2021年11月28日日曜日

水がダダ漏れ 岸田内閣水際対策(植草一秀氏)

 菅前首相は口を開けば、新型コロナに対して万全の策を講じると繰り返しましたが、実際には何もやらず、熱心に進めたのは一連の「Go To・・・」だけでした。そしてその挙句に第5波の「過去最大の悲劇」を招きました。それは当然の帰結でしたが、その直接の原因は一にかかって水際対策の遅さと甘さでした。

 植草一秀氏は彼のブログで、繰り返し「その遅さと甘さ」を指摘し続けましたが、結局何の改善もないまま遂には収拾のつかない事態を出来させました。
 今回、南アフリカ共和国で新たな変異株が確認された新型コロナの新株をWHOは26日、「オミクロン株」と命名「懸念される変異株」に指定しました
 26日に南アフリカからオランダのスキポール空港に到着した航空便2便に乗っていた約600人のうち61人が新型コロナウイルス検査で陽性反応を示したので、オランダ保健当局はオミクロン株ではないか検査を急ぐとしています(東京新聞-28日)。結果はまだ不明ですが水際対策が一刻の猶予も許されないことを示しています。
 イギリス政府はWHOの警告を受けて、南アフリカやボツワナなど合わせて6か国を対象に、日本時間の26日午後9時から、渡航制限を強化する措置を発表しました。
 植草氏は27日、「水がダダ漏れ 岸田内閣水際対策」とするブログ記事を出しました。
 その中でオミクロン株が最初に検出されたのはボツワナで1111日に採取され、14日以降南アフリカで採取された検体からも検出され香港、イスラエル、ベルギーでも確認されていると指摘し、日本では新規陽性者数が激減しているが、オミクロン株の感染拡大が日本で生じれば状況は一変するので、徹底した水際対策を実行しなければならないと述べました。そして日本における感染第4波感染第5波が激烈になった大きな原因は前政権の水際対策の「遅さと甘さだったと改めて指摘しました。
 そして岸田内閣26日に、南アフリカ、ナミビア、ジンバブエ、ボツワナ、レソト、エスワティニの6ヵ国を対象に水際対策を強化する方針を発表し(27日午前零時から実施)、これら6ヵ国を訪れた日本人らに対し、帰国後、待機施設で10日間の待機を求めるとしたもののこの対応では甘すぎる」として、南アフリカ6ヵ国に限定しての対応では水際対策にならない無意味な「陰性証明」に手間と資金を投下するよりも、水際対策の厳格化こそ最重要課題だと述べました
 以下に紹介します。併せてNHKの記事を紹介します。

追記)政府は27日対象国にモザンビーク、マラウイ、ザンビアのアフリカ3カ国を加えました。総じて岸田政権の対応は、菅前政権の対応よりはマシにはなっているようです。
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水がダダ漏れ 岸田内閣水際対策(植草一秀氏)
               植草一秀の『知られざる真実』 2021年11月27日
南アフリカ共和国で新たな変異株が確認された。
11月26日、WHOはこれを「オミクロン株」と命名するとともに「懸念される変異株(Variant of Concern)」に指定。
これまでに「懸念される変異株」に指定されたのはベータ株、ガンマ株、デルタ株。
日本でも猛威を奮った第5波をもたらしたのがデルタ株。デルタ株の主要変異はL452Rだった。
今回の発表でオミクロン株が新たに「懸念される変異株」に加わった。
オミクロン株が最初に検出されたのはボツワナで11月11日に採取された検体。
その後、11月14日以降、南アフリカで採取された検体からも検出された。
南アフリカのハウテン州では現時点で多くの症例が報告されている。
この地域ではデルタ株が広がっていたとのことで、これがオミクロン株に置き換わったと見られている。
このことから、オミクロン株の感染力はデルタ株を上回るとの見方が生まれている。
重要なことはオミクロン株がすでにアフリカ以外でも確認されていること。
香港、イスラエル、ベルギーで確認されている。

日本では新規陽性者数が激減してコロナ危機感が大幅に縮小しているが、オミクロン株の感染拡大が日本で生じれば状況は一変する。岸田内閣は水際対策強化を掲げたが、徹底した水際対策を実行しなければ惨事を再来させることになる。

