2024年5月15日水曜日

~ 解散総選挙後の新連立の策謀と緊急事態条項改憲の危機(世に倦む日々)

 世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました。
 早ければ6月末にもあり得る総選挙で、自民党は大幅に議席を失うものの、維新、国民教育()無所属それに自民を合わせると計284と過半数(233)を大幅に上回ることから自民党政権は安泰となるので、直ちに現行憲法に「緊急事態条項」を加える「お試し改憲」が実現するとしています。
 ここで世に倦む日々氏は、「維新・国民のみならず自民・公明が一緒にオーソライズした緊急事態条項 改憲は、ナチスの全権委任法なのである。ゆえに、憲法に9条があろうが人権規定があろうが、それらはお構いなしで無視される」と述べています。
 メディアはこれまで緊急事態条項改憲の危険性には決して触れないようにしてきました。
しかしもしもそれが憲法に盛り込まれれば、「9条」も歯止めにはならないことが現実化します。「緊急事態条項は9条改憲よりも危険」といわれる所以です。
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       13.8.3)ワイマール憲法下でなぜナチス独裁が実現したのか
 記事の前半では、このところの日本の対米従属深化の具合が、6年前に提示された「第4次アーミテージ・レポート」で述べられたとおりであることを明らかにしています。
 同レポートは数十年前から 一部の人たちにとっては「至高の教義」になっていましたが、今では自衛隊の在り方の事実上の指針になっているというわけです。
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戦争二法が無風で成立 - 解散総選挙後の新連立の策謀と緊急事態条項改憲の危機
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連休明けの 5/10、「統合作戦司令部」を新設する法改正案が参院本会議で可決され、国会で成立した。マスコミはこの事実にほとんど触れず、ろくに報道していない。6年前、この組織の必要性を中谷元が煩く喚き始めた当初は、「統合作戦室」という名称で呼んでいた。中谷元や森本敏の発言と扇動を聞いて、咄嗟に意味を直観したのは、この組織が中国との戦争のために新設する戦時大本営であるという真相だった。そこで、『大本営の設置 -「統合作戦室」の出所は第4次アーミテージ・レポート』という記事を書いてブログに上げた。時宜を得た有意味な分析と提起であり、多少の反響を呼ぶだろうと内心期待したが、全く注目されず、誰の関心も惹かなかった。世論の喚起に寸毫も役立たなかった。6年間、ずっとそのままの状態で、今回、国会に上程されても議論にならず、無風で国会を通過している

脱力の気分になるし、正直、この現実が理解できない。左翼はすっかり変質してしまった。誰もが周知の歴史の事実だが、大本営とは「戦時または事変において天皇の隷下に設置された第2次大戦前の最高統帥機関」のことである。ネットで検索するとこの語義が出力・表示される。戦争のときに臨時に設置される軍事機関であり、戦争が終わると解散となる。平時は、陸軍参謀本部と海軍軍令部が独立して併存した。現在の自衛隊の組織には、陸海空の幕僚監部を統合し調整する機関として統合幕僚監部が編成され運営されている。米軍の統合参謀本部に該当する。だが、これでは不足だという理由で、新しい組織の創設となった。東京新聞の記事では「自衛隊と米軍の指揮・統制枠組みをそろえ、共同対処力を高める目的」だと解説されている。上のネットの説明の「天皇」を「アメリカ」に変えれば、すべて了解できよう

6年前に指摘したとおり、もともと、この「統合司令部」は18年10月の第4次アーミテージレポートでアメリカから要求された政策課題であり、そこには次の6項目が並んでいた。(1)日米による基地共同運用。(2)日米共同統合任務部隊の創設、(3)自衛隊の統合司令部の創設、(4)共同作戦計画の策定、(5)防衛装備品の共同開発、(6)日本のファイブ・アイズの諜報ネットワークへの組み込み。つまり、アメリカの指示と差配で自衛隊内に統合司令部を新設するのであり、出来上がった新司令部で指揮命令するのも、実際は米軍だということだ。それが本質だ。この問題については、今年4月の日米首脳会談後のバイデンエマニュエルの発言、さらにれを国会で質疑し志位和夫の追及と赤旗報道、すべての論点と懸念が整理され要約されている。中国との戦争において、作戦の指揮命令は米軍に一元化されるのだ。

統合司令部の新設と自衛隊の米軍指揮下入りは、志位和夫が批判するとおり「主権の差し出し」だ。だが、見落としてはいけないのは、それが大本営の設置を意味し、戦争開始の刻限が近づいている事実に他ならない。その点を看破して警鐘を鳴らした議論は一人も見ていない。大きな戦争を本当に始めるから、統帥機関を一元化しなければならないのであり、組織を攻撃モードに改編する必要があるのである。従来の、専守防衛体制の通常の自衛隊組織では不具合なのだ。米軍司令部が自衛隊のリソースを自由自在に、臨機応変に使うのであり、南シナ海人工島への水陸機動団の突撃も、トマホークの先制攻撃も、その標的を北京中南海に当てて発射ボタンを押すことも、米軍司令部が決定して命令し、統合司令部を経由して形式的合法性を担保しての作戦となる。当然、民間の施設(空港・港湾)や船舶等の軍事利用も米軍の都合で統制する

