2022年10月10日月曜日

統一教会問題で支離滅裂な岸田首相 

 日刊ゲンダイが、発足1年を迎えた岸田首相について「同じ答弁連呼で乗り切る覚悟?」
 (https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/312537という面白い記事を出しています。言われてみると納得出来る指摘で、以前にもそんな首相がいたような気がします。
 作家・ジャーナリスト青沼陽一郎氏が、「これが実態、『聞く力』は聞き流すだけ、『丁寧な説明』は同じ文言の繰り返し ソフトで理性的なイメージは表面だけ、統一教会問題では支離滅裂な岸田首相」という、かなり長いものの的確なタイトルを付けた記事を出しました。
 記事のテーマは、国民の大多数がこれだけ統一協会の理不尽さ・横暴さに憤激し、弁護士会が政府に「解散命令」を請求するように要求しているにもかかわらず、一向に岸田氏がその方向に動こうとしないことに対するもので、その理由は解散命令についての認識間違えているか、それとも統一教会を解散させる気がないかのいずれかです。
 もしも「解散命令」が布教の禁止までは求めていない(宗教の自由を保障)という認識がなかったのであれば早急に改めるべきだし、解散させる気がないのであれば「聞く力」を持っていないと言うしかありません。
 併せてFRIDAYデジタルの記事を紹介します。岸田政権発足1年目を迎えましたが、首相はいまだに「検討使」に徹しているという批判です。
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これが実態、「聞く力」は聞き流すだけ、「丁寧な説明」は同じ文言の繰り返し
ソフトで理性的なイメージは表面だけ、統一教会問題では支離滅裂な岸田首相
                       青沼 陽一郎 JBpress 2022.10.8
                          (作家・ジャーナリスト)
 信教の自由を保障する観点から宗教法人の法人格を剥奪するという極めて重い対応である解散命令の請求については、判例も踏まえて慎重に判断する必要がある
 これは5日から7日にかけて、衆議院と参議院で行われた代表質問で、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の問題をめぐり、宗教法人法に基づく解散命令を請求すべきとする野党からの相次ぐ質問に、岸田文雄首相がひたすら繰り返した答弁だ。
 これからわかることはふたつ。ひとつは、岸田首相の認識が間違っていること。もうひとつは、統一教会を解散させる気がないことだ。ひょっとすると、統一教会からなんらかの圧力でもかかっているのかも知れない。そう勘繰られても仕方のないような内容だ。

解散命令は宗教団体にとって「死」を意味しない
 宗教法人法に基づく解散命令が出たところで、あくまで宗教法人としての解散であって、岸田首相がいうように法人格が剥奪されるだけのことだ。税制上の優遇などがなくなるだけで、任意の宗教団体としては解散の必要はない。法人として認証される以前の姿に戻るだけだ。そこでは自由に宗教活動が続けられる。信教の自由は保障される
 宗教法人法の第81条にはこうある。
<裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる>
 その第1項第1号。
<法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと
 これを理由に、政府が主体となって解散請求をするべきという声が多い。
 しかし、これはあくまで法人としての解散であって、任意団体としての存続まで規制するものではない。そうすることで、憲法で保障された信教の自由まで踏み込まない仕組みになっている。
 むしろ、法人格が奪われることによって税制上の優遇がなくなり、資金繰りに行き詰まる事態になれば、生き残った任意団体としての統一教会は、いわば地下に潜って献金活動を活発化させ、さらに被害が深刻になる懸念もある。そのことはすでに詳しく書いている。

【参考記事】たとえ「解散命令」が出たところで「統一教会」が消えてなくなるわけではない( https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71753 

実際に解散命令を下された宗教団体
 岸田首相は、「判例も踏まえて慎重に判断する必要がある」とも述べているが、宗教法人法第81条によって、解散命令が出された判例は2件ある。
 そのひとつが、オウム真理教だ。いうまでもなく、地下鉄サリン事件といった未曾有のテロ事件や坂本弁護士一家殺害事件など数々の殺人事件を引き起こした当時の宗教法人だ。宗教というより、テロ組織、殺人集団と呼ぶにふさわしい。
 だが、統一教会が化学兵器を製造、使用したこともなく、まして組織的に殺人を犯しているわけでもないので、これは比べようがない。

