2024年6月26日水曜日

生活保護申請を3回拒まれ 女性は身を寄せた先で暴行死

 水際作戦と呼ばれる生活保護申請自体を受け付けないとする憲法違反のやり口は実に1981(昭和56)年に出された厚生省課長通知(123号通知)に端を発しています。水際作戦が目立ち出したのは小泉(・竹中)政権時で第2次安倍政権になってからは更に強化されました。
 全国で初めて さいたま地裁が「生活保護申請拒否は違法として埼玉県三郷市に賠償命令」を出したのは13年2月20日でした。しかしその後も埼玉県桐生市などでは日常的に行われていることが明らかにされています。
  13.2.20)生活保護:申請拒否は違法の判決
    23.12.30)5人がかりで怒鳴られ 生活保護の水際作戦 常態化 桐生市
 桐生市でのケースはその後も繰り返し報道されているところですが、しんぶん赤旗が今回、新自由主義を標榜する「維新市政」下の大阪市で、夫の暴力(DV)から逃れ生活困難に陥った女性(当時22)が、市の福祉事務所に再三 生活保護の申請したのに拒否されたために、身を寄せた知人男性から暴行され死亡した事件を報じました。
 新自由主義の本質と言ってしまえばそれまでですが、何故 窓口担当者や担当部署はここまで冷酷になれるのでしょうか。
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生活保護申請を3回拒まれ 娘は身を寄せた先で暴行死 母「命左右する自覚を」
                        しんぶん赤旗 2024年6月24日
 夫の暴力(DV)から逃れ生活困難に陥った女性(当時22)が、大阪市の福祉事務所に再三、生活保護の申請を拒否された末に、身を寄せた知人男性から暴行され死亡する事件が起きました。女性の母親は「真剣に話を聞いてれたなら、娘は生きて笑顔でいたのではと無念を語ります。  (速水大地)

 2019年、夫のDVから逃れた女性はうつ状態になって徐々に働けくなり、身長155cmに対し体重は30kgまで激減。心療内科に通院していましたが、コロナ禍で入院できませんでした。

番号票投げつけ
 2021年、母親に支えられて区役所を訪れるも回目は「給与明細、賃貸契約書が必要と言われ、2回目は母のみで訪れましたが「申請は本人がして」と帰されました。22年、最初の相談から8ヶ月後、女性は書類をそろえ母親と3回目の申請に訪れます。女性の所持金はわずか600円ほどでした。
 女性がパック障害・摂食障害で入院が必要なこと、料金滞納で電気・水道・ガスが止
まっており、夫はDVで接見禁止令が出ていることを確認しながら、職員は「夫と連絡し扶養を求めよ」「離婚届を出さないと生活保護はできない」などと発言したといいます。
 職員の発言を記録したいとメモ用紙を求める母親に、職員は受付番号票を投げつけ「生活保護に例外はない申請用紙は出さない」と発言。女性は「もういいです。私みたいな人間の屑が生活保護を受けるなんて,みなさんの税金で申し訳ない」と泣き崩れました。

 離れて住む母親も家の状況からすぐに娘と住むことができず、困り果てていたところに女性の知人男性が声をかけ、女性は男性のもとに身を寄せますが、数日後に金属製のもので数十回草市回殴打され失血死。母親は事件の詳細を大阪市に通報しましが、市側は「(女性が)申請を拒否したと記録にあり、最終的に申請に至っていない」と回答。本紙の取材に「回答の通り。正当な対応だった」と答えました。
 生活保護法では、申請を望む人に早急に援助するよう定められ、口頭での申請も可能です。母親は「大阪市はが申請を拒否たというが、申請の意思があるから相談に行くんです。面談記録では『所持金1000円』とされ、娘にとって400円の重みを理解せず追い返した」と怒り正式な謝罪を求めています

維新市政の下で
 全大阪生活と健康を守る会連合会の大口耕吉部会長は「DVで接見禁止になっている夫に扶養を求める職員の発言は、命にかかわる問題であり違法だ」と強調。「大阪市は維新市政のもとで保護世帯への締め付けが加速し、一部の職員の対応も変質。独自のガイドラインで『助言指導』と称して求職活動を事実上強要、稼働年齢層(1564歳)を違法に生活保護から排除しでいる。そんな行政のもとで生まれた最悪の事件と言わなければなりません」と指摘します。
 母親は「大阪市の職員には人の命を左右する自覚を持って、困っている市民を救ってほしい」と語りま

ガザ攻撃 米軍兵士「良心的兵役拒否」 集団殺害加担できないと

 しんぶん赤旗の5つの記事を紹介します。
集団殺害加担できない ガザ攻撃米軍「良心的兵役拒否」
 イスラエルによるガザ攻撃をバイデン大統領が支援し続けるなか、米軍兵士のなかで「良心的兵役拒否」を申請する動きが出ています。バイデン政権のイスラエル擁護姿勢に当初から懐疑的だったイスラエル・パレスチナ担当のミラー国務副次官補6月で退任します。

イスラエル軍 高火力爆弾も ガザ市で42人 ラファで25人殺害
 イスラエル軍は22もガザ北部のガザ市を攻撃し少なくとも42人を殺害し、ラファ西部マワシ地区では25人を殺害しました。救助隊のメディア担当者ハムド・バサル氏は「今回の攻撃は以前のものと異なる。イスラエルはより高火力な爆弾を使った」と話しました。

人道支援建物空爆 8人死亡
 イスラエル軍は国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の職業訓練校で、現在避難民の家族に支援を提供している建物を空爆し、8人が死亡しました。UNRWAのジュリエット・トーマ報道官は、「戦争の開始以来、われわれの建物約190棟が攻撃を受けた。これはガザのわれわれの建物の大多数を占める」と指摘。紛争の中でUNRWAの職員193人が殺害されたと付け加えました。

