2025年10月2日木曜日

物価高禍による庶民経済の不況と二極化の彼岸 - インフレ資本主義の軌道化

 世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました。
 自民党総裁選レースが延々と行われ、マスコミは毎日そればかり報道していますが、その中身は皆無で7月までの物価高対策論議はすっかり消し飛んで、財務省と経団連とマスコミが主導し演出する次元に政策論議がスリ替わったと述べて、物価高による庶民経済の不況と二極化が進んでいる現況が実に具体的に語られています。
 物価高は途切れなく続き10月にはさらに加速してインフレが進行していますが、政府はインフレを制止する政策を打とうとしません。大企業を中心とする内部留保は直近の1年間で37兆円増加しましたがもうマスコミ関心を向けなくなりました。
 こうした現状を若い人たちはどう感じ、どう対応しようとしているのかですが、そこに「分かりやすさ」は皆無です。
「若い有権者は新自由主義政党に投票する。オウム真理教教徒の錯乱のように。テレビでは、高価で精巧な鬘をかぶり高額で丹念な整形手術をした新自由主義富裕階級の名士論客たちが、楽しく嬉しそうに、空疎な自民党総裁選の広報拡散に勤しんでいる」と世に倦む日々氏は結びます。それが「彼岸」の姿であるかのように。
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物価高禍による庶民経済の不況と二極化の彼岸 - インフレ資本主義の軌道化
                       世に倦む日日 2025年9月30日
自民党総裁選レースが延々と行われ、マスコミは毎日そればかり報道している。中身が皆無で、無駄で白々しく、不毛で苦痛なCMの視聴を繰り返し強制されているのと同じだ。NHKも民放も北朝鮮中央テレビと同じになっていて、われわれは北朝鮮の日常の情報環境を疑似体験させられている。まるで全体主義国家の訓練をさせられているようで不快きわまりない。中国で、今年おそらく、抗日解放80年を記念して、中国共産党の偉業を讃えるところの、すなわち習近平の趣味的臭気が芬々と漂う、不興で退屈で単調なテレビ報道が長々と放送されたに違いない。人々が辟易としながら共産党の宣伝と付き合ったのではと想像するが、日本人も同じ義務を強いられている。テレビだけでなく、ヤフーニュースもそればかりだ。よくこんな無内容な記事をだらだら書けるものだと脱力する。AIに書かせているのだろうか。自民党から小遣いをもらっているのだろうか。

茶番レースを熱心に見ているわけではないので、論評は無用だし、口を挟む意味も感じないが、参院選のときに言っていた経済政策の中身がすっかり消えているのに驚く。ガラッと景色が一変している。参院選の前、高市早苗は食料品の消費税率ゼロを主張し、消費減税に消極的な石破茂に不満を表明、自民党の物価高対策として検討せよと咆えていた。石破茂と自己とを差別化する持論としてアピールしていた。当然、その看板政策を石破おろし後の総裁選で掲げるかと思いきや、「即効性がない」だの「レジの仕様変更に時間がかかる」だの言い出し、あっさり撤回させ、玉木雄一郎との互換性ばかり強調する豹変となった。他の4人も、所得税制の見直しと社会保険料の負担低減ばかり言っていて、7月までの物価高対策論議はすっかり消し飛んでしまっている。財務省と経団連とマスコミが主導し演出する次元に政策論議がスリ替わった

物価高に喘ぐ庶民の声やインフレ不況に苦しむ零細事業者の姿が、自民党宣伝ショーの表に登場しない。今回は、マスコミが総裁選のお祭り報道から消している経済の現実を直視しよう美容室の倒産件数が過去最高を上回るペースで増えている。美容師の人手不足が原因だとテレ朝は説明しているが、Google AI によると、コスト高による利益圧迫と集客不足による売上不振が第一と第二の理由だと分析している。集客競争が激しいこと、コスト高を簡単に価格転嫁できないこと、が要因らしい。理容美容の市場規模が縮小しているわけではないが、気になる数字だ。弁当店の倒産も過去最多のペースで増えている。会議や法要、冠婚葬祭といった大口の受注が減り、テレワークによって事業所向けのランチ弁当需要も縮小したと帝国データバンクが説明している。原材料高と人手不足も響いている。コメ価格が高騰したことは、弁当店の経営を深刻に直撃しただろう

