2021年11月6日土曜日

小選挙区制では 野党共闘しかない それを止めれば自公の独裁になる

 立民党の衆院選敗北を受けて、野党共闘」批判と見直し論が巻き起こっています。産経新聞が開票翌日の1日の朝刊で「立民 共闘失敗」「野党共闘は不発に終わった」と報じただけでなくTVのワイドショーや報道番組でもいわば野党共闘に対する『ネガティブキャンペーン』が展開されたようです。

 しかし小選挙区制度において与党が自・公という完璧な共闘を確立している一方で、野党が候補者を乱立させては勝てる筈がありません。
 実際には立民党の枝野代表が野党共闘に後ろ向きだったので、真の共闘という観点からは問題はありましたが、野党が統一して闘うことの必要性と重要性に変わりはありません。
 日刊ゲンダイはズバリ、「野党共闘をやめて、果たして巨大与党に対峙できるのか」と問題提起しています。答えが「ノー」であるのは余りにも明らかです。
 またメディアの「共闘失敗」の大合唱世論なびいて、立憲の代表選では「野党共闘を見直すか否か」が争点になりそうになっていることに対して、LITERAは「まったく馬鹿げている」と一刀両断しました。
 メディアの「共闘失敗」論は、野党共闘に大いに脅威を感じた体制側の、何とか立民党と共産党の共闘を止めさせたいという意向に沿ったものであって、立民党が敗北したのは別の理由によるものです。
 日刊ゲンダイとLITERAの記事を紹介します。
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悪魔の選挙制度では共闘しかない それが潰されれば この国は一党独裁になるだろう
                        日刊ゲンダイ 2021年11月4日
                        (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 衆院選で議席を減らし敗北した責任を取って、立憲民主党の枝野代表が2日、辞意を表明した。10日召集予定の特別国会の閉会日に辞任し、年内に党員参加のフルスペック代表選挙を実施する。
「ポスト枝野」争いは早くも過熱。小川淳也、泉健太、大串博志ら民主党政権時代に要職に就いていない世代交代感のある議員の他、馬淵澄夫元国交相や玄葉光一郎元外相らベテランの名前も浮上している。
 今回の選挙結果について「野党共闘失敗」「野党共闘不調」と書き立てる大メディアは、「代表選の争点は共闘路線の是非」と解説し、この人は共闘派、あの人は見直し派など品定めを始めているが、ちょっと待って欲しい。野党共闘をやめて、果たして巨大与党に対峙できるのか
 確かに立憲は、公示前の110議席を96まで減らした。だがその内訳は、比例が62から39へと大幅減で、小選挙区は48から57へと9議席増えているのだ。これぞ、野党共闘が機能した結果だ。
 自民党に衝撃を与えた石原元幹事長の落選や甘利幹事長の小選挙区敗北が象徴的で、一本化によって勝利した野党統一候補は62人に上った。217の一本化選挙区での勝率を「3割弱しか」と大メディアは書くが、共闘がなければ小選挙区でもっと負けていた。実際、野党5党が一本化しなかった72選挙区での勝利は6にとどまった。
 一本化しながら野党が負けた選挙区にしても、惜敗率90%以上の大接戦で競り負けたのは実に33選挙区。わずかの差で黒が白になってもおかしくなかった。
 それは、幹部が「薄氷の勝利」と評した自民党こそよく分かっていて、投票日直前まで「100以上の選挙区で接戦」と分析し、岸田首相はチャーター機を使ってまで全国の激戦区を応援に回ったのだった。

共闘批判より足腰の強化
 ジャーナリストの鈴木哲夫氏が言う。
「野党一本化の意味は小選挙区にあり、小選挙区での議席は増えている。なぜそれが評価されないのでしょうか。減らしたのは比例で、比例は政党が乱立していたことや政策的なアピールが足りなかったこともあるでしょう。もっと冷静な分析があっていいのに、メディアが、ただ『敗北』と片付けるのは、野党共闘に対する『ネガティブキャンペーン』の類いです。これに立憲内部の共闘慎重派が乗っかっている。1万票以内の僅差で野党が敗れた選挙区は約30。むしろ、なぜそこでこらえられなかったのかが今後の課題です」
 投開票当夜の会見で、自公との大接戦区を制することができなかった理由について問われた枝野はこう言っていた。
「空中戦では一定の支持を広げることはできたが、一票一票積み重ねていくという足腰が弱い。ここを強くしないと政権に近づくことはできないと痛感した」
 足腰の違い。それは候補者個人が足しげく地元を歩いて、自らの名前と政策を浸透させたり、後援会をつくって支援者を増やしたりといった地道な努力の差だ。立憲は共闘の是非を議論する暇があれば、今すぐ足腰の強化に取り組むべきなのだ。
 小選挙区制度は、得票率が50.1対49.9でも勝者は1人。2大政党に集約され、ドラスチックな勝負で政権交代が起きやすくなるということだったが、裏を返せば、政権交代がなければ49.9%は全て「死に票」という悪魔的な制度でもある。
 だからこそ共闘しなければ、政権交代はおろか、与野党伯仲で国会論議に緊張感を与えることすらできないのに、「共闘が失敗」なんてメディアが茶々を入れ、立憲内部が対立したら、それこそ自公の思うつぼだ。

