2020年11月28日土曜日

「感染防止と経済活動の両立」論の破綻と本質 - 第3波の原因はGo To政策(世に倦む日々)

 コロナ第3波が到来しました。この先どこまで拡大するのか見当がつきません。

 政府は常に「感染防止と経済活動の両立」が大事だと口にしますが、その実、これまで感染対策は何もしないままできました。PCR検査はいまだに保健所が関門として立ちふさがり、旅行に出かけるため念のため受けたいといっても認められません。熱があるからと訴えても数日間は待たされた挙句、検査してからも数日経たないと結果が分からないという具合です。これでは毎日働かなくてはならない人たちはPCR検査など受けられないというのが実情です。「感染防止と経済活動の両立」など出来る筈がありません。
 そうした問題を何も解決しない一方でGo Toに走り出しのですから、たちまち頓挫するのは当然のことです。それでも政府はごく一部を撤退に向かわせただけです。

 日本は論外として、PCR検査を拡充させてきた欧米でも現実に感染爆発が起きています。「世に倦む日々」氏は、「両立」論や「ウィズコロナ」とは原理的に異なる方式でコロナ封じに取り組んでいる国が中国であり、コロナ封じに成功したとしています。
 そして「感染防止と経済活動の両立」はそもそも両者を並行させるものではなく、「感染防止によって経済活動の前提を作る」というものでなければならないと述べています。「感染防止と経済活動の両立」の「バランス点を求める」というようなものではなく、まず「感染防止」が行われて初めて「経済活動が可能になる」ということです。
 そうでなければ結局のところハンマー&ダンスの不毛な繰り返しとなり、医療崩壊にも向かうとしています。説得力があります。

 幸いにして日本を含む東南アジアには例の「ファクターX」があって、政府の不作為のなかでもこれまでは何とか大破綻を示さないできました。しかし第3波ではこれまでのようなわけにはいきません。まだごく入口の段階で既に医療崩壊の危機が叫ばれています。それなのに政府からは必死さが伝わらないのは異常なことです。
 ブログ「世に倦む日々」を紹介します。
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「感染防止と経済活動の両立」論の破綻と本質 - 第3波の原因はGoTo政策
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26日の報道を見ると、大阪で感染爆発の段階であるステージ4が目前となっている。判断指標となる6項目のうちすでに5項目で基準を超えており、残る1項目の病床使用率も間もなく50%超えとなり、ステージ4突入が確実な状況となっている。これに対して、政府の方はすでに姑息に先手を打っていて、加藤勝信が会見で「都道府県が『ステージ4』と判断しても、機械的に緊急事態宣言を発出することはなく、政府が総合的に判断して最終的に決定していく」と言い、緊急事態宣言は絶対に出さないという意思を明確にした。これは、吉村洋文と腹を合わせての方針発表であり、両者の間で対応姿勢は一致している。経済を重視して無策を貫くという意味だ。おそらく、大阪はかなり厳しい医療崩壊の事態に直面するだろう。今回の第3波では、北海道と大阪の感染拡大が先行して深刻化している点が注目される。いずれも菅義偉とべったり昵懇の首長がいて、新自由主義の性格と体質が際立った自治体である。経済優先至上主義で立ち回ってきた自治体だ。偶然だとは思えない

言われている「経済優先」とは、実際には「資本優先」の意味であり、すなわち「資本主義」の態度のことである。感染拡大はある程度は仕方ないと容認して、リスクを顧みず観光産業を振興させ、人を過剰に集めて飲食消費させ、経済活動を回そうという発想様式である。テレビ報道では、焼き鳥屋とか居酒屋の経営者が出て来て、時短は困るとか、稼ぎ時の商機に客足を止められると困るとか言っている。政府の意図を受けたテレビ局がその類の映像を放送し、飲食店や宿泊業者に同情する国民世論を掻き立てている。店主に菅義偉の政策を代弁させ、彼らに世論工作させ、Go Toを始めとする菅義偉の経済優先路線を正当化させている。そんなもの、単に政府が直接に支援金を注入すればいいだけではないか。1兆円でも2兆円でも、飲食業や観光業の関係者が仕事を中断しても生活を維持できるように、政府がミニマムの手当を施せばいいだけの話だ。玉川徹が言っているような半徳政的な貸付措置も一案だし、小林慶一郎が言っているような特例の窮乏者救援金も一案である。

それはお金で解決できる。飲食店と宿泊業を救済することはお金で解決できる問題であり、国民の税金である予算の拠出で解決できることだ。一方、コロナはお金では解決できない。コロナにお金をあげるから感染拡大をやめてくれと頼んでも、コロナは言うことを聞いてくれない。医療体制の方は、今、政府が現金を10兆円積んでも、20兆円積んでも、問題解決できない。看護師はお金を出せばすぐにそこに創出できるものではない。医療のマンパワーはお金で買えないもので、その資源は即座に出現・充当させられないものだ。飲食店と医療体制は同レベルの問題ではない。お金で解決できるものと解決できないものがある。だから、政府の公共政策のプライオリティでは、医療体制を崩壊から守る方が優先になるのであり、飲食業と観光業に自由に市場活動させることが後回しになるのである。命を守るということが第一義だ。どれほど個人がお金を持っていても、医者と看護師が消えたら自分の命を守れないではないか。病院あっての国民の生存であり、生存あっての経済活動である。