大量販売する大手は業績を伸ばし、地域密着の小さな弁当店は収益が悪化、二極化が進んでいる。いずこも同じ。記事にはないが、労働者が節約のために弁当を手製するようになった点も影響したのではないか。パン屋の倒産廃業が急増していた件は昨年話題になったが、今年は逆にそれが急減しており、コメ価格の高騰によってパン食が見直されたと東京商工リサーチが書いている。食費の倹約を目的とした、米食からパン食・めん食へという食生活の変化と移行は、低所得世帯で今後も定着して続くだろうラーメン店の倒産が過去最多を更新というニュースも昨年注目されたが、今年に入っても倒産件数は高水準が続いている。原材料の高騰や人件費・光熱費の上昇でコスト高となり、価格転嫁できないまま撤退を余儀なくされている。生活必需品の商売ではないから、価格転嫁で切り抜けるのが難しいのだ

すし店も倒産が増加している。人件費増と原材料費増、徒弟制度的な人材育成環境が忌避されての人手不足も問題らしい。記事には解説はないが、おそらくすし店も二極化していて、インバウンド重要増加で儲けている一部が大都市にあり、そうではなく、回転ずしに庶民客を奪われている平均的な多数が普通の町にあるという実態ではないか。無論、コメ価格の急高騰は重大な打撃を与えているに違いない。美容室、弁当店、パン屋、ラーメン屋、すし屋、これら飲食サービス業は、小規模零細企業を代表する身近な業態で、厳しい競争環境の中、個人が参入して経営と市場を作るビジネスだ。個人の資質と努力と創意工夫で事業を成功させ、顧客を広げ、地域の市民生活を豊かにする経済活動だ。成長のシーズ⇒種子)だ。なので、この部分が順調に伸びて繁盛するとき、経済が潤って豊かになっていると人は実感する。逆に、この部分が発展できないとき、マクロ経済は病気で、経済政策に問題があるのだ

⑥ゴールデンウィークの旅行客は、前年比7%減だとJTBが推計を出していた。JTBのアンケート調査では8割がGW中に旅行せずと答えている。観光地は外国人観光客で溢れかえったが、日本人は旅行を手控えて家で連休を過ごしていた。新幹線や飛行機の国際線などの旅客数は前年より5%から10%伸びていて、ここでも二極化が顕著で、外国人と富裕層が市場を拡大させ活性化させている事情が窺い取れる。庶民層が旅行を手控えたのは、物価高に伴う生活防衛の動機と選択からだろう。観光庁が出した統計では、2024年の国内旅行者数が、コロナ禍前の2019年を1割も下回っているという。日本の庶民経済は物価高の影響で瘦せ細り、衰えて活力と展望を失っている。景色がデフレからインフレに変わっただけで、大多数はもう何十年も苦境に立ったまま這い出せない。個人も地域も衰退の一途だ。一方で富裕層と大資本は儲けてマネーが潤っていて、栄華豪奢な経済を回している

この状況はアメリカも同様らしい。NY在住の日本人がアメリカ人の市民生活をレポートしている動画があり、普通の市民・労働者が物価高で苦しむ現状が生々しく伝えられている。日本のマスコミではこうした現実は報道されない。ある若者は一間のアパートに毎月1600ドル(235.000円)を支払っていて、家賃が月収の3分の2を占めると言う。家賃に圧迫されて残りの生活費が不足し、健康維持に必要な食料品を買うことができず、長期休暇旅行にも行ったことがないと嘆いている。この家賃がもう少し値上がりすると、バンライフ(ホームレスの車中生活者)に追い込まれるようで、特にカリフォルニア州でそれが多い事実は日本のマスコミも紹介していた。また、アメリカでは失業者数が増えていて、あまりの物価高に耐えられず欧州に移住する者が出ているらしい。アメリカ経済は二極化が著しく、繁栄と貧困が同時存在し、二つの世界がシェーレ⇒差異の拡大)を描いて開きと厚みを大きくしている

