進めた側が協力すべきであるのはもちろん、告発がなされた場合に捜査機関は、誰がなぜこのような大掛かりな不正をしたか、全容解明に全力を挙げてほしい。
地方自治法は署名の偽造に三年以下の懲役などを科すと定める。公選法による不正投票の罰則と同じであるのは、民主主義を守るうえでリコールに選挙と同等の価値を置くからであろう。
リコールは、芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で展示された昭和天皇に関する映像作品などを巡る大村知事の対応を問題視して高須院長が主導した。
展示をめぐり大村知事と対立してきた名古屋市の河村たかし市長は高須院長と街頭演説をするなど強く支援した。河村市長は自身や事務所の関与について「全くない」と否定したが、市議会二月定例会での追及は必至だ。しっかりと説明責任を果たすべきである。
+「民主主義への冒涜」知事リコール署名めぐり声明 党愛知県委
しんぶん赤旗 2021年2月4日
日本共産党愛知県委員会は3日、大村秀章知事のリコール運動で約83・2%の署名が無効との県選挙管理委員会の調査結果を受けて、同運動は直接請求権を不正に利用した民主主義への冒涜(ぼうとく)だとする声明を発表しました。名古屋市役所で、石山淳一県書記長、市議団の田口一登団長、江上博之幹事長が会見しました。
同運動は、あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」(2019年)の展示内容への不服を理由に、展示を許可した大村氏のリコールを、高須克弥医師や河村たかし名古屋市長が呼びかけたもの。
声明は、県と市が力を合わせてコロナ対策に取り組むべき時に、歴史を改ざんし「表現の自由」を踏みにじる運動に賛同し、署名を推進した河村氏の責任は重大だと指摘。会見で「僕も被害者」などと言い放ち、責任逃れに徹した態度を批判し、市長としての資格はないと強調しました。
田口氏は「『僕も被害者』と責任転嫁する態度をただしていく」、江上氏は「本来であれば選管の調査はコロナ対策に使うべき費用と時間だった」と発言。石山氏は「市議会での徹底追及とともに、4月の市長選で広範な市民、野党とともに退陣に追い込んでいく」と力を込めました。
大村知事のリコールを求める署名の選挙管理委員会調査結果をうけて
2021年2月3日
日本共産党愛知県委員会
高須克弥氏が代表となってとりくまれた大村知事のリコールを求める署名について、愛知県選挙管理委員会が調査の結果を発表しました。調査をおこなった全43万5334筆のうち、有効と認められない署名は36万2187筆で全体の83・20%にのぼりました。日本共産党は、この署名運動について、2020年11月13日の声明で市民・県民に受け入れられず失敗に終わったと表明しましたが、選挙管理委員会の調査結果でさらにそのことが明らかとなりました。
直接請求権は憲法95条と地方自治法に定められた住民の権利です。今回の高須氏を中心としたリコール運動は、この直接請求権を不正に利用したものであり、住民の権利を貶(おとし)め、直接民主主義をだいなしにしたものと言わざるを得ません。法で定められたルールを踏みにじってでも自分たちの主張をおしつけようとする姿勢の表れであり、民主主義への冒涜(ぼうとく)です。
この運動の応援者として高須氏とともに街頭宣伝に参加して署名をよびかけた河村たかし名古屋市長も、その責任を免れません。河村市長は、記者団の取材に「僕も被害者」と言い放ったことに多くの市民が唖然としました。市長自らが積極的によびかけた署名活動で不正が明らかになれば、その責任を感じて市民に謝罪をするのが、市長として当然とるべき態度です。それを「僕も被害者」と言うことで責任を免れようとするのは、詭弁以外の何ものでもありません。
コロナ禍のなか河村市長がやるべきは、市民の命と暮らしを守るために、県と力を合わせPCRの社会的検査の実施や医療体制の確保、くらしと生業への補償などを行うことでした。しかし、河村市長は、知事との対立を煽り、リコール署名運動にのめり込むことで、感染拡大を収束させる積極的な手立てを怠りました。この河村市長の態度が、市民の命とくらしをおびやかす結果になっていることは明らかです。歴史を改ざんし「表現の自由」を踏みにじる運動に賛同したこともふくめ、河村市長に市長としての資格はまったくありません。
日本共産党は、4月に行われる名古屋市長選挙で、広範な市民、野党とともに河村市長を退陣に追い込み、市民の命と暮らし、民主主義が守られる名古屋市政へと転換するために全力を尽くします。