2022年4月24日日曜日

24- 反クーデター派の住民が多いマリウポリをロシア軍が制圧(櫻井ジャーナル)

 櫻井ジャーナルが「反クーデター派の住民が多いマリウポリをロシア軍が制圧」という記事を出しました。

 その内容は14年(一部は13年)のクーデターを起点とした「ウクライナでの内戦についての現代史」ということが出来ます。
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反クーデター派の住民が多いマリウポリをロシア軍が制圧
                         櫻井ジャーナル 2022.04.22
 ウクライナ東部にあるドネツク州のマリウポリをロシア軍が制圧したようだ。ドネツク州とルガンスク州を合わせてドンバスと呼ぶが、この地域を含むウクライナの東部と南部は歴史的な経緯からロシア語を話す住民が多く、ロシアに親近感を抱いている。そのドンバスを支配していた親衛隊の主力、アゾフ大隊(アゾフ特殊作戦分遣隊)はネオ・ナチによって編成された
 本ブログでも繰り返し書いてきたように、ウクライナの内戦は2013年11月から14年2月にかけてアメリカのバラク・オバマ政権が実行したクーデターから始まる。その際、ホワイトハウスで指揮していたのが副大統領だったジョー・バイデン、現場で指揮していたのが国務次官補を務めていたビクトリア・ヌランド。戦闘員の主力はネオ・ナチで組織された「右派セクター」だ。

 右派セクターは2013年11月、ドミトロ・ヤロシュとアンドリー・ビレツキーによって編成された。ウクライナはNATO加盟国でないが、ヤロシュは2007年にNATOの秘密部隊ネットワークに参加。その年の5月に欧州のネオ・ナチや中東の反ロシア・ジハード主義者を統合するための会議がウクライナのテルノポリで開かれたが、その議長をヤロシュが務めている。その当時、アメリカのNATO大使を務めていた人物がヌランドだ。
 クーデターで倒されたビクトル・ヤヌコビッチ大統領は東部と南部を地盤とする政治家。2004年から05年にかけての「オレンジ革命」でもアメリカのジョージ・W・ブッシュ政権はヤヌコビッチを大統領の座から引きずり降ろしている。
 クーデターでヤヌコビッチは排除されたものの、東部や南部の住民はクーデターを認めず、抵抗を始める。それに対し、オバマ政権はCIAやFBIの専門家数十名を顧問として送り込み
 傭兵会社「アカデミー(旧社名はブラックウォーター)」の戦闘員約400名をウクライナ東部の制圧作戦に参加させた​とも伝えられた。

 クーデター派の攻撃に対抗するため、クリミアの住民はロシアと統合する道を選ぶ。3月16日にはロシアとの統合を求める住民投票が実施され、80%以上の住民が参加、95%以上が加盟に賛成している。この迅速な動きのおかげでクリミアの住民は平穏な生活を送れた。
 4月12日にCIA長官だったジョン・ブレナンがキエフを極秘訪問、その2日後にクーデター政権は東部や南部の制圧作戦を承認する。22日にはジョー・バイデン米副大統領がキエフを訪問、その直後から軍事力の行使へ急速に傾斜していった

 そして5月2日、オデッサでは反クーデター派の住民が虐殺される。住民を殺したグループの中心は右派セクターだった。サッカーのフーリガンを挑発して住民が集まっていた広場へ誘導、住民を労働組合会館へと「避難」させ、その中で住民を虐殺したのだ。このとき50名近くの住民が殺されたと伝えられているが、これは地上階で確認された死体の数にすぎな図、地下室で惨殺された人を加えると120名から130名になると現地では言われていた。

 一方、ドンバスではクーデター政権と反クーデター派との戦闘が始まる。旧ソ連圏ではドイツとの戦争に勝利した記念日である5月9日を人びとは祝っていた。その日を狙い、クーデター政権はマリウポリに戦車を突入させ、住民を殺しはじめたのだ。6月2日にキエフ政権はルガンスクの住宅街を空爆、住民を殺しているが、その日、デレク・チョレット米国防次官補がキエフ入りしていた。OSCE(欧州安保協力機構)も空爆があったことを認めている。

 クーデター後、ネオ・ナチと戦ったベルクト(警官隊)は解散させられ、隊員は命を狙われている。相当数のメンバーがロシアに保護を求めたり、ドンバスの反クーデター派に参加したと見られている。軍や情報機関の内部にも離反者は少なくないだろう。
 クーデター直後にSBU(ウクライナ保安庁)の長官に就任したバレンティン・ナリバイチェンコは以前からCIAに協力していた人物で、前任者のアレクサンドル・ヤキメンコによると、第1副長官時代に隊員の個人ファイルをCIAに渡していたという。

 今回、ロシア軍が制圧したマリウポリは反クーデター派が多い地域であり、2014年以降、ネオ・ナチに占領されていたのである。ロシア軍に救出された住民は異口同音に、アゾフをはじめとする親衛隊が住民を人質にするだけでなく拷問し、虐殺してきたと証言している。

 ロシア軍のマリウポリ制圧は戦略上、重要な意味があるが、それ以上にバイデン政権が恐れているのは住民の証言だろう。配下の有力メディアを使って流してきた作り話がバレてしまう。こうした証言を無視すると同時に新たな大きな嘘をつかざるをえなくなるだろう。