植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
兵庫県の第三者調査委員会(弁護士3名で構成)は27日、公益通報告発者の元西播磨県民局長(故人)の公用パソコン内にあった私的情報を、県の井ノ本・前総務部長が3人の県議らに漏洩したと認定し、漏洩が「知事(及び元副知事)の指示のもとに行われた可能性が高い」とする報告書を公表しました。
この調査委員会は斎藤知事が立ち上げたもので、知事自身も聴取(回数は不明)されましたが、井ノ本氏に「私的情報」を県議らへ「提示(根回し)」するよう指示したことは否定しました。
井ノ本氏は委員会からの聴取に対して、当初は県議らへの「提示」自体を否定しましたが、最終的に「知事からの指示を受けて3人の県議に提示(根回し)した」ことを認める陳述書を提出しました。
調査委員会は井ノ本氏の陳述は、知事から指示された場に同席した人物の証言もあり信頼できるのに反して、知事の否定発言は虚偽であると判断しました。
井ノ本氏は同日付で停職3か月の懲罰に処せられ、知事は自分を減給処分すると表明しました。しかし私的情報の開示を部下に指示するのは勿論犯罪行為なので、知事が減給だけで済まされるかは疑問です。
また外部通報者は保護の対象である旨を国(消費者庁)から再三指摘されているのに、知事は従わずいまだに元県民局長の処分を撤回しないのは大問題です。
弁護士の西脇亨輔氏は、下記の2つの動画で、知事は「減給処分」などでは済まされないと厳しく指摘しています。
「斎藤元彦 落城 刑事告発無はあり得ない」https://youtu.be/lHwDWW2UXwU(28日)
「元彦を逃がすな!『これで終わり』会見のごまかし」https://youtu.be/8qyP8nixFaI(29日)
西脇亨輔チャンネル(動画)はこのところ連日、斎藤知事のことを取り上げています。
まず、https://www.youtube.com/@nishiwakikyosuke/streams で、「西脇亨輔チャンネル」のホームページにアクセスし、そこの「ライブ」をクリックすると、最大10ヵ月以前の分まで遡って視聴することが出来ます。
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〝斎藤知事が情報漏洩を指示”か
植草一秀の「知られざる真実」 2025年5月28日
昨年11月17日の兵庫県知事選挙。
失職した斎藤元彦元知事が勝利した。選挙結果は「オールドメディアの敗北」と報じられたが、私はこの論評を疑問視した。テレビ等のオールドメディアが破れてSNS等のニューメディアが勝利したとの評価は正しくないと判断した。
11月18日に公開したブログ記事、メルマガ記事に次のように記述した。
ブログ記事「新時代情報戦争と兵庫知事選」https://x.gd/Fhvd3
メルマガ記事「兵庫県知事選と25年政治刷新」https://foomii.com/00050
「インターネットメディアを活用して、人々の納得や共感を獲得できれば、大きな成果を上げることができる。問題は流布される情報が必ず真理とは限らないこと。
事実に反する情報であっても、情報の受け手が納得し、真実だと信じ込めば投票結果などに影響を与えることができる。
兵庫県知事選では、斎藤前知事が亡くなった県民局長の内部通報に対して取った行動が適切であったのかどうかが最重要の評価対象だったが、県民局長のプライバシーに関する情報が拡散されて有権者の行動が誘導された側面が強いと見られる。
「目的のためには手段を問わない」とのスタンスで選挙戦が展開されたとすれば、県民局長が使用していたPCに保存された情報の管理が適切であったのかどうかに関する評価がなされる必要がある。
この意味で、選挙が公正な状況で執行されたのかどうかについての検証が必要になる。」
その後、多くの悲劇が発生した。
斎藤元彦氏を追及した兵庫県議会議員の竹内英明氏が兵庫県知事選を通じて激しい個人攻撃の対象とされ、知事選後に議員辞職したが、攻撃は止まず、自死に追い込まれた。
斎藤氏に関する外部通報を行った元西播磨県民局長は告発とは関係のない個人情報を外部に流布・拡散すると脅されて、やはり自死に追い込まれたと見られている。
上記の11月18日記事に、
