2025年6月23日月曜日

オバマ、バイデンと同じ帝国主義の道を進み始めたトランプ

 トランプは22日朝、イランの3つの核施設を空爆し、「非常に成功した攻撃を完了した」と誇りました。特にフォルドゥ(地下深くの施設)には米軍のステルス爆撃機による徹底的な「地中貫入」爆撃を加えたということです。
 これ以上はない「イラン戦争」への明確な参入ですが、トランプはなぜか「世界中でこの任務を遂行できた軍隊は米軍の他にない。今こそ平和の時だ」と訴えたということです。
 そういえばトランプの介入によってインドとの戦争を回避できたパキスタンは21日、トランプを26年のノーベル平和賞候補に推薦することを決めたと発表したばかりでした。
 トランプは20日、自身のXで印パの仲介や、イスラエルとアラブ諸国の関係正常化といった「功績」を列挙。それでも「ノーベル平和賞をもらうことはないだろう」と不満を漏らしていたと伝えられています。

 ではこのイラン戦争介入が平和賞受賞の要因になるとでも思っているのでしょうか。楽観的というか滅茶苦茶というか とても納得できるものではありません。
 確かにトランプは、早い段階でウクライナ戦争の終結を企図してプーチンとの電話協議を重ねましたが、思うように進まずに断念しました(そのように見えます)。
 元々プーチンには15年2月のミンスク合意2で「西側諸国に騙された」苦い経験があるので、その辺の疑念が解消される内容でなければ合意できないのですが、トランプがその点をどう理解したのか、あるいはしなかったのか疑問です。

 とはいえトランプなりに何とかウクライナ戦争を終わらせようと努力したこと自体は肯定できます。それに大統領候補時代に体制側から暗殺されようとするなど、いわゆる「闇の政権(デープステイト)」とは一線を画しているのは明らかであり、一期目にはロシアとの融和を目指そうとした面もありました。
 しかしこともあろうに無法国家イスラエルと組んで中東の最大国家イランと戦争を始めたのですから、もはや「非戦争派」とは言えません。それに決してトランプが考えているほど早期に戦争が終結することはなく、任期いっぱい関わらざるを得なくなると言われています。
 米国には、絶対に負ける筈のないベトナム戦争に負けたという歴史があります。米国が始めたベトナム戦争は1955年から20年間続き、 敗戦の4年前の1971年には 累積戦費の莫大化で初めて「ドル」は金兌換券から非兌換券(紙幣)に転落したのでした。

 まずCNNの記事「米国のイラン攻撃は『パンドラの箱』開ける恐れ 専門家が警鐘」を紹介します。
 併せて櫻井ジャーナルの3つの記事
 ・「ブッシュ・ジュニア、オバマ、バイデンと同じ帝国主義の道を進み始めたトラ
  ンプ」
 ・「想定外の報復攻撃で国内が動揺しているイスラエルでは情報統制を強化」

 ・トランプもイスラエルには逆らえない
を紹介します。
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米国のイラン攻撃は「パンドラの箱」開ける恐れ 専門家が警鐘
                             CNN  2025.06.19
(CNN)米国は、山奥に隠されたフォルドゥ燃料濃縮施設を含むイスラエルの主要核施設への攻撃の可能性を示唆し、イスラエルとイランの紛争への介入に近づいているようだ。
イスラエルによるイランとその核開発計画への攻撃が数日にわたり続く中、イスラエルの指導者らは、トランプ米大統領が攻撃の完遂を支援するかどうかを注視している。
協議に詳しい2人の当局者によると、トランプ氏は米軍の資産を使ってイランの核施設を攻撃することに前向きになりつつあり、外交的解決に難色を示している
トランプ氏は18日、ホワイトハウスで記者団に「攻撃するかもしれないし、しないかもしれない。つまり、私が何をするかは誰にも分からない。一つ言えるのは、イランは多くの問題を抱えており、交渉を望んでいるということだ。なぜこれほど多くの死と破壊が起こる前に、私と交渉しなかったのか」と語った。