ヒズボラ、イスラエル打倒準備を完了
 ハマスがイスラエルを攻撃した翌日10月8日戦闘に加わったレバノンのヒズボラは、ガザで恒久的停戦が合意されるまで、現在行われている北部での報復攻撃は継続されるとし、ヒズボラ指導者ハッサン・ナスララは、「新たな紛争が発生した場合、国境を越えてイスラエル北部の一部を占領する計画をヒズボラは持っている。また必要とあらば戦争を拡大す用意もある」と発表しました。2006年の南レバノン侵攻はイスラエル軍の完全敗北に終わっています

「ラファの次はヒズボラ対処」 イスラエル首相
 イスラエルのネタニヤフ首相は23日、パレスチナ自治区ガザでの軍事作戦に関し「最南部ラファでの激しい戦いは終わろうとしている」と述べ上で、ラファの後は「北に向き合うことになる」と指摘し、ハマスと連携するレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラヘの対処が次の重要課題になるとの認識を示しました。
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集団殺害加担できない ガザ攻撃米軍「良心的兵役拒否」
                        しんぶん赤旗 2024年6月25日
 イスラエルのネタニヤフ政権によるガザ攻撃を米国のバイデン大統領が支援し続けるなか、米軍兵士のなかで「良心的兵役拒否」を申請する動きが出ています。このほど米メディアの取材にこたえ、「ジェノサイド(集団殺害)」に加担できないと語りました。
 米NBCテレビは22日、独自取材として、現役空軍兵士の2人がイスラエル軍に武器を供与し続ける米軍の対応を理由に、良心的兵役拒否を申請し、軍役から離れる意思を示したと伝えました。
 スペイン南部ロタの米海軍基地に駐留するラリー・ハーバート氏と、米テキサス州のホアン・ベタンクールの2氏で、ともに空軍兵士です。
 ハーバート氏は武器供与の仕事に携わっていたとし、ガザの少女ヒンド・ラジャプちゃん(6)が、ガザでイスラエル軍の砲撃で殺害された事件をきっかけに米軍の役割に疑問を持ったと述べました。
 ベタンクール氏は、ワシントンのイスラエル大使館前で、別の米空軍兵士がガザヘの攻撃に抗議して焼身自殺を図った事件(2月)が「軍への参加に疑問を持った瞬間であり、パレスチナで起こっている残虐行為に対して声をあげることを後押した」と述べました
 NBCは、両氏とも、イスラエルによる攻撃の映像について、「ジェノサイド」だと述べたと報道。ベタンクトル氏は、米国内法と国際法違反と考える政権に服務を続けることはできないと説明したと伝えました。
 NBCによると、匡防省は2氏とは別にすでに―人の兵士が、反戦を理由に良心的兵役拒否の申請が認められたことを明らかにしたとしています。
 一方、米メディアは21日、バイデン政権のイスラエル擁護姿勢に当初から懐疑的だったといわれる米国務省の高官の辞任が明らかになったと一斉に伝えました。
 6月末に退職するのはイスラエル・パレスチナ担当のミラー国務副次官補だといいます。ワシントン・ポスト紙は、「バイデン政権のイスラエル政府の強い擁護姿勢に懐疑的な国務省の高官」の辞任だとしベネタニヤフ首相と極右の連立政権からの断固たる決別を目指外交努力の後退だ」と伝えました。


イスラエル軍 高火力爆弾も ガザ市で42人 ァで25人殺害
                       しんぶん赤旗 2024年6月24日
【カイロ秋山豊」イスラエル軍は22日、パレスチナ自治区ガザ北部のガザ市を攻撃し、少なくとも42人を殺害しました。ロイター通信がガザのメディア当局の話として伝えました。

 同地区の救助隊から22日に本紙が得た動画には、ガザ市で破壊された建物の残骸の下から生存者が救出される様子が映っていました。動画には、亡くなっているとみられる被害者が掘り出されている様子や布に包まれた遺体も映し出されていました。
 救助隊のメディア担当者、ハムド・バサル氏は本紙に「今回の攻撃は以前のものと異なる。イスラエルはより高火力な爆弾を使った」と話しました。
 イスラエル軍は22日も、戦車で深く侵入しているガザ南端ラファの複数の地域を攻撃しました。ガザの保健当局は前日、ラファ西部マワシ地区で25人が殺されたと発表しました。イスラエルが住民の避難先として「人道地域」に指定した地域です。
 南部で避難を繰り返し、マワシにたどり着いたアブイスラアさん(36)は22日、イスラエル軍に自身を含む大勢の人々が撒しい攻撃のなかでマワシからの退去を強いられたと言いました。
 彼は「地獄だ」と述べ、イスラエルとイスラム組織ハマスに対して「民間人に目を向けるべきだ」と主張し「両者に戦闘の終結を求める。殺りくも拷問ももうたくさんだ」と語りました。
 南部ハンユニスでも21日にイスラエル隼の空爆があり、ロイター通信は医療関係者の話として3人が殺されたと伝えています。
 ハンユニスに暮らすアマルさん(40)は「すぐ近くが爆撃され、死傷者が出たがどこにも行き場がない。ラフも危険だし北部ガザ市の自宅にも戻れない」と嘆ました。
 アマルさんは「昨年10月に戦篠が始まってから夫も母も殺された。私たちは泣き叫びながら死から逃れている。ただ一つの願いは戦闘がおわり、廃虐となっていても故郷に戻ることだ」と言いました。


人道支援建物空爆 8人死亡
                        しんぶん赤旗 2024年6月25日
ガザ北部
 パレスチナのガザ北部ガザ市で23日、人道支援物資配布センターをイスラエル軍が空爆し、8人が死亡しました。ロイター通信が目撃者の話として伝えました。
 目撃者によると、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の職業訓練校で、現在避難民の家族に支援を提供している建物の一部が爆撃を受けました。
 目撃者の1人、モハメド・タフェシュさんは「クーポン券を受け取りに来た人もいたし、家を失ってこの建物に避難していた人もいた。水を受け取りに来た人もいた。突然何かが落ちてくる音がして、私たちは逃げ惑った」と語りました。
 ロイターのカメラマンは、建物が完全に破壊され毛布に包まれた遺体が遺路わきに並べられているのを目撃しました
 UNRWAのジュリエット・トーマ報道官は、「戦争の開始以来、われわれの建物約190棟が攻撃を受けた。これはガザのわれわれの建物の大多数を占める」と指摘。紛争の中でUNRWAの職員193人が殺害されたと付け加えました