「県民局長のプライバシーに関する情報が拡散されて有権者の行動が誘導された側面が強い」と見られ、
「県民局長が使用していたPCに保存された情報の管理が適切であったのかどうかに関する評価がなされる必要がある」
と指摘したが、その後の調査で、この指摘通り、「県民局長が使用していたPCに保存された情報の管理」に重大な問題があったことが明らかになっている。
この問題について、兵庫県の第三者調査委員会は本日5月27日、告発者の元西播磨県民局長(故人)の公用パソコン内にあった私的情報を県の前総務部長が県議に漏洩したと認定し、漏洩が「知事及び元副知事の指示のもとに行われた可能性が高い」とする報告書を公表した。
選挙で斎藤氏が勝利したのは、SNSがオールドメディアに勝利したのではなく、SNSによって流布・拡散された情報に重大な問題があったが、テレビ等のオールドメディアが選挙期間中であることを背景に、広く流布・拡散された情報に関するファクトチェックを含めた論評を全面的に手控えたことによる影響が大きかったと推察される。
県民局長は斎藤氏に関する公益通報を行った。
当初、外部のメディア等に通報を行ったのは、県庁にある公益通報窓口が知事支配下にあるとの判断から、公益通報が適正に処理されない可能性を想定してのことであったと思われる。
外部に対する通報であっても公益通報者保護法の保護の対象になる公益通報は存在し得る。
結果的に、元県民局長が行った通報は公益通報に該当するものであると判断されたのであり、兵庫県はこの公益通報を公益通報として保護する責任を負っていた。
しかし、斎藤知事の対応は公益通報者保護法に違反するものであったと県の第三者委員会が認定した。斎藤知事は公益通報を確認した際に犯人捜しの行動を取り、その過程で県民局長の公用PCを押収。そのPCに保存されていた県民局長のプライバシー情報を元にして県民局長に対して脅迫行為が取られたと見られている。
さらに、県民局長のプライバシー情報が外部に漏洩され、その延長線上で11月の県知事選でこのプライバシー情報が不正確に流布・拡散されて有権者の投票行動に重大な影響を与えたと見られている。
これらの経緯は昨年11月の県知事選の選挙結果の正統性に対する根本的な疑問を浮上させる。
兵庫県第三者委員会は県民局長が公益通報を行った時点で県総務部長の地位にあった井ノ本知明氏について、元県民局長のプライバシー情報を県議会議員3人に漏えいしたと認定した。
この認定を踏まえて兵庫県は井ノ本氏に対する停職3ヵ月の懲戒処分を決定したと発表した。
「天網恢恢疎にして失わず」=「悪は一時期栄えるように見えても、それは一時のことで、いつか必ず報いを受ける」のである。
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「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。
2025年5月29日木曜日
〝斎藤知事が情報漏洩を指示”か(植草一秀氏)
29- 状況認識を間違い、計画通りに物事が進まずに苛立つトランプ大統領
北大西洋条約機構(NATO)はゴルバチョフの時代に、NATOは1センチも東側(ロシア側)に歩を進めないと約束したのですが、2000年以降はウクライナへの進出を企て、2014年にはついに米国主導のクーデターを起こして親米政府に変え、ロシア国境への圧力を強めました。
その後ドンバス地方での内戦で政府側が不利になるとミンスク合意を結んで停戦し、8年を掛けて軍備を増強し再びドンバス地方=ロシア国境へ軍隊を進めた時点で逆にロシアの侵攻を招きました。
そうした経緯を鑑みるとプーチン大統領が、ウクライナ停戦の条件としてNATOの東方拡大停止や対ロシア制裁の一部解除を文書で誓約することを要求しているのは無理からぬことです。
トランプが手を引いて、イギリスMI6(エムアイ6:英情報機関)のエージェントと言われるゼレンスキーが停戦交渉に臨んでますが、それではなかなか停戦は実現しそうもありません。ゼレンスキーはネタニヤフと同様、戦火が治まれば自分の立場がなくなるからです。
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状況認識を間違い、計画通りに物事が進まずに苛立つトランプ大統領
櫻井ジャーナル 2025.05.27
