2025年7月17日木曜日

「撃たれて死ぬか、飢えて死ぬかの二択」 7月末には飲み水がなくなる ガザの現状

  村元菜穂さんは、5月20日から7月3日まで国境なき医師団”の物流などの管理を担当するチームのリーダーとして、ガザ南部のナセル病院のほか、中部などでも活動し、医療施設や水道の維持、物資の調達、安全管理などを行いました。

 その後ガザ地区から移動したフランスで村元さんはFNNのオンライン取材に応じました。
 FNNの加藤崇記者が報じました。
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「撃たれて死ぬか、飢えて死ぬかの二択」国境なき医師団で活動する日本人スタッフ語るガザの現状「7月末には飲み水がなくなる危機」
              加藤崇 FNNプライムオンライン 20257月16日

パレスチナ自治区ガザではイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続き、支援物資の搬入が3月に停止されるなど、その後も極めて不安定な状況だ。ガザ地区で活動していた「国境なき医師団」の村元菜穂さんは7月末には病院が機能を停止し、飲み水の提供もできなくなる可能性があると懸念を示した

40度の暑さの中…7月末には飲み水なくなる危機も
村元菜穂さんは、5月20日から7月3日まで物流などの管理を担当するチームのリーダーとして、ガザ南部のナセル病院のほか、中部などでも活動し、医療施設や水道の維持、物資の調達、安全管理などを行っていた。

村元さんはガザ地区から移動したフランスでFNNのオンライン取材に応じてくれた。
――ガザ地区への支援物資の搬入が制限されているなか、病院の状況は?
村元菜穂さん:医療品は全く足りていません。物資も3月2日から封鎖されていて、私がいた6週間の中では4台のトラックしか入ってきませんでした。それも医療品のみで他の物質は何も入っておらず、燃料が足りない状況でした。今、ガザでは電気は通っていないので、病院で何を動かすにも発電機で動かしている状態なので、燃料が足りなくなると病院を動かすことができません
燃料は発電機や車、そして海水を飲み水に変える機械に使っています。患者さんへの飲み水のほか病院の周りにいる方々にも無料で水を配布していますが、機械が動かなくなると飲み水がなくなる。水はやっぱり一番生きるために必要なもので、今、ガザ地区では暑さが40度近くまで上がっていて水がない状況は健康に大きな影響を与えることになります。

村元さんは「このまま続けば、在庫は2週間。診療所も閉めなきゃいけないですし、海水を飲み水に変える機械をシャットダウンしないといけない。すると何千という方々の飲み水がなくなります。7月を越えられるのか分かりません」と危機感をあらわにした。

イスラエル軍はドローンで監視…医療施設も標的に
――イスラエル軍の攻撃で身の危険を感じたことは?
村元菜穂さん:私たちが支援している場所は、一応、イスラエル軍も把握しているという話ですが、毎日のように空爆は聞こえていましたし、ドローンで上空から監視はされていました。
私がいた診療所でも近くで強い空爆が一度、ありました。空爆で私たちの診療所の窓が割れたり、ドアが開かなくなったり、職場の近くにあった木が吹っ飛んで、私たちの倉庫に、屋根に落ちたりして、診療所は中断せずにそのまま稼働していたんですが、診療所も病院も標的になっていて、治療の継続が難しくなっている状況だと思います。

スイカ1玉6600円と超高額に ガスはなく薪を燃やして生活
――支援物資が限られる中、ガザ市民の生活は?
村元菜穂さん:現地スタッフで給料をもらっている方々でも一日に一食しか、食べられない状況です。1回、40度近くある中、スタッフが働いていたので市場で何かを買ってきてほしいと頼んだのですが、その時に買ってきたのがスイカ1玉、40ドルか45ドル(約6600円)くらいでした。市民が手を出せる金額ではありません。
現金で支払わないといけないのですが、現金も出回らなくなってきているので、毎日、スタッフは次に何を食べ、今度、自分の子供たちに食べさせることができるのか、何を食べられるのか、不安です。料理をするにも前はガスがあったんですけれども、今、ガスがないので、薪を買って料理をしたり、ほとんどの方がテントに住んでいる状況です。