 そして、もうひとつが「明覚寺」のケースだ。こちらが問題となったのは「霊視商法」だった。
 もともとは「本覚寺」という宗教法人を1987年に茨城県で設立したのがはじまり。無料相談などで人を集めては「霊視」を行い、「水子の霊が憑いている」「先祖の霊の祟りだ」など脅し、「このままでは不幸になる」「子どもが自殺する」「夫が交通事故に遭う」などと言っては、供養の見返りに高額を請求していた。
 これが首都圏の消費者センターに多数の苦情が寄せられることになり、損害賠償請求訴訟が相次ぐ。すると、同じグループが和歌山県に「明覚寺」という宗教法人を設立して、こちらでも同様の活動を繰り広げていく。
 1995年10月に愛知県警が名古屋市にあった明覚寺のグループの「満願寺」の住職を逮捕。教団トップや幹部も詐欺の疑いで摘発され、実刑判決を受けた。そこから1999年に文化庁によって和歌山地方裁判所に明覚寺の解散請求が行われ、2002年に解散命令が出ている。

「聞く力」が金看板なのに世論調査で過半数の「国葬反対」の声はスルー
 「霊視商法」と「霊感商法」の違いはあっても、やっていることは統一教会と酷似している。
 相次ぐ民事訴訟で違法性が指摘されたことは言うに及ばず、2009年には不安を煽って印鑑を売りつけた、いわゆる「霊感商法」で統一教会の信者が刑事訴追され、有罪判決を受けている。それと同時に、教団の組織的関与がはじめて認められた。これをきっかけに教団が「コンプライアンス宣言」を行ったことは、昨今の記者会見で統一教会が強調しているところだ。
 だが、その後も被害が続出していることは、政府の「旧統一教会問題関係省庁連絡会議」が、先月から設けた無料電話相談窓口の相談実績から明らかになっている。

 教団のトップにまで司直の手が伸びていないとはいえ、この判例をもってしても「慎重に判断する必要がある」という岸田首相の真意がわからない。やる気がないのか、あるいは「信教の自由」をいいわけに、統一教会に気兼ねしているのか岸田首相の国会答弁には根拠がない
 岸田首相は、今国会冒頭の所信表明演説で、「旧統一教会との関係については、国民の皆様の声を正面から受け止め、説明責任を果たしながら、信頼回復のために、各般の取組を進めてまいります」と言い、「国民の皆様からの厳しい声にも、真摯に、謙虚に、丁寧に向き合っていくことをお誓いいたします。『厳しい意見を聞く』姿勢にこそ、政治家岸田文雄の原点があるとの初心を、改めて肝に銘じながら、内閣総理大臣の職責を果たすべく、全力で取り組んでまいります」とも語った。
 かねてから「話を聞く」と「丁寧な説明」は岸田首相の基本姿勢であり、常套句として繰り返されてきた言葉だ。
 だが、「話を聞く」のはいいが、そこから先はなにもしない。それでいて、「国葬」がそうであったように「反対」の声は聞けども、無視して強行する。
 「丁寧な説明」も、冒頭の答弁のように、同じ文言を丁寧に繰り返すだけ。それは、あとから統一教会との関係を指摘されて渋々認める山際大志郎経済再生担当大臣の任命責任を問われても、安倍晋三元首相と統一教会の関係の調査についても、同じ文脈を読み上げて、取り合わないことを表明しただけだった。
 もっとも、野党も同じ内容の質問を繰り返すところに難点はあるが、そうであるとしても、言葉を変えてわかりやすく力説するところに「丁寧な説明」の本質があるはずだ。丁寧に同じことを繰り返すだけなら、それこそ「禅問答」もいいところだ。説明責任にもなっていない。
 そこで、どこか統一教会を彷彿とさせる詐術にはまった気分になるのは、私だけだろうか。

もしかして、統一教会を庇っているのか…
 それよりも、「信教の自由を保障する観点から宗教法人の法人格を剥奪する」ことが躊躇われるのなら、「社会的に問題が指摘されている」ことを理由に、内閣や自民党が教団と断絶するとしたことの根拠はどこにあるのか。「社会的に問題が指摘されている」ことと「法令に違反して、著しく公共の福祉を害する」こととでは、どこに違いがあるのか。「社会的に問題」とは、「法令に違反」すること、「公共の福祉を害する」ことではないのか
 むしろ、宗教法人として存立していながら、政府や政治家が信者であることを理由に個人を遠ざける行為こそ、「信教の自由」を侵害する。「法令に違反して、著しく公共の福祉を害する」ことをしていないのなら、関係を断つ必要もない
 「信教の自由を保障する観点」で宗教法人である統一教会を守りながら、他方で「法令に違反して、著しく公共の福祉を害する」ことになっていない宗教法人を、「社会的に問題が指摘されている」として遠ざけることにこそ、最大の齟齬がある。結果的に、社会的非難をかわしつつ統一教会を庇っていることになる。
 そのことに岸田首相は気付いていない。いや、気付いていていても意図的にそうしているだけかも知れない。それこそ最大の欺罔(きもう)だ。


