2024年5月13日月曜日

水俣病救済は国の使命 被害者発言打ち切り問題

 環境省職員が1日の水俣病の被害者団体との懇談でマイクを切り発言を妨げた問題で、伊藤環境相は9日の参院環境委員会の冒頭、「大変申し訳ない思いだ」と改めて謝罪し団体が要望する懇談の場を改めて設ける考えを示しました。
 この問題で環境省は、発言時間が3分を超えると「マイクオフ」にすると明記した台本を用意していたこと9日に公表しました。

 共産党の山添拓政策委員長は10日、国会内で会見し、環境省が台本を作成していたことについて問われ、「水俣病が環境行政の出発点であるにもかかわらず、水俣病被害者の声を閉ざすシナリオを描いていたということであり言語道断」本来救済されるべき被害がいまだ存在する。その声を聞かない姿勢を反省するのであれば、救済のための対応を考えるべきだ」と主張しました。
 そもそも半世紀にもわたって苦しんできた患者やその家族からの訴えが「3分間」で収まる筈がありません。各省の専門委員会や諮問委員会などでは官僚が召集した委員の発言をその程度に抑える例はあるということですが、それと同列に扱うという発想が間違っています。

 新潟水俣病の被害者4団体と支援団体は10日、新潟県庁で記者会見し熊本県水俣市の水俣病患者団体と環境相の懇談時に被害者の発言が妨げられた問題について、「怒りで震えが止まらない」との声が出され、新潟水俣病が公式確認された日(5月31日)に県が開催する式典に伊藤環境が出席する懇談の場を求めました。

 環境省の官僚は水俣病の悲劇を起こした責任が偏に国にあることを良くよく自覚すべきです。最高裁が認定した通り、水俣病の原因については、国や熊本県は遅くとも1959年にはチッソ水俣工場の廃液だと認識できたのに1969年までそれを規制せず放置していたために膨大な数の水俣病患者を発生させたのでした。その理由は、当時化学工業にとって必須の物質であったアセトアルデヒドの生産を維持するため、何の規制もせずに水俣工場に操業を続けさせるためで、いわば国家の利益のために住民を犠牲にしたのでした。
 その結果、水俣病患者は推定20万人とも40万人ともいわれるまでに拡大しましたが、国は疫学調査を行わなかったためその実態はいまだにわからないままです。
 それなのに水俣病の深刻な被害が明らかになると、国は補償対象者を減らすために途中から水俣病と認定する要件を「複数の症状がなければは認めない」という患者切り捨ての基準に変えて、補償を受けることが出来た患者を実際の「数十分の1」に抑え込みました。
 水俣病に関しては患者数を拡大させた責任は挙げて政府にあるにもかかわらず、政府は徹底して患者の救済を避けてきました。水俣病の悲劇を起こした責任は偏に国にあります。
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水俣病救済は国の使命 被害者発言打ち切り問題 山下議員が追及
                      しんぶん赤旗 2024年5月10
伊藤環境相が参院委で謝罪
 環境省職員が水俣病の被害者団体との懇談(1日)でマイクを切り、発言を妨げた問題で、伊藤信太郎環境相は9日の参院環境委員会の冒頭、「発言されていた方に対し、大変申し訳ない思いだ」と改めて謝罪しました。団体が要望する懇談の場を改めて設ける考えを示しました。
 日本共産党の山下芳生議員は質疑で「“事務方の不手際”という一言ですませていい問題ではない」と批判。その上で、伊藤環境相がこの日、「水俣病はまだ終わっていない」との認識を示したことにふれ、「水俣病に罹患(りかん)しながら、行政に水俣病として認められず苦しんでいる多数の患者の救済こそが環境省の使命だ」と強調。潜在的な水俣病患者は20万人、40万人とも言われるとし、「実態はわかっていない。疫学調査を行っていない国の責任だ」と指摘しました。
 「現行法の中でどう救済できるか検討していく」と述べた伊藤環境相に、山下氏は「苦しんでいる患者をどう救済するのか。現行法で救えないのなら新たな立法を省として提案すべきだ」と追及。伊藤環境相は「新たな立法か(現行法)改正か検討が必要だが、しっかり進めていきたい」と述べ、法改正も視野に救済を進めていく考えを示しました。
 1日の懇談は「水俣病犠牲者慰霊式」後に被害者団体と伊藤環境相らが行ったもの。団体側の発言が3分の持ち時間を超えたとの理由で、同省職員がマイクの音を一方的に切断したことに被害者らの批判が高まっていました。