ドナルド・トランプ米大統領は自分が仲介役になり、ウクライナでの戦争、ガザでの虐殺、イランとイスラエルの対立をすぐに解決させられると吹聴していたが、実現していない。ウラジミル・プーチン露大統領に対する不満を口にし、プーチンは「完全に狂っている」と発言した。アメリカの情報機関はトランプ大統領に間違った情報を伝えている可能性がある。
しかし、少なからぬ人はトランプの宣伝通りにならないと予想していただろう。例えばウクライナではロシア軍が圧倒的に優勢であるうえ、EUはウクライナに対する軍事支援を継続すると主張、キエフ政権はモスクワに対する攻撃を続けているわけで、ロシア側が戦闘を止めるはずがない。
ウクライナ軍は5月20日から23日にかけて数百機のドローンを発射、20日にはクルスク地方を訪問するプーチン大統領を乗せたヘリコプターも狙ったというが、こうしたことをすればロシアが報復するだけのことだ。ウクライナの報道によると、25日にロシア軍は69機のミサイルと298機のドローンでキエフを攻撃している。
ウォロディミル・ゼレンスキーはロシアによる空爆に対するアメリカの沈黙はプーチンを勇気づけるだけだと述べたが、トランプはゼレンスキーの口から出る言葉は全て問題を引き起こすと非難、「私はそれが気に入らない」とも語った。ゼレンスキーはイギリスの対外情報機関MI6のエージェントである可能性が高く、トランプはイギリスを批判したとも言えるだろう。
ウクライナの問題でトランプはプーチンとゼレンスキー、両者を批判しているが、それはトランプが状況を理解していないことにあるのだろう。トランプはウクライナでの戦争でロシア軍の死傷者が多く、ロシア経済が疲弊しているという前提で動いているのだが、この認識が間違っている。ロシア軍は民間人に被害が出ないようにしているだけでなく、自軍兵士の死傷者ができるだけ少なくなるよう慎重に戦っている。つまりロシア軍には余力があるのだ。余力のあるロシア軍が6月から大攻勢に出るという見方もある。
イスラエルによるガザでの虐殺に対する批判は世界的に高まり、イスラエルを支援する欧米諸国の政府も非難されている。西側有力メディアはイスラエルを擁護するためのプロパガンダを継続しているが、その有力メディアを見る人びとの目も厳しくなってきた。それを懸念した欧米のエリートはイスラエルを非難する言論を弾圧。「民主主義国家」という幻影は消え去り、帝国主義国家という本性が現れている。
そのイスラエルはイランを攻撃しようとしているが、イランの防空システムを突破する能力がイスラエル軍にはなく、単独でイランを攻撃することは不可能。つまりアメリカを巻き込む必要があるのだが、そのアメリカでもイランに勝つことはできないと見られている。しかもイランの背後には中国とロシアがいる。
インド洋に浮かぶディエゴガルシア島の基地に配備されていたアメリカ軍のB-2爆撃機6機はイエメン爆撃に使われたが、この攻撃は失敗に終わった。その後、一部のB-2はB-52戦略爆撃機4機に置き換えられたようだが、こうした爆撃機がイラン攻撃に使われるかどうか、注目されている。
2025年5月26日月曜日
低価格目的の輸入拡大は愚策(植草一秀氏)
植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
米価は備蓄米を放出しても一向に下がらずむしろ上がり気味です。22年度には5キロ当たり1250円ほどであった米価がこの2年間で5千円近くに上がり、4倍ほどに上昇しました。
超贅沢品であるなら兎も角 主食なのですから、もしも血気逸る国民性であったなら暴動も起こり兼ねないことでしょう。背景には「コメ不足」がありますが、直接的には流通関係者らの儲け指向の思惑がこの事態を生み出しました。
政府は1995年の食管制度廃止以降、コメの在庫が過剰にならないように減反政策を継続してきました。その結果、いまでは「時給10円」といわれる米作に新たに従事する人たちがいないという状態になりました。もはや「食糧安全保障」とは全く無縁の状況です。
米価の異常高騰を鎮めるためには備蓄米の大々的放出や緊急の輸入米で凌ぐしかありませんが、然るべき年月を掛けて「コメの生産体制」を根本から立て直すことが求められています。