撃たれると分かっていても…毎日、何千人も食料を取りに行く
アメリカとイスラエルが主導する人道支援団体「ガザ人道財団」をめぐっては国連機関が7月11日、援助地点などで少なくとも798人の殺害が確認されたと発表した。イスラエルはハマスに支援物資が渡らないための措置と主張しているが、国際社会から批判の声が上がっている。

村元菜穂さんガザ人道財団が食料を渡している場所が危険な退避要求場所です。そこでいつ開くか、わからない状況で、多分、夜中から待っていて、ちょっとでも動いたりすると射撃されることがあるという状況です。

さらに村元さんは「この支援システムは、国境なき医師団としては非人道的であり、支援を紛争の道具としているとしか思えません」と訴える。

村元さんは医療施設の維持、物資の管理などを担当
村元菜穂さん:私は最初「撃たれる、死ぬ」って分かっているんだったら、市民はガザ人道財団の支援場所に行かなくなるだろうと思っていたんですけど、それでも毎日毎日、何千っていう方々が食料を取りに行こうとする。飢えで死ぬのか。危険を冒してでも小麦粉をもらいに行って、自分の子供や妹とかにご飯を与えられることができるか、二択っていう感じになっています

少女は私たちに「戦争を終わらせて欲しい」と訴えてくる
村元さんは「ガザの市民はハマス・イスラエルとかじゃなくて、停戦を求めています。彼らは何も悪いことはしていないなか、毎日、空爆に怯えながら過ごしている。ただ普通に生きたい、それだけだと思います」と話す。

村元菜穂さん:診療所にいて10歳くらいの女の子が近寄ってきてずっと訴えかけてきたんです。ボロボロのサンダルをはいて、ボロボロの洋服を着て、見るからにご飯も食べていない。私は最初、お金が欲しいとかご飯をちょうだいって、言っているのかと思ったんですが、「早く戦争を終えて欲しい」と、目を見て、まっすぐにそう、私に言ってきたんです

ガザの人で家族や身内を亡くしていない人は多分いないと思います。そんな中でも1年半過ごしてきています。ドローンの攻撃で子供だろうが女性だろうが武器を持っていなくても撃たれる。人間として扱われていない、そんな状況がこのままでいいとは思いません。

日本人にガザで起こっていることに関心を持って欲しい
イスラエルとハマスの停戦協議は続いている。しかし、ハマスはイスラエル軍のガザ地区からの完全撤退と恒久的な停戦を求めているのに対し、イスラエルは撤退は一部のみ、また停戦も一時的なものだとする主張を変えておらず、合意の見通しは立っていない。
こうしたなかイスラエルはハマスから譲歩を引き出すため、ガザ全域で攻勢を強めていて、市民の犠牲者が日々、増え続けている状況だ。
村元さんは日本人にガザで起きている事に関心を持って欲しいと訴えた。

村元さんは日本を含む国際社会に関心を持って欲しいと訴える
村元菜穂さん:今、ガザ地区でイスラエル軍が行っている殺害は、国境なき医師団、私としてもジェノサイドと言えると思います。このまま国際社会が見逃すことができないと思います。

日本の皆さんには、ガザで起きていることが遠いことではなく、本当に起きていることだと信じていただきたいです。毎日、空爆で亡くなっている人たちがいるということ。明日、隣で寝ている妹や子供が生きているかどうか、分からない。何の保証もないという現実。日本の皆さんがガザに関心を持つこと、それだけでも小さなステップになると思っています。
         【取材・執筆=フジテレビ イスタンブール支局 加藤崇】

排外主義の矛先は 差別・分断 次々(しんぶん赤旗)

