2022年4月22日金曜日

反戦デモ敵視資料 陸自が保存・共有/しんぶん赤旗日曜版【連続スクープ】

 安部政権下の20年2月、防衛省陸上幕僚監部が記者を対象に勉強会を行った資料「陸上自衛隊の今後の取組み」に、「予想される新たな戦いの様相」「グレーゾーンの事態」として、「テロ等」「サイバー攻撃」「不法行動」などと並んで、「反戦デモ」と「報道」が記載されていました。これにはさすがに記者から『用語が不適切ではないか』との指摘があったため、資料を回収し翌日「反戦デモ」を『暴徒化したデモ』と修正した資料を再度記者に配布しました。

 この問題は、同資料を入手した日本共産党の穀田恵二・衆院議員が3月30日の衆院外務委で追及したことで沙汰なりましたが、その後も、記者に配布した資料は修正したものの、元になった湯浅陸幕長(当時)の講演資料の方は修正されないまま陸上自衛隊内の共有システムに保存され、いつでも閲覧・ダウンロードできる状態になっていたことが20日、衆院外務委で共産党の穀田氏によって明らかにされました。
 しんぶん赤旗が報じました。
 24日付のしんぶん赤旗日曜版に「【連続スクープ】『反戦デモ』敵視 陸自広報映像で今でも」という記事が載りましたので併せて紹介します。
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   (4月2日)防衛省陸幕が安倍政権時代 「反戦デモ」「報道」をテロと同列視
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「廃棄済み」の反戦デモ敵視資料 陸自が保存・共有 穀田議員追及「明らかな隠ぺい」
                        しんぶん赤旗 2022年4月21日
 防衛省は20日、陸自トップの湯浅悟郎陸上幕僚長(当時)が2020年1月20日に「反戦デモ」を敵視した講演を外部で行った際に使用した資料を国会に提出しました。日本共産党の穀田恵二議員の要求に応じたもので、穀田氏が同日の衆院外務委員会で明らかにしました。
 この資料は、20年1月に都内で開かれた「新春・防衛講演」で使用されたもの。湯浅氏は、「反戦デモ」や「報道」をテロやサイバー攻撃などと同列視し、「自らの主張を受け入れ、相手に強要し、わが国の主権、領土、国民に対する現状変更を試みる」ものだと説明していました。穀田氏は「非常に重大だ」と厳しく批判しました。

 資料は20年2月4日の記者勉強会で配布された、「反戦デモ」を敵視する資料の大本になったものです。防衛省は、「反戦デモ」敵視は不適切だと参加者から指摘され、翌日に「反戦デモ」の記述を修正。さらに原本を「廃棄した」としていました。しかし、20日の衆院外務委で穀田氏が、湯浅氏の講演資料が保存され、修正されていなかった経緯をただすと、鬼木誠防衛副大臣は「修正した旨の周知が十分にされていなかった」と認めました。

 さらに穀田氏は、湯浅陸幕長の講演資料は陸上自衛隊内の共有システムでいつでも閲覧・ダウンロードできる状態だったのではないかと追及しました。鬼木氏は「広く共有されていた可能性がある」と認め、今年4月6日付で同資料を使用しないよう陸自各部隊に「依頼」したと答弁。記者勉強会の資料「廃棄」後も、穀田氏が3月30日に初めて国会でこの問題を取り上げるまで「反戦デモ」敵視の資料が2年余り使い続けられていたことを事実上、認めました。

 穀田氏は、防衛省が記者勉強会で配布した修正前の資料を「廃棄済みで存在しない」として湯浅氏の講演資料を提出しなかったことは「明らかな隠ぺいだ」と主張し、「陸上自衛隊の日報問題と構図は同じだ」と指摘。「憲法で保障された市民の権利行使を敵対視する防衛省のゆがんだ認識を示すもので、断じて許されない」と厳しく批判しました。























【連続スクープ】「反戦デモ」敵視 陸自広報映像で今でも
                     しんぶん赤旗日曜版 2022年4月24日
「反戦デモ」を「敵」とみなす文書を作成し、その内容を幹部が市民に講演していたことが明らかになっている陸上自衛隊。公式の広報映像でも合法的な「デモ」を「敵」として描き、現在も使用していることが編集部の調べでわかりました

文書は米のデモ敵扱い
 日本共産党の穀田恵二衆院議員が国会で告発した、陸自文書の「反戦デモ」の写真が、米国の反戦団体がウェブサイトに掲載したイラク戦争反対のデモ写真だったことも判明。陸自が無断転載した疑いが浮上しています。
 集会・デモは憲法が保障する表現の自由。これを敵」とすることは、表現の自由を踏みにじる重大問題。反戦デモを弾圧するロシアのプーチン大統領と同じ構図です。