特定秘密保護法の民間拡大版であるセキュリティ・クリアランス法も、 5/10 の参院本会議で可決・成立した。立憲民主が賛成した。何度かマスコミ(報道1930、プライムニュース)で説明があったが、高市早苗が出演し、経済安全保障のキーとしてこの法案が必要だという肯定と翼賛のメッセージに終始し、番組内で誰かが抵抗し警告を発したという記憶はない。2013年の秘密保護法のときは、あれほど、TBSもテレ朝も反対の論陣を張ったのに、それが嘘のように、今回はマスコミによって無害化と当然化の言説が撒かれ、粛々とエンドース(⇒裏書保証)された。政府やマスコミが「経済安全保障法制」と呼んでいる実体は、戦前に置き直せば「国家総動員法」に他ならない。一般の民間人を日米同盟による対中戦争に協力させ、軍事統制に服属させ、逃避や違反を禁止し処罰する法制度だ。明らかな憲法違反であり、日弁連も反対意見書を提出している。

重大な戦争法制二法が 5/10 に国会成立した。私は、現在賑々しく行われている「政治改革」の政局なるものは、戦争法制を国民の目から隠蔽するためのカムフラージュだと推察する。連座制がどうとか、政策活動費がどうとか、永田町のプロレス興行が毎夜の報道番組を埋めているけれど、これらは、実は与野党ぐるみで、与野党とマスコミが結託して、戦争法制の真実から国民の視線を遮断する意図で演出している、浮薄で狡猾な政治ショーに思えてならない、表面上、現政局は、政策活動費とか、パーティー券とか、連座制とか、企業団体献金とか、いわゆる「政治改革」がテーマとなり、自民と立憲民主との綱引きが政治ドラマの核心のような絵柄になっている。6月会期末と内閣不信任案が焦点となり、自民の党内情勢と解散総選挙に衆目が集められている。だが、おそらく、裏では別の政治謀略が進行しているはずだ。具体的には、新連立の構想である

解散総選挙で自民が過半数を割った場合の、新しい多数派与党の構築計画である。すなわち、自民、公明、維新、国民民主による新連立であり、自公を超えたワイドな与党勢力の結集だ。テレビの表では、鈴木馨祐や牧原秀樹のような二流の大根役者を出してお茶濁しし、国民を騙す時間潰しをしながら、裏では、新与党政権発足の秘策に向けて、幹部たちが夜な夜な料亭謀議を繰り返しているのではないか。日刊ゲンダイが 5/5 に報じた議席予想では、自公は81減となって過半数を大きく割り込む試算になっている。が、そこに維新と国民と教育を加え、無所属を合わせると、計284となり、過半数(233)を大幅に上回る勢力が構成される。自民政権は安泰となる。もともと維新と国民民主は、自民との政策の違いは何もない。安保外交も経済政策も同じで、維新の方が自民以上に過激なタカ派であり、ネオリベ度が強烈で、毒々しい安倍色が濃厚という程度の差異しかない。

6月解散となった場合、各野党は、形だけのテンポラリーな政策作文を並べ、自民の裏金体質を叩き、選挙の争点に据え、自らの獲得議席を一つでも増やすべく選挙戦を演じるだろう。が、開票され結果が出た後は、公約や政見などコロッと忘れ、新連立へ向けて一瞬で変身するに違いない。そのときの結集スローガンの要諦は、おそらく憲法改正であり、改憲のための新与党政権という触れ込みと打ち上げになると想像する。改憲を大義名分に押し出すだろう。今、水面下で暗躍と蠢動が始まっていて、菅義偉が馬場伸幸と密議を重ね、麻生太郎が玉木雄一郎と接触しているはずだ。従来は、(a)自民が家法の安倍改憲(自衛隊明記)で正面突破を図り、(b)維新・国民が緊急事態条項の搦手攻略を模索し、(a)と(b)とは一致してなかった。公明は一歩引いて慎重だった。(b)には、9条本丸を攻めると国民投票で負ける心配があるので、搦手に回り、国民の反発の少ない「お試し改憲」を探る動機があった。

仮に新連立となった場合、全与党が改憲案を統一させるだろう。と言うよりも、自民・公明共に、すでに 3/2 に緊急事態条項案に積極姿勢を示し、憲法審査会でこの点に論議を集中させ、改正条項案の表現を詰める戦略で動いていた。自民も公明も、緊急事態条項で改憲を実現する思惑で一致している。したがって、新連立が組み上がるとき、キーとなる改憲の内容や方法で揉める図はない。緊急事態条項改憲で旗を立て、目標達成に向けて邁進すると考えられる。日刊ゲンダイの予想では、立憲民主と共産とれいわと社民の議席数が計180となっていて、かろうじて3分の1(158)を上回っている。この結果になれば、憲法審査会での発議を阻止できる公算となる。しかし、果たして、衆院選の後、立憲民主が改憲勢力に加わらないかどうか、立場を変えて有権者を裏切らないかどうか、この点は予断を許さない。立憲民主の中には改憲派が多く、各個人の思想信条で数えれば、改憲議員の方が多数派となる。