昨年12月に英国でN501Y変異株が確認された。これに対する菅内閣の対応が後手後手になった。入国者の大宗を占めていた「ビジネストラック」、「レジデンストラック」の入国を止めなかった。
菅首相が停止に動いたのは1月13日。決定的な遅れが変異株国内流入をもたらした。
3月にはインドでL452R変異株が確認された。ところが、菅内閣が抜本対応に動き始めたのは5月に入ってから。
日本における感染第4波ならびに感染第5波が激烈になった大きな原因は菅内閣水際対策の甘さだった。
岸田内閣は11月26日に、南アフリカ、ナミビア、ジンバブエ、ボツワナ、レソト、エスワティニの6ヵ国を対象に水際対策を強化する方針を発表。11月27日午前零時から実施された。
これら6ヵ国を訪れた日本人らに対し、帰国後、待機施設で10日間の待機を求める。
しかし、この対応では甘すぎる
岸田内閣は、これまで施設での待機を求めていなかったのに対して、今回は施設での待機を求めることにしたことを強調。
新たな変異株の流行が広がった場合は対象国の拡大を検討するという。
しかし、現時点でオミクロン株は、すでにベルギー、香港、イスラエルで確認されている。
すでに世界規模で感染が広がっていると見られる
南アフリカ6ヵ国に限定しての対応では水際対策にならない。
コロナ感染はお隣の韓国でも急拡大している。欧州での感染拡大も深刻だ。
日本の新規陽性者数が激減していても、海外から新種の変異株が流入すれば状況が一変してしまうことが考えられる。
無意味な「陰性証明」に手間と資金を投下するよりも、水際対策の厳格化こそ最重要課題だ。

ところが、岸田内閣は入国規制を厳格化するのでなく緩和し始めている。
岸田内閣は11月8日から、ビジネス関係者や留学生、技能実習生らの新規入国を認めた。
これに伴い、松野官房長官は11月18日の記者会見で、「新型コロナウイルス対策として実施している入国者数の制限を11月26日から緩和し、1日あたりの上限を現在の3500人程度から5000人程度に拡大する」と発表した。
直ちに、この緩和措置を撤回するべきだ。すでにオミクロン株は世界各地に拡散している。
直ちに、日本の入国規制を最大限に厳格化する必要がある。
6ヵ国のみの規制強化は言語道断。
オミクロン株の感染拡大が生じれば岸田内閣は崩壊する可能性がある。

鳩山友紀夫元首相との対談(アジア共同体研究所主宰YouTube動画「UIチャンネル」)
https://bit.ly/39BTgmd 
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             (以下は有料ブログのため非公開)


南アフリカでワクチンの効果低下させる新たな変異ウイルス発見
                  NHK NEWS WEB  2021 年 11 月 26 日
南アフリカの保健当局は25日、新型コロナウイルスのワクチンの効果を低下させる可能性がある新たな変異ウイルスが見つかったと発表しました。WHO=世界保健機関はこのウイルスを「懸念される変異株」などに指定するかどうか、検討することにしています。
南アフリカの保健当局は25日、首都プレトリアや、最大都市ヨハネスブルクのあるハウテン州で、新型コロナウイルスの新たな変異ウイルスが検出されたと発表しました。
保健当局によりますと、これまでに国内で確認されたこの変異ウイルスの感染例は77例ですが、検出される割合は急速に増えていて、ハウテン州以外にも広がっている可能性があるということです。
またこの変異ウイルスには、ワクチンの効果を低下させる可能性のある変異があるということで、南アフリカ以外にも隣接するボツワナで検出されているほか、香港でも、南アフリカからの旅行者から検出されたということです。
これについて、WHOで新型コロナウイルス対策の技術責任者を務めるバンケルコフ氏は25日「この変異ウイルスについてわかっていることは少ないが、現在、専門家が治療薬やワクチンの効果にどのような影響があるか、調べている」と述べました。
WHOは、このウイルスを「懸念される変異株」や「注目すべき変異株」に指定するかどうか検討することにしています。

イギリス政府 南アフリカなど周辺の計6か国を渡航禁止に
イギリス政府は、南アフリカで新たな変異ウイルスが確認されたことを受けて、南アフリカやその周辺のボツワナなど合わせて6か国を対象に、現地時間の26日正午、日本時間の26日午後9時から、渡航制限を強化する措置を発表しました。
これらの国々からは直行便が停止され、入国が禁止されます。
また、イギリスに住んでいる人については政府指定のホテルでの隔離が義務づけられることになります。
25日夜、ジャビド保健相はメディアの取材に応じ「この変異ウイルスは、デルタ株よりも感染力が強い可能性があり、ワクチンの効果を弱めるおそれがある」と述べ、対策の必要性を強調しました。
イギリス政府によりますと、新たな変異ウイルスはイギリス国内では今のところ確認されておらず、今回の措置は予防的なものだとしています。

官房長官「緊張感を持って対応」
松野官房長官は閣議のあとの記者会見で「新型コロナウイルスの新たな変異株について、南アフリカを中心に感染が広がっているとの報道は承知している。新たに変異株が確認された場合は、その感染性や重篤度、ワクチン効果に与える影響などを評価していくことが重要だと考えており、緊張感を持って対応しているところだ」と述べました。
そのうえで「現時点では空港検疫を含めて日本国内では確認されていないが、引き続きWHO=世界保健機関や諸外国の動向などの情報を収集しているところだ。また、検疫で陽性が判明した検体はすべて国立感染症研究所でゲノム解析を行うとともに、国内におけるゲノムサーベイランスにより変異株の動向を監視している」と述べました。
そして「危機管理の要諦は最悪の事態を想定することだ。水際対策についても、新たな変異株の感染が拡大するなど、状況が悪化する場合には機動的に対処していくことにしており、本件についても迅速かつ適切に対応していく考えだ」と述べました。