国際法違反のイスラエルのイラン先制攻撃に続いて、米国も宣戦布告なしにイランを攻撃する国際法違反を犯しました。ならず者国家のイスラエルは兎も角、トランプも流石に世界に通用しない開戦通告は行えないので、「深夜のだまし討ち」を決行するしかなかったのでしょう。それなのにイランが停戦協定に同意すると、直ぐに「自分が平和が実現させた」と口にするとは呆れます。
世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました。
同氏は、イスラエルとトランプが 徹頭徹尾 イランを「だまし討ち」にしたことを明らかにし、イランの核施設空爆を決断した動機として、1月の大統領就任時からの諸政策が悉く行き詰まり、目玉だった関税政策も破綻と失敗が明らかで収拾がつかない混乱状態で停止し、関税をめぐる米中間のバトルは「アメリカの完敗」の方向であり、このままでは来年の中間選挙での敗北が確実な気配になってきたため、局面転換の手を打って人々の注意と関心をイラン方面に逸らす博打に出たという事情が看て取れると述べます。
実際、DOGE(政府効率化省)も評判は散々で、移民対策ではLAで暴動が起き、州兵と海兵隊が出動する異常事態となり、全米で500万人の抗議デモが発生するという有様です。
世に倦む日々氏は、イスラエルがこれでイラン戦争を終わらせる筈はないので、「米国は再び中東の戦争の泥沼に引き摺り込まれる。それはイスラエルの意思と戦略の貫徹であり、中東の戦争に永遠に米国を張り付けたいイスラエルの強い思惑に引っ張られて、CIAがそれに応じ、ホワイトハウスをその方向に動かすのである。~ 第三次世界大戦が始まった日にならなければよいがと願う」、と記事を結んでいます。
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トランプの騙し討ち - ハメネイ暗殺と体制転覆の後に本格始動する〝イラン戦争″
世に倦む日日 2025年6月24日
6/22(日)、サンデーモーニングを見ていたら、スポーツコーナーの途中で臨時ニュースのテロップが入り、米軍がイランの核施設を攻撃した一報が伝えられた。午前2時半、イラン中部のフォルドゥ、ナタンズ、イスファハンの3か所の核施設を空爆、事前にマスコミが説明していたとおり、ステルス爆撃機B2に搭載したバンカーバスターを投下して、フォルドゥの地下80メートルにあるウラン濃縮施設を破壊したと報道があった。日本時間の午前11時に演説したトランプは「イランの主要核濃縮施設は完全に撃破された」と言い、その後に会見した国防長官のヘグセスは「イランの核開発計画を壊滅させた」と作戦の成果を強調している。作戦名は「真夜中の鉄槌」で、B2戦略爆撃機が7機投入され、最大級のバンカーバスター14発が初めて実戦で使用された経過も明らかにされた。それに対してイラン側は、今後も核開発を続けると声明を出した。
イラン政府関係者は、13日のイスラエルの先制攻撃の後にフォルドゥとナタンズの核施設から20%と60%の濃縮ウランの大部分を搬出し、別の場所に移動させたと説明していて、イラン国営メディアも同じ報道をしている。また、周辺で放射性物質の汚染の兆候は確認されてないとも言い、イラン原子力庁は今後も核開発を続けると言明している。放射能漏れが未確認であることは、IAEAもXの発信で明らかにした。爆撃によってフォルドゥの施設の出入り口が損傷し、内部に立ち入りできなくなったとイラン側は言っていて、地下80メートルの空間で稼働していた大量の遠心分離機の設備が機能不全になり、イランの核開発の能力と態勢が深刻な打撃を受けたことは間違いない。ただ、この攻撃によって、イランがNPT脱退に踏み出す可能性が高まったという観測もあり、攻撃がイランの完全な核放棄・核武装断念の流れに繋がってないことは明らかだ。
トランプは、6/20 にニュージャージー州モリスタウンのゴルフクラブの飛行場で記者団の質問に答えた際、「イランに一定の期間を与える。様子は見るが最大2週間だろう」- "I'm giving them a period of time, and I would say two weeks would be the maximum," と言っている。"giving a period of time" の表現があり、これは猶予期間を与えるという意味に誰でも受け止める。が、このとき爆撃命令はすでに出ていて、B2編隊や給油機や戦闘機やトマホーク搭載潜水艦の部隊は大統領が指示した作戦決行に向けて着々と動いていた。すなわち、トランプはイランを騙し討ちにしたのであり、6/22 夜のテレ朝の番組でも、有働由美子がこの点に拘って怪訝な感情を寄せていた。世間のトランプのイメージは、他の政治家と違って open で frankly で、そこが大衆に親しまれる点であり、こういう重大な局面で卑怯な嘘を言うキャラクターには見えない。だが、トランプは意図的にイランを罠に嵌めるべく fake を演じた。
