参院選では参政党の躍進が予想されています。
彼らは極右と位置づけられていますが、その政策については植草一秀氏が繰り返し「投票前に少なくとも参政党の公約と憲法改正草案を熟読」すべきであると指摘している通り、実に酷いものです。
15日、日本ペンクラブは参院選における差別言動やデマの拡散に抗議する緊急会見を開き、「選挙活動に名を借りたデマに満ちた外国人への攻撃は私たちの社会を壊します」との声明を発表しました。声明は「少しずつでも成熟し前進してきた民主主義社会が、一部政治家によるいっときの歓心を買うための『デマ』や『差別発言』によって、後退し崩壊していくことを、私たちは決して許しません」と、一部政党が外国人排斥などを訴えている現状を厳しく批判しました。日本ペンクラブが選挙期間中に声明を出すのは初ということです。
東京新聞が報じました(声明全文付)。
15日付しんぶん赤旗が「排外主義の矛先は 差別・分断 次々」という記事を出しました。
「参院選で外国人を敵視する排外主義の潮流が出ています」として、その特徴は〝他者の存在、他者の尊厳と人権を認めない″ことにあり、その排外主義の攻撃の矛先は、やがてすべての人々に向けられるというのが歴史の教訓であると述べます
そして参政党のデマ攻撃を【外国人敵視】、【女性蔑視】、【終末期医療】、【侵略戦争美化】の4本の柱に分けて具体的に検証しています。
例えば【外国人敵視】では、参政党の主張は、具体的な実態とは異なるデマであることをデータ的に実証し、「生活の困難や生きづらさの原因が自公政権の悪政にあることから目をそらさせ、国民の不満や不安を外国人に向けさせる」というところに、「自公政治を免罪する排外主義の最悪の役割」があると指摘します。
同様に【終末期医療】では、参政党の「終末期医療の全額自己負担化」という公約は、〝他者の存在、尊厳と人権を認めない″という排外主義の特徴を示すものであり、お金のない人の「生きる尊厳」を国家が強制的に奪うことを意味するものだと批判しています。
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日本ペンクラブが緊急声明「選挙活動に名を借りたデマに満ちた外国人への攻撃は私たちの社会を壊します」
東京新聞 2025年7月15日
作家らでつくる日本ペンクラブは15日、参院選期間中の差別言動やデマの拡散に抗議する緊急会見を開き、「選挙活動に名を借りたデマに満ちた外国人への攻撃は私たちの社会を壊します」との声明を発表した。クラブが選挙期間中に声明を出すのは初という。
◆「SNSではうそであるほどおもしろく、メジャーになっていく」
クラブ理事らが日本ペンクラブビル(東京都中央区)で会見した。声明では「少しずつでも、成熟し前進してきた民主主義社会が、一部政治家によるいっときの歓心を買うための『デマ』や『差別発言』によって、後退し崩壊していくことを、私たちは決して許しません」などと、一部政党が外国人排斥などを訴えている現状を批判した。
桐野夏生会長は、こうした背景には貧困があると分析。「抑圧されたものが外国人や女性など弱いものに向けられる」と指摘し、これらの行動が「差別や偏見に結び付いていくという発想、意識がまだないと思う」と述べた。
中島京子常務理事は「国の中枢にデマを良しとする政治家が入るようになれば、デマを正当化するために真実が隠されたり、ゆがめられたりすることが起こっていく」と語った。
山田健太副会長は「SNSでは(情報が)うそであるほどおもしろく、メジャーになっていく。報道されると気になって調べ、アルゴリズムで次々と個人のスマートフォンに情報が流れ、慣れ親しんでしまう状況があり、あなどれない」と警鐘を鳴らした。(鈴木里奈)
【日本ペンクラブ緊急声明 全文】
「選挙活動に名を借りたデマに満ちた外国人への攻撃は私たちの社会を壊します」
私たちは、このまま社会が壊れていくのを見過ごすことはできません。
参議院選挙を通じ、与野党を問わず、一部の政党が外国人の排斥(はいせき)を競い合う状況が生まれています。しかも、刺々(とげとげ)しい言葉で、外国人を犯罪者扱いし、社会の邪魔者のように扱うことが、さも日本の社会をよくするかのように振る舞っています。
「違法外国人ゼロ」「日本人ファースト」「管理型外国人政策」など、表現の仕方は違えど、外国人を問題視するような政策が掲げられ、「外国人犯罪が増えている」「外国人が生活保護や国民健康保険を乱用している」「外国人留学生が優遇されている」といった、事実とは異なる、根拠のないデマが叫ばれています。これらは言葉の暴力であり、差別を煽(あお)る行為です。こうしたデマと差別扇動が、実際に関東大震災時の朝鮮人虐殺等に繋(つな)がった歴史を私たちは決して忘れることができません。
私たちはこれまで、過去の反省に立って多文化共生社会をめざし、すでに多くの自治体ではそのための条例も施行されています。そうして少しずつでも、成熟し前進してきた民主主義社会が、一部政治家によるいっときの歓心を買うための「デマ」や「差別的発言」によって、後退し崩壊していくことを、私たちは決して許しません。
民主主義社会を守るために、有権者がいま一度立ち止まり、自身の一票を大切に行使することを願います。
2025年7月15日
一般社団法人日本ペンクラブ
会長 桐野夏生
理事会一同
排外主義の矛先は 差別・分断 次々
しんぶん赤旗 2025年7月15日
