既報のように、ガザ停戦合意は既にイスラエルによって実質的に破られています。
⇒(10月22日)ガザ合意発効1週間 イスラエル軍、24人殺害 人道支援の制限続ける
イスラエルはいくらでも虚偽の口実をつけてパレスチナ人を殺害するし、「人質の遺体の返却が遅い」などの無理難題を口実にすることもします。
何よりもトランプ政権自体が、ハマスが武装解除を拒否しているのを大義名分にして虐殺が再び激化されると明言しているので、これでは停戦が維持される筈がありません。
ケイトリン・ジョンストンが「既に停戦を妨害しているトランプ二ャフ政権」という記事を出しました(トランプニャフとはトランプ・ネタニヤフのことです)。
さすがにケイトリンは「ガザ停戦合意」の真実を見抜いています。
併せて櫻井ジャーナルの記事「予想された通り、イスラエル軍がガザで住民虐殺を再開」を紹介します。こちらは「ガザ停戦合意」の空しさを歴史的な観点から説明しています。
何よりもトランプが一方的にイスラエルの肩を持つだけで、停戦を貫徹しようとしないことには「救い」がありません。
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既に停戦を妨害しているトランプ二ャフ政権
マスコミに載らない海外記事 2025年10月20日
イスラエルの停戦が「お前達が止めれば我々は撃つ」という意味だという言い回しを誰
が最初に作ったのか知らないが、何度も確かに正確なことが証明されている。
ケイトリン・ジョンストン 2025年10月15日
イスラエル停戦が「お前達が止めれば我々は撃つ」という意味だという言い回しを一体誰が最初に作ったのか知らないが、何度も確かに正確なことが証明されている。
本日、イスラエル国防軍が、帰宅しようとしていたパレスチナ人9人を殺害したと報じられている。彼らは、何らかの許可されていない地域を移動し、兵士に脅威を与えていた、などといったいつもの言い訳で殺害した。今年初めの「停戦」でも、全く同じ言い訳で、終始同じことを繰り返していた。
先日我々が起きかねないと予想していた通り、ハマスがイスラエル人人質の遺体全員を返還していないため、ガザへの援助を半減させ、燃料とガスの輸送を停止するとイスラエルが発表した。ガザにおけるイスラエル爆撃作戦により生じた瓦礫と混乱のため、ハマスが人質全員の遺体を直ちに返還できないことを合意に署名した時点でイスラエルは十分認識していた。
10月9日、「ハマスが残りの人質全員の遺体を返還できない可能性ありとイスラエルは評価」と題する記事を掲載し「イスラエル政府は、ハマスが残りの人質28人のうち一部の遺体の所在を把握していないか回収できない可能性があると認識している」とCNNは報じた。
人質が監禁されていた地域でイスラエル空爆により生じた瓦礫の中から人質の遺体全員を見つけるのは「大変な課題」となるだろうと赤十字は述べている。
「ガザでの交渉中、イスラエルは死亡した捕虜の遺体全員の回収には時間がかかることを理解していた。遺体回収のための具体的な仕組みも合意されていた。しかし今、イスラエルはそれがなかったかのように振る舞い、合意に違反して合意済みの援助物資を半分に減らそうとしている」とDrop Site Newsのジェレミー・スケイヒルは解説している。
イスラエルのヘブライ語メディアが、停戦合意の「秘密条項」により、死亡した人質の遺体が72時間以内に返還されなければイスラエルは攻撃を再開できるとしていたと(反シオニスト・メディア)Mondoweissが先週報じた。
つまり、これは最初から計画されていたように見える。イスラエルはハマスが果たせないと分かっていた義務を作り出し、それを口実に虐殺を再開したのだ。
トランプ大統領もそれに同調しているようで「大きな重荷は取り除かれたが、仕事はまだ終わっていない。死者は約束通りには戻っていない!」とTruth Socialに投稿した。
火曜日「人質の死亡者は26人か24人だと聞いていたが、実際はそうではないようだ。我々が話しているのはそれよりずっと少ない数だ」とトランプ大統領は記者団に語り、「人質を返してほしい」と言った。
また、ハマスは強制的に武装解除されなければならないとトランプ大統領は報道陣に語ったが、これはこの「停戦」見世物丸ごと、見せかけだと公然と認めたに等しい。
「もし彼らが武装解除しないなら、我々が彼らを武装解除する。それは速やかに、おそらく暴力的に行われる」とトランプ大統領は火曜日に述べた。
この発言は、ハマス武装解除は「容易な方法」か「厳しい方法」のどちらかになるというベンヤミン・ネタニヤフ首相最近発言と一致している。