作戦遂行の一環として、イランと世界を欺き、イランを奇襲攻撃する国際法違反の暴挙に出た。ヘグセスの会見では「イランの体制転換を狙ったものではない」と嘯き、バンスの発言でも「体制転換を望んでいるわけではない」と口を揃え、ルビオも「イランが外交の道を選ぶなら、米国は応じる用意がある」と釈明している。だが、イラン側から聞けば、これがアメリカとイスラエルの罠であり、再び油断させるための囮だという解釈になって当然だし、われわれもそう警戒するべきだろう。ネタニヤフはハメネイの殺害を公然と示唆していて、イランの体制転覆を目標にしている。今回、アメリカは遂にイランを直接攻撃した。イスラエルからすれば、ようやくアメリカを軍事介入に引っ張り込むことに成功した。イランの核武装の脅威を物理的に止め、イランの防空システムを無力化し、イラン革命防衛隊の幹部を抹殺し、アメリカを戦争に参加させた今が、まさに対イラン戦略の最終目的を達成する好機だ。
以上を書いたところで、日本時間 6/24 の早朝に局面が急展開し、イランがカタールの米軍基地に向けて、予めアメリカとカタールに通告した上で、形だけの「報復」のミサイルを14発放った。その直後、イランとイスラエルが停戦で合意したとトランプが発表した。この停戦合意がどこまで本物かは、まだ信用する材料に乏しい。私の観察では、これは今回の対イラン戦争の3度目の fake に映り、イランを操縦工作し続けるための高等戦術ではないかと疑われる。そもそも、6/13 のイスラエルの奇襲攻撃は、イランとアメリカが交渉を続けている際中に惹き起こしたもので、イスラエルが核合意交渉を潰すために行った謀略だった。トランプは、ネタニヤフから事前に作戦計画を告知されながら、それを黙認した。イラン側には伏せたまま、核合意交渉を続けるフリをして、ネタニヤフにイラン攻撃のゴーサインを出していた。つまり1回目の騙し討ちだった。そして、2週間の時間的猶予を示唆した直後にB2で空爆した 6/22 が2回目である。
常識で考えて、イスラエルがイランの体制転覆を諦めるはずがなく、この 6/24 の「停戦合意」もアメリカとイスラエルによる3度目の fake の工作であると断言できる。合意しても必ず後で破られる。おそらく、イランの弾道ミサイルの反撃でテルアビブの被害が予想以上に大きく、防空システムを再整備する(迎撃ミサイルをアメリカから必要数調達する)ための時間稼ぎが必要なのだろう。あるいは、またもや意表を衝いて、この「停戦合意」の直後に、隙を与えずハメネイ殺害を決行して世界を驚かすかもしれない。その場合も、トランプはネタニヤフに事前承認を与えると想定される。トランプという個性は、他のアメリカの政治家と異なって、基本的にビジネスの範疇の人物で、ポリティシャンの類型ではない。イデオロギーに狂奔するタイプではなく、アメリカの対外戦争に消極的で、戦争を金と人命の無駄と考える傾向があった。そこが大衆から好評を得る特徴でもあった。北朝鮮への対応が象徴的だった。
だが、トランプの〝戦争嫌い″は、どうやらイランだけは例外で別扱いなのだ。2020年1月にソレイマニを躊躇なく暗殺したとき、トランプの特別なイラン憎悪を痛烈に印象づけられたことを覚えている。コロナ禍の直前だったが、世界中が「まさか」と蒼ざめた一瞬であり、あのときも、イランとアメリカの間で全面戦争に発展しておかしくなかった。先週、どこかのテレビ番組で、若い頃のトランプがイランについて激怒している映像が紹介されているのを見た。1979年のイラン革命の際にテヘランで起きたアメリカ大使館占拠人質事件に対して、若いトランプが憤慨する場面である。トランプの中では、あのときにアメリカが受けた屈辱がトラウマとなり怨恨となって生きていて、イランを懲罰して国家の復讐を果たすことが Make America Great Again(⇒米国を再び偉大な国にする:選挙スローガン)のマイルストーンの一つなのだろう。その目的でトランプとネタニヤフは同志なのであり、トランプの判断基準において北朝鮮とイランを区分する理由なのだ。
もう一つ、トランプがイラン核施設空爆を決断した動機として、1月の大統領就任時からの諸政策が悉く行き詰まり、不首尾に終わっていて、このままでは来年の中間選挙での敗北が確実な気配になってきたため、局面転換の手を打って、人々の注意と関心をイラン方面に逸らす博打に出たという事情が看て取れる。目玉だった関税政策も破綻と失敗が明らかで、収拾がつかない混乱状態でスタックしている。J.クラフトの解説によると、関税をめぐる米中間のバトルは「アメリカの完敗」で決着したそうで、とんでもなく惨めな結果に終わったのだと総括していた。通商に詳しくない者でも、傍から見ていて形勢はそう窺われる。今後、副産物で生じたインフレの猛威がアメリカ経済を襲うだろう。一日で終わらせると豪語していたウクライナ戦争も、結局、何の糸口も見い出せず停戦仲介を放棄する滑稽な始末となった。DOGEも評判は散々で、E.マスク解任の顛末で終わった。移民対策ではLAで暴動が起き、州兵と海兵隊が出動する異常事態となり、全米で500万人の抗議デモが発生した。