ヒズボラ、イスラエル打倒準備を完了
                 マスコミに載らない海外記事 2024年6月23日
                     Moon of Alabama 2024年6月20日
 ハマスがイスラエルを攻撃した翌日10月8日、レバノンのヒズボラが戦闘に加わり、イスラエル北部の軍事施設にミサイルを発射した。北部に暮らすイスラエル人入植者8万人が家を追われた。今も彼らはイスラエル周辺のホテルに泊まり前線に平穏が戻るのを待っている。
 ガザで恒久的停戦が合意されるまで、ヒズボラとイスラエル軍間で現在行われている北部での報復攻撃は継続されるとヒズボラ指導者ハッサン・ナスララは発表した。
 しかし、イスラエル政策を担う過激派はガザでの停戦を望んでいない。ハマスとガザ住民を可能な限り根絶したいと連中は考えている。停戦は連中の願望の邪魔だ
 一方、故郷帰還を望む北部入植者の圧力もある。しかし、ガザで停戦が成立しなければ、イスラエル北部とレバノン南部での低レベル紛争は続くことになる。
 イスラエル軍と政府は、ガザでの停戦に向けて取り組む代わりに、南レバノンに侵攻し、リタニ川まで占領することを計画している
 この計画は妄想だ。ヒズボラは南レバノンに暮らすシーア派の共同体に根ざしている。イスラエルは住民が立ち去ると期待しているのだろうか? そんなことは起きるまい。
 10万人を超える兵力を持つヒズボラは戦闘に備えて万全の態勢を整えている。南レバノンには、よく整備された戦闘陣地やトンネルが縦横に張り巡らされている。15万発以上のミサイル(多くは長距離ミサイル)が、イスラエルの軍事・経済標的に向けて発射する準備ができている2006年の南レバノン侵攻はイスラエル軍の完全敗北に終わった。新たな戦闘では結果が変わると考える理由はない。
 新たな紛争が発生した場合、国境を越えて、イスラエル北部の一部を占領する計画をヒズボラは持っている。また必要とあらば戦争を拡大する用意もある

 イスラエルがレバノン民兵に対して全面攻撃を仕掛けた場合、「ルールも上限もない」戦争になるとヒズボラ指導者サイード・ハッサン・ナスララは、警告し、イスラエルによる紛争でキプロスが領土使用を認めれば標的になる可能性があると恫喝した。
 キプロスとイスラエルは二国間防衛協力協定を結んでおり両国は共同演習を実施している。
 「レバノンを標的とする敵イスラエルにキプロスの空港や基地を開放すれば、キプロス政府が戦争の一部となり、抵抗勢力がそれを戦争の一部として扱うことを意味する」とヒズボラ指導者は語った。
 水曜日夕方、「キプロスはいかなる軍事紛争にも関与せず、自らを問題ではなく解決策の一部と位置づけている」と同島のニコス・クリストドゥリデス大統領は述べた。

 ヒズボラとの戦争開始は、入植者国家としてのイスラエルの終焉を意味しかねない。インフラと軍隊へのミサイル攻撃は、入植者がまだこのシオニスト国家に対して抱いている信頼を弱めることになるだろう。紛争が長引けば、入植者の多くは母国に帰国するだろう。
 シオニスト計画の、このような危険にもかかわらず、アメリカ政権はイスラエルのありとあらゆる計画を支持している

 ヒズボラがイスラエルとの停戦を、ガザでのより広範な停戦と結び付け続けていることへの不満が高まる中、イスラエルによるレバノンのヒズボラ攻撃を支援する用意があることをアメリカは示唆した。
 火曜日ベイルートでの会談で、アメリカのアモス・ホッホシュタイン特使はイスラエルはヒズボラに対し限定的攻撃を開始する準備を進めており、外交的解決が見つからない場合、アメリカの支援を受けるとレバノン当局者に「率直に」警告したと、アラブ諸国高官がミドル・イースト・アイに語った。
 火曜日、ホッホシュタイン特使はレバノンのナジブ・ミカティ首相とナビ・ベリ国会議長と会談した。この二人はアメリカがテロ組織に指定しているイラン支援組織、ヒズボラとの仲介役として利用されている。
 イスラエルはガザ地区での激しい戦闘があと約5週間続くと予想しており、その後ガザ地区全体への主な攻撃を一時停止するとホッホシュタインはレバノン当局に語った。しかし、イスラエルは引き続きハマス幹部を標的とし人質救出のための攻撃を行う予定だ。

 現在のイスラエル政府の観点からすると、ガザ戦争の継続にはレバノンでの更なる戦争が必要だ

 ガザでの戦闘が一時停止すれば、イスラエル当局はヒズボラを同地域から追い出し、避難民となっている約6万人から9万6000人のイスラエル人が秋の新学期開始前に自宅に戻れるよう、北部国境に全力を注ぐつもりだとホッホシュタインは警告した。
 10月8日以来、イスラエルとヒズボラはほぼ毎日銃撃戦を繰り広げてきたが、先週イスラエルがヒズボラ最幹部の一人、タレブ・サミ・アブドラを殺害したことで、紛争は激化した。これに対し、ヒズボラはイスラエルに向けて数百発のドローンやロケット弾を発射した。

 火曜夜、イスラエル軍はレバノン攻撃計画を承認したと発表した。イスラエル軍によると、同日早朝、イスラエルはヒズボラのドローン発射部隊攻撃を開始した。
 木曜日の演説で、ヒズボラは地中海を含むイスラエルに対する「完全な標的リスト」を持っているとヒズボラ指導者ハッサン・ナスララは述べ、軍事行動を強化した。
 「敵は陸、海、空での我々の攻撃を予想しているが、我々は制約や規則や制限なしに戦うつもりだ」と彼は語った