暴徒化”修正はゴマカシ
  テロやサイバー攻撃とデモや報道を同列扱い
 テロと同列にデモを扱っていた問題の映像は、「新たな次元へ進化する陸上自衛隊~多次元統合防衛力の構築に向けて~」という陸上自衛隊公式の広報映像。YouTube約78万回視聴されています。
 冒頭、不穏なBGMとともに、ナレーションが流れます。「いま、たたかいはわれわれのすぐそぱの小さな変化の中から静かに始まる。相手の侵略に気づく前に、われわれの反撃の意志と機会を奪ってゆく」
 同時に映し出されるのは、フードをかぶったハッカーや爆破される自動車、目出し帽の凶漢が自動車のフロントガラスを破壊するなどのイメージ映像。それらのなかにプラカードをかかげてデモ行進する群衆の後ろ姿の映像が差し込まれています。このデモ行進映像は「暴徒化したデモ」ではありません。デモが、他国による侵略の一環といった扱いになっています
 この映像が公開されたのは2020年1月1日。映像公開からカ月後の20年2月4日、陸自が記者向け勉強会で資料を配布しました。
 この勉強会資料は日本共産党の穀田恵二衆院議員が国会で追及(3月30日、衆院外務委員会)したもの。「グレーゾーンの事態」として、テロ等、サイバー攻撃、不法行動、特殊部隊等による破壊活動等と並べて報道や反戦デモを例示していました。
 防衛省によると「グレーゾーンの事態」とは、武力攻撃に至らない手段で、相手国が自らの主張・要求の受け入れを強要しようとする状況のこと。勉強会資料と今回明らかになった広報映像が例示する要素はほぼ一致しています。問題の映像も勉強会資料と同様、「グレーゾーンの事態」の事例として、「テロ」と並べて、合法的なデモをあげ、「敵」扱いしたとみられます。
 国会での穀田氏の追及に鬼木賊防衛副大臣は「誤解を招ぐ表現だった」と認め、勉強会翌日に「反戦デモ」を「暴徒化したデモ」に「修正」して再配布したと説明しました。
 その一方で陸自は、法的な「デモ」を「敵」とみなす広報映像をそのまま流し続けていたことになります。「暴徒化したデモ」というのはゴマカシで、憲法で保障されている国民の表現の自由を敵視する陸自の姿勢を示すもです。さらに  

「反戦機運高まれば国家崩壊」 プーチン大統領と同じ理屈
 穀田氏が国会で明らかにした記者勉強会配布の陸自文書。「反戦デモ」や「暴徒化したデモ」という説明に添えられた写真にも重大な問題が  
 陸上幕僚監部広報室は編集部の取材に、米国の反戦団体「ANSWER」のウェブサイトに掲載されていたイラク戦争反対のデモの写真だと認め、「誤解を招く写真だった」と答えました。
 このデモは07年9月15日に米ワシントンでわれたもの。全米か集まった参加者の先に立ったのは、イラ戦争から帰還した退兵士たちでした。
 陸自は、この「誤解を招く写真」を差し替えず、その後も使い続けました。記者勉強会から約8ヵ月後の陸自釧路駐屯地司令の講演でも、スライド資料で同じ写真が使われました。(日曜版10日号で既報)
 なぜ、陸自は憲法で保障されている反戦デモを敵視するのか-。
 陸自の湯浅悟郎陸上幕僚長(当時)は19年10月、陸自元幹部らでつぐる偕行社(東京都新宿区)の総会で講演をしました。偕行社の月刊誌『偕行』(19年12月号)によると、湯浅氏はグレーゾーン事態への対応に言及。「反戦デモ」と「テロ行為」を同列に挙げ、「国家が非常事態であると認識する以前に反戦気運(原文ママ)などを高めて国家崩壊へ向かわせてしまう危険性がある」と発言しています。
 反戦機運などを高めて国家崩壊へ向かわせてしまう危険性がある  。まさに反戦デモを弾圧するロシアのプーチン大統領と同じ理屈です。
 編集部の取材に防衛省報道室は期限までに回答しませんでした。

派兵と国民監視は一体 小池書記局長
 日本共産党の小池晃書記局長は18日、国会内で記者会見し、陸自が「反戦デモ」や「報道」を敵視する文書を作成していた問題について、「自衛隊による国民監視は重大」だと批判しました。「自衛隊の海外派兵と国民を抑圧、監視することはセットで起こっている。国会で徹底的に追及したい」と表明しました。