あらゆる看板政策が挫折し、マイナスのブーメラン効果となって炎上し、トランプ政権は立ち往生となっている。どれも打開への端緒を掴めないまま深刻な負債として積み重なっていて、次から次へ失敗が嵩んで政策の不良債権が膨らんでいる。何も成功しておらず、成果を誇れるものがない。トランプとしては、矛盾だらけの国内政治を好転させるべく、支持率を浮揚させる新しい転機が必要だったのであり、イラン直接攻撃の博打に出て、トランプ政権への注目と評価の次元をイラン問題の土俵に移し替えたかったのだ。対外戦争という契機を導入し、イランという仇敵の悪玉を成敗する「物語」を演出することで、アメリカ国民の気分感情を愛国機軸に高揚させ、政局にナショナリズムの気体成分のスプレーを撒いて支持率凋落の食い止めを図ったのだ。その賭けがどう転ぶかは今後の進行次第だけれど、2期目トランプ政権は、出口戦略が見い出せず頓挫中のこれまでの諸課題に加えて、イランとの戦争という大きな難題を新たに抱えてしまった。アメリカに不幸を呼び込む通路を開いた。
田中浩一郎は、6/23 までのコメントでは、イスラエルによるハメイニ斬首は確実で織り込み済みだと何度も指摘している。私も同じ認識であり、ネタニヤフとCIAは必ず実行すると確信する。アラファトを殺し、ハニヤを殺し、カタフィを殺し、ナスララを殺したように、手加減なく86歳の神聖独裁者のハメネイを惨殺するに違いない。それを合図にして、CIAはイラン国内の親米反体制派を蜂起させ、イランをカラー革命の体制転覆へと導こうと動くだろう。その方向へ進む可能性は7割ほどある。現在のイランの体制は脆弱で、長年にわたる制裁によって経済が極端に疲弊し、軍事力もイスラエルの先制攻撃で半無力化の状態にある。制空権を失っていて、ミサイルの在庫も減る一方で補充できない。対抗カードたる核兵器は持ってない。加えて、本来は外交安保でイランを支えてアメリカへの牽制力となったはずのロシアが、ウクライナ戦争で疲弊し弱体化していて、国際政治の舞台で嘗ての実力を持っていない。ヒズボラも殲滅され、シリアも崩壊、イラク領内のシーア派勢力も無力だ。
イランは、外交・軍事・経済のすべての面で八方塞がりで、事実上、アメリカに対して和議と体制保証を請うしかない状態になっている。その図を比喩すれば、大坂の陣の豊臣方と同じで、和睦を乞いながら徳川方に冷酷に講和条件を違約され、城の内堀まで埋められ、総攻撃と全滅を余儀なくされた無残な歴史と重なる。負けるときはこうなるものだ。私は、その先を予想しよう。田中浩一郎は、イランは体制転覆の運命となり、イスラム革命体制は打倒され、イランはリビアやシリアのような破綻国家になるだろうと説明する。これはCIAとイスラエルの発想と願望の代弁だ。一方、元イラン大使の斎藤貢は異なる展望を示していて、ハメネイ暗殺の事態に至った場合、逆にイラン国民が一丸に結束する動きとなり、体制が容易に崩壊することはないだろうと反論している。私の意見は第三の立場で、田中浩一郎とも斎藤貢とも違う。私の予想は、イランは体制崩壊するけれど、新たに権力を握る親米世俗派とそれに抵抗するシーア派イスラム主義勢力の間で熾烈な内戦となるだろうという見方だ。
そこまでは田中浩一郎と同じかもしれない。が、そこから先が違う。イランはリビアのようにはならない。仮に親米世俗派が政権を握り、反体制イスラム主義勢力と内戦になった場合、アメリカは必ず親米新政権に肩入れし、新生傀儡イランが立ち行くようにサポートするのであり、リビアのように滅茶苦茶な破綻国家にしたまま無責任に放置はしない。リビアは気の毒に、何が何だか分からないアモルフ(⇒結晶構造でない)な泥沼国家となった。イランはそうはならない。ホメイニ革命を否定する親米自由主義派も、革命を奉じるイスラム主義の側も、言わばシャキッとした立体的な主権勢力として立ち、内戦を演じ合うだろうし、それゆえに、アメリカはその内戦に関与・介入せざるを得ないのだ。したがって、どちらかと言えば、カルザイ時代のアフガニスタンに似た将来になるだろう。私は、今回の核施設空爆の後、すぐにXで「イラン戦争」と名付けて投稿した。現在のところ、誰もこの事件について「イラン戦争」という語を使う者はいない。
アメリカは、再び中東(西アジア)の戦争の泥沼に引き摺り込まれる。それはイスラエルの意思と戦略の貫徹であり、中東の戦争に永遠にアメリカを張り付けたいイスラエルの強い思惑に引っ張られて、CIAがそれに応じ、ホワイトハウス(トランプ)をその方向に動かすのである。イスラエルがアメリカの〝イラン戦争″を主導し操縦するのだ。6月22日は、1941年に独ソ戦(バルバロッサ作戦)が始まった日だった。偶然の一致だろうが、因縁めいていて何か恐怖で戦慄を覚える。第三次世界大戦が始まった日にならなければよいがと願う。