 参院選では参政党の躍進が予想されています。
 彼らは極右と位置づけられていますが、その政策については植草一秀氏が繰り返し「投票前に少なくとも参政党の公約と憲法改正草案を熟読」すべきであると指摘している通り、実に酷いものです。
 15日、日本ペンクラブは参院選における差別言動やデマの拡散に抗議する緊急会見を開き、「選挙活動に名を借りたデマに満ちた外国人への攻撃は私たちの社会を壊します」との声明を発表しました。声明は「少しずつでも成熟し前進してきた民主主義社会が、一部政治家によるいっときの歓心を買うための『デマ』や『差別発言』によって、後退し崩壊していくことを、私たちは決して許しません」と、一部政党が外国人排斥などを訴えている現状を厳しく批判しました。日本ペンクラブが選挙期間中に声明を出すのは初ということです。
 東京新聞が報じました(声明全文付)。

 15日付しんぶん赤旗が「排外主義の矛先は 差別・分断 次々」という記事を出しました。
「参院選で外国人を敵視する排外主義の潮流が出ています」として、その特徴は〝他者の存在、他者の尊厳と人権を認めない″ことにあり、その排外主義の攻撃の矛先は、やがてすべての人々に向けられるというのが歴史の教訓であると述べます
 そして参政党のデマ攻撃を【外国人敵視】、【女性蔑視】、【終末期医療】、【侵略戦争美化】の4本の柱に分けて具体的に検証しています。
 例えば【外国人敵視】では、参政党の主張は、具体的な実態とは異なるデマであることをデータ的に実証し、「生活の困難や生きづらさの原因が自公政権の悪政にあることから目をそらさせ、国民の不満や不安を外国人に向けさせる」というところに、「自公政治を免罪する排外主義の最悪の役割」があると指摘します。
 同様に【終末期医療】では、参政党の「終末期医療の全額自己負担化」という公約は、〝他者の存在、尊厳と人権を認めない″という排外主義の特徴を示すものであり、お金のない人の「生きる尊厳」を国家が強制的に奪うことを意味するものだと批判しています。
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日本ペンクラブが緊急声明「選挙活動に名を借りたデマに満ちた外国人への攻撃は私たちの社会を壊します」
                         東京新聞 2025年7月15日
 作家らでつくる日本ペンクラブは15日、参院選期間中の差別言動やデマの拡散に抗議する緊急会見を開き、「選挙活動に名を借りたデマに満ちた外国人への攻撃は私たちの社会を壊します」との声明を発表したクラブが選挙期間中に声明を出すのは初という。

◆「SNSではうそであるほどおもしろく、メジャーになっていく」
 クラブ理事らが日本ペンクラブビル(東京都中央区)で会見した。声明では「少しずつでも、成熟し前進してきた民主主義社会が、一部政治家によるいっときの歓心を買うための『デマ』や『差別発言』によって、後退し崩壊していくことを、私たちは決して許しません」などと、一部政党が外国人排斥などを訴えている現状を批判した。

 桐野夏生会長は、こうした背景には貧困があると分析。「抑圧されたものが外国人や女性など弱いものに向けられる」と指摘し、これらの行動が「差別や偏見に結び付いていくという発想、意識がまだないと思う」と述べた。
 中島京子常務理事は「国の中枢にデマを良しとする政治家が入るようになれば、デマを正当化するために真実が隠されたり、ゆがめられたりすることが起こっていく」と語った。
 山田健太副会長は「SNSでは(情報が)うそであるほどおもしろく、メジャーになっていく。報道されると気になって調べ、アルゴリズムで次々と個人のスマートフォンに情報が流れ、慣れ親しんでしまう状況があり、あなどれない」と警鐘を鳴らした。(鈴木里奈)

