2019年8月2日金曜日

有志連合3回目の会合も不調

 米軍が31中東バーレーン第5艦隊司令部で有志連合結成に向けた非公開会合を開きましが、関係国と合意に至りませんでした。
 米政府は25日に60カ国以上を招き、有志連合に関して19日に続き2度目の説明会を開催し、ポンペオ国務長官は日韓や英仏独を名指しして参加を迫りましたそして日本などの同盟・友好国に対し、参加できるかどうか7月末までに判断するよう求めましたが、それは結局失敗に終わりました。
 
 英国は22欧州主導の船舶保護態勢の構築を目指す方針を表明しています。イラン核合意の崩壊を防ぐため、米主導の有志連合とは一線を画して、同じく合意しない仏独などと協調する姿勢で、伊もそれに同調しています。
 独外相は31日、「米国の対イラン圧力戦略は間違っている」と述べ、ホルムズ海峡での海上警備ではと緊密に連携するとしました。
 インドは6月中旬から艦船2隻を派遣して自国タンカーを護衛していて有志連合に参加しない方針です
 
 こんな風に各国が「有志連合」への参加に拒絶的なのは、それがいつなんどき対イラン戦争に拡大されるか分からないからです。そしてそれこそが戦争国家の横暴を抑制すべき関係国に求められている良識です。
 もしもそうした良識と外交感覚を欠落させた行動を取るならば、「蚊帳の外」などでは済まされません。
 
 天木直人氏のブログを併せて紹介します。
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米、ホルムズ海峡警備で3回目会合 独は不参加表明、合意至らず
時事通信 2019年8月1日
【ワシントン時事】米中央軍は31日、中東バーレーンにある第5艦隊司令部で、ホルムズ海峡などの安全確保を目的とする有志連合結成に向けた関係国との非公開会合を開催した。米国は当初、月内に有志連合参加国を見極める意向を示していたが、19、25両日に続く3回目の会合でも関係国と合意に至らなかったとみられる。
 一方、AFP通信によれば、ポーランドを訪問中のマース独外相は31日、「ドイツは米国が打ち出した海上警備計画に参加しない」と表明「米国の対イラン圧力戦略は間違っていると考えている」とも述べ、ホルムズ海峡での海上警備では、フランスと緊密に連携すると強調した。
 中央軍は会合終了後に声明を発表し、「(有志連合構想は)ホルムズ海峡やペルシャ湾、バベルマンデブ海峡、オマーン湾の国際水路において、海洋状況把握能力を高めて安全な通行、航行の自由を確保することが目的だ」と説明した。
 だが、声明の文面はこれまでと変化なし。日本を含む多くの国が米主導の有志連合参加に慎重姿勢を示す中、各国との調整が難航していることが浮き彫りになった
 
 
米、有志連合7月末までに判断を 日本など同盟国に
東京新聞 2019年7月31日
【ワシントン共同】中東・ホルムズ海峡の航行の安全確保を目指す米主導の有志連合結成を巡り、トランプ米政権が日本などの同盟・友好国に対し、参加できるかどうか7月末までに判断するよう求めていることが29日分かった。関係者が明らかにした。イランと対立する米国は31日、ペルシャ湾を管轄する米海軍第5艦隊が司令部を置く中東バーレーンで非公開会合を開き、各国に正式に参加を要請し意思を確認する。
 
 ただポンペオ国務長官は29日、結成までには時間がかかるとの認識を示した。米政府はなるべく多くの国の参加を期待しており、31日の会合をもって参加を締め切る可能性は低い。
 
 
有志連合に各国慎重 米イラン対立 巻き込まれたくない
東京新聞 2019年7月31日
 エネルギー供給の大動脈ホルムズ海峡などで民間船舶を守る米主導の有志連合構想に対し、関係国などで慎重な対応が目立っている。米国とイランの激しい対立構図に巻き込まれる懸念があるためだ。英国は欧州主導の態勢構築を目指すが、欧州連合(EU)離脱後の対米関係も見据えた対応を迫られそうだ。(カイロ・奥田哲平、ロンドン・藤沢有哉)
 
■包囲網
 ホルムズ海峡はイラン、オマーン間の海域でペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ。世界の原油の二割が通過し、このうち八割が日中韓やインドなどアジア向けだ。米政府は二十五日に六十カ国以上を招き、有志連合に関して二度目の説明会を開催。ポンペオ国務長官は日韓や英仏独を名指しして参加を迫った。
 海峡周辺では六月に日本のタンカーなどが何者かに攻撃され、米軍無人偵察機がイランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」に撃墜された。そんな緊迫から提案された有志連合は参加国の艦船による民間船舶護衛が中心で、「対イランの軍事連合ではなく、海賊の監視能力向上が目標」(米国防総省高官)とされる。だが、実際はイラン包囲網構築の狙いが色濃い。
 