植草氏は「結論として最優先するべき課題はコメの自給体制強化。これまで政府は減反政策を続けてきた結果として、供給不足が顕在化した」として、まず「コメの生産を拡大する政策方針を明示する必要があ」り、「そのためにはコメ農家の所得を補償」し、「農家が永続してコメ生産を行う意欲を持てる所得環境を整備することが必要不可欠」であると述べます。
そして、「消費者に対してコメを低い価格で提供するには、政府が『逆ザヤ』分を財政負担すればよい」のであって、そのための「新しい食料価格管理制度を構築するべきである」と述べます。
併せて世に倦む日々氏の記事「おぼろげながら浮かんできた〝闇米″の真相と将来モデル ー 庶民の主食は輸入米に」を紹介します。
こちらは「食糧安保」の観念を抜きにして論じています。
(お知らせ 都合により29日(木)の記事の更新は夕刻になります)
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低価格目的の輸入拡大は愚策
植草一秀の「知られざる真実」 2025年5月25日
令和の米騒動。
コメの小売価格が2倍に暴騰した。価格を下落させるには供給を増やすしかない。
江藤拓農水相が更迭されて小泉進次郎氏が新農相に起用された。
小泉氏は政府備蓄米を低価格で放出する方針を表明した。小売価格5キロ2000円で販売すると表明した。
しかし、販売と同時に瞬間蒸発することになるだろう。すべての国民が購入希望の全量を購入できる保証はない。
政府の備蓄が枯渇すれば供給は途絶える。小泉新農相が石破内閣の救世主になるとは考えられない。念頭にあるのは参院選。参院選に向けて政府批判、自公批判を鎮火できればよい。
そのような近視眼的発想で対応策が示されているに過ぎないと思われる。
その場を取り繕うだけの〈弥縫策(びほうさく)〉である可能性が高い。
警戒が必要であるのは、コメ輸入を一気に拡大する路線が想定されている疑い。
この問題を考える視点が三つある。
第一の視点は消費者視点。
消費者は5キロ2000円だったコメ価格がいきなり5キロ4000円を突破して打撃を蒙っている。
第二の視点は生産者。
コメ農家は苦しめられている。生産に要する費用が増加の一途を辿る一方でコメの買い入れ価格は低下傾向をたどってきた。コメ農家の所得は時給換算で10円との数値も示されている。
これでは農家の存続を展望できない。まさに〈頑張っているのに報われない〉現実が広がっている。
第三の視点は食料安保。
国民が生存するためには食料が必要不可欠。世界はいつ飢饉に見舞われるか分からない。
日本の食料自給率はカロリーベースで38%。海外からの食料供給が断ち切られれば国民は餓死してしまう。国民の生命と生活を守るためには食料自給体制の確立が必要不可欠。
日本国民の主食であるコメの安定的な国内自給体制を維持することが必要だ。
メディアの論調を見ると第一の消費者の視点だけしか語られていない。
第二の生産者の視点からの問題提起に対しては冷ややかに扱う傾向がある。
イソップ寓話に「おなかと手足のけんか」というものがある。
手足が、おなかは自分で動かぬのに食べ物をもらって食べるばかりでずるいと怒り、動くことをやめる。すると、栄養が手足に行き渡らなくなり、おなかだけでなく、手足もふらふらになる。手足はおなかと手足が相互依存関係にあることに気付く。
消費者の視点で価格の下落ばかりを求めて、国内でコメを生産する生産者が消滅すればどうなるのか。コメの国内自給は消滅する。海外からのコメ供給が途絶えれば消費者も餓死してしまう。三つの視点のすべてを考えることが必要だ。
結論として最優先するべき課題はコメの自給体制強化だ。
これまで政府は減反政策を続けてきた。名目上は減反政策をやめたとしながら、実際には生産制限が実行されてきた。この結果として供給不足が顕在化した。
コメの生産を拡大する政策方針を明示する必要がある。
しかし、そのためにはコメ農家の所得を補償する必要がある。
農家が永続してコメ生産を行う意欲を持てる所得環境を整備することが必要不可欠。
他方、消費者に対してコメを低い価格で提供する必要があるなら、政府が「逆ザヤ」分を財政負担すればよい。新しい食料価格管理制度を構築するべきである。
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続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第4088号