 【日本ペンクラブ緊急声明 全文】
「選挙活動に名を借りたデマに満ちた外国人への攻撃は私たちの社会を壊します」
 私たちは、このまま社会が壊れていくのを見過ごすことはできません。
 参議院選挙を通じ、与野党を問わず、一部の政党が外国人の排斥(はいせき)を競い合う状況が生まれています。しかも、刺々(とげとげ)しい言葉で、外国人を犯罪者扱いし、社会の邪魔者のように扱うことが、さも日本の社会をよくするかのように振る舞っています。
 「違法外国人ゼロ」「日本人ファースト」「管理型外国人政策」など、表現の仕方は違えど、外国人を問題視するような政策が掲げられ、「外国人犯罪が増えている」「外国人が生活保護や国民健康保険を乱用している」「外国人留学生が優遇されている」といった、事実とは異なる、根拠のないデマが叫ばれています。これらは言葉の暴力であり、差別を煽(あお)る行為です。こうしたデマと差別扇動が、実際に関東大震災時の朝鮮人虐殺等に繋(つな)がった歴史を私たちは決して忘れることができません。
 私たちはこれまで、過去の反省に立って多文化共生社会をめざし、すでに多くの自治体ではそのための条例も施行されています。そうして少しずつでも、成熟し前進してきた民主主義社会が、一部政治家によるいっときの歓心を買うための「デマ」や「差別的発言」によって、後退し崩壊していくことを、私たちは決して許しません
 民主主義社会を守るために、有権者がいま一度立ち止まり、自身の一票を大切に行使することを願います。
                              2025年7月15日
                            一般社団法人日本ペンクラブ
                               会長 桐野夏生
                               理事会一同


排外主義の矛先は 差別・分断 次々
                       しんぶん赤旗 2025年7月15日
 参院選で、外国人を敵視する排外主義の潮流が出ています。その特徴は、者の存在、他者の尊厳と人権を認めない″ことにあります。排外主義の攻撃の矛先は、やがてすべての人々に向けられるというのが歴史の教訓です。現に、この参院選でも、女性の価値を産む産まない″で決める蔑視発言、命の尊厳を否定する終末期医療の全額自己負担″など、次々と差別と分断をつくりだしています。その攻撃の特徴と問題点を考えてみました。

公政治免罪のデマ
外国人敵視
「外国人は生活保護を受やすい」「外国人の犯罪増えて治安が悪化している」「中国人などに土地が買い占められている」など、根拠のないデマやウソがふりまかれています。
 事実は、この10年間で日本に暮らす外国人は約1・7倍に増えたのに、生活保護を利用する外国人は約7万5千人から約6万5千人に減少。その半数は、長年税金も年金も納めてきた在日コリアンです。また外国人の犯罪も2005年をピークに減少、23年は1万5541件と約3分の1です。
 外国人による不動産投資の増加第2次安倍政権の規制緩和とアベノミクスによる円安の結果です。とくに2013年に制定された「国家戦略特別区滅法」などで大規模再開発を後押しした結果、「億ション」やタワーマンションの乱立となり、どんどんマンション価格が上がっていきました。それでも、10億円以上の不動産売買に占める海外投資家によるものは約4分の1です。
 ところが、参政党の神谷宗幣代表はこうした事実を無視して「いい仕事につけなかった外国人が逃げ出して、万引きなど大きな犯罪が生まれ、治安が悪くなる」などと発言。同党の公約では「医療保険や生活保護の濫用を防ぐための利用条件を明確化し、日本国民の負担が不当に増えることを防ぐ」と明記しています。
 これも実態は、国民健康保険加入者のうち外国人は約4%で、医療費全体に占める外国人の医療費は39にとどまっており医療保険制度の重要な支え手になっています。

 生活の困難や生きづらさの原因は、自公政権の悪政にあります。そこから目をそらさせ、国民の不満や不安を外国人に向けさせる-ここに、自公政治を免罪する排外主義の最悪の役割があります