停戦交渉が永続的和平へと進むためには、ハマスが完全降伏し、イスラエルが完全な勝利を得る必要があると大統領と首相は、はっきり述べている。彼らは停戦合意と称しているが、実際は完全降伏合意で、ハマスは降伏しないと明確に表明している。
「過去1年間のDrop Siteとの複数回インタビューを含め、実際は、ハマスやイスラム聖戦幹部や他の抵抗勢力幹部らは、交渉を通じて繰り返し武装解除を拒否してきた」とDrop Site Newsは説明している。
今日の公共の議論における停戦を巡る混乱の大きな要因は、停戦とは何か、それが一体何を意味するかについて、二つの矛盾した考え方が行き交っていることだ。イスラエル支持者は「停戦」とは「イスラエルの完全勝利とハマスの完全降伏」を意味すると考えているが、それ以外の人々は「停戦」とは停戦を意味すると考えている。
だからこそ、イスラエル支持者が合意を祝福する一方、パレスチナ支持者は大いに不安を抱いているのだ。パレスチナ支持者は、停戦と降伏は別物だと理解しており、「停戦」交渉が永続的和平へと進むためには、ハマスが完全に武装解除しなければならないとトランプ大統領とネタニヤフ首相が述べているのを理解している。トランプ政権とハマスという互いに譲らない相容れない立場が衝突し、ガザでのホロコーストの再燃につながる可能性が高いことを彼らは理解している。
停戦を巡り盛大な拍手喝采が巻き起こってはいるものの、現在、状況は余り変わっていないように見える。ジェノサイドの始まり当初から、ハマスが武器を放棄し降伏するまで虐殺は終わらないという立場をアメリカとイスラエルは公式に表明しており、それは今も変わらない。
確かに虐殺には待望の一時停止はあるが、ハマスが武装解除を拒否しているのを大義名分に、虐殺を再び激化させるつもりだとトランプ政権は明確に示している。
しかも、それは交渉がそこまで進むと仮定した場合の話だが、既にイスラエルはパレスチナ人を殺害し、約束した援助額を大幅削減するなど、停戦を妨害するためあらゆる手段を講じている。
これら全てに早急に何か重大な変化が起きない限り、イスラエルによるガザでの残虐行為の、この僅かな減少さえ持続するとは期待できない。
(後 略)
記事原文のurl:https://caitlinjohnstone.com.au/2025/10/15/the-trumpanyahu-administration-is-already-sabotaging-the-ceasefire/
予想された通り、イスラエル軍がガザで住民虐殺を再開
櫻井ジャーナル 2025.10.21
1917年11月にアーサー・バルフォアがウォルター・ロスチャイルドへ「ユダヤ人の国」を建設する第一歩と言われる書簡を出して以来、パレスチナでは多くの人が殺されてきた。ドナルド・トランプ米大統領はガザにおける和平合意の第1段階をクリアさせたと誇っているが、この合意で地域に平和が訪れると考える人がいたとするならば、その人はパレスチナ問題に関する基本的な知識がないと言える。
この和平合意とは、イスラエル政府とパレスチナ人との間で2023年春から続く一連の衝突に関するものだ。その年の4月1日にイスラエルの警察官がイスラム世界で第3番目の聖地だというアル・アクサ・モスクの入口でパレスチナ人男性を射殺したところからイスラエル政府の挑発は始まった。4月5日にはイスラエルの警官隊がそのモスクへ突入、ユダヤ教の祭りであるヨム・キプール(贖罪の日/今年は9月24日から25日)の前夜にはイスラエル軍に守られた約400人のユダヤ人が同じモスクを襲撃している。そしてユダヤ教の「仮庵の祭り」(今年は9月29日から10月6日)に合わせ、10月3日にはイスラエル軍に保護されながら832人のイスラエル人が同じモスクへ侵入した。
そして2023年10月7日、ハマス(イスラム抵抗運動)を中心とするパレスチナの武装グループがイスラエルを奇襲攻撃する。この攻撃では約1400名(後に1200名へ訂正)のイスラエル人が死亡したとされ、その責任はハマスにあると宣伝された。
しかし、イスラエルのハーレツ紙によると、イスラエル軍は侵入した武装グループを壊滅させるため、占拠された建物を人質もろとも砲撃、あるいは戦闘ヘリからの攻撃で破壊、殺されたイスラエル人の大半はイスラエル軍によるものだと現地では言われていた。イスラエル軍は自国民を殺害するように命令されていたというのだ。いわゆる「ハンニバル指令」である。ハマスの残虐さを印象付ける作り話も流された。
