2021年11月3日水曜日

枝野立憲が大惨敗した本当の理由(植草一秀氏)

 立民党の衆院選敗北を受けて党内からは「明らかな惨敗で、けじめが必要だ」とか「このままでは来年夏の参議院選挙は戦えない」などと、枝野代表や福山幹事長ら執行部の責任を問う声が出たことに対して、枝野代表は2日の党の役員会で、衆院選の敗北について「私の力不足だ」と陳謝したうえで代表を辞任する意向を表明しました。そして総理大臣の指名選挙を行うための特別国会の閉会日に辞任しその後党員などが参加する形で代表選挙を行う考えを示しました。タイミングとして周回遅れは否めませんが ・・・。

 そもそも枝野氏が立民党の代表を務めるというのも、かつての民主党政権が倒れた事情を知っている人たちにとっては大いに違和感のあるものでした。
 植草一秀氏は「日本政治を暗転させたのは民主党悪徳10人衆」として、次のメンバーを挙げています。渡部恒三、藤井裕久、仙谷由人、菅直人、野田佳彦、岡田克也、前原誠司、安住淳枝野幸男、玄葉光一郎。⇒(16.9.19) 野田幹事長は民主党政権崩壊の“A級戦犯”
 それはともかくとして立民党の敗北について朝日新聞を含めマスコミは一斉に野党共闘に問題があったかのような報じ方をしていますが、もしも枝野代表が独善性を発揮せず、野党共闘が連帯感を持って円滑に進んでいたなら決してこんな結果にはならなかった筈です。
 世に倦む日々氏は、枝野氏の菅首相との6月9日の党首討論を痛烈に批判していますが、枝野氏は「一体何を考えているのか」の感があのころから一層強くなりました。
(6月22日)千載一遇の好機を潰した枝野幸男 - ラーメンとカラオケと乃木坂以外何もなし

 植草一秀氏が「枝野立憲が大惨敗した本当の理由」という記事を出し、今回選挙の最大の特徴は枝野立憲が忌避されたことであるとしました野党共闘の必要性が叫ばれていたなかで、枝野氏が、冷然と「野党共闘という言葉は私の方からは使っていません。あくまでも国民党と2党間で連合を含めて政策協定を結び、一体となって選挙を戦う。共産党とは4党で一致した政策に限定した範囲で閣外から協力を頂く(要旨)」と述べて野党共闘に背を向けた時点で、植草氏は多くの主権者が立憲民主支持から手を引くことを予想しました。
 「枝野幸男氏が野党共闘に背を向けたことを受けて、多数の主権者が立憲民主への投票をやめた。これが真実だ。」と述べています(枝野氏が1023日に都内で行われた市民団体のイベントで、共産党の志位和夫委員長との記念写真撮影を拒絶したに至っては絶句します)。
 植草氏はまた、立民党が新体制になったら「野党共闘推進派」と「野党共闘否定派」に分離するべきだと述べています。
 はじめにNHKの記事の冒頭部分を紹介します。
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立民 枝野代表 辞任の意向表明 衆院選 議席減で引責
                     NHK NEWS WEB 2021年11月2日
立憲民主党の枝野代表は党の役員会で、衆議院選挙で選挙前の議席を下回ったことについて「私の力不足だ」と陳謝したうえで「新しい体制を整えて来年の参議院選挙などに向かっていかなければならない」と述べ、代表を辞任する意向を表明しました。
立憲民主党は10月31日に投票が行われた衆議院選挙で小選挙区と比例代表合わせて定員の過半数を超える240人の候補者を擁立するとともに、多くの選挙区で共産党などと候補を一本化して臨みましたが、選挙前の109議席を下回り、96議席にとどまりました。
枝野氏は2日の党の役員会で「政権選択の構えを作ることはできたが、選挙の結果は平野代表代行や辻元副代表をはじめ有為な仲間がたくさん戻ってくることができず、また現有議席を下回るという大変残念な結果となった。ひとえに私の力不足だ」と述べました。
そのうえで「私どもとして次のステップを踏み出していくことが立憲民主党の役割、責任だと思っている。そうした状況を踏まえるなら、新しい代表のもと新しい体制を構え来年の参議院選挙、そして次の政権選択選挙に向かっていかなければならないと決断をした」述べ、代表を辞任する意向を表明しました。
そして枝野氏は総理大臣の指名選挙を行うために来週10日に召集される特別国会の閉会日に辞任しその後、党員などが参加する形で代表選挙を行う考えを示しました。

