2022年4月26日火曜日

26- 円安なんて生易しいもんじゃない 円クラッシュに現実味(日刊ゲンダイ)

 ロシアのウクライナ侵攻によって世界的に資源や資材、穀物の価格が高騰するなかで、急激な円安が日本の苦境に追い打ちをかけています。ウクライナでの戦争は収束に向かいそうもないのでこの事態の長期化は避けらません。

 肝心のこの時点で政府にも日銀にも打つ手がないのは、すべてアベノミクスの異次元緩和が原因です。本来は2年間で2%の物価上昇という目標を達成できなかった時点で方針転換するべきだったのですが、それをしないままズルズルと9年も緩和策を続けてきたのでした。これではどうすることも出来ません。
 日本が最終的に「進退に窮する」事態に陥るのは、当初から予想されていたことでした。来たるべきものがついに来たのでした。
 日刊ゲンダイが「円安なんて生易しいもんじゃない 円クラッシュに現実味」という記事を出しました。
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円安なんて生易しもんじゃない 岸田危機 円クラッシュに現実味
                          日刊ゲンダイ 2022/4/23
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 急速な円安が進む中、ワシントンで開かれた国際会議に出席していた鈴木財務相は日本時間の22日朝、米国のイエレン財務長官と会談し、最近のドル円相場について協議。およそ30分間の会談で注目されたのは、ドルを売って円を買う日米の協調介入についても話し合われるかどうかだった。
 鈴木は「コメントしない」としているが、政府関係者は協調介入についても議論したことを認め、「アメリカ側は前向きに検討してくれるトーンだった」と語ったと報道されている。
 だが、これは言葉通りには受け取れない
 米国はいま歴史的な物価高に見舞われていて、インフレ抑制のために急ピッチで利上げを進めようとしている。為替が円高ドル安に振れれば、米国内の輸入物価が値上がりし、一層のインフレをもたらす。簡単に協調介入を容認するはずがないのだ。
「日本政府としては、日米の連携を強調することで急激な円安に歯止めをかける狙いでしょうが、一部で協調介入の可能性が報じられてもマーケットはほとんど反応しなかった。日本は金利を0%付近にするゼロ金利政策を続けていて、米国との金利差が大きいほど円売りドル買いで儲けることができる。“口先介入”を試みたところで、日銀の黒田総裁には政策変更する意思がないことが見透かされて円売りは止まらず、円安は加速する一方です」(経済評論家・斎藤満氏)
 22日の東京外国為替市場の円相場は前日比03銭円安ドル高の1ドル=128円05~08銭で大方の取引を終えた。その後のニューヨーク外国為替市場も1ドル=128円台半ばで推移。このままでは1ドル=130円突破は時間の問題だ。

ゼロ金利継続のための指し値オペ
「悪い円安」(鈴木財務相)、「(円安が)マイナスに作用することも考慮する必要がある」(黒田総裁)などと、口先介入を繰り返してみても円安トレンドは止まらず、20日には一時、1ドル=129円台にまで下落した。
 そんな中、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は21日、5月3~4日に開かれる連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を通常の2倍にあたる0.5%と大幅に引き上げる姿勢を示した。1回で0.5%の利上げは2000年5月以来だ。
 パウエルは、1回あたり0.25%ずつ連続利上げを実施した04~06年と比べて現在のインフレ率は「はるかに高い」と指摘し、歴史的な物価高を抑えるには、金融政策を「(当時より)迅速に動くことが適切だ」と説明。利上げの加速だけでなく、量的引き締めも進める構えだ。

 その裏で日本の金融政策当局がやっているのが「指し値オペ」だから何をかいわんやである。これは10年債の利回り0.25%を死守するという意思表示であり、今回の連続指し値オペの期間が21~26日なのは、27日から日銀の金融政策決定会合が開かれるからだ。ゼロ金利政策を継続させるためには、是が非でも金利上昇を抑えておく必要がある。
日銀は絶対に金利を上げない姿勢だから、投機筋はノーリスクで円売りドル買いを進められる。こんな堅い投資はありません。130円は通過点で、140円、150円と円安は底なしになる恐れがある。政府が物価高対策を講じようとしても、日銀が円安の種をまいているのだからどうしようもない。異次元緩和の失敗を認められずに円安政策を続ける黒田総裁の任期はあと1年ありますが、力ずくで交代させるしか悪性円安を止める方策はないかもしれません」(斎藤満氏=前出)
 日米の金利差拡大で、一層の円安が進むのは間違いない。

