2022年4月1日金曜日

アゾフ連隊をクレンジング(政治漂白)するメディアの情報工作(世に倦む日々)

 ウクライナに「ネオナチ」勢力がいることは衆知の事実ですが、ロシアの侵攻が起きると、ウクライナ政権がネオナチ勢力に席巻されていて、その実行部隊としてアゾフ連隊(または大隊)を擁していることは、西側に取って都合の悪いことになりました。

 世に倦む日々氏は、「アゾフ連隊の存在は、西側のプロパガンダにとって都合の悪い弱点で、プーチンの説く戦争の目的や意義について、世界の人々に多少の納得感と合理的斟酌を与える要素だった」と述べています。
 そのためアゾフ連隊がネオナチではなく、悪の存在ではないという認識に改めるための「クレンジング(政治漂白)」が、日本でも既にテレ朝サンデーステーション27日)から始まっているということです。それが単に「ネオナチでない」と否定することにはとどまらず、「正義の存在である」と称揚する方向に向かうのは必然です。
 世に倦む日々氏は、具体的に、・ANN(テレ朝)ニュースのアゾフ連隊の取り出し
 ・関西テレビ制作の岡部芳彦によるアゾフ連隊正当化解説 ・関西テレビ制作のボグダン・パルホメンコの動画がヒット などを見て、アゾフ連隊から毒々しいネオナチの属性と表象を消し取り、国民的な英雄軍団に色を塗り替えるという、CIAによるアゾフ連隊クレンジングの大作戦が始まったと理解したと述べています。
 ところで日本の公安調査庁は、アゾフ大隊をネオナチとして位置づけ、テロリストとして正式認定しています(同庁HP:サイト「国際テロリズム要覧2021・タイトル「極右過激主義者の脅威の高まりと国際的なつながり」の項)。世に倦む日々氏は、その見解は米国の理解に準じているので米国が解釈を変えれば同庁のHPの記述もいずれ変わるだろうと見越しています。
 いずれにしてもアゾフ連隊を正義の集団と見做すといのは信じがたいことで、「真実」がこれほど権力サイドの都合の良しあしで変わり得るものなのかについて、改めて考えさせられます。
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アゾフ連隊をクレンジング(政治漂白)するマスコミとネットの情報工作
                         世に倦む日々 2022-03-31
今週、アゾフ連隊をクレンジング(政治漂白)するプロパガンダの大攻勢が始まっている。アゾフ連隊を悪から正義に転換するイメージチェンジの情報工作が仕掛けられ、テレビ朝日とネット(Youtube と Google)を拠点に大がかりな作戦が遂行されている。もともと、ネオナチでテロ集団であるアゾフ連隊の存在は、西側のプロパガンダにとって都合の悪い弱点で、プーチンの説く戦争の目的や意義について、世界の人々に多少の納得感と合理的斟酌を与える要素だった

いずれCIAはこの問題に対処すべく、何らかイデオロギー作戦に着手し、この致命的な弱点を払拭する情報工作に出るだろうと、そう予測していた。けれども、まさか正面から、アゾフ連隊は正義の義勇軍であると言い上げ、定義を真逆に変え、それを強引に刷り込んでくる戦略で来るとは、あまりにあけすけな手口に驚きを禁じ得ない。公安調査庁のHPには、アゾフ連隊(大隊)はネオナチ組織で国際テロリストであるという規定と警告が載っているが、いずれ削除するか改竄する気だろうか。

アゾフ連隊をシンボルスイッチし意味改造する作戦の本格展開は、3月27日のテレ朝サンデーステーションから始まっていて、アゾフ連隊を美化する特集が組まれ、司令官へのインタビューが放送されている。内容は Yahooニュースに編集されて上がっていて、ツイッターでは厳しい批判が上がっている。私は番組を見ていない。ウクライナ応援のプロパガンダは食傷で、辟易で、チェックのためにテレビ報道を見ようという意識すら薄れてきた。もう勘弁してくれという困憊の気分だ。

番組では、アゾフ連隊はネオナチではないと言い切ったようで、黒井文太郎が登場して詭弁を弄し、「元はサッカーファンの集まり」だなどと擁護、現在のアゾフ連隊にナチス的な要素はないと垂れたらしい。この後、翌28日のモーニングショーでも同じ特集が組まれ、アゾフ連隊を持ち上げる報道を連発した。ツイッター上には、モーニングショーの偏向報道に抗議する声が多く上がっている。モーニングショーは他よりも番組の信頼度が高いため、こうした視聴者の反発になるのだろう。