また、立憲と国民を割りたくない反共の芳野連合は、国民が新連立に加わるなら、立憲も大連立に踏み切ったらどうかと背中を押すだろうし、泉立憲が応じた際の大連立の共通スローガンも憲法改正になるだろう。当然、そのときは立憲は再び分裂騒動の道を歩む展開となる。次の総選挙は、選挙期間中はずっと「政治改革」が争点となり、政治資金規正法や公職選挙法が熱く議論されるけれど、投票箱の蓋を開けた途端、一気に新連立と改憲の政局にスピンし、「政治改革」の具体論は消し飛んで雲散霧消するのではあるまいか。私はそう悲観視している。最近のテレビでの田崎史郎や後藤謙次や星浩の口ぶりからも、裏で新連立の汚い工作が進行している状況が臭う。何と言っても、今は、アメリカが設定して予告した「台湾有事」の2-3年前の時点であり、中華人民共和国を相手に国家存亡の戦争を始める間際なのだ。アメリカからすれば、軍事だけでなく政治の工程表も、日本に予定どおりの進捗を要求する。

2018年に第4次アーミテージ・レポートが出て、そこから2年後の2020年に第5次アーミテージレポートが出た。概要が上がっているので読者の皆様は再確認をお願いしたい。全く(呆れて溜息が出るほど)この「提言」どおりに、正確に日本の重要政策は決定されている。寸分の誤差もなく方向づけられている。忠実に一つ一つ政府は実行している。自民の選挙公約だの、首相の施政方針だの、そんなものは何の意味もない空文のフェイクペーパーなのだ。この「提言」だけが、この国の神聖な基本指針なのである。アーミテージの「提言」に対しては、立憲民主も直立不動で恭順するイエスマンであり、だから統合司令部の設置にも、セキュリティ・クリアランス法案にも、異議なく忠誠を示して賛成した。恐ろしい戦争法制に翼賛し加担した。その第5次の報告書から4年が経過しようとしている。そろそろ第6次の新版が発表されていい頃だ。

第6次はどうなるだろう。アメリカにとっての対日中期計画の要綱だが、2-3年先に台湾有事を控えたアメリカが待望するのは、日本の核武装徴兵制の二つだろう。直截に端的に大胆にその要求を書き込むのではないか。それを公表した後、例によって、報道1930とプライムニュースで扇動と翼賛のプロパガンダがシャワーされ、世論調査で賛成多数になるアリバイ工作が施され、承認の既成事実化が遂行されると想像する。二つを制定する法的前提として、改憲(緊急事態条項)が断行されるのではないか。数年前に維新が緊急事態条項を言い出したときは、「お試し改憲」の目的と性格が強く、姑息な搦手改憲策の印象が強かった。だが、現時点ではそうではない。維新・国民のみならず自民・公明が一緒にオーソライズした緊急事態条項改憲は、ナチス全権委任法なのである。ゆえに、憲法に9条があろうが人権規定があろうが、それらはお構いなしで無視される。

そうなったとき、核武装と徴兵制は閣議決定で簡単に決まるだろう。(CIAの手先要員たる)TBS報道1930が、それを容認し支持するプロパガンダの拡散に精を出し、世論調査の「賛成多数」に繋げる工作をすることは論を俟たない。核武装と徴兵制を、統合司令部や経済安全保障法と同じく、平和と安全の確保のための措置だと詭弁で正当化するだろう

平和希求し広島訪れる世界の若者たち 「西側の正義は偽善だった」 平和公園で原爆と戦争展

 長周新聞に掲題の記事が載りました。
 同紙が後援している「原爆展全国キャラバン隊」は、4月27、28日、広島市中区の平和公園で街頭「原爆と戦争展」を開きました。
 ウクライナ戦争やイスラエルによるガザ無差別攻撃など世界的な戦争情勢のなかで、戦争を止め、平和を求める問題意識をもって世界各国から多くの人々が広島に足を運んでいるということです。

 展示に足を止める外国人参観者は、原爆を投下された広島・長崎市民の視点からの写真や証言、子どもの詩などを目にし、衝撃を受けています。

 現場で渡されたアンケート用紙には、びっしりと数十行に渡って感想が記されていました。この記事はそのアンケート回答文の紹介がメインになっています。
 そこにはそれぞれが受けた感想が熱く記されていて、それを読むとその真摯さに、逆に深く感動します。是非ご一読ください。
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平和希求し広島訪れる世界の若者たち 第2次大戦と現代の戦争を重ね論議 「西側の正義は偽善だった」 平和公園で原爆と戦争展
                          長周新聞 2024年5月8日



広島平和公園でおこなわれた原爆と戦争展を真剣に参観する外国人の若者たち(4月27日、広島市)



 原爆展全国キャラバン隊(本紙後援)は4月27、28日、広島市中区の平和公園で街頭「原爆と戦争展」をおこなった。ウクライナ戦争やイスラエルによるガザへの無差別攻撃など世界的な戦争情勢のなかで、戦争を止め、平和を求める問題意識をもって世界各国から多くの人々が広島に足を運んでいる。展示に足を止める外国人参観者は、原爆を投げつけられた広島・長崎市民の視点からの写真や証言、子どもの詩などを目にし、衝撃を受けている。とくに若い世代の外国人参観者は日本がどのようにして戦争に進み、戦後日本を占領したアメリカがどのように統治・支配し現在に至るのかについても強い関心を示していた。そして、過去の戦争でも現代でも、戦争を煽動する一部の政治家や支配層が存在し、彼らの政治的・経済的利権獲得の思惑のために何の罪もない市民が犠牲になることへの憤りを口々に語っている。