イランの専門家は、米国によるイラン攻撃は、イラクやアフガニスタンでの戦争よりもさらに困難な泥沼に引きずり込まれる恐れがあると警告する。それはトランプ氏の任期中、長期にわたって続き、イスラエルの要請に応じたことで米国の人命と資源に多大な犠牲を強いる対立となる可能性がある
ワシントンのクインシー研究所執行副所長、トリタ・パルシ氏はCNNに対し、「米国によるいかなる攻撃も、イランによる地域内の米軍基地への全面攻撃、ひいては米イラン間の全面戦争を招く」と語った。
パルシ氏は、イランは米国との長期戦に耐えられないかもしれないが、米国にとっても容易な戦争にはならないとの見方を示す。
それは、イランが非常に大きな国であり、米国がイランの反撃能力を奪うには極めて多くの標的を攻撃しなければならないからだ。パルシ氏はトランプ陣営内でイランとの戦争に対する広範な支持が得られていないうちに、こうした事態が発生するだろうと指摘した。
欧州外交評議会の上級政策研究員、エリー・ゲランマイエ氏はCNNに対し、米国のイラン攻撃は「パンドラの箱」を開け、「トランプ大統領の残りの任期を食いつぶす可能性が高い」と話す。
「パンドラの箱を開けてしまえば、事態がどうなるか全く分からない」「トランプ氏は過去にイランとの戦争の瀬戸際から引いたことがある。彼には今回もそうする力がある」(ゲランマイエ氏)


ブッシュ・ジュニア、オバマ、バイデンと同じ帝国主義の道を進み始めたトランプ
                          櫻井ジャーナル 2025.06.19
 ドナルド・トランプ大統領がジョー・バイデン政権化している。ジョージ・W・ブッシュ化、バラク・オバマ化とも言えるだろう。世界制覇戦争を推進しているということだが、これはロシアや中国との戦争へ突き進んでいることを意味する。広く言われているように、アメリカの選挙は無意味だ。
 19世紀以降、ヨーロッパ諸国、アメリカ、そして日本は帝国主義国として生きてきた。見にまとう服装を変えてはきたが、中身は帝国主義のままである。帝国主義国が突如、民主主義体制に変わるなどということはありえない。長い時間をかけて民主主義的な思想が培われていなければ、そうした思想が噴出することはない。
 逆に、帝国主義的な思想が噴出することもある。その切っ掛けになったのは、1991年12月のソ連消滅だ。ソ連というライバルが消滅したことで西側諸国は民主主義の衣を脱ぎ捨て、帝国主義という本性を見せることになった。そうした動きを扇動したのがシオニストの一派であるネオコンにほかならない

 アメリカの外交や安全保障をコントロールしていたネオコンは1992年2月、アメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇計画を作成した。リチャード・チェイニー国防長官の下、国防次官を務めていたポール・ウォルフォウィッツが中心になって書き上げられたことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。アメリカのライバルだったソ連が消滅した後、ロシアを含む旧ソ連圏はアメリカの支配下に入り、自分たちに歯向かう国は存在しなくなったという前提でドクトリンは作られた。
 そのプロジェクトが本格的に指導したのは2001年9月11日。この日、ニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎が攻撃されている。この出来事を利用してジョージ・W・ブッシュ政権はイラクを先制攻撃、サダム・フセイン体制を倒したが、イラクに親イスラエル体制を築くという当初の目的は達成できなかった
 正規軍の投入で失敗したことを反省したのか、オバマ大統領は師匠に当たるズビグネフ・ブレジンスキーが編み出した方法を使う。1970年代にブレジンスキーはムスリム同胞団やワッハーブ派を主な戦闘員とする武装集団を編成してソ連と戦わせたが、この時にCIAが訓練した戦闘員のデータベースを作成、それが「アル・カイダ」。そのデータベースに基づいてアル・カイダ系武装集団が作り出される。その手法をオバマは採用したのだ。リビアやシリアはこの手口で破壊された

 ネオコンはヒラリー・クリントンをオバマの後継者に決めていたが、トランプに負けてしまう。ロシアを軍事的に制圧するという戦略をヒラリーは引き継ぐと見られていた。
 2015年5月26日の時点で民主党幹部たちがヒラリー・クリントンを候補者にすると決めていたことを示唆する電子メールが存在、同年6月11日から14日にかけてオーストリアで開かれたビルダーバーグ・グループの会合にヒラリーの旧友であるジム・メッシナが参加していたことから欧米支配層はオバマの次はヒラリーを大統領すると決めたと推測されていたのだ。
 ところが2016年2月10日にヘンリー・キッシンジャーがロシアを訪問してウラジミル・プーチン露大統領と会談。その後、流れが変わったとする噂が流れ始めた。2014年3月5日付けワシントンポスト紙でキッシンジャーはウクライナにおけるネオコンの政策は危険だと警鐘を鳴らしていた。ウクライナは複雑な歴史と多言語多文化他宗教の国であり、こうした国で一方が他方を支配しようとすれば内戦、または分裂につながると指摘している。
 そして2016年8月9日、チャーリー・ローズはマイク・モレルをインタビューした映像を公開した。モレルはクリントンを支援するためにCIA副長官を辞めた人物で、ロシア人やイラン人に代償を払わせるべきだと主張している。
 それに対し、モレルはローズからロシア人とイラン人を殺すという意味かと問われ、その通りだと答えた。「わからないように」と付け加えたが、殺すといったことは消えない。