「コメ農家と消費者はおなかと手足」でご購読下さい。
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おぼろげながら浮かんできた〝闇米″の真相と将来モデル ー 庶民の主食は輸入米に
世に倦む日日 2025年5月24日
5/21、江藤拓が舌禍事件で農水相を引責辞任、小泉進次郎が後任に就いた。失言の内容は、週末 5/18 の自民党佐賀県連での集会で「私はコメは買ったことはありません。支援者の方々がたくさんコメをくださる。売るほどあります」と発言したもの。週明けから大事件となってマスコミで炎上、野党が国会で追及・糾弾して政局となり、森山裕と石破茂が更迭を判断した。この事件について最初に思うのは、コメを買ったことがないのは江藤拓だけではないだろうということだ。おそらく、自民党議員の大半がコメを寄贈されているはずだし、世襲議員は代々同じルートから豪勢に提供を受けているだろう。自民党議員だけでなく野党議員も、選挙区が地方で当選回数の多い者は挨拶代わりに頂戴しているに違いない。家族がスーパーで2キロとか5キロの袋を買っているという議員が何人いるか、誰か探偵し調査してもらいたいものだ。
前回、「オリエント急行殺人事件」の比喩で、関係者の全員がコメ価格つり上げの犯人だと書いた。最初に23年産米の作柄不良と供給不足があり、これを利用した投機筋の買い占めが起こり、価格高騰が始まった。農協と農水省と関係業者がこれに便乗し、価格をつり上げる方向で進め、政治家とマスコミもそれに加担して価格高騰を「自然現象」化して行ったため、高騰は止まらず5キロ4000円を超える水準にまで到達した。JA全中の山野徹が 5/13 に発言した「決して高いと思わない」という本音が、この問題の真相をよく露呈している。関係者全員が意図的に周到につり上げてきたのだ。24年産の新米が出回れば下がるとか、備蓄米が放出されれば落ち着くはずだとか、ウソを重ねて消費者を騙しながら。そして、価格が下がるとか落ち着くという見方を報道で出したときは、必ず、専門家を登場させ、価格は下がらないだろうという予測を言わせていた。
手の込んだ芝居を、マスコミ(特にNHK)含めた総がかりでやってきた。あらためて確認したいが、24年の主食米の生産量は23年よりも18万トン増加しているのである。23年は猛暑による高温障害で不作だったが、24年は作柄指数102の「やや良」で順調に収穫され、作付面積も増えていた。生産量の増加によって需給は逼迫するはずがなかった。だが、実際の市場では1年で5キロ2000円から4200円に高騰しており、店頭には常にコメが品薄で、小売店には入荷が細く難しく、消費者がコメを探し回る状態が続いていた。流通の末端と消費の現場ではコメ不足が常態化した。明らかに流通過程でコメが隠匿されていて、暴利を得ようと業者が溜め込んでいる卑劣な事実がある。マスコミと政治家はそれを「目詰まり」と呼んでいる。どこまでも「作為」を「自然」にして正当化したい日本の思想性がある。支配層が弱者を言葉で騙す手法がある、
一体、何が起きているのか。「オリエント急行殺人事件」の比喩記事を上げた後、薄っすらと頭に浮かんだもう一つの仮説がある。農協などが価格つり上げ目的で蓄蔵し供給制限している数量の他に、おそらく、コメ農家が直接売ったり配ったりしている数量が膨大にあるのだ。つまり、江藤拓のような形態でコメを確保している者が相当数いるのである。東京新聞(共同)の記事では、24年産米は、生産量は18万トン増えたのに集荷量が21万トン減ったと書いている。ここに真相の一端が窺える。農家が集荷先である農協に卸してない。昨年の夏から、コメ不足と価格高騰で国民にはコメの入手が大問題になっていた。農家にコネがある者は「何とか分けてもらえませんか」と切願しただろう。生産農家だけでなく、集荷業者にもそうした依頼は横から届いただろうし、そこに地方議員などの政治家が絡んで口利きすれば、農協は「分かりました」と二つ返事で融通したに違いない。