 ヒズボラは、イスラエルの港湾都市ハイファ周辺の軍事・経済標的を映した9分のドローン映像を公開した。複数のヒズボラ・ドローンが防空軍に阻止されずにイスラエル上空を飛行できたことは、イスラエル軍にとって大きな面目喪失だ。
 抵抗枢軸メンバーであるレバノンのヒズボラやシリアのシーア派集団やイラクの民兵やイエメンのフーシ派は戦闘準備が整っている。抵抗の背後にいる主力イランを攻撃しなくとも、イスラエルとアメリカはこの戦争に負ける可能性が高い。
 もちろん勝つ見込みがなければ、連中はいつものように、おそらくイラン、場合によって、可能性としてトルコや他の場所で戦争を激化させるだろう。それからどうなるかは予測不能だ。
 そのような避けられる戦争を、一体なぜ連中が始めるのか私には理解できない。
記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2024/06/hizbullah-ready-to-defeat-israel.html#more 


「ラファの次はヒズボラ対処」 イスラエル首相
                        しんぶん赤旗 2024年6月25日
【カイロ=時事】イスラム組織ハマスと戦闘を続けるイスラエルのネタニヤフ首相は23日、パレスチナ自治区ガザでの軍事作戦に関し「(最南部)ラファでの激しい戦いは終わろうとしている」と述べました。地元テレビのインタビューで語りました。その上で、ラファの後は「北に向き合うことになる」と指摘し、ハマスと連携するレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラヘの対処が次の重要課題になるとの認識を示しました
 ネタニヤフ氏はガザでの掃討戦自体は継続する考えを強調。一方でヒズボラとの交戦激化を踏まえ、「主に防衛の観点から」北部へ優先的に戦力を振り向ける意向を示しました。
 ヒズポラに対し、対イスラエル境界地帯からのヒズボラ部隊撤収を求めると表明。レバノンとの本格開戦の可能性について詳細を語らなかったものの「われわれは複数の戦線で戦うことができるし、その用意がある」と明言しました。
 現地メディアによると、イスラエル軍は23日、レバノン南部にある複数のヒズポラの軍事関連施設を同日に戦闘機で空爆したと明らかにしました。

「政権追い詰めた共産党の論戦 通常国会150日」(1)、(2)

 23日に閉会した通常国会では、国民の政治不信が頂点に達し自民党の裏金事件でも、岸田政権は「抜け穴」温存の大改悪法を強行し、「経済無策」を続ける一方で、「戦争国家」づくりの数々の悪法を押し通しました。
 しんぶん赤旗が、国民の怒りと運動を広げ岸田政権を窮地に追い詰める抜群の役割を果たした日本共産党の論戦を振り返る特集記事の連載を始めました
政権追い詰めた共産党の論戦 通常国会150」(1)、(2)を紹介します。
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政権追い詰めた共産党の論戦 通常国会150日(1)
裏金 核心に迫る
                        しんぶん赤旗 2024年6月24日
 通常国会が23日に閉会しました。自民党の裏金事件で国民の政治不信が頂点に達しても、岸田政権は真相究明に背を向け、「抜け穴」温存の大改悪法を強行。さらに「経済無策」を続ける一方で、「戦争国家」づくりの数々の悪法を押し通しました。どの問題でも“自民党政治はもうダメだ”という行き詰まりが示される中、国民の怒りと運動を広げ、岸田政権を窮地に追い詰める抜群の役割を果たした日本共産党の論戦を振り返ります。

 「赤旗」日曜版のスクープをきっかけに政権を揺るがす大問題となった自民党の組織的な裏金づくりが、今国会最大の焦点になりました。前代未聞の裏金事件を起こしながら、真相を隠蔽(いんぺい)し、金権腐敗政治を温存しようとする岸田文雄首相に対し、一貫して徹底的な真相究明に奮闘し、真の政治改革とは何かを太く明らかにしたのが日本共産党です。

組織的犯罪行為
 自民党議員の2割を超える82人が組織的に関与した裏金事件。裏金がどうして始まり、何に使われたのか、根本を明らかにするための追及が繰り返されました。
 「自民党による組織的犯罪行為という認識はあるか」―。日本共産党の田村智子委員長は3月5日の参院予算委員会で、裏金事件の違法性をどう認識しているのかという問題の核心をただしました。
 田村氏は、自民党がまとめた裏金事件の「聞き取り調査」などから浮かび上がった(1)派閥による犯罪行為の指導(2)所得隠しの悪質な所得税法違反の可能性(3)裏金が選挙買収に使われた疑惑―の3点を追及。紛れもない組織的犯罪であることを明確に示して迫るも、岸田首相は「組織的犯罪という定義は承知していない」と、ごまかしの答弁に終始しました。
政倫審を開くも
 今国会では日本共産党などの求めに応じ、真相解明のための政治倫理審査会(政倫審)が開かれました。岸田首相をはじめ自民党の派閥幹部などが出席し弁明したものの、真相は何一つ語らずじまい。残りも、衆院で44人、参院で29人の出席と説明が求められていますが、いまだに誰一人応じていません。

企業献金禁止が国民的世論に
賄賂性を追及しリード
 清和政策研究会(安倍派)を巡っては、裏金づくりの違法性の認識を派閥幹部で共有していた可能性が浮上しました。日本共産党の塩川鉄也議員は3月1日の衆院政倫審で、安倍派がいったん裏金づくりをやめると決めながら復活させた経緯を追及。幹部会合で「還流分を“合法的”に出す案」が示されたことを指摘し、「違法性の認識があったからではないか」と厳しく批判しました。その後、幹部の発言内容に食い違いが生じるなど疑惑がますます深まる事態に…。
 誰が裏金づくりを始めたのか。山下芳生議員は同14日の参院政倫審で、安倍派幹部らの証言から、裏金づくりが始まった時期は1997~2000年の間だと推察されると指摘。「この間の清和会の会長はだいたい森喜朗元総理だ」と追及しました。キーパーソンである森元首相の参考人招致、証人喚問を求める世論が一気に高まりました。
 ところが、その後、岸田首相が森元首相に行ったという「電話での聞き取り」は、第三者の立ち合いもない形だけのものだったことが明らかになっています。さらにこの間、安倍派の会計責任者の公判での証言で、政倫審で弁明した幹部らの発言が偽りだった疑いも浮上。このまま幕引きを許すわけにはいきません。