参院選で、外国人を敵視する排外主義の潮流が出ています。その特徴は、〝他者の存在、他者の尊厳と人権を認めない″ことにあります。排外主義の攻撃の矛先は、やがてすべての人々に向けられるというのが歴史の教訓です。現に、この参院選でも、女性の価値を〝産む産まない″で決める蔑視発言、命の尊厳を否定する〝終末期医療の全額自己負担″など、次々と差別と分断をつくりだしています。その攻撃の特徴と問題点を考えてみました。
自公政治免罪のデマ
【外国人敵視】
「外国人は生活保護を受けやすい」「外国人の犯罪が増えて治安が悪化している」「中国人などに土地が買い占められている」など、根拠のないデマやウソがふりまかれています。
事実は、この10年間で日本に暮らす外国人は約1・7倍に増えたのに、生活保護を利用する外国人は約7万5千人から約6万5千人に減少。その半数は、長年税金も年金も納めてきた在日コリアンです。また外国人の犯罪も2005年をピークに減少、23年は1万5541件と約3分の1です。
外国人による不動産投資の増加は第2次安倍政権の規制緩和とアベノミクスによる円安の結果です。とくに2013年に制定された「国家戦略特別区滅法」などで大規模再開発を後押しした結果、「億ション」やタワーマンションの乱立となり、どんどんマンション価格が上がっていきました。それでも、10億円以上の不動産売買に占める海外投資家によるものは約4分の1です。
ところが、参政党の神谷宗幣代表はこうした事実を無視して「いい仕事につけなかった外国人が逃げ出して、万引きなど大きな犯罪が生まれ、治安が悪くなる」などと発言。同党の公約では「医療保険や生活保護の濫用を防ぐための利用条件を明確化し、日本国民の負担が不当に増えることを防ぐ」と明記しています。
これも実態は、国民健康保険加入者のうち外国人は約4%で、医療費全体に占める外国人の医療費は1・39%にとどまっており医療保険制度の重要な支え手になっています。
生活の困難や生きづらさの原因は、自公政権の悪政にあります。そこから目をそらさせ、国民の不満や不安を外国人に向けさせる-ここに、自公政治を免罪する排外主義の最悪の役割があります。
戦前の「家制度」復活
【女性蔑視】
排外主義の矛先は、男女平等にも向けられています。
参政党の神谷代表は第一声で、「高齢の女性は子どもを産めない」「男女共同参画は、間違い」などと、とんでもない女性蔑視の発言を行い、〝産む産まないで女性の価値を決めるな″と全国で抗議の声があがっています。
神谷氏の発言の根幹には「『将来の夢はお母さん』という価値観を取り戻す」(同党の政策)というように、女性の社会進出を敵視し、戦前の「家制度」を復活させようという発想があります。神谷氏は「世界経済フォーラム」が発表するジェンダー指数にも「ダボス会議を開いて彼らが勝手に決めている。日本は日本でいいじゃないか」「(ジェンダー平等は)外から一部の活動家が言っているだけ」と敵視しています。
しかし、ジェンダー指数は、国連や世界銀行などの統計データに基づいてデータ化したもの。ジェンダー平等も長年の男女差別解消を求める運動や、フラワーデモなど性暴力や差別の根絶など当事者の運動として広がったもの。「外から」の運動ではありません。
排外主義はここにも分断を持ち込もうとしているのです。
「生きる尊厳」を強奪
【終末期医療】
排外主義の特徴は、〝他者の存在、尊厳と人権を認めない″ことにあります。その危険をはっきりと示したのが参政党の「終末期医療の全額自己負担化」公約です。同党は「過度な延命
治療に高額医療費をかけることは、国全体の医療費を押し上げる要因」だから自己負担化は必要だと合理化しています。
「終末期医療の全額自己負担」について同党は年代を限定しておらず、現役世代や子どもを含むすべての人が対象です。「全額自己負担化」は、子どもやパートナーの最期をみとる親や配偶者に対し、少しでも一緒に過ごしたかったら自分で金を出せというに等しいものです。
日本老年医学会は「高齢者の人生の最終段階における医療・ケアに関する立場表明2025」で「尊厳」とは「本人に何かを押し付けたり、支配したりすることを否定し、本人の生き方、価値観や意向を尊重すべきこと」としています。
参政党の公約は、お金のない人の「生きる尊厳」を国家が強制的に奪うことを意味します。
やがては国民全体に
【侵略戦争美化】
排外主義の矛先がやがては日本国民自身に向けられてくることは歴史の教訓です。それを地で行っているのが神谷氏の発言です。
神谷氏は、日本の侵略戦争を「大東亜戦争」と呼び、「(日本が)アジア全てを侵略して自分たちの領土にしようという領土的な野心で起こした戦争ではない」(3日、外国特派員協会)と侵略の事実を否認。「自衛戦争という考え方もできる」と美化・肯定しました。
また、国民主権をかかげ天皇制・侵略戦争反対を主張した日本共産党を徹底弾圧した治安維持法について「悪法というが共産主義者にとっては悪法だった。共産主義者を取り締まるものですから」(12日)と正当化しました。治安維持法の核心は共産主義の取り締まりではなく「国体」=天皇絶対の国家体制に反対するものに極刑(死刑)を科すものでした。こうして広く国民を監視し、自由と民主主義を圧殺したのが治安維持法でした。
戦後の民主主義は、侵略戦争と天皇制ファシズムヘの反省に立つもの。戦前の美化は戦後民主主義の全面否定につながるものです。
同党の「新日本憲法」(構想案)は、日本を「天皇のしらす(治める)君民一体の国家」とし戦前をよみがえらせようとするものです。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。