 その発言の直後、2016年9月6日にモスクワでウラジミル・プーチン露大統領の運転手を40年にわたって務めた人物の運転する公用車に暴走車が衝突、その運転手は死亡したが、さらにロシア政府の幹部が変死している。
 例えば、2016年11月8日にニューヨークのロシア領事館で副領事の死体が発見され、12月19日にはトルコのアンカラでロシア大使が射殺されている。その翌日、12月20日にはロシア外務省ラテン・アメリカ局の幹部外交官が射殺され、12月29日にはKGB/FSBの元幹部の死体が自動車の中で発見された。2017年1月9日にはギリシャのアパートでロシア領事が死亡1月26日にはインドでロシア大使が心臓発作で死亡、そして2月20日にはロシアの国連大使だったビタリー・チュルキンが心臓発作で急死した。

 オバマ政権は2014年2月にキエフでネオ・ナチを使ったクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒し、ロシアとの戦争を始めたが、その政権で副大統領を務めたバイデンは大統領に就任して間もない2021年3月16日、ABCニュースの番組に登場し、ジョージ・ステファノプロスからウラジミル・プーチン露大統領は人殺しだと考えるかと問われ、「その通り」と答えている。ロシアとの戦争を継承したのだ。
 こうした狂気の政策を批判することで支持されたトランプだが、その背後にはシェルドン・アデルソンとミリアム・アデルソンの夫妻のようなシオニストやシリコンバレーの富豪たちの資金が存在した。こうした富豪はネオコンが怒りを引き起こしてきたことを懸念したと言われている。今、こうしたエネルギーを革命へと導くようの集団は存在しないだろうが、富豪たちはトランプを利用して庶民の怒りが暴力的な方向へ流れないように誘導しようと試みたのだろう。
 しかし、トランプも人びとの怒りを抑えきれなくなり、結局、ブッシュ・ジュニア、オバマ、バイデンらと同じ道を歩かざるをえなくなっているようだ。ニュアンスの違いはあるものの、皆、同じ帝国主義者に過ぎない
 情報機関の報告として、イランは核兵器を開発していないと3月に述べたトルシー・ギャバード情報長官は現在、世界がかつてないほど核戦争による破滅に近づいていると警告した。そうした彼女の発言をトランプ大統領は気にしないとしているイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の言うことを気にするということなのだろう


想定外の報復攻撃で国内が動揺しているイスラエルでは情報統制を強化
                          櫻井ジャーナル 2025.06.22
 テルアビブやハイファといったイスラエルの都市ではイランのミサイル攻撃を受け、ビルが破壊されつつある。テルアビブにあるイスラエルの情報機関モサドの本部や軍情報部アマンの兵站拠点もイランの発射したミサイルの直撃を受け、炎上している様子を撮影した映像が流れている。
 イスラエル当局は6月19日の集中攻撃の後、イランのミサイル着弾地点の正確な位置を報じた外国メディアの放送を停止するため、イスラエル警察の隊員を派遣したと発表した。
 イスラエルでの報道によると、イスラエルのシュロモ・カルヒ通信大臣とイタマール・ベン-グビル国家安全保障大臣は6月20日、イスラエルからのあらゆる放送について、外国ジャーナリストは軍の検閲官から事前の書面による承認を得る必要があると発表した。必要な承認を得ずに戦闘地域やミサイル着弾地点から放送を行うことは刑事犯罪であり、検閲規則違反となると述べている。
 しかし、撮影機能が搭載されたスマートフォンが社会に広まっている現在、メディアを取り締まっても情報が流れることを止めることは難しい。路上やバルコニーから攻撃や被害の様子を撮影、発信する人を取り締まることは至難の業だろう
 6月13日にイスラエル軍はイランをミサイルとドローンで攻撃した。サイバー攻撃で防空システムを麻痺させ、イラン領内からドローンやミサイルを発射したと言われている。この攻撃で軍の幹部や核科学者らが殺害された。この攻撃にはアメリカの軍や情報機関が協力していた可能性がある
 イスラエル側はこうした攻撃でイラン軍の指令系統は麻痺、防空システムも機能しなくなると想定、反撃を受けない状態で徹底的に破壊できると考えていたようだが、イランの防空システムは8時間から10時間で回復、報復攻撃も始まった。こうした事態をイスラエルの政府は想定していなかっただろう。
 鉄壁だと宣伝されていた防空システム「アイアン・ドーム」をイランのミサイルは突破、ミサイル攻撃を受けたイスラエルの都市では政府を批判する声が高まっている
 イスラエル軍の攻撃でイランの諸都市も破壊され、数百人が死亡したとされているが、核施設は破壊されていないようだ。フォルドゥ核濃縮施設は地下約90メートルにあり、通常の攻撃では破壊できない。大型地中貫通爆弾(バンカー・バスター)のGBU-57を使うという話も伝えられているが、そのためにはアメリカ軍が協力する必要があり、それでも破壊できるとは言い切れない。
 イスラエル軍は2006年にレバノン南部を攻撃した際、バンカー・バスター爆弾を使用したとされているのだが、新タイプの核分裂装置/兵器、あるいは濃縮ウランを使用したバンカー・バスター爆弾が使用されたのではないかとも言われていた。