何が何でも政権という執着と本気度の問題
 与党だって自民と公明が“共闘”している。メディアは立憲と共産の連携には野合批判を展開し、「共産の力を借りて立憲が政権を取れば日米同盟は終わりを迎える」などの悪質なデマに乗っかった。だが、自公にも政策の違いはある。「改憲勢力3分の2」とひとくくりにするが、公明は改憲に慎重。自公共闘が野合だと、なぜメディアは書かないのか。
 選挙についても自民は公明の支持母体である創価学会票で底上げしてもらっている。対する野党は労働組合の連合が学会票ほど頼りにならないから、各選挙区に1万~2万の組織票があるとされる共産と連携するわけだ。
 それなのに、大して力もない連合がヒステリックに共闘に口を挟む。「現場が混乱し、連合が戦いづらかった」と批判し、来夏の参院選での立憲と共産の協力は「認められない」と言ってのける芳野会長は勘違いも甚だしい
 政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう話す。
連合と共産のどちらが票を持っているのか。候補者が共産と連携したくなるのは当然ですよ。自公に勝つためには、保守票も左派票もどちらも取り込みたい。野党共闘は決して間違った戦略ではありません。連合は、共闘が組織の方針と違うのならば、立憲の支援を止めればいいだけです。『支援してやるから、共闘を止めろ』という越権的な政治介入には、どうしてそこまでエラソーなのかと呆れます。もっとも立憲側も、共産について『限定的な閣外からの協力』とし、一緒にやるのかやらないのか曖昧な説明で、本気度がよく見えなかった。こうした対応が有権者に嫌われた一面もあった」
 立憲が比例で議席を大きく減らしたのは、小政党が多いと比例票は分散するという制度的な背景もある。前回2017年衆院選は、民進党が直前に希望の党と立憲に割れ、それぞれが比例票を獲得している。今回は立憲に統合しているから、比例票が減る要因はあった。
 とはいえ、政党支持率1ケタでは、立憲の比例票が増えないのは当然で、それは、枝野の「個人商店」のような体質や発信力の弱さなど、政党としての魅力が足りないからだ。連合に気を使って右往左往するのも、有権者には頼りなく映る

プロセスの積み上げと国民へ伝える努力
 今度の選挙で、立憲は政権批判票の受け皿になり切れず、“ゆ党”の日本維新の会に票が流れた。「何が何でも政権という執着がないから『万年野党でいい』という雰囲気を醸し出してしまう。それでは国民はバカバカしくて野党に投票しない」と、日刊ゲンダイの取材に以前、小沢一郎衆院議員が語っていたが、最初から「150議席程度を目標」では、過半数にはるか遠く、お話にならないのだ。
「そもそも立憲は衆院定数の過半数程度しか候補者を擁立していない。全員当選しないと政権交代できず、これでは本気度は見えません。今後も継続すべき共闘についても課題はある。プロセスの積み上げ方、信頼関係の醸成、それを国民にどう見せ、どう説明するか。来夏の参院選までに野党合同で勉強会をやるなど、あらゆることに取り組むべきです。共産党も、『自由民主主義を選ぶのか、共産主義を選ぶのか』と与党が言っても有権者が惑わされないよう、いかに『変わった』ことを伝えていくのか」(角谷浩一氏=前出)
 立憲に求められているのは、何が何でも自民党政治を止める覚悟と戦略だ。参院選を考えたら、32ある1人区で自民に勝つには、野党共闘で候補者を一本化するしかないのは自明の理。いま議論すべきは、共闘の是非などではなく、共闘して国民に何をどう訴えるかということである。
「政権批判票を維新に奪われたのは、政策面での野党間の調整とアピール不足もあった。今後は、国会での活動を通じて、できる限り政策をすり合わせ、協力を続け、国民に伝えていく努力が必要でしょう」(鈴木哲夫氏=前出)
 自公の思うつぼの共闘潰しは、野党潰し。政権交代できる政党が育たなければ一党独裁が永遠に続く。行政の私物化、公文書破棄・改竄、嘘がまかり通る国会。政治の腐敗がさらに進むだけだ。国民はそれを望んでいるのか。独裁国家が先進国と言えるのか。立憲敗北の結果を、短絡的に野党共闘批判に向ければ、将来に禍根を残すことになるのは間違いない。