ガザでは建造物が徹底的に破壊され、多くの遺体は瓦礫の下にあるため、何人が殺されたかは明確でない。医学雑誌「ランセット」は2023年10月7日から24年6月30日までの間にガザで外傷によって死亡した人数は6万4260人と推計、そのうち女性、18歳未満、65歳以上が59.1%だとする論文を発表した。
「ハーバード大学学長およびフェロー」のウェブサイト「データバース」に掲載されたヤコブ・ガルブの報告書では、イスラエル軍とハマスの戦闘が始まる前には約222万7000人だったガザの人口が現在は185万人に減少、つまり37万7000人が行方不明になっているという。状況から考え、行方不明者の大半は死亡している可能性が高いが、死亡者の約4割は子どもであり、女性を含めると約7割に達すると言われている。
襲撃の直後、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、パレスチナ人虐殺を正当化している。聖書の中でユダヤ人と敵だとされている「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を彼は引用、「アマレク人」をイスラエルが敵視しているパレスチナ人に重ねたのだ。
その記述の中で、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神は命じたというわけだ。「アマレク人」を皆殺しにするという宣言だが、このアマレク人をネタニヤフたちはアラブ人やペルシャ人と考えているのだろう。
サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。これこそがガザでイスラエルによって行われていることだと言えるだろう。ネタニヤフによると「われわれは光の民であり、彼らは闇の民」なのである。
ネタニヤフは8月23日、ナイル川からユーフラテス川に至る大イスラエルを創設するという「歴史的かつ精神的な使命」を宣言している。だからこそ、ネタニヤフはイランを攻撃したがっているのだ。そうした行為や計画を支援してきた欧米諸国には帝国主義的な野望がある。
イギリスは1920年から1948年の間パレスチナを委任統治、ユダヤ人の入植を進めた。1920年代に入ってアラブ系住民の入植に対する反発が強まると、イギリス政府はそうした動きを抑え込もうとする。
デイビッド・ロイド・ジョージ政権で植民地大臣に就任したウィンストン・チャーチルはパレスチナへ送り込む警官隊の創設するという案に賛成、アイルランドの独立戦争で投入された「ブラック・アンド・タンズ」のメンバーを採用したが、この組織はIRA(アイルランド共和国軍)を制圧するために設立され、殺人、放火、略奪など残虐さで有名だった。そして1936年から39年にかけてパレスチナ人は蜂起する。
1938年以降、イギリス政府は10万人以上の軍隊をパレスチナに派遣する一方、植民地のインドで警察組織を率いていたチャールズ・テガートをパレスチナへ派遣、収容所を建設する一方、残忍な取り調べ方法を訓練した。イギリス軍はパトロールの際、民間のパレスチナ人を強制的に同行させていたともいう。
委任政府は外出禁止令を出し、文書を検閲、建物を占拠、弁護人を受ける権利を停止する一方、裁判なしで個人を逮捕、投獄、国外追放している。この政策はイスラエル政府の政策につながる。
反乱が終わるまでにアラブ系住民のうち成人男性の10パーセントがイギリス軍によって殺害、負傷、投獄、または追放された。植民地長官だったマルコム・マクドナルドは1939年5月、パレスチナには13の収容所があり、4816人が収容されていると議会で語っている。その結果、パレスチナ社会は荒廃、1948年当時、イスラエルの「建国」を宣言したシオニストの武装組織に対して無防備な状態となっていた。
第2次世界大戦後、パレスチナにはイスラエルなる国が作られ、そのイスラエルがアラブ系住民に対する弾圧を始める。イギリスの代理人として活動し始めたと言えるだろう。
イギリスはアメリカやオーストラリアで先住民を虐殺、自分たちの国を作り上げた。同じことが中東でも展開されている。今回の和平合意でパレスチナに平和が訪れるとは思えない。イスラエル人にしろ欧米諸国の政府にしろ、アラブ系住民をパレスチナから一掃したいのだとしか考えられない。虐殺の原因をハマスにあると主張する人は、パレスチナ人虐殺を容認しているにすぎない。パレスチナの住民は戦闘に巻き込まれていいるのではない。イスラエル軍のターゲットになっているのだ。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。
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