肝心要が欠落の自民案
 「政治資金パーティー券の購入者の公開基準の引き下げや、政策活動費改革を含む、政治資金規正法改正を実現することができた」―。岸田首相は事実上国会閉会となった6月21日の会見で、「政治改革」の「成果」を強調しました。
 今回の裏金の原資は政治資金パーティー収入という「抜け穴」を利用した企業・団体献金です。パーティー券購入も含めた企業・団体献金の全面禁止こそ、最大の再発防止策になります。
 日本共産党は参院に「企業・団体献金全面禁止法案」と「政党助成法廃止法案」を提出し、金権腐敗の根を大本から断つ抜本的な提案を示して論戦に臨みました。
 企業・団体献金は本質的に賄賂性を持ちます。見返りを求める企業・団体からの巨額の献金が自民党に流れ込み、政治がゆがめられてきたことこそ、今回の裏金問題の本質です。
 山添拓議員は10日の参院決算委員会で、自民党が日本建設業界連合会(日建連)に額まで示して献金を依頼している「献金あっせん」の実態を告発。日建連加盟企業から自民党への献金が10年間で20億円を超える中、政府が日建連の要望通りの予算編成の仕組みを実現していることを示し、「自民党が政策に値札を付けて売ってきた」と厳しく批判しました。
 一方で自民党が提出した規正法改定案(自民案)は、肝心要の企業・団体献金禁止がすっぽりと抜け落ちています。それどころか、政治資金の流れをさらに不透明化する改悪の内容も審議を通じて明らかになりました。

真の改革 共産党2法案
 自民党が幹事長などの役職者に対して支給してきた巨額の「政策活動費」。使途の詳細は全く明かされず、規正法の趣旨に反する脱法的な闇金です。塩川氏は3日の衆院政治改革特別委員会で、自民案が、規正法上規定のない政策活動費を初めて法定化=合法化するものだと明らかにしました。
 自民案は官報や都道府県の公報への政治資金収支報告書の「要旨」の作成・公表義務を削除しています。山下氏は17日の参院政治改革特委で、「規正法の目的である政治活動に対する『国民の不断の監視』を後退させるものだ」と批判。専門家からも「要旨の作成を廃止すれば、過去3年を超える政治資金に関する公的な資料がなくなり、政治資金の監視に困難を伴う」(上脇博之神戸学院大学教授)との指摘があがっていることを突き付けました。
 参院では日本共産党が「企業・団体献金全面禁止法案」など2法案を提出したため、党議員が法案提出者として質問に答える場面もありました。井上哲士議員は10日の参院政治改革特委で、「大企業や業界は選挙権は持たないが、個人の力を超える巨大な財力を持っている。その力で政治を左右することは国民の基本的人権である参政権を侵害する」と指摘し、共産党は「政治改革の核心として企業・団体献金をパーティー券購入も含め全面禁止することを提案している」と説明。17日の同委でも答弁に立ちました。
 真の政治改革を求め、法案を30年間国会に提出し続けてきた日本共産党の論戦を力に、いま、企業・団体献金禁止を求める声が国民的世論となっています。カネの力でゆがめられる政治をこのまま続けさせるわけにはいきません。(つづく)


  
政権追い詰めた共産党の論戦 通常国会150日(2)
平和へ 対案示す
                        しんぶん赤旗 2024年6月25日
 自民党裏金事件で国民からの信頼を失う一方、岸田政権は、憲法の平和国家としての理念を破壊する「戦争国家づくり」の悪法を次々と強行しました。この暴走に正面から立ち向かう論陣を張ったのが日本共産党でした。
 4月、米ワシントンで行われた日米首脳会談で、岸田文雄首相はバイデン大統領と自衛隊と米軍の作戦や能力の「シームレス(切れ目のない)な統合を可能」にすることなど指揮統制強化を合意。この合意をめぐって、自衛隊が米軍の事実上の指揮下に置かれ、米側が主権の一部まで切り離すよう求めている実態を告発したのが志位和夫議長です。(4月22日、衆院予算委員会)
 志位氏は、米軍が同盟国を動員して具体化を進めている「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」をめぐり、米国の公式文書で米インド太平洋軍が「(同盟国に)主権の一部を切り離させる」ための「政府をあげてのアプローチが必要」などと主張していることを暴露。「これが米軍の求める『シームレスな統合』だ。日本の主権まで米国に差し出すなど、まぎれもない憲法違反だ。国の独立をかなぐり捨てるものだ」と迫る志位氏に対し、岸田首相は「自衛隊は独立した指揮系統だ」などと根拠を一切示さず繰り返すだけ。志位氏は「日本が進むべき道は軍事的対応の強化の道でなく、東アジアの平和を構築するための憲法9条を生かした平和外交にこそある」と提起しました。

統合作戦司令部
 自衛隊を米軍の指揮下に組み込む米国の狙いと一体で進められたのが、陸海空3自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」創設を含む防衛省設置法等の改定です。
 赤嶺政賢議員は4月11日の衆院安全保障委員会で、同司令部の創設は「自衛隊を米軍の指揮下に深く組み込み、日米一体で敵基地攻撃能力を運用する体制をつくるものだ」と指摘。エマニュエル米駐日大使が日米の指揮統制連携強化は「台湾有事を念頭にしたもの」と明言し、台湾有事を想定した日米共同作戦計画の原案では日本が安保法制に基づく集団的自衛権を発動して南西地域で米軍と一体で中国と戦うと報じられていると指摘し、「断じて容認できない。政府は東アジアに平和をつくる外交にこそ力を尽くすべきだ」と強調しました。
 山添拓議員は、5月9日の参院外交防衛委員会で、米軍の情報に基づき攻撃した結果、自衛隊の武力行使が必要最小限度の範囲を超えない保障はどこにあるのかと追及。「自衛隊の活動は憲法、国内法の範囲内で行われる」と繰り返すだけで保障を示せない木原稔防衛相に、山添氏は「憲法の制約などないと言っているに等しい」と批判しました。