自民維新、御用マスコミの「立民敗北は野党共闘のせい」に騙されるな! 実際は野党共闘で僅差、見直し論は野党を壊滅させる作戦
                             LITERA 2021.11.05
 衆院選の結果を受けて、かつてない「野党共闘」批判と見直し論が巻き起こっている。
 投開票日から一夜明けた今月1日の朝刊では産経新聞が「立民「共闘」失敗」「野党共闘は不発に終わった」と報じただけではなく、朝日新聞も「立憲後退、共闘生かせず」と総括。一方、ワイドショーや報道番組に出演しつづけている田崎史郎氏は「なぜ立憲が負けたかというのは、共産党と組んですごい左のほうへ振れてしまったのが失敗の原因」などと喧伝して回り、日本維新の会躍進のPRに駆け回っている橋下徹氏も「大阪は野党共闘がなくても自民を壊滅させた」などと主張している。
 こうした総括の影響を受けた結果か、1日と2日におこなわれた共同通信の緊急世論調査では、候補者を一本化した立憲民主党など5野党の共闘関係について「見直した方がいい」が61.5%にのぼり、「続けた方がいい」は32.2%にとどまった。
 また、昨日4日の読売新聞の1面記事では、政治部・末吉光太郎記者が〈基本政策の不一致を棚上げにしたままの野合だと見透かされた結果〉〈立民が次第に共産に溶け込み、左傾化していったことで、立民支持層の離反も招いた〉〈政策を無視した共闘では支持が広がらないことを肝に銘じるべきだ〉などと断罪。
 挙げ句、当の立憲民主党内部からも「政策や理念が異なる政党との協力は以前からの支持層の反発を招いた」と見直しを求める意見も出ているといい(NHKニュース5日付)、枝野幸男代表の後任を決める代表選への出馬に意欲を示している泉健太政調会長も「衆院選結果を踏まえ、再検討するのは当然だ」と発言した。
 ようするに、マスコミの「共闘失敗」の大合唱を受けて世論もそれになびき、立憲の代表選では「野党共闘を見直すか否か」が争点になりそうになっているのだ。
 まったく馬鹿げているとしか言いようがないだろう。そもそも、石原伸晃や甘利明や、現役閣僚の若宮健嗣、初代デジタル大臣である平井卓也といった大物議員が小選挙区で敗れたのは野党共闘の成果だし、立憲は小選挙区にかぎっていえば、公示前の48議席から57議席に伸ばしており成果を出している。