トランプもイスラエルには逆らえない
                         櫻井ジャーナル 2025.06.23
 イスラエル政府の希望通り、ドナルド・トランプ米大統領は自国軍にイランの核濃縮施設を空爆させた。イスラエル軍が保有する兵器ではその施設を破壊できないためで、6発のバンカー・バスターGBU-57が使われたとされている。
 トランプ政権を動かすため、イスラエルの情報機関モサドは影響下にあるジョン・ラトクリフCIA長官とマイケル・クリラ米中央軍司令官を使う一方、イラン攻撃に消極的なトゥルシ・ギャバード国家情報長官、ヘグセス国防長官、ジョー・ケント国家テロ対策センター長は会議から排除された。ヘグセスの代わりに出席したのがクリラだ。
 スージー・ワイルズ大統領首席補佐官に会議から排除されたという。ワイルズは医薬品産業のロビー活動を行っていた人物。スティーブン・ウィトコフ中東特使も軍事攻撃に反対していたが、その意見は無視された。

 アメリカにはAIPAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会)というイスラエルのロビー団体が存在している。イスラエルの代理人として活動している以上、外国代理人登録法(FARA)に基づいて登録すべきだと言われているが、イスラエルやその他の外国団体から「いかなる財政支援も受けていない」と主張、登録を拒否している。そうしたことが許されるほど強力な団体だ。
 議員を抱き込むことで政策をコントロールしているが、AIPACのエリオット・ブラントCEOによると、現政権内の「命綱」はCIAのラットクリフ長官。議会入りしたこの人物をイスラエルは育ててきたという。同じように育てられたのがマルコ・ルビオ国務長官やマイク・ウォルツ前国家安全保障問題補佐官だとブラントは語っている。そのウォルツはベンヤミン・ネタニヤフ首相と秘密裏に連携し、アメリカによるイラン攻撃を画策していたことが5月1日に発覚、解任されたのだが、補佐官代理はルビオだ。
 こうした流れの結果、イスラエルにとってラトクリフCIA長官の存在価値は大きくなり、今年4月にはエルサレムでネタニヤフ首相やモサドのデビッド・バルネア長官と会見した。

 イランに関するブリーフィングをトランプ大統領はラトクリフCIA長官とイスラエルと緊密な関係にあるアメリカ中央軍のマイケル・クリラ司令官に挟まれた形で聞くことになっていたクリラは「イスラエルにとって不可欠な資産」と言われている軍人だが、そのように配置しているのはワイルズ首席補佐官だ。イスラエルはトランプをそうやって洗脳したと言えるだろう。
 ネタニヤフ政権に操られ、イランとの戦争へ突き進むトランプ大統領をギャバード長官はソーシャルメディアに投稿した動画で批判する。政治エリートの好戦主義者たちが恐怖と緊張を煽り、危険な状態を作り出していると警告した。その発言にトランプは激怒、ギャバードが「何を言ったかは気にしない」と吐き捨てた。6月20日、彼女ギャバードXで発表した声明で、イランの核濃縮に関する自身の見解はトランプ大統領の見解と完全に一致しているとしている。

 イスラエルを作り出したイギリスはイランを再び自分たちの植民地にしようと目論んでいるが、そのイギリスの情報機関MI6が何を言い出すか注目されている