「死の商人」告発
 政府が署名した、英国・イタリアとの次期戦闘機の共同開発・生産・輸出を推進する政府間機関「GIGO」を設立する次期戦闘機共同開発条約。同条約の承認をめぐり、宮本徹議員は4月25日の衆院本会議で、武器を輸出しないことは、国会議論や衆参両院での全会一致の国会決議で憲法の平和国家としての理念を踏まえて確立した「国是」だと強調しました。
 山添氏は6月4日の参院外交防衛委員会で、「平和国家の立場を投げ捨て武器を売り歩き利益を増やすのは『死の商人国家』との批判は免れない」と述べ、「大軍拡ではなく外交で平和構築を図るべきだ」と求めました。
 十分な審議のない採決強行が相次ぐ中、「戦争国家づくり」の危険を告発するとともに平和構築の対案を示す日本共産党の論戦が光りました。

岸田政権の「戦争国家づくり」
軍拡進める悪法に対決
 安保3文書に基づく大軍拡を推進する立法措置の強行に対し、日本共産党は対決を貫きました。

経済秘密保護法
 経済秘密保護法は、政府が指定する秘密の範囲を「防衛・外交・スパイ活動・テロ活動」から経済分野にまで拡大するものです。
 塩川鉄也議員は4月9日の衆院本会議で、同法の狙いは、岸田政権が日英伊の次期戦闘機や米英豪の軍事枠組みAUKUS(オーカス)との兵器の共同開発などを進めようとする中で秘密の範囲を広げ、同盟国・同志国と同等の秘密保全法制を整備することにあると告発。「米国などの同盟国・同志国と財界の要求に応えて兵器の共同開発・輸出を進めるものだ」と指摘しました。
 井上哲士議員は5月10日の参院本会議で、同法は米国と日本の財界の要求に応え、科学技術全体を軍事に動員するものだとして、「日本を戦争国家、死の商人国家におとしめる」と厳しく批判しました。
 同法成立後も、国会前では廃止を求める行動が取り組まれています。

改定地方自治法
 改定地方自治法は、政府が「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」と判断すれば国が地方自治体に指示ができる「指示権」を新たに導入。日本共産党は、沖縄県や県民の反対の意思を踏みにじり、国による「代執行」で強行されている辺野古米軍新基地建設のような強権的なやり方が全国に広がるおそれや、「指示権」が米国の戦争に地方自治体を動員するために使われる危険を鋭く告発しました。
 5月23日の衆院総務委員会での宮本岳志議員の追及で、国が自治体に「指示権」を行使できる「事態」について総務省が集団的自衛権の発動要件である存立危機事態を定めた「事態対処法」も除外されないと認めました。
 6月6日の参院総務委員会で、伊藤岳議員が「指示権」が行使された場合、地方自治体は拒否できるのかとただすと、松本剛明総務相は「指示の通りに対応していただく」と答弁。地方自治体を国に従属させることが浮き彫りになりました。
 沖縄県の玉城デニー知事が「自治体の事務をする上での判断は住民に一番近い責任者が行うべきだ」とし、東京・世田谷区の保坂展人区長が「全部含めて白紙委任するのは有事法制のつくりと一緒だ」と指摘するなど、地方自治体から強い懸念の声があがっています。

食料困難対策法
 「有事」を想定して、輸入途絶など不測の事態に際し農家に生産拡大の指示や罰則を通じて食料を確保する食料供給困難事態対策法。田村貴昭議員は「戦前の国家総動員法を彷彿(ほうふつ)とさせ、戦争する国づくりの一環」だと指摘(2月22日、衆院予算委員会)。田村氏は5月8日の衆院農林水産委員会で、「政府に命令されて作付けはしたくない」「罰金まで科されて強制されるのなら、農業をやめて他の仕事に就く」との農業者の声を突きつけ、廃案を求めました。
 紙智子議員が6月11日の参院農林水産委員会で、「国家安全保障戦略」でいう有事の際のシーレーン(海上交通路)における脅威も同法の発動要件となるのかと追及すると、坂本哲志農水相は「対応し得る」と答弁。紙氏は同法が「戦争する国づくりを目指す安保3文書と軌を一にしたものだ」と厳しく批判しました。
 農民運動全国連合会は同法を「戦時立法」だと指摘し、悪法を発動させないため政治の転換を求めてたたかうと表明しています。
 田村智子委員長は、通常国会が事実上閉会した6月21日の党国会議員団総会のあいさつで、「『戦争国家づくり』に反対する国民世論を起こしていこう」と呼びかけました。

 同時に、「日米同盟を絶対視し、軍事一辺倒の自民党政治に対し、憲法9条に基づく平和外交こそ真の安全保障だという対案を示しているのも、わが党だけ」と指摘。4月17日に志位和夫議長が発表した「東アジアの平和構築への提言――ASEANと協力して」と題する外交提言は国外からも歓迎されているとし、こう強調しました。「日本共産党が、アメリカいいなりから脱却し、国民多数の合意のもと日米安保条約廃棄をめざす党であり、その立場からアジア外交の努力を重ねてきた党だからこそのもの」(つづく) 