橋下徹「大阪は野党共闘がなくても自民を壊滅」は嘘、維新は公明と握っていたのに
 また、橋下氏は「大阪は野党共闘がなくても自民を壊滅させた」などと言うが、大阪府政では維新が与党であり、さらには昨年11月におこなわれた「大阪都構想」住民投票後のテレビ番組で橋下氏自身が「公明党とある意味、握ったわけですよ。衆院選挙の議席を維新は公明党に譲る代わりに、この住民投票のほうに賛成にしてもらったわけだから」と語っていたように、今回の選挙で維新は大阪の選挙区において公明党と調整。「野党共闘がなくても自民を壊滅」させたのではなく、事実上の「維公共闘」の結果なのだ。
 しかも、一本化によって自民候補と野党統一候補が競り合う結果となった選挙区が続出したのは、明確な事実だ。
 実際、前述したように政治部記者が「野党共闘では支持が広がらないと肝に銘じろ」と1面で書いたのと同じ4日付の読売朝刊では、かたや4面で「衆院選小選挙区 自民当選者 2割が辛勝」という記事を掲載。いかに今回の衆院選小選挙区において共闘野党が善戦していたかを、このように分析している。
〈今回の衆院選では、自民の小選挙区当選者の約2割に当たる34人が、次点候補との得票率の差が5ポイント未満だった。政権復帰した12年は17人だったが、14年は22人、17年は27人と、選挙を重ねるたびに増えている。〉
〈次点候補との得票率差が10ポイント未満で当選した自民候補は59人だった。自民候補が5ポイント減らして次点候補が5ポイント伸ばしていれば、自民候補は小選挙区で59人が敗れていた計算になり、自民単独で過半数となる233議席を確保できなかった可能性もあった。〉
 つまり、60近い選挙区ではわずかな差まで自民候補を追い詰めており、自民の議席が単独過半数に届かないシナリオも十分考えられた、というのだ。
 この事実はメディアによる情勢調査にも表れていた。投開票日の20時に出された獲得議席予想では、議席予測では信頼度の高いNHKまでもが「自民 単独過半数に届くかギリギリの情勢」と打ったほか、投開票日の夕方にマスコミ関係者のあいだで流れていたNHKや共同通信による出口調査の結果でも、自民が大幅に議席を減らして単独過半数を割り込むと予想されていた。これほどまでに調査結果が大ハズシとなったのは、たんにオートコール方式だとかネット調査だとかといった調査方法の問題だけではなく、いかに接戦区が多かったかということの証明にほかならない。
 そして、「野党共闘」が脅威であったことは、当の選挙を戦った自民党が認めている事実だ。

元自民党情報調査局長の平将明も「野党共闘の見直し論があるみたいですけど、我々からみると、すごい脅威」
 読売新聞の記事でも〈自民幹部も野党の候補一本化について「一定の効果はあった」と認めざるを得なかった〉としている上、自民党のネット戦略にかかわり、情報調査局長も歴任した平将明は、4日放送『報道1930』(BS-TBS)で今回の衆院選についてこう語った。
「自民党は結果的には良い数字を獲れましたけれども、現場で戦っている人から見ると、立憲と共産党の統一候補というのは、大変な脅威でした。いままでと緊張感が全然違う。最後競り勝ちましたけど、どっちに転んでも(おかしくなかった)。ギリギリのところ30カ所ぐらい、たまたま我々が勝てた」
(「ちょっと違えばひっくり返った?」という問いに)「もちろん。そう思います」
「立憲と共産党の共闘の見直しみたいな感じがあるみたいですけど、我々からしてみると、すごい脅威でしたね」
 野党共闘はすごい脅威だった、ちょっと違えばひっくり返った──。これこそが自民党の本音であり、だからこそ、選挙戦では麻生太郎・副総裁や安倍晋三・元首相、岸田文雄首相、公明党の山口那津男代表をはじめとする与党幹部や日本維新の会の松井一郎代表などは野党共闘を「共産党を政府に関与させていいのか」「立憲共産党」などと攻撃を繰り広げてきた。
 そして、いま読売や田崎氏のような御用メディア・ジャーナリスト、橋下氏のような自民アシスト勢が「野党共闘は失敗」であるかのように喧伝しているのも、自民を脅かす野党共闘を潰そうと必死にキャンペーンを張っているにすぎないのだ。
 にもかかわらず、その世論醸成に流され、当の立憲内部で「野党共闘は見直すべき」などという声があがっているとは、アホ丸出しもいいところ。立憲の代表選出馬に意欲を示している顔ぶれは自民党の補完勢力になることがミエミエだった「希望の党」に乗った議員ばかりだが、いま野党共闘を見直して「左に寄りすぎ」などという自民支持者の言うことを聞けば、反自民という対決軸を失い、それこそ自民党の思う壺にはまるだけだ。
 実際、前述の平氏は「野党共闘は脅威」と語った際、こうも話していた。
「AかBかという選択になると国民投票的な選挙になるもんですから、『自公が良いのか悪いのか』なんですよ。しかも国民投票的なやつはミクロな『こんな酷いことあったよね』の積み重ねで、結構あとになればなるほど、反対の人が増えていく傾向がある。ですから1つの選挙区で選択肢が2つしかないっていうのは、すごいやっぱり怖いんですよね、我々としては」

 立憲議員も野党を応援する人も、「野党共闘」を潰そうとするキャンペーンに乗せられてはいけない。「野党共闘は脅威だった」という自民の本音、候補者一本化によって自民を恐怖に陥れた事実こそを見るべきだ。(編集部)