戦前の「家制度」復活
女性蔑視
 排外主義の矛先は、男女平等にも向けられています。
 参政党の神谷代表は第一声で、「高齢の女性は子どもを産めない」「男女共同参画は、間違い」などと、とんでもない女性蔑視の発言を行い、産む産まないで女性の価値を決めるな″と全国で抗議の声があがっています
 神谷氏の発言の根幹には「『将来の夢はお母さん』という価値観を取り戻す」(同党の政策)というように、女性の社会進出を敵視し、戦前の「家制度」を復活させようという発想があります。神谷氏は「世界経済フォーラム」が発表するジェンダー指数にも「ダボス会議を開いて彼らが勝手に決めている。日本は日本でいいじないか」「(ジェンダー平等は)外から一部の活動家が言っているだけ」と敵視しています。
 しかし、ジェンダー指数は、国や世界銀行などの統計データに基づいてデータ化したもの。ジェンダー平等も長年の男女差別解消を求める運動や、フラワーデモなど性暴力や差別の根絶など当事者の運動として広がったもの。「外から」の運動ではありません。
 排外主義はここにも分断を持ち込もうとしているのです。

「生きる尊厳」を強奪
 【終末期医療
 排外主義の特徴は、他者の存在、尊厳と人権を認めない″ことにあります。その危険をはっきりと示したのが参政党の「終末期医療の全額自己負担化」公約です。同党は「過度な延命
治療に高額医療費をかけることは、国全体の医療費を押し上げる要因」だから自己負担化は必要だと合理化しています。
「終末期医療の全額自己負担」について同党は年代を限定しておらず、現役世代や子どもを含むすべての人が対象です。「全額自己負担化」は、子どもやパートナーの最期をみとる親や配偶者に対し、少しでも緒に過ごしたかったら自分で金を出せというに等しいものです。
 日本老年医学会は「高齢者の人生の最終段階における医療・ケアに関する立場表明2025」で「尊厳」とは「本人に何かを押し付けたり、支配したりすることを否定し、本人の生き方、価値観や意向を尊重すべきこと」としています。
 参政党の公約は、お金のない人の「生きる尊厳」を国家が強制的に奪うことを意味します

やがては国民全体に
 侵略戦争美化
 排外主義の矛先がやがては日本国民自身に向けられてくることは歴史の教訓です。それを地で行っているのが神谷氏の発言です。
 神谷氏は、日本の侵略戦争を「大東亜戦争」と呼び、「(日本が)アジア全てを侵略して自分たちの領土にしようという領土的な野心で起こした戦争ではない」(3日、外国特派員協会)と侵略の事実を否認。「自衛戦争という考え方もできる」と美化・肯定しまた。
 また、国民主権をかかげ天皇制・侵略戦争反対を主張した日本共産党を徹底弾圧した治安維持法について「悪法というが共産主義者にとっては悪法だった。共産主義者を取り締まるものですから」(12日)と正当化しました。治安維持法の核心は共産主義の取り締まりではなく「国体」=天皇絶対の国家体制に反対するものに極刑(死刑)を科すものでした。こうして広く国民を監視し、自由と民主主義を圧殺したのが治安維持法でした。
 戦後の民主主義は、侵略戦争と天皇制ファシズムヘの反省に立つもの。戦前の美化は戦後民主主義の全面否定につながるものです。

 同党の「新日本憲法」(構想案)は、日本を「天皇のしらす(治める)君民一体の国家」とし戦前をよみがえらせようとするものです。

ピノッキオ遊園地と参政党/ゆ党拡大がもたらす暗黒日本(植草一秀氏)

 植草一秀氏が掲題の2つの記事を載せました。
 参院選は終盤戦に入りました。植草氏は繰り返し「参院選では参政党への投票を忌避するべきだ」と警告します。
 そして「参政党は正体を隠していない。参院選に向けて公約も公表しているし、憲法改正草案も示している。したがって、参政党および同党候補者に投票する前に、少なくとも公約と憲法改正草案を熟読することが必要だ」と述べます。
 極右政党である参政党の排外主義の害毒については別掲の記事も指摘しているところです。しかし選挙にはおかしな現象が伴うことがあり、今度の参院選では参政党が躍進するという観測が出ています。もしも実現すれば日本に取って極めて不幸なことです。