参加者も唖然…国葬翌日非公開セミナーで岸田首相が語ったこと
                    FRIDAYデジタル 2022年10月07日
国葬翌日の9月28日、千代田区のホテルで開かれた「政治セミナー」に登壇した岸田首相。詰めかけた約80人の聴衆を前に語った「まったく具体的ではない」スピーチ内容とは・・・
   (中 略)
何を聞かれても具体的な説明を避け、「検討します」としか言わないことから、「検討使(けんとうし)」とも揶揄(やゆ)される岸田首相。その検討使ぶりは、安倍晋三元首相の国葬直後に開かれた会員限定の「政治セミナー」でも、遺憾なく発揮されていた。
国葬翌日の9月28日、千代田区内のホテルで開かれたセミナーは、午前11時半にスタート。岸田首相は、開始から約30分が過ぎた12時頃に会場に現れた。
   (中 略)
当然、参加者の興味が向けられたのは、国葬への賛否に対し岸田首相がどう考えているか。そして、旧統一教会と自民党との関係について、である。
だが、SPに守られながら約20分間にわたり登壇した岸田首相の口からは、ついに具体的な内容は出てこなかった。以下は、岸田首相の実際のスピーチ内容だ。
「えー、みなさんこんにちは。内閣総理大臣の岸田文雄です。昨日、安倍元総理の国葬儀を行わせていただきました。皆さんのご協力をいただいて、国内外から寄せられた多くの弔意に丁寧にお答えすることができた、静かに安倍元総理をお送りすることができた、と思っております」
冒頭、そう挨拶をした岸田首相は、続けて、コロナ対策や物価対策について語り始めた。しかし、「さまざまな取り組みを進めている」と言うのみで、今後の政策についての言及はなかった。
そして、旧統一教会の問題について自ら語ることはなく、質疑応答タイムに入る。
「(国葬について)検証するとおっしゃっていましたけれども、どういうところを検証されるのですか」
と司会者から問われると、
「国葬儀そのものについて、改めて、法的根拠も含めて、えー、整理をし説明したわけですが、そういったことについても、今後の議論に資するために改めてどういった根拠で、どういった思いで今回国葬儀を行ったか、これを記録として残しておくことは大切だと思っております。どうであったか、ということを記録として残すことが今後の議論に進むことになるんではないかと思っています」
と回答。続けて、旧統一教会との問題について、
「(旧統一教会との関係が明らかになった)某閣僚を更迭するとか、あるいは統一教会で当選したことが明らかになっている人について離党勧告するとか。国民に見える形で示さないと、なかなか支持率は上向かないと思います」
と突っ込んだ質問を浴びるも、これに対しても岸田首相はこう明言を避けた。
「いろんなご意見があります。それはしっかり受け止め、そしてどうするのか考えなきゃいけないと思います。与野党問わずいろんな関係があったということ、これは事実でありますので、これをしっかりと報告をし、説明をするところから始めてもらいたい。そして何よりも大事なのは、このあと『関係をしっかりと絶つ』ということ。
これははっきり申し上げているんで、それを実行することが何よりも大事だと思います。そして、それをどういった形で示すのか、今後、社会的に問題を起こしている団体との関係をどう絶つのか、これをしっかりと考えていきたい。(関係を)断つわけですが、それをどう具体的に示すのか、これが問われているのだと思います」
講演の終盤には、「最後に決意を一つ」と水を向けられた岸田首相。それでも、最後まで発言は煮え切らなかった。
「結果を一つ一つ出すことが大事だと思っています。ありがとうございました」
スピーチを聞いた参加者は、こう嘆息する。
(前 略)これだけ自民党と旧統一教会のズブズブな関係が明らかになっているわけですから、自民党総裁の岸田さんからはもっと具体的な見解を聞きたかった。(後 略)
今後も「検討使」を続ける限り、岸田内閣の支持率が上向くことはなさそうだ。