私が事態の異常に気づいたのは30日で、報ステを見ていたら、ボグダン・パルホメンコが出演してアゾフ連隊を称揚する言辞を吐き、続けて、大越健介がそれに相槌を打って追従する態度に出たのを目撃した。ボグダンには以前から怪しい気配を感じていて、言葉の内容もそうだが、目の据わり方が尋常ではない。政治的に一般市民の範疇ではなく、この男はディープな極右だなと直感していた。諜報機関と繋がりのある工作員なのだろう。非常に頭がよく、精神的に陶冶された優秀な工作員だ。

正直、どちらかと言えば好きなタイプである。頭が切れ、弁が立ち、言語能力がある。部下として使いたい男だ。今、日本人の中にこういう凄味と殺気のあるサムライ型の男がいない。報ステを見ながら、日本の報道環境でのアゾフ連隊の解釈と評価が急に変化していることに気づき、慌ててネットの中の様子を確認することにした。すると、豈図らんや、恐ろしい現実に変わっていて、Googleで「アゾフ連隊」と検索すると、トップ画面にアゾフ連隊を称賛する三つの動画がナビゲートされる。

①ANN(テレ朝)ニュースのアゾフ連隊クリップと、②関西テレビ制作の岡部芳彦によるアゾフ連隊正当化解説と、③関西テレビ制作のボグダン・パルホメンコの動画がヒットして並ぶ。これを見て、CIAによるアゾフ連隊クレンジング(政治漂白)の大作戦が始まった状況を理解した。Google と Youtube を動員し、テレビ局に差配し、大規模な情報戦のイデオロギー攻勢をかけている。アゾフ連隊から毒々しいネオナチの属性と表象を消し取り、国民的な英雄軍団に色を塗り替えている。

黑から白へシンボル転換を図っている。従来のアゾフ連隊についてのネガティブな認識を一変させ、ボグダンや岡部芳彦がプロパガンダする説教を日本の常識と通念に固めようと工作している。だが、そもそもアゾフ連隊の実体は公安調査庁がHPで説明しているとおりで、これが日本政府の公式見解だ。この公式見解は、米国務省がアゾフを「ナショナリストのヘイトグループ」と警戒指定し、FBIも監視対象に置いてきた経緯に由来する。さらに、その基礎として、国連人道問題調整事務所(OCHA)が2015年に出した報告書がある。

アゾフ連隊の政治思想の分析や検証については、議論が多く、未だ決定版と言える整理と所論はないのかもしれない。だが、アゾフ連隊自身がネオナチ表象を自己顕示する示威行動を重ね、ステパン・バンデラを思想的始祖として崇拝してきた事実は否めない。今さらネオナチではないと詭弁を捏ね、言い訳を垂れても、世間に定着した集団の正体が変わることはなく、概念が覆るわけではないだろう。今はウクライナ正規軍の義勇兵だと言い張っても、暴力集団しばき隊は市民運動CRACに変わりましたので正義ですと言い抜ける虚言と同じだ。

ネオナチという語で対象化される現在の思想的実体と、過去のナチズムの思想的内実が微妙に異なっている点も、認識を混乱させている要因の一つである。その典型例が、ゼレンスキーがユダヤ人だからウクライナ政権がネオナチのはずはないという詭弁論法である。ソロスはユダヤ人だが資金を援助提供している。政治ターム(⇒用語)としての「ネオナチ」の概念の輻輳性と不安定性を衝いて、それはネオナチではない、それをネオナチだと批判するのは誤解で難癖だと言い回し、問題の本質をスリ替え、巧妙に口舌術の土俵の小技で煙に撒くのは、まさに狡猾で不埒なソフィスト(⇒詭弁家)の所業だろう。

大統領のゼレンスキーがユダヤ人だからウクライナの政権はネオナチではないという詭弁論法に対して、オリバー・ストーンは わはは と笑い飛ばし、「ゼレンスキーなんて何の力もない。大統領に就任したときはネオナチの言いなりになる必要があった。ネオナチが大統領に指示を出している」と喝破している。このオリバー・ストーンの「ネオナチ」の語義は、「CIAと一体の極右勢力」と置き換えていいだろう。私もオリバー・ストーンと同感であり、同じ認識である。ゼレンスキーはCIAに操られたパペット(⇒操り人形)に過ぎない。

ゼレンスキーが動画配信で読み上げている演説原稿は、すべて傍らのCIA情報将校(左官クラス)が準備して揃えたものだ。ゼレンスキーは元役者だから、台詞をそれらしく読み上げるのは巧い。本職の才能だから当然だ。日本の国会で演説した原稿は - 私の想像だが - 角茂樹が下書きして、杉山伸輔と秋葉剛男が査閲・添削したものに違いなく、だから、国連改革の話だとか復興資金の話とかが不自然に盛り込まれていた。ゼレンスキーがそんなことに頭を回すはずがない。その証拠に、角茂樹はスポーツ紙にフライングのお漏らしをやっていた。