 ではその他の「ゆ党」が勢力を伸ばすのはどうかですが、植草氏の見解は次の通りです。
 参院選で自公が50議席に達しなければ自公の政権与党は衆参両院で過半数を割り込むことになるので石破首相は引責辞任に追い込まれます。しかし政権が野党に移ることはなく、「自公+ゆ党の一部」の政権が出来て、この勢力が憲法を改変する可能性が高く、日本政治支配は暗黒しかもたらさない可能性が高いと予想しています。
 そして本来主権者が伸長させねばならないのは「野党」なのに、若者世代「ゆ党」を支持していると伝えられ、「ゆ党」の側は若者が飛びつく材料を意識して掲示しているのが現下の参院選の実態です。「石破首相が辞任して新しい政権の枠組みが構築されても日本政治は刷新されない。そのことが十分に理解されるまで日本政治のダッチロールが持続する可能性が高い」と述べています。
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ピノッキオ遊園地と参政党
                植草一秀の「知られざる真実」 2025年7月14日
7月8日付ブログ記事「参政党に関する注意喚起」 https://x.gd/HkYOY 
メルマガ記事「参院選・隠された最大争点」  https://foomii.com/00050 
に記述したが7月20日に投票日を迎える参院選では参政党への投票を忌避するべきだ

7月12日のTBS「報道特集」が
選挙運動の名のもとに露骨なヘイトスピーチが」参議院選挙 急浮上の争点“外国人政策”に高まる不安の声
を放送した。

参院選で一部勢力が外国人排除につながる言動を示している。これに対する警鐘を鳴らす報道。参政党は「偏向報道」だと抗議している。
参政党は「ワクチン懐疑説」、「オーガニック農業推奨」などで支持を増やしてきた。
ワクチンは極めて重大な悪影響をもたらしていると考えられ、農業においては食の安全の観点からオーガニック農業の推奨は正しいと評価する。
しかし、これらの施策につられて参政党を支持するべきでない
参政党の歴史認識、国家観、憲法観を知らずに参政党を支持することは、ピノッキオが恐ろしい場だと知らずにプレジャー・アイランドに喜んで足を踏み入れるのと類似する行為と思われる。

参政党は正体を隠していない。
参院選に向けて公約も公表しているし、憲法改正草案も示している。
したがって、参政党および同党候補者に投票する前に、少なくとも公約と憲法改正草案を熟読することが必要だ。
公約 https://sanseito.jp/sanin_election_27_policy/ 
「参政党が創る 新日本憲法(構想案)」https://sanseito.jp/new_japanese_constitution/ 

参政党は改憲を提唱していない。参政党は「創憲」を提唱している。
新しく憲法を「創る」というもの。これは「憲法改正」に該当しない。
日本国憲法は憲法改正の条文を置いているが、「憲法制定」の条文を置いていない。
日本国憲法が認めるのは憲法の基本原理を変えない範囲内での「改正」であって、基本原理を変える憲法の「制定」を認めていない。
憲法の基本原理を変えるのは憲法の破壊であって憲法の改正でない。
憲法破壊の企ては刑法第77条の「内乱罪」に該当するものと言える。

参政党は天皇中心の国家を創設することを目指す。
参政党が掲げる新しい憲法は大日本帝国憲法に類似するもの
この提案に賛同するのかどうかが核心

その参政党が掲げているのが「日本人ファースト」であり、このスローガンの下で「ヘイト」行動が観察されている
「外国人排除」が喧伝されていることに「報道特集」が警告を発した。
日本政府の外国人に対する対応には二つの大きな特徴がある。
第一は一部職種における労働力不足を外国人労働力で賄おうとする強い意思。
第二は外国人労働者に対する深刻な人権侵害。
入管法が改正されてきたが、その改正の底流を流れる二つの思想が上記の二点。
国内労働者が求人に応じない分野で企業は安価な外国人労働力確保を求め、国がその要請に全面的に応えてきた。
他方で、在留外国人に対する管理を戦前の特高警察が担ってきた系譜が引き継がれ、いまなお前近代の外国人管理政策が維持されている。
外国人労働者が激増している背景に上記の事情がある。