そうした、いわば「闇米」的に流れたコメが大量にあり、入手した各家庭が数量を備蓄していて、それが現在のコメ不足の正体の一面なのではないか。そう想像する。今、店頭のコメ不足は地方でも甚だしく、東京以上に地方のスーパーが品薄状態になっている。が、何となく、地方の消費者にコメの不足感がない。切実で深刻な窮迫感が強く漂って来ない。本当に困っていて必要な人たちは、そうした「闇米」の方法で調達して問題解決しているのではないか。であれば、その人々にとっては4000円超のコメ価格高騰はただのニュースであり、リアルな生活苦の問題ではないことになる。この推理と仮説が正しいのかどうかは、現時点では証明しようもなく、妄想と言われればそれまでだが、もし核心を衝いていたなら、いずれコメ余剰という展開と帰結になるだろう。各家庭で買い溜めしたコメ(闇米)は消費しなくてはならないからだ。不安心理で余分に備蓄した分は市場での需要減となる。
前回記事の延長になるが、今回のコメ価格の問題は、日本人の食生活の水準低下が構造的・長期的に決せられた厳しい事態ではないかと悲観する。2022年の厚労省の所得分布調査によれば、世帯所得の中央値は423万円で、400万円未満が46.4%を占めている。この階層は従来のようにコシヒカリを常食にできず、①麺類・パン、②麦飯・かて飯、③輸入米 を主食にする食習慣に変えるよう経済的に強制されるのだ。「貧乏人は輸入米を食え」である。財政難の自治体によっては、学校給食も安い輸入米に切り替わるだろう。その悲観的な想像が浮かんだ理由は、アメリカで売れている日本車の記事が目に留まったからだ。2024年の販売ランキングで、日本車はベスト10の中に6車種入っていて大健闘している。RAV4、CR-V、カローラ、カムリ、ローグ、シビック。車好きのアメリカ人に愛され信頼されている。性能と品質がよく、スタイリッシュでコストパフォーマンスがいい。
日本メーカーは、こんな車を主力製品で作ってアメリカで売っているのである。この断面を見る限り、日本経済は相変わらず繁栄していて、トランプの幼児的な被害者意識にも一理あると感じさせられる。2万5000ドルから3万5000ドル。360万円から500万円の価格帯。これが日本車の人気の売れ筋で、ボリュームゾーンの製品だ。一方、日本の自動車市場を見てみよう。2024年の販売台数の1位はN-BOXで、ベスト10ランキングに軽自動車が4車種も入っている。あとは、カローラ、ヤリス、シエンタ、ノート、フリードとコンパクトカーが続々揃い、170万円から260万円の価格帯の製品ばかりが並ぶ。先日、三重県の高速道路を外国人が逆走していた車もそうだったし、そのニュース映像で登場する諸車もコンパクトカーやミニバンが多かった。日本が作って世界に売っている車と、日本人が国内で乗っている車は異なっていて、安価で粗末な車で国内市場を埋めている。
購買力がないから、軽自動車とコンパクトカーの需要しかないのだ。これが日本経済の実態であり真実である。素晴らしい高性能の製品は作れるけれど、多数が貧乏なので購入できない。国内で売れない。富裕層だけが高い車を買える。残念な事実だが、われわれの真実の姿と言える。30年前はこうではなかった。1992年には、パジェロが月間販売台数でカローラを抜いたなどという情報がある。いつの間にか日本の道路を走る車は軽自動車ばかりになった。そしてこの経過と境遇について、日本人は「自然」の為せるしかたない問題として受け止めていて、「作為」による積み重ねの結果として捉えていない。「自然」に順応するように状況を認識し、誤った政策によって抱え込まされた社会矛盾として総括しない。とまれ、石破茂と新農水相に就任した小泉進次郎は、外国産米もどんどん輸入して「供給不足」を埋めるという方針を語っていた。従来は、国産米を守るため輸入米は禁止が国是だったはずだが、方針を転換した。
マスコミ論者も、全員がそう言っている。誰も反論しない。コメ輸入解禁への異論や抵抗は一部しかない。となれば、いま1キロ341円かかっている関税はゼロにされ、5キロ3335円のカルローズ米は1705円分安くなって1630円の販売価格になるだろう。日本の中低所得層の消費者にとって手頃な値段になる。タイ産日本米も5キロで1000円から1500円で、これが関税ゼロで日本市場に入って来る。物価高に苦しむ庶民にとっては救世主的な存在となり、国産銘柄米から輸入米に主食を切り替える国民が大量に出ると予想される。中国産ジャポニカ米も同じで、5キロ1000円の「五常大米」というコメが日本人に非常に評判がいい。コメの関税をゼロにすれば、スーパーで販売される主力は輸入米に置き換わるはずだ。その結果、富裕層だけが高い国産コシヒカリを食べるようになり、輸入米にリプレイスされた大量の国産銘柄米は輸出品となり、アメリカや中国などの富裕層を顧客とする贅沢な高級商品となる。