ゼレンスキーの動画演説への評価と喝采というのは、すべてCIAのお手盛りで、CIAの自画自賛であって、CIAが原稿を書き、CIAが西側マスコミに絶賛させ、ゼレンスキーを「有能な指導者」だと偶像崇拝する空気を醸成させている。西側の戦意高揚の柱にしている。バカらしい。噴飯で茶番としか言いようがなく、白々しくて脱力させられる。ゼレンスキーは政治については素人で、経験以前に素質と能力のない男だ。この男が大統領になったのは、ポピュリズムの為せる業以外にないが、加えて、対立候補のポロシェンコと比較して対ロ協調派であり、国民がその政策方向性に期待したからだった

あのミンスク合意の外交交渉の場面を想起して欲しい。素人で若輩のゼレンスキーは、当事者でありながら存在感がまるでなく、メルケルやプーチンのような大型政治家と比べていかにも貧相だった。何か場違いな印象が漂っていて、会議の場できちんと発言しているのだろうかと心配するほどだった。内心、大統領になったことを後悔しているように見えた。現在のゼレンスキーの「カリスマ」偶像は、CIAが演出しプロデュースした政治産物であり、CIAお手製のハリボテ人形の「成功」に他ならない。しばき隊学者(中野晃一、、)と奥田愛基の関係性と同じだ。

軍事的な問題に注目しよう。小泉悠が、2014年時点ではウクライナ軍は装備も能力もきわめて虚弱で、数は6万人ほどだがまともに戦争できる軍隊ではなかったと指摘していた。そのウクライナ軍が強くなったのは、8年間に及ぶ東部ドンバスでの実戦の経験を積んだからだと言い、英米軍から武器と顧問団の支援をぶ厚く受けた結果であると言う。そのとおりだろう。さて、その東部の戦線で親ロシア勢力(≒ロシア軍)と死闘を繰り広げていたのは誰かというシンプルな問題だ。

8年前に遡って、戦闘できるウクライナ軍はアゾフ大隊しかなかったのである。すなわち、この8年間、ロシア軍と熾烈に戦ってきた主力はアゾフ大隊で、アゾフ大隊を中心にウクライナの軍事力が強化され編成されてきた過程が分かる。アゾフ連隊はウクライナ軍の中核であり、アゾフ連隊抜きのウクライナ正規軍など、単に装備を持っただけの、戦意なき形式のみの軍隊に過ぎない。私が「ネオナチがウクライナの軍部を壟断している」と結論するときの意味と論拠はそこにある。しかも、装備を流すCIAと直結しているマイダン革命の同志は極右ネオナチだ。

アゾフ連隊を軍事的に過小評価してはいけないし、ウクライナ正規軍の一個の部品の如く言い上げるのは間違いである。その点は、軍事専門家の小泉悠の分析から敷衍して十分に類推できる真実だろう。今、マスコミでシャワーされているところの、アゾフ連隊を「過小評価」する言説は意図的で政治的なもので、ウクライナ軍の真実と実態を隠蔽する詐術である。極右反ロ・復古民族主義のイデオロギーを持った狂暴無頼な軍隊だからこそ、親ロシア派勢力やロシア軍を相手に残酷で凄絶な戦いができたのだ。

ネオナチこそがウクライナの政権と軍部のバックボーンだ。ウクライナの2019年の議会選挙で、極右政党のスヴォボダや右派セクターの投票が減り、議席をよく確保できなかった事実をもって、ウクライナの政権がネオナチと無関係だと性格づける理由にはならない。それは、わが国で、平沼赳夫の次世代の党の得票が激減して議席がなくなったからといって、日本の政治が極右支配でなくなったわけではないのと同じである。極右の政策と思想は自民党や野党の中で増殖し、勢力を拡大し続けている。

嘗ては経世会や宏池会が主流だった政権与党が、時間が経つほどに右翼色を強め、極右ネオリベの政策に純化しているように、政治は生きもので、看板と内実は絶えずズレを起こして変容する。右へ動く。人を欺す。わが国における靖国神社の思想的座標軸の変化を考えれば、ウクライナのネオナチの問題も理解と洞察が容易だろう。嘗て、日本の市民社会において、9条平和主義の敵である靖国神社は極右異端カルトの禁忌的存在だった。だが、人の感性は正常性バイアスのまま滑って流れ、異常をよく検知しない。

ウクライナも同様で、嘗てはネオナチと指弾されていたものが、反ロの大義と効果で免罪符を得て、ネオナチじゃないという立場主張を西側に容認され、国際社会で市民権を得て、表通りで大手を振って歩いているということだ。