虐殺容認する政治への怒りを共有



展示に多くの人が集まり、順番を待つ列ができた(4月27日、広島市平和公園)




 広島平和公園の原爆の子の像横でおこなわれた街頭展示には、多くの外国人観光客が関心を示し、パネルのスタート地点には順番待ちの列ができた。日本全国の人々の戦地での体験、全国空襲、沖縄戦、広島・長崎の原爆など、第二次世界大戦前から日本の敗戦、戦後から現代まで、体験者の証言を中心に時系列を追って構成された展示に、多くの人々が真剣に見入った。
 とくに欧米諸国では、戦勝国アメリカ側の「原爆投下は戦争を早く終わらせるために必要だった」という政治的通説のもと、実際にそこに暮らしていた人々が原爆によってどのような被害を受け、どんな思いで生きてきたかを知る機会はないという。そのため「広島を訪れて本当のことを知りたい」との思いをもって海外から来る人が多い。参観者は、体験者の証言をベースにした「第二次大戦の真実」パネルに衝撃を受け、「もっとも説得力がある資料だ」「直接証言を聞くのと同じくらい貴重」などの反応が目立った。
 展示を見たイギリス人の女性は、「ヨーロッパでは、原爆以外にこれほど日本全国で爆撃があったことは教えられてこなかった」と驚いていた。女性は東京都に約一カ月間滞在したことがあったが、都内で東京大空襲の犠牲者を弔う慰霊碑などをまったく目にする機会がなく、「知っていればこの目で見たかった」と話していた。原爆だけではなく、全国空襲や沖縄戦、東京大空襲についても詳しく展示されていることに触れ、「東京では、米軍が何度も何度も空襲をくり返し、人口密集地を狙って25万人もの人が犠牲になった。一方で皇居や三菱、新聞社などは爆撃を受けなかったということを知り、完全に日本を戦後支配するための戦略的な攻撃だったのだとわかった」と話した。また、日本の現在の軍拡の動きについても言及し、「日本政府が軍備増強のためにどんどんお金をつぎ込んでいることは私も知っている。とても心配だ。これらはすべてアメリカの影響下でおこなわれていることは明らかであり、第二次世界大戦の終戦から今までずっとアメリカと日本の関係は変わっていないということを示している。展示のなかでも、戦後のアメリカの占領政策について詳しく書いてあったことがとくによかった」と感想をのべた。
 また、「今日、原爆資料館にも行ってきたが、私はこの街頭展示の方が良い内容だと思う。大きな違いは、資料館のような“報告書”ではなく、当事者の体験や苦しみを知ることができる点だ。西側の視点とはまったく異なるとても良い展示だ」とのべた。そして現在の世界的な戦争情勢について「戦争は多くの場合、経済的利益のために起きるものだ。今のガザ戦争も、イスラム教とユダヤの宗教対立のように描かれるが、現実はまさに金のための戦争だと思う。だからアメリカ政府はイスラエルへの軍事支援を絶対にやめようとしない」と指摘していた。
 ドイツ人の友人数人と一緒に参観したドイツ在住の日本人男性は、「世界中の人たちが日本の原爆の被害を学ぶためにこれほど真剣に参観してくれているのを見て嬉しく思う。今、世界各国の政府の戦争に対する態度が問われている。ドイツ政府は今のイスラエルによるガザへの攻撃を支持している」と語った。
 明らかな民間人の虐殺をおこなっているイスラエルに対して、ドイツ国民のなかでは批判の声が広まっているにもかかわらず、ドイツ政府がイスラエルへの軍事支援を続けていることについて、「ドイツでは、第二次世界大戦中にユダヤ人に対しておこなった残虐行為の反省から、イスラエルに対して何もいえない関係性がある。ナチスが600万人のユダヤ人を殺し、戦後ドイツは毎年多額の賠償金を支払いながら罪を償ってきた。賠償はもう終わっているが、それでもいまだにドイツ政府はイスラエルに対して頭が上がらない」と説明した。
 また、「国民が声を上げにくいのは、東西冷戦の影響もあると思う。ベルリンの壁崩壊以後、ドイツ国内では西側の“自由圏”が政治の主導権を握り、アメリカ色が強い。今、ドイツ含め欧米諸国がアメリカにならって“イスラエルを助けろ”といっているなかで、イスラエル支援に反対の声を上げようものなら“お前は東側か?”というレッテルが張られるのではないかという無言の圧力もあるのではないかと思う」と指摘した。それでも国内では多くの人々がイスラエルによるガザ市民への無差別爆撃に対して怒りの声を上げていることを語り、「イスラエルは病院やモスクなどへの攻撃をくり返し、ガザでは三万人以上もの人々が犠牲になっている。ドイツ政府はイスラエル政府に頭が上がらない関係性であることもみな知っているので、“おかしい”という思いがありながらも声を上げにくい部分もあると思う。それでもイスラエルが民間人を狙っていることは明らかで、世界中から非難されるべきだ」と話していた。