しかしながら、日本で外国人犯罪が増加しているわけではない。事実と異なる主張が流布・拡散されている。
国民生活が疲弊するなかで国民の不満を外国人に向けさせる手法はナチスの手法そのもの。
この扇動に日本の主権者は乗るべきでない。「報道特集」の問題提起は極めて正当なものである。
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ゆ党拡大がもたらす暗黒日本
               植草一秀の「知られざる真実」 2025年7月15日
石破首相が窮地に追い込まれている。参院選は125の議席をめぐる戦い。参議院定数248の過半数が125。非改選議席は自公が75、非自公が48。
新たに選挙で選出される125議席のうち、自公が50議席を獲得すれば過半数を維持できる。
極めて低く設定した勝敗ライン。万が一、この勝敗ラインを下回れば自公の政権与党は衆参両院で過半数を割り込むことになる。石破首相は確実に引責辞任に追い込まれる
政権維持が困難になるからだ。

自公政権を維持することは困難で代替策が講じられる。連立内閣組み換えになるだろう。
非自公が結束すれば非自公政権を樹立できるが非自公勢力のなかの分断が深刻。
非自公勢力は「野党」と「ゆ党」によって構成されている。
「ゆ党」は「見た目は野党、中身は与党」。「野党」より「与党」に近い。
今回の参院選では「ゆ党」が伸長すると見られている。
「ゆ党」は新しい政権の創設に際して「野党」と共闘せずに、自公との連携を優先させる可能性が高い。

参院選で自公が過半数に転落すると政治が大きく変わるとの印象が持たれやすいが、自公とゆ党が引き続き政治の実権を握るなら大きな変化は生じない。むしろ懸念が拡大する。
自民が一気に国民支持を失った背景は金権腐敗。
不正な裏金を受領しながら、その全貌さえ明らかにしない。
国民が窮乏生活を強いられているのに政権与党は金権まみれの政治を続けている。
このことに対して国民が怒り心頭に発している

問題改善に何が必要か。答えは明白。企業献金を全面禁止するべきだ。
金の力で政治が支配される。政治の側は金儲けを目的に政治を行う。この根幹を断ち切るのが企業団体献金の全面禁止。
国民は巨額の政党交付金を負担している。政党交付金制度を創設する際に企業献金を廃止することが確約された。ところが、政党交付金制度が創設されたのに企業献金制度を維持している
2025年度の通常国会で企業団体献金全面禁止を法定化できた自公と国民民主が結託して、法律制定を阻止した

インフレが進行して国民生活が疲弊している。国民生活を支えるために消費税減税断行が求められている。
2025年度の通常国会で消費税減税を検討すべきだった。しかし、所得税の所得控除を一部改訂しただけで終わった。財務省と自公、国民民主が結託して消費税減税を葬った。
自公とゆ党が日本政治を支配すると、この勢力が憲法を改変する可能性が高い。
自公とゆ党による日本政治支配は暗黒しかもたらさない可能性が高い。

主権者が伸長させねばならないのは「野党」。
しかし、若者世代が「ゆ党」を支持していると伝えられている。「ゆ党」の側は若者が飛びつく材料を意識して掲示。しかし、その内容は極めて不確かだ。
参院選結果を受けて石破首相が辞任して新しい政権の枠組みが構築されても日本政治は刷新されない。そのことが十分に理解されるまで日本政治のダッチロールが持続する可能性が高い

「財務省解体と消費税ゼロを問う」シンポジウムが7月27日(日)に東京湯島の家電会館で開催される。https://isfweb.org/post-58186/
日本財政の闇に光を当てて、取られるべき施策を検証する必要がある。
シンポへのお早目の参加申し込みをお願いしたい。
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★経営指導の神様と言われた故・舩井幸雄氏の次男で(株)舩井本社社長の舩井勝仁氏と対談しました。
対談テーマは
【参院選とその後、政治経済学者の植草一秀先生は、こう見る (プロローグ)】
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17- 西側の停戦要求は時間稼ぎだと認識しているロシアは攻撃の手を緩めない