物価高は途切れなく続いている。インフレが止まらず進行している。政府はインフレを制止する政策を打とうとしない。逆に為替を円安に方向づけて輸入原材料費を上げ、企業に製品価格の値上げ(価格転嫁)を促し、企業が暴利を貪る経済運動を続けさせている。これはどうやら、仕組みを作って意図的計画的管理的に動かしている結果であり、故にインフレは収まることなく半永久的に続くのだ。日本の資本家は、ネオリベ政権の下で、嘗てはデフレの仕組みと循環で大儲けしていたが、今度はインフレでボロ儲けする方式に転換したのである。以前は労働者をリストラして賃金を切り下げ、非正規を増やして原価の剰余価値を増やしていたのが、今度は製品を連続的に値上げし、市場単価から得る剰余価値を増やす仕組みと回転に切り替えた。客観的に正視すれば、これは悪質な便乗値上げだ。消費者からの不当な過剰収奪だが、今、その経済学的真実を指摘する者はなく、批判を受けず、企業の行動は正当化されるため何も問題にならない。資本主義の原理に則った正しい方法だと評価される

2024年の内部留保は637兆円となった。最近はほとんどマスコミが関心を向けなくなったが、2023年は600兆円だったので、1年間で37兆円増えた計算になる。6.1%も増えた。よくやるもんだと呆れながら眺めている。上場企業は4年連続で過去最高の利益を上げている。その間、例えば、日産が主力工場を閉鎖して人員を2万人削減すると言った。マツダも500人の希望退職者の募集を始めた。パナソニックは全体の5%となる1万人の人員削減を発表した。スズキスバルはタイでの工場生産から撤退、ホンダもタイの2つの工場を1つに集約した。中国のEV車に負けたからだ。国内だけでなく、海外でも日本メーカーの競争力が落ちて事業不振となっている。そんな中で、2021年は34兆円、2022年は27兆円、2023年は49兆円、2024年37兆円と膨大な内部留保を積み上げ、多数庶民の生活苦を後目に空前の繁栄を謳歌していて、資本主義経済の絶倫的成長が続いている。孫正義はアメリカの工業団地建設に145兆円投資するらしい

毎年30兆円も利益剰余金のグロスが溜まり続ける国民経済なら、ラーメン屋もパン屋も弁当屋もすし屋も、商売繁盛して営業を拡大してよく、新しい店をオープンして花輪が飾られてよいはずだ。経済の二極化と言えばそのとおりだが、その平板な表現に違和感を覚えるほど、二極世界の真相は病的狂気的で黙示録的だと言わざるを得ない。全体が成長しているのではなく、二極構造の下の世界の者が奪われて縮み続け、上の世界の富を膨らませているのであるだが、その矛盾を訴える声は響かない。バブルが崩壊するまで説得力を持てない。共鳴されず、無名の負け組の愚痴と怨念としか認識されない。森永卓郎が予言した福音の到来まで忍耐の時間が続く。若い有権者は新自由主義政党に投票する。オウム真理教教徒の錯乱のように。テレビでは、高価で精巧な鬘をかぶり高額で丹念な整形手術をした新自由主義富裕階級の名士論客たちが、楽しく嬉しそうに、空疎な自民党総裁選の広報拡散に勤しんでいる

一方、近所では、公園を歩いていた70代後半の高齢者がめっきり減った。たぶん、スキマバイトの所為だろうと想像する