仏発・グローバルニュースNO.10 国民議会解散で復活したフランスの左派連合

 土田修氏による「仏発・グローバルニュースNO10」に掲題の記事が載りました。
 6月9日に仏で行われた欧州議会選挙でマクロン大統領が大敗するのは、彼自身も覚悟していたと言われ そうなれば一か八かのチャンスを求めて国民議会(下院)を解散するしかないと考えていたようです。
 土田氏が選挙後の仏国内の事情について解説しています。
 予備知識のない身には複雑すぎて俄かには理解できないのですが・・・
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フランス発・グローバルニュースNO.10 国民議会解散で復活したフランスの左派連合
                    レイバーネット日本 2024-06-25
                              土田修 2024.6.20
                  ル・モンド・ディプロマティーク日本語版前理事
                      ジャーナリスト、元東京新聞記者
 6月9日に行われた欧州議会選挙での大敗を受け、マクロン大統領が突然、国民議会(下院)を解散し、激震が走った。その余波が冷めやらぬフランスで今度はユダヤ人少女のレイプ事件が発生19日に警察が事件を公表)、ユダヤ人社会に衝撃を与えている。警察の取り調べによると、容疑者の少年は「汚らしいユダヤ人!」と少女を罵倒し殴りつけた挙句に暴行を加えたという。ユダヤ人団体は「反ユダヤ主義に端を発する恐ろしい事件だ」と在仏ユダヤ人の保護を訴え、21日にパリ市庁舎前広場で「反ユダヤ主義」を告発する大規模な抗議集会を開催した。
 事件は6月15日、パリ北西部郊外のクールブヴォワで起きた。午後3時ごろ、13歳の少女が12歳から13歳の少年3人に幼稚園の廃屋に連れ込まれ、「お前の家族はユダヤ人だろ? なんでお前はそれを隠しているのか?」と問いただされ、ライターの火で頬を焼かれ、体にペットボトルの水をかけられて暴行された。
 フランス政府によると、今年1月〜3月にフランス国内で発生した「反ユダヤ主義」を理由にした犯罪事案は、昨年同期の3倍以上に上っている。フランスはイスラエル、米国に次いでユダヤ人の数の多い国だ。マクロン政権はガザ侵攻とジェノサイドを続けるイスラエル支持を続け、「反ユダヤ主義」と「テロリズム擁護罪」を振りかざして、パレスチナ連帯の集会やデモを禁止してきた。低迷する政権支持率を前にイスラエル人団体の票を気にしているのは間違いない。だが、「反ユダヤ主義」をかざして「表現の自由」を抑圧すればするほど、ユダヤ人が標的になる事案が増えるという逆転現象が起きている。

 今回の少女レイプ事件はフランスのユダヤ人社会を「恐怖」に陥れた(6月21日ル・モンド紙)。パリ市庁舎前広場で行われた抗議集会で、フランス・ユダヤ人団体評議会(CRIF)のヨナタン・アルフィ代表は「“イスラエルの責任”をフランスのユダヤ人に押し付けるような行為だ。イスラエルへの憎悪が反ユダヤ主義に火をつけている」と声明を発表した。シオニスト系のユダヤ人団体は、パレスチナ連帯を訴えている「不服従のフランス(LFI)」のジャン=リュック・メランション氏を「反ユダヤ主義を煽っている」として猛烈に非難している。フランスのテレビ局も「今回の事件によって、『反ユダヤ主義』が国民議会選挙の最大テーマになった」と声高に叫んでいる。
 ル・モンド紙によると、フランスではユダヤ人に対する攻撃を正当化する感情が18歳から24歳の若者世代に顕著に見られるという。LFIは高校生や大学生など若者世代の支持者が多い。そのLFIがこれまでパレスチナ連帯を訴え、イスラエル政府を批判してきたことで、若者世代に「反ユダヤ主義」や「反シオニズム」を植え付けたと、政府やメディアはLFIを口汚く罵ってきた。若者の多くがソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)によって情報を得ていることから、保守派はSNSを目の敵にしており、マクロン大統領は今回の国民議会選挙の公約としてモバイルやSNSの使用に年齢制限を課すことを提案している。
 今回のレイプ事件は、容疑者の少年らがユダヤ人を標的にしたというより、自らの犯罪行為を正当化するため少女がユダヤ人であること”を利用しただけだ。都市近郊に多い少年犯罪とフランス社会に蔓延する人種差別の問題にきちんと向き合うことは大切だが、政治家やメディアのように国民の目をことさら「反ユダヤ主義」へと誘導し、「選挙の最大テーマ」として大騒ぎすることには大きな疑問を感じる。  

■決選投票に望みを託すマクロン氏
 6月に行われたフランスの欧州議会選挙では、極右政党の「国民連合(RN)」が31・36%の得票率を獲得し、与党連合ルネサンスの14.6%に大差をつけた。その夜、マクロン氏は突然、国民議会(下院)の解散を宣言。欧州議会選挙の大敗はマクロン政権への痛烈な批判だったが、マクロンはそれを糊塗するためか、国民議会を解散し、極右との対決を選んだ。国民議会選挙(小選挙区制、577議席)は6月30日と7月7日の2回投票方式で実施されるが、1回目の投票で過半数を獲得した候補者がいなければ、上位2人による決選投票が行われる。前回の2022年の国民議会選挙では選挙区の99パーセントが決選投票に進んでいる。
 現在の議席数は与党連合が過半数に満たない250議席で、RNグループは89議席。2022年の国民議会選挙に向けて、LFIが主導し、社会党(PS)やフランス共産党(PCF)、「ヨーロッパ・エコロジー=緑の党」など左派が結集した「新人民連合環境・社会(NUPES)」は150議席以上を獲得したが、その後分裂状態にあることから、マクロン氏の「危険な賭け」(6月11日ル・モンド紙)は昇竜の勢いのRNをいかに抑えるかにかかっている。マクロン氏は決選投票で、本当は左派を支持しているがRNにだけは勝たせたくない」と鼻をつまんで与党連合に投票する「極右嫌い」の有権者に一縷の望みをかけるしかないのだ。
 その鍵を握るのが「共和党(LR)」(62議席)の動向だ。LRは昨年12月に国民議会を通過した、「外国人排斥」を強化する移民法改正案をめぐって、それまで連携していたマクロン政権と対立を深め、エリック・シオッティ党首は今回の国民議会選挙では「RNとの連携」を表明している。RNはマクロン氏による国民議会解散を歓迎し、「まもなく(フランスで極右政権が誕生するという)歴史的瞬間が訪れる」と豪語したが、それが現実となり、ジョルダン・バルデラ党首(28歳)が首相に就任した場合、フランスでも極右政権が誕生することになる。RNは「欧州連合(EU)」によるウクライナ支援の即時停止を訴えており、ウクライナ戦争の先行きにも大きな影響を与えそうだ。