 櫻井ジャーナルに掲題の記事が載りました。
 トランプがウクライナの停戦を目指しているのは、選挙前に「すぐに停戦を実現させられる」と豪語していたことがあるからで、実際に停戦を目指してプーチンとは何度も電話会談を行いました。
 そして当初はロシア寄りの停戦案をゼレンスキーに提示したのですが拒否されました。ゼレンスキーには英国の情報機関MI6がついているし、NATOからの全面的な支援も受けているので簡単には行かないのでしょう。そもそもゼレンスキーにすれば保身上からもネタニヤフと同様に停戦を実現させたくない筈です。
 トランプはその後もプーチンとは電話会談を行っていますが 思うように進展しないので、業を煮やしてプーチンに、「50日間の猶予期間(9月上旬)を与えるのでその間に停戦に向かうように」と要求し、「そうしなければロシアに対し100%の関税を課し、ロシアの貿易相手国に対しても二次制裁を発動する」と、伝家の宝刀?を抜きました。
 しかし「停戦合意」については、2015年の停戦合意:「ミンスク2」協定が、ウクライナ政権軍の拡充強化のための準備期間の確保が当初からの目的であったことを、当時の西側首脳(仏と独)が近年明らかにしました。プーチンとしてはその「二の舞」は絶対に避けなければならないので、停戦の諸条件については譲れないものがあるのでしょう。
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西側の停戦要求は時間稼ぎだと認識しているロシアは攻撃の手を緩めない
                         櫻井ジャーナル 2025.07.16
 ドナルド・トランプ米大統領は思い通りに事が進まないため、苛立っている。ウクライナにしろ、イランにしろ、アメリカ政府の情勢分析が間違っていたからだが、その不満をロシアのウラジミル・プーチン大統領にもぶつけた。トランプは7月14日、ロシア政府が自分の要求を50日以内に呑まなければ、ロシアに100%の関税をさらに課すほか、ウクライナに防空ミサイルを供与するとしている

 大統領選挙の最中からトランプはウクライナでの戦闘はすぐに終わらせると大見得を切っていたが、ロシア政府はウクライナの非軍事化と非ナチ化、そして西側諸国は凍結したロシアの資産を返還し、ウクライナに対しては中立の立場の維持と領土の「現実」を認めるように要求している。それが受け入れられなければ、軍事的に解決するという姿勢だ。「ミンスク合意」の轍を踏むことはないだろう

 しかし、トランプの関税政策は世界経済を混乱させるだけで、ロシア経済には打撃になっていない。プロレス興行におけるパフォーマンスと同じ程度の演出でロシアと戦っているようなイメージを振りまこうとしているのかもしれない。
 それに対し、ロシア軍は14日から15日にかけて、ウクライナの防空システム軍事飛行場をドローンやミサイルで攻撃した。ウクライナの公式発表でも23機以上のドローンが防空網を突破、7か所の重要インフラに打撃を与えた。

 報道によると、ロシア軍はウクライナ全土の飛行場を標的にし、ムィコラーイウのマルティニフカ飛行場はドローンの攻撃で大規模な火災が発生ザポリージャ空港では航空機格納庫と管理棟が破壊されチェルニーヒウ郊外の飛行場も攻撃され、ジトーミルの軍用飛行場付近でも爆発が報告されている。オデッサの戦略電子情報センターには短距離弾道ミサイルのイスカンデルMが命中した。ロシア軍はアメリカ製防空システムのパトリオットだけでなく、ドイツ製のIRIS-T発射装置やP-18レーダー基地も破壊している。

 オデッサは戦略的に重要な港湾都市で、西側の中にはここを拠点にして黒海を支配しようと目論んでいる国もある。2014年5月2日、キエフのクーデター政権はネオ・ナチの一団をオデッサへ送り込み、反クーデター派の住民を虐殺、その地域を制圧したが、西側にとってそれだけ重要な場所だということでもある。そのオデッサにフランス軍が入ったという話も伝えられているが、ロシア軍は容赦なく攻撃するだろう。