以上のことは石破茂も言っていて、この問題の報道で登場するマスコミの論調が同じで、全員がこの方向性を唱えている。もっともっと多く日本で増産して、増産したコメを海外で売って稼げと。国産銘柄米は海外で高く売って稼げと言い、国内の庶民は安い輸入米を買って食べよと言う。小泉進次郎が売る5キロ2000円の備蓄米は、この二重構造のモデルを定着させる予行演習なのだろう。すなわち、かくして日本のコメの生産と市場は日本の自動車のそれと同じモデルになる。日本人は高品質高性能のものを作れるけれど、貧乏なのでそれを自らの消費に回せず、稼ぐためだけに作ることになる。ただ、この二重構造のモデルが本当に成功裏に実現するかどうか、私には疑問がある。というのは、例えば「五常大米」のように、すでに日本人が日本産銘柄米と同等の味だと認めている中国産ジャポニカ米もあるのだ。この中国産米が、あるいはタイ産米が、高価な日本産米よりも将来の国際市場で競争力を持つ可能性は十分に考えられる。
世界の富裕層が、日本産ブランド米ではなく、中国産やタイ産やベトナム産のコメを選ぶ予測は十分に成り立つ。それは、自動車がすでにその変化を見せ始めていて、東南アジア市場ではBYDの進出が著しく、日本車が独占していたシェアを奪われている。日本人は、自分たちが作るものは何でも高性能高品質で、世界の中で最高のブランド力があり、永久に世界の顧客が嬉々として飛びつくものだと思い込んでうぬぼれているけれど、世界の市場の刻々はそんな甘いものではない。私は、日本のコメは、輸出に頼って作り過ぎると余ると警戒する。海外富裕層に依存した安易な輸出論には陥穽と限界があるはずで、その政策の突進は失敗に終わるだろう。最後に、子どもの頃(万博の年)、トヨタセリカやギャランGTOが新登場して華麗に走っているのを見た私は、ときどき正直に思うのだ。今、日本人は何でこんな夢のない小さな安い車に乗っているんだろうと。インドのタタなのかと。
イスラエルは他に類を見ない邪悪な社会
ケイトリン・ジョンストンが掲題の記事を出しました。
元イスラエル立法府議員のフェイグリンは TVに出演して
「ガザの全ての子ども、全ての赤ん坊はイスラエルの敵だ」、イスラエルの大量虐殺猛攻撃が完了すれば「ガザのには一人の子どもも残らない」「ガザの子ども全員、赤ん坊全員敵だ」と、言ったということです。
まさにパレスチナ人民の絶滅を目指す言葉です。
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イスラエルは他に類を見ない邪悪な社会
マスコミに載らない海外記事 2025年5月25日
火曜日、元クネセト(立法府)議員モシェ・フェイグリンがイスラエルのテレビに出演し、「ガザの全ての子ども、全ての赤ん坊はイスラエルの敵だ」と宣言した。
ケイトリン・ジョンストン 2025年5月22日
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火曜日、元クネセト議員モシェ・フェイグリンがイスラエルのテレビに出演し「ガザの全ての子ども、全ての赤ん坊はイスラエルの敵だ」と主張し、イスラエルの大量虐殺猛攻撃が完了すれば「ガザのには一人の子どもも残らない」と述べた。
「ガザの子ども全員、赤ん坊全員敵だ」とフェイグリンは言った。「軍司令官が言う通り、敵はハマスでもなければ、ハマスの軍事部門でもない。ハマス関係者が軍事部門に所属していない限り、我々は彼らに危害を加えることを禁じられている。」
「ガザの子どもは皆敵だ」とフェイグリンは繰り返した。「ガザを占領し植民する必要がある。そうすれば、ガザの子どもは一人もそこに残らない。これ以外勝利はない」
ガザ地区への支援を依然イスラエルが許しておらず、何千人もの乳児の命が差し迫った脅威にさらされていると国連が緊急に警告する中、これが起きているのだ。
イスラエルは他に類を見ない邪悪な社会だ。そう言っても、不公平でも理不尽でもないと私は思う。他の多くの国々が邪悪な行いをし、多くの国々に殺人過激派がいる。だが主流政治家が主流テレビでこんなことを言う国が他にあるだろうか? 私は思いつけない。