 マクロン氏はウクライナ戦争の開戦前はロシアのプーチン大統領との対話を重視し、ウクライナ侵攻を思いとどまらせようと西側の首脳の中で独自外交を展開した。以前はNATOに否定的で、「NATOは脳死時状態にある」と発言し、ドイツのメルケル首相にたしなめられたこともあった。ロシアがウクライナに侵攻すると「NATOは脳死状態から目覚めた」と発言を翻し、今年2月には「ロシアに勝たせるようなことがあってはならない」と対ロシア強硬派に鞍替えし、「西側の地上軍のウクライナ派遣の可能性を排除しない」とまで表明し、同盟諸国を驚かせた。欧州連合(EU)によるウクライナ支援に反対する極右の台頭を警戒するフランス・メディアがマクロン発言を称賛したことから、調子に乗ったマクロン氏はリップサービスなのか「クリミア半島への侵攻」まで口にするようになった。

■「極右が政権をとる」という悪夢
 そもそも、マクロン政権の外交政策は予測不可能なまでに揺れ動いている。ル・モンド・ディプロマティーク日本語版6月号にジャン・ド・グリニアスティ元駐露フランス大使の「グローバルサウスに向き合わないフランス」という記事が掲載された。世界のパワーバランスは欧米中心から「グローバルサウス」へと移行し、軍事や経済面で西側の圧倒的優位性は失われつつある。だが、フランスの外交姿勢はこうした世界の変化に逆行していると、筆者は指摘する。
 世界の変化とは何か。一つには、筆者はミサイルやドローンで紅海の航行妨害を始めたイエメンのフーシ派に対して「英米の軍事技術はさしたる効果を挙げていない」と指摘する。それは西側が独占してきたはずの軍事技術が「グローバルサウス」にも拡散した結果だという。また、国連安全保障理事会では、パレスチナ紛争の停戦決議案に拒否権を行使していた米国が「戦争の中断」を提案し、今年3月には停戦と人質の解放を求める決議に棄権することで、それを承認した。これはイスラエルを落胆させたが、アラブ諸国を含む「南」の圧力によって米国の外交姿勢が変化した結果だという。
 ウクライナ侵攻を受けて西側諸国がロシアに科した経済制裁がほとんど効果がなかったことも世界的なパワーバランスの変化を象徴している。経済制裁はロシアの政権交代や戦意喪失につながるどころか、ロシアはにわかに経済成長を回復しており、反対に欧州諸国に景気後退をもたらした。「南」の多くの国がこの制裁に加わらなかったことが一因となっているが、筆者は「ビジネス、金融、テクノロジーの強さは西側の専売特許ではなくなった」と指摘する。国際決済システムSWIFTは人民元国際決済システムで代替できるし、世界の国内総生産(GDP)の27%を占めるBRICSグループ(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、エジプト、イランなど)は固有通貨の創設を進めている。近い将来、「南」による新たな国際金融ネットワークが構築されることだろう。

 このように国際関係が大きく変化する時代にあって、筆者はフランスの外交政策が「西洋主義」の立場に固着し、結局はアメリカへの追随を強化するだけで、バランスを保った従来の外交路線を見出せなくなっていると指摘する。世界のパワーバランスが多極化する今こそ、フランスは「ドゴール・ミッテラン流」の独自外交方針へ立ち戻るべきだというのだが、マクロン与党が国民議会で過半数に遠く及ばない現状では夢のまた夢でしかない。欧州議会選挙でのRNの躍進ぶりを目の当たりにした財界までがマクロン与党にそっぽを向き始めた。日刊紙ル・モンド(6月22日)は「RNが権力の座に就いても企業経営者にとって問題はない」という記事を掲載した。あたかも7月にRN政府が出現すると予測しているかのように、「経営トップは左派連合よりRN政府の方が与しやすい」とまで主張している。
 ル・モンドが書いている左派連合とは、国民議会選挙に向けてLFIのメランション氏が提唱した「新人民戦線(NFP)」のことだ。「貧しい市民の革命運動」を提唱するメランション氏は「欧州議会選挙の大敗隠しだ」とマクロンの無責任ぶりを批判する一方、外国人排除を進める「極右のフランス」に対し、若者や労働者、移民など社会的弱者のための「新しいフランス」を唱え、PCFや環境派グループとともに、NFPを結成した。そこに「メランション嫌い」の多いPSも歩調を合わせそうだ。メランション氏は人種や宗教、文化、ジェンダーの多様性を重視する、極右とは真逆の政策を打ち出しており、現在の首相のガブリエル・アタル氏に代わって「首相に就任する準備ができている」と表明している(6月25日ル・モンド)。左派内部には不協和音も存在するが、イタリアのメローニ政権に続いて「極右が政権を取る」という悪夢が新たな左派連合を復活させたのは間違いない。

 今月23日にはパリ市内でフェミニスト団体が「RNは女性の権利を否定している」などと訴える大規模なデモ行進を行ったが、LGBTを認めず男性優位や「外国人排斥」を訴えるRNを危険視するデモや集会はフランス中で起きている。フランスのタブロイド紙は「マティニョン(首相官邸)の闘い」(Bataille de Matignon)という大見出しで、アタル氏とメランション氏、バンデラ氏の3人の写真を大きく掲載した。NFPが躍進すれば、アタル氏でもバルデラ氏でもなく、メランション氏がマティニョンの主になる日が来るかもしれない