 20代のドイツ人女性は、イスラエルによるガザへの無差別攻撃が続いていることについて、アンケートに「私は戦争継続を決断した政治家たちに大きな怒りを抱いている。なぜ人々が国籍や宗教の縛りであれほど強く同一視する必要があるのか理解ができない。そうした視点を持つおかげで、本来は分離ではなく最終的には団結すべきなのに、そのことに気づかず、暴力を正当化することになる。人間として、私たちは戦争を止めなければならない。これまでに犯された過ちをくり返し続けるのではなく、異なる未来を創造するために、できることは何でもやる必要がある」と思いを綴った。
市民の視点は国籍超える 戦争させないために
 ゴールデンウィークということもあり、日本人の親子連れや若い世代の真剣な参観も目立った。
 東京都から来た20代の男性は、「自分がいかに無知だったかを気づかされた展示だった。私自身、両親や祖父母から戦争のことは人並み以上に聞かされてきたと思う。だが、日本側の視点から“やられた”という被害の部分だけ見ていてはわからない戦争の中身やその裏側の出来事があると感じた。とくに、戦後日本を完全に占領するためにアメリカは戦争になる前から計画的に日本を追い込み、先に手を出させたという記事を読み、なるほどと繋がる部分があった」と話した。また、「先日、オッペンハイマーの映画を観た。原爆を開発した科学者側の視点で、その部分だけにフォーカスした内容だったが、アメリカにはアメリカの戦略や事情があったと知った。過去に留学していたときに、友人に“原爆についてどう思うか”と聞くと、“あれは絶対に必要だった”といわれてすごく悔しかったことを思い出した。とはいえ、小さい頃からアメリカ側の観点から歴史を教わればそういう思考になるのは仕方ないことかもしれない。だが、今こうして海外の人たちが真剣に展示を見てくれていることが嬉しい。日本人である私も含め、戦争について考えるうえで、自国以外の戦争の歴史や観点を学ぶことはとても大切なことだと思う」と話していた。
 1時間以上かけて展示を読み込んだ20代の女性は、アンケートに「広島以外では観ることができない戦争のリアルを知ることができた。とても貴重な学びを得ることができた。アメリカにも日本政府にも偏らないこのような展示こそ大切だと思う」と記した。

「表面上“勝者”でも人道的敗者だ」 外国人参観者のアンケートより

        【写真説明】参観後にアンケートと記入する外国人の若者たち(広島平和公園)
 外国人参観者は参観後のアンケートに、展示に対する感想や意見、そして現在起きている戦争や紛争、民間人に対する武力行使へ強い憤りを記している。とくに若い世代が真剣に戦争について考えており、アメリカの占領政策や戦後の日本国民に対する抑圧、天皇や政治家の対応など、戦後から現代に繋がる歴史に強い関心を示している。以下、内容を紹介する。

 ▼興味深い。広島の人々に対しておこなわれた出来事の結果に光を当て、広めることを促進させるものだ。アメリカの占領中、そしてその後も、アメリカが日本に残した政治的、経済的影響の下で多くの声が沈黙させられてきた。また、都市への爆撃は戦争を終わらせるために必要だったわけではなく、アメリカ帝国主義を日本に広めるためにもっとも有利な条件で戦争を終わらせるために必要だった。この展示があるおかげで、かつて国際社会に起きた大惨事について公平な情報を得ることができる市民への残虐行為は誰であっても非難されるべきだ。国際社会において西側諸国は“偽善者”だ。ウクライナ市民への攻撃には全会一致で非難したにもかかわらず、イスラエルが犯したパレスチナへの攻撃については正当化している。またその西側主要国の主張は、米国政府に依存した一辺倒なものだ。(イタリア22歳男性・学生

 ▼第二次大戦の終結と原爆投下に対する日本人の経験や考えを初めて知ることができた。私は今まで、アメリカの視点からの見解や分析は知っていたが、それらはすべて地政学的、歴史的観点からおこなわれたものであり、民間人が経験した恐怖についてはほとんど語られていなかった。この展示は、目撃者から直接証言を聞くのと同じくらい貴重で、誠実なものだ。この時代だからこそ、真の日本人の苦しみと絶望を伝えてくれたこの展示に感謝する。帝国主義とは、より多くの権力、より多くの領土、より多くの金を国(国民)が求めるよう煽動するものだと思う。20世紀に起きた残酷な戦争からでさえ、人類はその教訓を学んでいない。そしていまだに国際社会は、市民が攻撃の標的となることに“合意”している。現代の戦争に対して、ただ市民を保護するためだけに戦争を止めるのではなく、全個人がウクライナやパレスチナの人々の助けとなるために考えなければならない。そして、誰も彼らの人生や生活に踏み込むべきでない。また、人々はパレスチナが国家として認められるようもっと勉強する必要がある。(フランス・22歳女性・学生

 ▼(この展示は)食べやすくするために“砂糖でコーティング”されていない生モノのようだ。感情的にならずにすべて情報を読むのは難しいが、それでもここにある“真実”を提供することは重要なことだ。世界中で起きている戦争や紛争の大きな問題は、ごく少数の人々が権力を手に入れ、維持しようとすることだ。まるでかつて戦争の裏側で天皇が日本の国民に対しておこなったことと同じように。(オーストラリア・40歳男性・ソフトウェアエンジニア