春以降、ずっと「感染防止と経済活動の両立」のフレーズが言われ、不動の命題として確立している。NHKと民放がこの常套句を刷り込み続け、無謬の定理として常識化させてきた。まともなコロナ対策の要求や主張が出されるたびに、「両立」論が説かれて反論されてきた。経済活動は止めていいのか、自殺者が増えてもいいのか、飲食業に潰れろと言うのかという脅しが入れられ、「両立」論と「バランス」論に回収される。回収されることによって、GoTo政策が正当化され、3連休で見たようにグロテスクに推進されて行った。GoTo利用者が模範国民化されるという倒錯現象が起きた。「両立」だの「バランス」だの言いつつテレビに出るのは居酒屋の主人とか、京都観光を愉しむ自由主義の旅行者ばかりであり、コロナに罹った患者とか家族はニュースに登場しない。「両立」の片側にいる庶民の姿を映さない。医師会の幹部だけだ。クラスターが全国で発生していると言いつつ、NHKはクラスターの現場を取材せず、施設の所在さえ報道しない。感染者数が第1波の4倍もあるのだから、クラスターも4倍あるに違いないが、マスコミが報道しないので実感がわかない。

「両立」論・「バランス」論というのは、社会政策の観点から厳密に検討すれば誤った理屈で、そもそも論理矛盾があり、政策として破綻が必然的なものだ。感染防止と経済活動は、独立する二つを天秤にかけて均衡の調整を図る性質のものではなく、感染防止によって経済活動の前提を作るものである。つまり、この二つは左右に対立的・二律背反的に等置される政策命題ではなく、上下の関係に位置されるもので、自由な市場活動の基礎となるのが感染防止の医療体制である。感染防止が土台であり、経済活動が上部構造だ。それが社会政策の真理であり、政府行政の基本認識である。土台とすべきものを上部構造と並立に構図化し、上下の関係を左右の関係に転換して概念づけているところに、この「両立」論・「バランス」論の虚偽と詐術があり、言説のトリックがある。すなわちイデオロギー性がある。その裏の真実は、JTBだの楽天トラベルだの電通だのの政商資本が税金をぼったくって大儲けしているだけだ。コロナ禍の政府行政に便乗し寄生する彼ら資本を大儲けさせる詐術の言説工作が、「両立」論であり「バランス」論に他ならない。

両立」論・「バランス」論を基軸にコロナ政策を進めている国は多い。ヨーロッパの主要国がそうである(スウェーデンを除く)。だから、日本人はこの方針を普遍的なものとして疑わない。けれども、考えないといけないのは、これら主要先進国がすべて対策に失敗している事実である。IMFは2020年のEUのGDPをマイナス7.6%と予測している。日本はマイナス5.3%。「両立」論・「バランス」論で対策を行うと、結局のところハンマー&ダンスの不毛な繰り返しとなり、感染爆発とロックダウンの往復循環をだらしなく進行させるだけで、医療崩壊と大量失業のジレンマに苦悩し続けるという帰結になる。社会も疲弊し、経済も医療もセーフティネットが崩壊する。ここに、「両立」論や「ウィズコロナ」とは原理的に異なる方式でコロナ封じに取り組んでいる国があり、それは中国である。IMF予測の2020年の中国のGDPはプラス1.9%。日本人は中国のコロナ対策を強権的と悪罵し、悪の見本として侮蔑し嫌忌するだけだが、中国は堂々の「ゼロコロナ」社会であり、玉川徹が理想郷として唱える「感染者を隔離した健常な市民社会」を実現させている。中国が「両立」論の立場に与さないのは、中国が「資本主義」ではないからではないのか。

中国の対策方式は、西側諸国のように感染防止と経済活動の二つを並立させていない。二つを天秤にかけてバランスの調節をしていない。アクセルとブレーキの関係に比喩し構図化していない。経済活動のために感染防止をしている。優先順位が厳然としてあり、上下の関係で位置づけが決まっている。防疫医療の社会的土台の上に市場経済活動を置いている。なぜ中国がそういう原理と図式になるかというと、社会主義の考え方で行政の選択と判断が秩序づけられるからだ。資本・私企業の論理・個人の自由が中心ではなく、社会全体の利益を中心とした公共政策の組み立てと方向づけだからだ。ベトナムも同じである。キューバもそうだ。韓国は中国と日本の中間にある。中国で、感染が収束してないのに国民を観光と飲食に誘導するインセンティブ政策はあり得ない図だろう。中国でなくても、普通に考えて狂気の沙汰だ。狂気の沙汰なのに、この政策が容認され、正当化され、マスコミで宣伝されて全体主義的に推進される。医療体制を人為的に崩壊させる自滅政策が採られ、マスコミが積極的に後押しする。日本はまさに市場原理主義の国であり、極端で凄絶な資本主義の国だと言うしかない

第3波の原因となったのは、明らかに10月からのGoToトラベルの東京発着の解禁である。東京を対象に含める強引な決定が第3波を惹き起こしている。資本主義の政策が元凶だ。気の緩みを(意図的に)促したのは政府であり、菅義偉に忖度し隷従するしか能がないマスコミである。政府と御用学者とマスコミに責任がある