2020年11月23日月曜日

矛盾だらけ菅義偉内閣の終焉は近い(植草一秀氏)

 日本ではコロナの第1波が収まった後のコロナ新規感染者数は50人/日以下でしたが、2波のときはピークが過ぎてからも500人/日前後がずっと継続し、収まったとはいえない状態のまま第3波を迎えました。当然発生源が何処なのかなど掴めようがありません。

 感染症の基本対策は陽性者を早く見つけて隔離するということに尽きます(上昌広氏)。これは第1波の時からいわれていたことで、中国と韓国は国を挙げて取り組んで実現しましたが、日本は何の努力もしないまま推移して来ました。
 いまだにPCR検査は旧態依然の保健所の制御下にあり、隔離施設も感染者が増えると直ぐに逼迫するという具合です。コロナで大減収し、従業員に満足に給与も払えない各医療機関への支援金もまだ2割程度しか渡っていません。
 PCR検査の拡充に抵抗しているのは厚労省の医系技官たちと言われ、彼らや感染研では、結核撲滅の成功体験が大きく尾を引いていると言われますが、結核とコロナでは感染力が全く違います。厚労省が強調するクラスター対策班で対処できるようなものでもありません。徹底的な「検査の実施と隔離」の原則に従うべきでしょう。

 コロナへの対応は「ハンマー&ダンス」と言われます。感染が拡大したら社会活動を抑制し、鎮まったら再開するというもので、そこから脱却するためには「検査の拡充」しかありません。それなのに政府は、国民に「コロナ・マナー」を強調する以外には何もしないまま、利権絡みと言われる「Go To」を推進して来ました。ここにきて菅首相はようやくそれを一部抑制する方針に転じましたが、その詳細は不明でいつ実行するのかも分かりません。
 日本はロクな対策もしないままダラダラと中途半端な「ダンス」を続けてきました。そんなことで感染抑制と経済活動の両立に成功した国はどこにもありません。首相がもしも方針転換を意識しているのであれば記者会見くらいは行うべきでが、官邸記者団のごく短時間のぶら下がり会見に一度応じただけです(記者からの質問は無視してすぐに退去)。
 正式な会見をしないのは方針転換を体裁が悪いことと自覚しているからか、あるいは質問に答える自信がないからでしょう。官房長官時代の様に、質問を門前払い出来ないから「逃げ恥」を通すというのはあり得ないことです。勿論自分が出来ない「自助」を国民に要求すべきでもありません。
 植草一秀氏のブログを2編 紹介します。
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矛盾だらけ菅義偉内閣の終焉は近い
               植草一秀の「知られざる真実」 2020年11月21日
菅内閣は新型コロナ感染症の感染拡大を推進している。
最大の要因はGo Toトラブルキャンペーン。
人の移動と感染拡大は明瞭にリンクする。
人の移動指数推移と新規陽性者数推移は約3週間のタイムラグを伴って連動する。
また、季節性も影響する。冬期は気温と湿度が低下する。室内換気も悪化する。
このために、冬期に感染が拡大する傾向がある。
日本における陽性者数拡大は必然の結果だ。

菅義偉首相が「感染拡大防止に全力をあげる」と発言する意味が不明。
「感染拡大推進に全力をあげている」と発言するべきだ。
他方で、菅内閣は新型コロナ感染症を第2類相当指定感染症に区分している。
極めて危険の大きい感染症として新型コロナ感染症を位置付けている。
この区分に位置付けながら感染拡大を推進するのは「殺人行為」だ。
現状の運用は陽性者の隔離、全数調査、濃厚接触者追跡などを義務付けている。
このまま進めば医療崩壊は確実だ。

菅内閣は感染拡大防止と経済活動維持の両立が必要だと唱える。
その理由から、Go Toトラブルキャンペーンを中止できないという。
しかし、そもそも、経済活動維持のためにGo Toトラブルキャンペーンを推進することが間違っている
最大の理由は、巨大な国家予算の配分が公正でないこと。
新型コロナ感染拡大で経済には重大なダメージが生じている。
そのダメージは旅行と飲食に限られていない
また、Go Toトラブルキャンペーンは主に旅行と飲食をターゲットとするものだが、旅行と飲食でダメージを受けている事業者に対して、均等に恩恵を施すものになっていない
Go Toトラブルキャンペーンの利用者も利益を享受するが、利益をまったく享受できない者が多数存在する。
巨大な国費を投じる事業の公平性が保たれていない。
旅行関係の事業者がコロナの影響で苦境に直面したが、Go Toトラブルキャンペーンによる利益供与には著しい偏りがある。
1泊4万円の宿泊に対する利益供与が最大になるため、この価格帯での宿泊サービスを提供する事業者に利益供与が集中している。
これらの事業者は、これまで値引き販売していた価格を定価に引き戻し、さらにサービス内容を微修正して、実質値上げを行って、Go Toトラブルキャンペーンに合う商品を提供している。
この結果、コロナ以前の収益を大幅に上回る濡れ手に粟の利益を享受する事業者が続出している。