 ▼自分の無知を痛感する展示だった。これまで見たことのない写真や生存者の生々しい体験談を見て、戦争と原爆がもたらした痛みを少しでも感じ取ることができた。どんな理由があっても戦争はおこなうべきではない。結局、罪のない人々が傷つくことになる。そして彼らの死は次の世代に苦しみを残す。第一次世界大戦のドイツ軍兵士の言葉を引用する。「ドイツの降伏後、指導者たちはただ座って話し合った。なぜ彼らは最初からそれをしなかったんだ」(ドイツ・24歳男性・会社員

 ▼啓発的な展示だ。また同時に辛すぎた。人々に対する戦争の暴力を目にし、とても辛かった。戦争の壊滅的影響と全世界共通の平和の尊さを忘れないためにも、この展示は不可欠だ。私はあらゆる形での暴力を非難する。それが戦争であればなおさらだ。また、そこに政治的、経済的目的があることを無視してはならない。その影響を受けた民間人、子どもたち、すべての人々のことを思うと、今世界で起きている戦争が早く終わり、平和な生活を送ることができるようになってほしいと思う。(アメリカ・30歳男性

 ▼アメリカがこれほど日本に対して残虐で暴力的であったということを私は知らなかった。この展示は非常に示唆に富んでいる。また、日本人犠牲者のすべての写真や体験談を読むことはとても辛かった。世界で続いている戦争や紛争は平和的に解決されるべきだ。政府や一部の卑劣な人々の利益のために無実の人々が犠牲になるべきではない。誰であろうと絶対に戦争に反対しているはずだと思いたいが……。(ドイツ・26歳男性





びっしりと感想が記された原爆と戦争展のアンケート用紙



 ▼言葉を失った。いいようのない悲しさと寂しさを感じる。なぜ広島で起きたような残虐行為が今も世界各地で続いているのか、私には理解できない。過去の傷を癒やし、より平和な未来を築くことは、教育と過去から学ぶことによってのみ実現できると信じている。この展示に感謝している。写真を見たり証言を読むことは苦痛だったが、現実を直視し、戦争がいかに恐ろしいことか、そして戦争はいまだに終わりがないという現状を理解するために必要なことだ。(ドイツ・26歳女性・セラピスト


 ▼ドイツでは、ドイツが犯した戦争犯罪について多くのことを学んできた。広島でも、何十万人もの人々がこの悲劇に耐えなければならなかったという話を読むと気分が悪くなる。このように戦略的な戦争作戦によって罪のない人々の命が破壊されるということは例外ではなく、忘れてはならない。展示をおこない、平和を呼びかけてくれてありがとう。私たちは、戦争にはどんな口実も許されないということを学ばなければならない。金に支配された権力者のために人々が殺されるのを許してはならない。(ドイツ・23歳女性・農家

 ▼すべてを文書化してくれたことに感謝する。この展示は、私がこれまで読んできた資料のなかでもっとも説得力のあるものの一つだ。体験者の記事や証言、被害者の写真は、この都市が耐えなければならなかった残虐行為をよく伝えている。79年前に私はここにいなかったが、まるで私がそのときにいたかのように感じさせる力があった。ぜひこれからも新しい内容を記録し、資料を追加し続けてほしい。すべての戦争は間違っている。表面上の「勝者」が誰であろうとも、地球上で戦争をおこなっている時点で人道的な敗者であることは間違いない。(ベルギー・34歳男性・IT企業従業員

 ▼展示の序盤の内容が非常に興味深かった。1930年から1939年にかけての時期に日本で起きた出来事が、今日のロシアの状況と酷似していると感じた。世界の国々の市民は、もしも自国政府が軍事政権の導入や戦争を始めようとするなら、それを止めるために立ち上がらないといけない。そうしないとまた日本や広島で起きた悲劇がくり返されてしまう。(ロシア・37歳男性
        【関連】「原爆と大戦の真実」パネル縮刷冊子

現在の戦争を除く全ての戦争に反対だ。公民権は支持するが、決して今ではない

 ケイトリン・ジョンストンが掲題の記事を出しました。見事なタイトルで、文章の全貌を類推させてくれます。
 記事の冒頭で、ハンドルネーム@eyeballslicer氏のツイート「リベラルとは、現在の戦争を除く全ての戦争に反対し、現在行われているものを除く全ての公民権運動支持する人のことだ」を紹介し、それを敷衍したもであることを明らかにしています。
 そして取り敢えずはバイデンを筆頭に民主党議員などの言動を見事に皮肉っています。
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現在の戦争を除く全ての戦争に反対だ。公民権は支持するが、決して今ではない
               マスコミに載らない海外記事 2024年5月14日
   ガザでのバイデンによる大量虐殺が長引けば長引くほど民主党の調子が悪くなるに
  つれ、@eyeballslicerというハンドル名のアカウントが11月に拡散したツイートを
  思い出す。「リベラルとは、現在の戦争を除く全ての戦争に反対し、現在行われてい
  るものを除く全ての公民権運動支持する人のことだ
                  ケイトリン・ジョンストン 2024年5月3日
 ガザでのジェノサイドに抗議する大学生デモへの残忍な弾圧を擁護する発言で、アメリカでは、事態を混乱させたり、誰かを動揺させたりしない限り、礼儀正しい抗議活動は認められるとバイデン大統領は主張した。
 「我が国は人々を黙らせたり反対意見を鎮圧したりする権威主義国家ではない」とバイデンは述べた。「アメリカ国民の声は届いている。実際、平和的抗議行動は、重大な問題にアメリカ人が対処する方法として最良の伝統になっている。」
 「しかし」と大統領は続けた「我が国は無法国家ではない。我々は市民社会で、秩序が優先されなければならない。
 続いて、表現の自由の一形態として「暴力的抗議活動は保護されない」とバイデンは主張し、これら抗議活動で我々が目にした唯一実際の暴力が、頭蓋骨や骨を割るため送り込まれた警察や、キャンパス内のデモ参加者を襲撃した親イスラエル暴漢連中によるものである事実を無視した。その代わり「暴力」の虚偽告発に続けて、器物破壊や、破壊行為、不法侵入、窓ガラス破壊など無生物に対する犯罪をバイデンは列挙した。「キャンパス閉鎖」や「授業や卒業式の強制中止」という犯罪行為も彼は列挙したが、いずれもデモ参加者によるものではなかった。
 「人々を脅したり脅迫したり人々に恐怖を植え付けるのは平和的抗議行動ではない」とバイデンは述べ、ばかげた主張の具体例を一切挙げず「反対意見は決して混乱を招いてはいけない」とし「抗議する権利はあるが混乱を引き起こす権利はない」と補足した。」