イスラエルのチャンネル13ニュースが発表した新たな世論調査により、イスラエル人の大半が、依然、ガザへの人道支援を自国政府が受け入れるべきだと考えていないことが明らかになった。これは指導者層だけの問題ではない。一部過激派だけの問題ではない。国丸ごと社会病質者で満ち溢れている。ガザでのイスラエルの残虐行為は、集団としてのイスラエル人の在り方自体の結果だ。国丸ごと、冷酷で頭がおかしいのだ。❖
またもや匿名情報源による別の記事で、ネタニヤフにアメリカ大統領が「不満を抱いている」とAxiosのバラク・ラビッドが主張している、ただし今回の大統領はトランプだ。
ラビッドは、イスラエル情報機関の内部関係者で、バイデン政権時代、当時の駐米イスラエル大使によれば、真実から程遠い主張で、大統領がイスラエル政府との関係を断ち切り、ガザの虐殺を中止させるまであと一歩かもしれないとほのめかす 記事を、アメリカ・メディアに大量に書きまくり 異常な傾向の先陣を切った人物だ。
「ガザで続く戦争にトランプ大統領は不満を抱き、パレスチナの子どもの苦しみの映像に心を痛めており、戦争を終わらせてほしいとイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に伝えるよう補佐官に指示した」とラビッドは報じている。
ラビッドが下記のような記事も書いているのを思い出すまでは、これは素晴らしく聞こえる。
「先週土曜日の両首脳電話会談のこの部分は、ガザ紛争勃発以来、バイデンとネタニヤフ間で交わされた会話中、最も困難で『苛立たしい』ものの一つだったと米国当局者は述べた。これはバイデンとネタニヤフ間で緊張が高まっていることを示す兆候だ」( 2023年12月)
「ガザ戦争に関するバイデン政権の最近の要請のほとんどをイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が拒否したことに、バイデン大統領を始めとするアメリカ高官は益々不満を募らせている。」( 2024年1月)
「ネタニヤフ首相とイスラエルの戦争中の行動にバイデンは益々不満を募らせている。今月初め、ガザにおけるイスラエル軍の軍事作戦を『行き過ぎ』と大統領は非難し、1月には、戦争を一年も続けるつもりはないとネタニヤフ首相に明言した。」( 2024年2月)
「バイデンやホワイトハウスや国務省の多くの高官がネタニヤフの恩知らずぶりに非常に不満を抱いているとアメリカ当局者は述べている。」( 2024年3月)
リストは延々、ここでも、ここでも、ここでも、ここでも続く。こんなお決まりのギャグがもう何ヶ月も続いている。彼は一体誰を騙しているつもりなのか? これはジャーナリズムでなくプロパガンダだ。国民に偽の安心感を与え、イスラエルが大量虐殺を完了するため時間稼ぎをしているに過ぎない。
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今、テヘランとワシントンの交渉が思うように進まない場合、イスラエルはイラン核施設攻撃を準備していると報道されている。この狂気じみた政権に対し、何らかの対策を講じなければならない。
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「バイデンは共感力の大統領だった。分断された国は彼に共感を示せるのか?」という題で「バイデンが癌と診断された今、政治的憎悪や不信感や欺瞞や嘘にもかかわらず、この国は共感する能力を持っているのだろうか?」という副題の記事をワシントン・ポストが掲載しだ。
大量虐殺怪物に関するこれらの言葉は、私が憎む主流メディアやリベラル派や、西洋文明の全てを一括して要約している。
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パレスチナ人にジョー・バイデンが常に望んできたことを私は彼に望む。パレスチナ人に皆が望んでいることを、私は皆に望む。それ以上でもそれ以下でもない。まさに彼らが望んでいることを。
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記事原文のurl:https://caitlinjohnstone.com.au/2025/05/22/israel-is-a-uniquely-evil-society/