その一方で、コロナ不況にあえぐ一般市民はGo Toトラブルキャンペーンの利益供与から完全に取り残されている。
自殺者も急増している。
政府が真っ先に手を差し伸べなければならない人には完全な無策で、政府と癒着する事業者、富裕層にだけ巨大な利益を供与する施策は健全な施策と言えない。
安倍内閣の下で特定事業者に利益を供与することによって見返りを求める利権官庁と利権政治屋が主導して、このような筋の悪い施策が策定された。
経済産業省、国土交通省の利権体質が生んだ産物だ。

他方、新型コロナ感染症を第2類相当指定感染症に区分していることがコロナ騒動拡大の主因になっている。
日本では当初から新型コロナの検査が十分に行われてこなかった。
日本のコロナ対応は大失策だった。
東アジアにおけるコロナ被害が軽微に収まったことで九死に一生を得たが、東アジアの被害が深刻であれば日本の被害は突出して甚大なものになったと考えられる。

安倍内閣は感染抑止よりも五輪開催優先のスタンスを示した。
そのために、1月28日に第2類相当指定感染症に区分しておきながら、感染抑止の強い措置を取らなかった。
いま、菅内閣は新型コロナを第2類相当指定感染症に区分したまま、Go Toトラブルキャンペーンを全面推進している
「感染拡大防止に全力をあげる」と言いながら、外国人の入国制限緩和、訪日外国人の公共交通機関利用制限緩和などの措置を検討し始めている。

すべてにおいて支離滅裂。
この支離滅裂が菅内閣を早期に退場に追い込む主因になるだろう。
            (以下は有料ブログのため非公開)

大津波特別警報下のGoTo Beach政策
               植草一秀の「知られざる真実」 2020年11月22日
人の移動拡大が感染拡大をもたらすことは明白だ。
人の移動指数と新規陽性者数とを比較して、相関関係が確認できなとの説明を情報番組のキャスターが示すが、恣意的でミスリーディングな情報だ。
菅内閣からの指示による誤情報の流布であると推察される。
人の移動と新規陽性者数との間にタイムラグがある。
人の移動指数と新規陽性者数との間に約3週間のタイムラグがある。
同じ時間軸上に両者を表記すれば因果関係がないように見えるだけだ。
人の移動が拡大し、3週間後の陽性者数になって表れる。
           (添付のグラフは省略します)
ただし、新規陽性者数の変化をもたらす要因はこれだけではない。
季節性がある。コロナ感染症は冬期に拡大し、夏期に減少する傾向がある。
気温、湿度、換気状態の三つが影響する。
3月から5月にかけての新規陽性者数の減少は行動抑制によるもの。
5月から8月にかけての新規陽性者数増加は行動再拡大による。
8月から9月にかけての新規陽性者数減少は季節性によるもの。
9月以降、再び行動が拡大し、10月以降、季節性の要因が加わって新規陽性者数が急増している。

行動拡大の最大の背景はGo Toトラブルキャンペーンの全面展開だ。
菅内閣はGo Toトラブルキャンペーン全面展開によってコロナ感染拡大を全面推進してきた。この政策対応が完全に間違っている
11月21日、菅内閣はGo Toトラブルキャンペーンの見直しを表明した。
しかし、具体策を示していない。
11月21日からの3連休のGo Toトラブルを全面推進する意向が明白だ。
「見直し」を表明しながら、迅速にしない。具体的方法を観光庁と、これから詰めるという。感染再拡大があり得ることなど、Go Toトラブルキャンペーンを始める前から分かりきっていること。
運用変更の判断があれば、1秒後には実施できる体制を保持することが基本の基本だ。

内閣の能力の低さも鮮明だ。
菅義偉内閣は新型コロナ感染症を第2類相当指定感染症に区分している。
安倍内閣が新型コロナ感染症を第2類相当指定感染症に区分したのは1月28日のこと。
その後の政令改正で「無症状者への入院勧告」や「感染が疑われる人への外出自粛要請」などが次々と加わり、「1類」、あるいはそれ以上の措置が取られるようになった。
1類と規定されているのはエボラ出血熱やペスト。
2類は結核やSSARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)
3類はコレラや細菌性赤痢
4類は狂犬病やマラリアである。

第2類プラスαの感染症に指定しておきながら、Go Toトラブルキャンペーンを展開することはあり得ない
大津波特別警報を発令しながら、海岸への外出キャンペーンを展開するようなもの。
経済活動を重視するとしても、この政策対応はあり得ない。
コロナ収束を確認できた上でキャンペーンを実施するなら、まだ理解できる。
しかし、コロナ感染が拡大するなかでキャンペーンを推進することはあり得ない。
報道特集の金平茂紀氏が「馬鹿な大将敵より怖い。ダメな政府ウィルスより有害」と発言したが、その通りだ。

そもそもの問題は、コロナ感染症を第2類相当指定感染症区分に置き続けていること。
第2類相当指定が妥当なら、Go Toキャンペーンを展開することはあり得ない選択。
しかし、日本におけるコロナ被害は第2類相当指定と明らかに矛盾する。
コロナ感染症をインフルエンザ同等の第5類感染症に区分変更すれば、大半の問題が解消される。
この場合には、そもそもGo Toトラブルキャンペーンなど必要ないということになる。
第2類相当指定感染症にしている裏側に巨大な闇が存在する。
いずれにせよ、馬鹿な大将を早く退場させないと日本が崩壊してしまう。
            (以下は有料ブログのため非公開)