 もちろん何の根拠もなく「反ユダヤ主義」についてしばらく大統領はしゃべり続けた
 繰り返すが、この人物は自身の行動に抗議する平和的なデモ参加者に対する権威主義的な警察弾圧を擁護しているのだ。圧制も弾圧も同じアメリカ大統領に承認されているので、アメリカ大統領を批判する人々に対し見られる高圧的な圧制や弾圧を心配する必要はないとアメリカ大統領は言うのだ。

それが皆さんにとっての民主党なのだ。存在するのはそれだけだ。礼儀正しさに包まれた暴力だ。口先だけ公民権支持を装うファシズムだ
 先日、キャンパスでの反ジェノサイド・デモを鎮圧するためコロンビア大学が警察を導入する少し前、「キャンパス内の反ユダヤ活動家」排除を大学理事会に要求する書簡に下院民主党議員21名が署名した
 「大学が断固行動し、テントを解散させて、学生の安全と安心を確保する頃合いだ」とこの議員連中は宣言した。
 この党は、人々が公民権と社会正義への投票を行う主な理由として、常に公民権や社会正義への支持を挙げ、我々全員見習うよう努めるべき英雄として、いつもマーティン・ルーサー・キング・ジュニアやその他の公民権運動指導者を引き合いに出す党なのだ

 今や自国政府の虐殺的で不当な政策に対する批判を封じるため、共和党と同じ横暴な措置を連中は公然と支持しており、批判する人々の言論や集会に対する憲法上の権利を無視している。「反ユダヤ主義」と闘い、平和を維持するためだと彼らは言い、自分を進歩的で合理的なように見せようとしているが、現実の行動は、60年代に反戦デモ参加者や公民権活動家を攻撃した暴君連中と何ら変わらない
 ガザでのバイデンによる大量虐殺が長引けば長引くほど、民主党の調子が悪くなるにつれ、@eyeballslicerというハンドル名のアカウントが11月に拡散したツイートを思い出す。「リベラルというのは、現在の戦争を除く全ての戦争に反対し、現在起きているものを除く全ての公民権運動を支持する人々のことだ
 以来、日に日に、あのツイートは重要性を増している。過去7か月間、欧米リベラリズムに掲げる横断幕を選ぶとしたら、横断幕にはこれらの言葉を入れる必要があるだろう。これは非常に長い間、主流リベラル派に当てはまったが、ガザに対して我々が見てきた反応を、素晴らしい完璧さで要約している。
 我々のディストピア的現状を当然のものとする責任負う言論歪曲専門家連中が、どのように時間を心理的武器として利用しているか気づいたことがおありだろうか? それは何とも驚くべきことだ。連中は革命的変化に対する全ての支持を過去か未来に追いやり、現状を維持しなければならないと主張する
 一度この戦術に気づくと、それは至る所で目につく。ベトナムやイラクや人種差別など過去の犯罪には連中は拳を振り上げず、女性参政権や黒人公民権などの社会正義を求める過去の闘いを称賛する際、より多くの民主党員を大統領に選出すれば、望んでいる劇的な革命的変化は、将来全て手に入れられると主張する。
 様々な方法で、何度となく、次のようなメッセージを人々は吹き込まれる。革命や変革は素晴らしいが、それは今のことではない。過去の革命的感情は我々全員が祝うべき素晴らしいことを成し遂げたし、将来いつの日か革命的変化を我々は再び経験するだろうが、今我々は現状を支持し続け、静観し、我々を支配する権力者を困らせないよう懸命に努力する必要がある

 この悪意ある操作には、時間と現在の瞬間に関し、ほぼ仏陀のような理解が必要で、実際それに気がつくと、ある種の感銘を受ける。存在するのは、今ここだけで、我々の記憶と想像の中以外に、過去と未来は存在しないことに、人々を操る連中は、ある時点で気づいたのだ。だから、革命を与えるのが過去か未来である限り、人々が望む全ての革命を与えることができる。」
 キリスト教の台頭とともに、こうした操作の初期的原型が見られたが、そこでは、支配者が享受している物質的な安楽は忘れ、その代わり、死んで天国に行くことが、どれほど素晴らしいかに集中するよう人々は奨励された。人々のあらゆる希望は想像上の目に見えない将来の報酬に託され、一方で、貧困や従順さや服従の美化や、何よりも、決して裕福な人々全員に対して立ち上がって、あなたから連中が盗んだものを取り戻してはいけないと言われたのだ。