■軍事衝突懸念
 ペルシャ湾では二〇〇四年から、米中央軍傘下の第五艦隊(司令部・バーレーン)を中心に、英国や湾岸諸国の海軍による「合同任務部隊(CTF)152」が警戒に当たる。有志連合はこれを拡大した形とみられ、「ペルシャ湾を守るのはイランと周辺国の責任」(ロウハニ大統領)と訴えるイランが「敵対行為」と見なす可能性がある。
 そのため、六月中旬から艦船二隻を派遣して自国タンカーを護衛するインドは、有志連合に参加しない方針。中国に次いで二番目に大きいイラン産原油の輸出先であり、政治的関係も深いイランとの対決姿勢を避ける考えだ。
 スペイン紙パイス(電子版)によると、スペイン海軍のフリゲート艦は、共同訓練の目的で同行していた原子力空母エイブラハム・リンカーン中心の米軍空母打撃群から離脱した。リンカーンが五月から中東地域に派遣されたため、偶発的な軍事衝突を懸念したとみられる。
 
■英は板挟み
 一方、英国は米国と「特別な関係」を築くが、ホルムズ海峡を巡っては、二十二日、欧州主導の船舶保護態勢の構築を目指す方針を表明した。イラン核合意の崩壊を防ぐため、米主導の有志連合とは一線を画して、同じく合意に残る仏独などと協調する姿勢だ。
 新外相のラーブ氏は英BBCラジオで二十九日、この方針の継続に言及。ただ、「欧州主導の行動も米国の支持は大切だ」とも述べ、米主導の有志連合との“補完関係”を強調した。
 ロイター通信によると、英国の欧州主導の船舶保護構想に対し、フランスやデンマーク、イタリアなどが賛意を示している。
 ただ、エジプトの軍事評論家ザカリヤ・フセイン氏は「現場では米軍と協働しながら運用せざるを得ない」と、有効性の確保には米軍が不可欠と強調する。
 一方、英プリマス大のクリスチャン・エメリー講師(国際関係)は英国に関して、EU離脱が絡んだ難しい立場を指摘。「英政府は、欧州主導の船舶保護は米国のイランに対する圧力政策の一部にはならないと言った。一方で、英国のジョンソン新首相がEU離脱後に楽観的なのは米国との緊密な関係があるからで、英政府は米国との衝突はためらうだろう」と解説した。
 
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在日米軍負担の5倍増を求めていたボルトン訪日の衝撃
天木直人のブログ 2019-08-01
 8月になったとたん、待っていたように、きょう8月1日の朝日新聞が大スクープを掲載した。
 7月21日、22日に訪日したボルトン大統領補佐官が、日本政府関係者に在日米軍経費の大幅負担増を要求していたことが、複数の米政府関係者の話で分かったと。北朝鮮問題や、日韓関係だけではなかったのだ。
 菅官房長官は31日の記者会見で朝日の報道を否定したらしいが、増額要求は間違いないだろう。朝日の報道では5倍増までも吹っかけて来たという。単純計算では、これまでの負担が年額約2000億円だから、これが年額一兆円に跳ね上がることになる。
 とんでもない要求だ。
 
 私が朝日の記事で注目したのは、その表現ぶりだ。トランプ大統領は「搾り取る」という言葉を使ったという。
 おりから、日米貿易交渉も今月から始まる。日本の譲歩はすでに安倍首相がトランプ大統領に約束済みだ。一兆円を超える不要な武器購入も安倍首相はトランプ大統領に約束済みだ。
 そして、ついに米国は金融緩和に踏み切った。これで日銀の金融緩和の出口がさらに閉ざされた。日本は米国の言い値飲むしかない。
 何しろ日本を守ってくれる米国だから逆らえない。本当は米国は日本など守る気はないことが、トランプ大統領の対北朝鮮政策で明らかになったというのにである。
 まさしく、間違った日米安保体制が国民生活を破綻に導くことになる。
 消費税をどうするかとか、年金問題をどうするか、などといった経済政策を論じる前に、まず日米安保体制から自立しなければどうにもならないのだ。
 
 私はそのことを参院選で訴え続けた。有権者には届かなかったけれど、そのことを訴えたという事実は残る。
 いまこそ、この国の政治家たちは、国民の前で日米安保体制の是非を論じなければいけないのだ。日米安保体制を信じる朝日がここまで書くようになったのだ。
 その議論は待ったなしということである(了)