台本に「マイクオフ」 環境相と水俣病被害者の懇談
                      しんぶん赤旗 2024年5月11日
 環境省職員が水俣病の被害者団体との懇談で発言中にマイクを切り発言を遮った問題で、発言時間が3分を超えると「マイクオフ」にすると明記した「懇談シナリオ」を、環境省が用意していたことが分かりました。同省が公表(9日)しました。

 公表されたのは「水俣病関係団体との懇談シナリオ」と書かれた台本です。伊藤信太郎環境相らと被害者団体との懇談40分間のスケジュールが書かれています。
 シナリオには発言者の「持ち時間が近づいた場合」として、「3分でマイクオフ」と明記しています。実際に1日に熊本県水俣市であった懇談では、被害者団体の発言時間が3分経過した後、同省職員がマイクの音量を切っていました。
 また、環境省室長の発言内容として「長くなるようでしたら、失礼とは存じますが、途中でお声かけし、当方でマイクをオフにさせていただくこともあるかもしれません」と記されています。ただ当日、室長はマイクを切るとの説明をしていませんでした。
 本紙の取材に環境省は、例年、発言時間3分という運用をしてきたとし、「マイクを切る対応は今回が初めてだ」としています。
 懇談参加団体の「水俣病不知火患者会」の元島市朗事務局長は、「マイクを切ると書いた台本を用意することは許されない行為だ。環境省が真摯(しんし)に患者と向き合う姿勢がないことの表れだ」と批判しました。


水俣病被害者の声閉ざすシナリオは言語道断 山添氏
                      しんぶん赤旗 2024年5月11日
 日本共産党の山添拓政策委員長は10日、国会内で会見し、水俣病の被害者団体と伊藤信太郎環境相の懇談で環境省が「3分でマイクオフ」などとした台本を作成していたことについて問われ、「水俣病被害者の声を閉ざすシナリオを描いていたということであり言語道断だ」と批判しました。
 山添氏は「水俣病が環境行政の出発点であるにもかかわらず、その出発点を忘れてこういう扱いをしてきた。今回だけでなく、この間も同様の扱いをしてきたのではないか」と述べ、徹底して事実関係を明らかにするべきだと強調しました。
 また、伊藤環境相による謝罪について「求められているのは救済だ。本来救済されるべき被害がいまだ存在する。その声を聞かない姿勢を反省するのであれば、救済のための対応を考えるべきだ」と主張しました。
 そのうえで、居住地域などで救済対象を線引きし、被害の実態をまともに調査しない国の姿勢自体が批判されてきたと指摘。「きちんと調査して被害に見合った救済を図っていくことが環境行政を立て直す出発点になる」と強調しました。


新潟水俣病 5団体会見 環境相は式典出席・懇談を
                      しんぶん赤旗 2024年5月11日



(写真)県担当者(左)に要望書を手渡す(手前右から)小武、曽我の両氏=10日、新潟県庁



 新潟水俣病の被害者4団体と支援団体は10日、新潟県庁で記者会見しました。熊本県水俣市の水俣病患者団体と環境相の懇談時に被害者の発言が妨げられた問題について、「怒りで震えが止まらない」との声が出され、新潟水俣病が公式確認された日(5月31日)に県が開催する式典に伊藤信太郎環境大臣が出席し、懇談の場を求めました
 会見に先立って環境相宛てに送付した要望書(9日)では、新潟水俣病被害者は環境相と定期的な懇談の場がなかったと指摘し、「新潟水俣病被害者は大臣の前でマイクを持つ場さえない」と、被害者と意見交換の場を設けるよう求めています。
 会見で「新潟水俣病被害者の会」の小武節子会長は、差別と偏見の中で何十年も苦しみ続けてきた被害者の思いを遮った環境省の行為に「怒りで震えが止まらなかった。(ノーモア・ミナマタ第2次新潟訴訟)の判決を前に亡くなった妹の無念を思うと切ない」と訴えました。
 「新潟水俣病阿賀野患者会」の曽我浩会長代行は、大阪・熊本・新潟の3地裁判決は、いずれも多くの潜在的な水俣病被害者がいると認めており、法にもとづく現地の実態調査を長年放置してきた国の責任は重いと指摘。生きているうちの全面解決を求めました。
 会見後には花角英世知事に対し、環境相と旧昭和電工社長の式典出席と懇談の場を要請するよう求める要望書を提出しました。