枝野代表とは
立憲民主党の枝野代表は衆議院埼玉5区選出の当選10回で、57歳。
平成5年の衆議院選挙に当時の日本新党から立候補して初当選しました。
民主党政権では官房長官や経済産業大臣、それに党の幹事長などの要職を歴任しました。
4年前に所属していた民進党が東京都の小池知事が立ち上げた希望の党への合流をめぐり分裂した際、政策や理念が異なるとして旧立憲民主党を結党して代表に就任し、直後の衆議院選挙で野党第1党に躍進しました。
枝野氏は去年9月には政権に対じするためさらなる大きな野党勢力を作りたいとして旧国民民主党などとの合流にこぎ着けて、今の立憲民主党を結成し引き続き代表を務めてきました。
今回の衆議院選挙では定数の過半数を超える240人の候補者を擁立するとともに、野党連携を主導し共産党などとの間で全体の7割を超える選挙区で野党候補の一本化を図り、政権交代を目指しました。
しかし党の選挙前の109議席を下回る96議席にとどまり、党内では責任を問う声があがっていました。
      (後 略)


枝野立憲が大惨敗した本当の理由
               植草一秀の「知られざる真実」 2021年11月 2日
10月31日総選挙の核心は枝野立憲大惨敗。サブの核心は岸田自民大勝と維新躍進。
岸田自民大勝と維新躍進をもたらした原動力は枝野立憲大惨敗にある。
立憲大惨敗について事実を歪曲する報道が展開されている。
歪んだ情報流布の背景に大きな思惑がある。それは野党共闘の阻止
私は今回総選挙での立憲民主敗北を予想してきた。
最大の理由は立憲民主が野党共闘に背を向け続けたこと。

10月22日発売の『月刊日本2021年11月号 https://amzn.to/3CMxr0p 
「抜本改革不可欠は野党」と題する論考を寄せている。立憲民主の惨敗を予想した。
この論考では総選挙後に岸田首相が自民党幹事長と外相を交代させる可能性についても言及している。
岸田氏は総選挙後に林芳正氏を外相に起用する案を保持していたと考えられる。
総選挙後に幹事長を交代させて岸田体制を構築することも予め想定していたと考えられる。

立憲の枝野氏は岸田首相を選ぶか枝野首相を選ぶかの選挙であるとの主張を展開したが、日本の主権者が選択したのは岸田首相だった。
岸田氏と枝野氏の選択を迫られれば多くの主権者が岸田氏を選択するのは順当だ。

今回選挙の最大の特徴は枝野立憲が忌避されたこと。
比例代表選挙の立憲得票率(絶対得票率=全有権者に占める得票の比率))は11.2%。
国民民主投票率を合わせて13.7%だった。
2017年選挙における立憲民主と国民民主の得票率合計は20.0%。
6.3%ポイントも得票率を下げた。
全体投票率が53.7%から55.9%に上昇したのに、得票率が20.0%から13.7%に低下した。










枝野立憲が支持されなかった最大の理由は枝野幸男氏が野党共闘に背を向けたことにある。
私はこの点を再三指摘し続けた。
その上で、多くの主権者が立憲民主支持から手を引くことを予想した。
枝野幸男氏が野党共闘に背を向けたことを受けて、多数の主権者が立憲民主への投票をやめた。これが真実だ。

ところが、メディアは立憲民主が野党共闘に進んだために立憲民主が議席を減らしたとの真逆の報道を展開している。このような情報誘導も想定の範囲内。
日本政治支配を維持しようとする勢力にとっての天敵は「野党共闘」なのだ。
2009年に鳩山政権が誕生した影の主役が「野党共闘」だった。
共産党の候補者取り下げの協力なくして2009年の政権交代実現の偉業を語れない。
民主党の小沢一郎氏が主導して野党共闘の素地を固めた。
今回の総選挙直前に枝野幸男氏は記者に対してこう述べた。
「「野党共闘」というのは皆さんがいつもおっしゃっていますが、私の方からは使っていません
あくまでも国民民主党さんと2党間で連合さんを含めて政策協定を結び、一体となって選挙を戦う。
共産党さんとは(共産、社民、れいわの3党と一致した政策に)限定した範囲で閣外から協力を頂く。」
枝野氏は、共闘の対象は国民民主と連合であって、共産、社民、れいわとは共闘しないことを宣言した。
10月23日に都内で行われた市民団体のイベントでは、立憲民主党の枝野幸男代表が共産党の志位和夫委員長との記念写真撮影を拒絶した。
枝野氏は野党共闘を推進したのではなく、野党共闘に背を向ける対応を示し続けた。
この事実に触れず、立憲民主が野党共闘にまい進したとの報道は完全な誤報。意図的誤報である。
枝野氏が野党共闘を否定したため、野党共闘を求める主権者が立憲民主を支持しなかった。
これが立憲民主党の比例代表選挙での惨敗をもたらす主因になった。
枝野幸男氏は総選挙大惨敗の責任を取って辞任するしかない。
その上で、立憲民主党は「野党共闘推進派」と「野党共闘否定派」に分離するべきだ。
「野党共闘否定派」は国民民主と合流し、「野党共闘推進派」は「れいわ」、「社民」と合流するのが適切だろう。主権者の視点に立って野党再編を断行することが求められる。

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