 このように操られるのを我々が許し続ける限り、世界が切実に必要としている変化を見ることは決してあるまい。変化は起きる必要があり、変化は今しか起き得ない。革命が起こり得るのは今だけだ。時間の経過の中に革命を葬り去るのをやめて、実際に革命をもたらして頂きたい
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記事原文のurl:https://caitlinjohnstone.com.au/2024/05/03/opposing-every-war-but-the-current-one-supporting-civil-rights-but-never-right-now/

15- 米英と同様、オーストラリアの裁判所も自国軍による戦争犯罪の告発者に厳罰

 櫻井ジャーナルに掲題の記事が載りました。
 豪州連邦判事は5月14日、オーストラリアのSAS(特殊空挺部隊連隊)に所属する25名の隊員がアフガニスタンで民間人や捕虜39名以上を殺害したことを示す証拠をABCへ渡したデイビッド・マクブライドに対し、機密情報を開示したとして懲役5年8カ月を言い渡しましの件でABC家宅捜索されました。
 戦場?であったとしても民間人や捕虜を殺害するのは犯罪でこそあれ、それを明らかにすることが「機密情報の開示」の罪に当たるとは・・・、国の醜悪さを暴露する以外のどんな罪に当たるというのでしょうか。それこそ司法が、「自国軍の戦争犯罪を告発すること」を許さない姿勢であることを明らかにするものです。
 アサンジ氏への「懲役175年」という加罰を策している米英と同様、オーストラリアも「言論の自由」を旗印にする資格はありません。
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米英と同様、オーストラリアの裁判所も自国軍による戦争犯罪の告発者に厳罰
                          櫻井ジャーナル 2024.05.15
 オーストラリアのSAS(特殊空挺部隊連隊)に所属する25名の隊員がアフガニスタンで民間人や捕虜39名以上を殺害したことを示す証拠をABC(オーストラリア放送協会)へ渡したデイビッド・マクブライドに対し、キャンベラの連邦判事は5月14日、機密情報を開示したとして懲役68カ月(5年8カ月)を言い渡した。オーストラリアの警察当局はこの件でABCを家宅捜索している。

 オーストラリア軍は2001年にアメリカ軍やイギリス軍などとアフガニスタンへ軍事侵攻している。SASによる虐殺が2009年から13年にかけての時期にあったことはオーストラリア軍も2020年11月に提出した報告書の中で認めているのだが、そうした軍の犯罪行為を明らかにすることをオーストラリアの裁判官は許さないという決意を今回の判決は示したと言える。オーストラリア政府も当初から殺害に参加した軍人を処罰する意思を示していないが、その軍人は今でも自由の身だ。
 アメリカは2003年にイラクを軍事侵攻したが、その作戦にもオーストラリア軍やイギリス軍は参加している。そのイラクで2007年7月にアメリカ軍のAH-64アパッチ・ヘリコプターが非武装の一団を銃撃、ロイターの特派員2名を含む十数名が殺された。

 内部告発を支援してきたWikiLeaksがその様子を撮影した映像を2010年4月に公表したのだが、その映像を含む情報を提供したアメリカ軍のブラドレー・マニング(現在はチェルシー・マニングと名乗っている)特技兵は逮捕された。
 WikiLeaksの象徴的な存在であるオーストラリア人のジュリアン・アッサンジは2019年4月11日、エクアドル大使館の中でロンドン警視庁の捜査官に逮捕され、イギリス版グアンタナモ刑務所と言われているベルマーシュ刑務所で拘束されている。
 アメリカの当局はアッサンジをハッキングのほか「1917年スパイ活動法」で起訴している。本ブログでは繰り返し書いてきたが、ハッキング容疑はでっち上げだ。アッサンジがアメリカへ引き渡された場合、懲役175年が言い渡される可能性があるのだが、オーストラリア政府は自国民であるアッサンジのために動いているとは思えない

 アメリカ、イギリス、オーストラリアのような国々は「知る権利」を認めていないと言えるが、この3カ国は2021年9月、AUKUSなる軍事同盟を創設したと発表した。中国やロシアを仮想敵としているはずだ。
 その際、アメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられたが、そうした潜水艦を動かすためにはアメリカの軍人が乗り込む必要があり、事実上アメリカ海軍の潜水艦になる。山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日、日本がオーストラリアの原子力潜水艦を受け入れる可能性があると表明した。

 岸田文雄政権は2022年12月16日に「国家安全保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の軍事関連3文書を閣議決定、2023年度から5年間の軍事費を現行計画の1.5倍以上にあたる43兆円に増額して「敵基地攻撃能力」を保有することを明らかにしているが、その日本政府はAUKUSへ参加しようとしている
 AUKUSが言論の自由や基本的人権を否定、国際的なルールを無視していることは明確であり、勿論、民主的でもない。日本政府が言論統制を強化しているのは必然だ。