ハイパーインフレか悪性インフレの二者択一
 ロシアのウクライナ侵攻によって世界的に資源や資材、穀物の価格が高騰。そこへ円安が追い打ちをかけ、調達コストは膨らむ一方だ。戦争の長期化は避けられず、生活必需品の値上げは今後も続く。食料品や電気料金の値上げが庶民生活を圧迫していく。
 恐ろしいのは、政府にも日銀にも打つ手がないことだ。
 ここで金利を引き上げれば、住宅ローンが跳ね上がり、中小企業は返済に行き詰まる。何より、異次元緩和で国債を大量に保有している日銀が債務超過に陥ってしまう。円の信認は毀損し、ハイパーインフレが現実になりかねない
 かといって、このままゼロ金利政策を続けていれば、輸入物価の高騰と金利差による円安トレンドで悪性インフレが進行するだけだ。給料が増えない現状では、円安によって実質賃金はますます減っていく。
身動きが取れない状況に追い込まれたのは、アベノミクスの異次元緩和が原因です。2年間で2%の物価上昇という目標を達成できなかった時点で方針転換するべきだったのに、ズルズルと緩和策を続けてきた結果、円安を止める手段も失ってしまった。結局、アベノミクスは新自由主義による強者の論理であり、大企業と富裕層を潤わせ、日本の富を海外に流出させただけでした。庶民は消費税5%から10%への倍増に加え、円安によるインフレ税という形でも負担を強いられることになる。黒田日銀が異次元緩和を9年間も続けて達成できなかった2%の物価上昇が悪い形で実現され、給料が上がらず物価だけが上がっていくスタグフレーションのリスクが目前に迫っています。アベノミクスに景気回復効果はなかったが、日本経済を殺すには十分な効果があった。それでも何の策も講じようとしない岸田政権は危機感がなさすぎます」(経済アナリスト・菊池英博氏)

「しまほっけ定食」が5052円
 日本経済はいつまで持ちこたえられるだろうか。ウクライナ侵攻を続けるロシアに対する経済制裁によって早晩ロシアがデフォルトに陥り、経済破綻するとの観測を日本のメディアは垂れ流しているが、そうはいってもロシアは資源大国だ。小麦の一大生産地でもある。一種の鎖国で国民生活はなんとか成り立つ。
 だが、日本は資源も食料も輸入に頼っている。異次元緩和でぬるま湯につかってきた産業界に付加価値を生み出す力もない。経済成長していれば金融政策で乗り切れる局面でも、何もできず、手をこまねいているだけだ。財政出動しようにも、さらなる国債発行で泥沼にハマっていく
 いま日本円は独歩安で、対ドルだけでなく、ユーロや中国元、制裁を受けているロシアのルーブルよりも安い。国力が衰退しているからだ。通貨の価値は、基本的には国力を反映する。経済制裁による物価高の返り血で、ロシアより先に日本経済が破綻する可能性もあるのだ。
 今年のGW期間中のJAL国際線は、ハワイ便の予約が前年比約9倍と好調だというが、庶民が海外旅行を楽しめるのは、これが最後かもしれない。他の先進国と比べて日本は給与水準も低迷したままで、国際通貨基金(IMF)の購買力平価で比較すると、現在の「円」は1985年のプラザ合意当時(1ドル=260円)より弱い
 東短リサーチ・チーフエコノミストの加藤出氏の試算によると、「大戸屋ごはん処」の「しまほっけ焼き定食」を円安のいまニューヨークで食べようと思ったら5052円相当だという。東京は980円だから実に5.15倍だ。日本は急速に貧しい国になり、それは円安で加速していく。海外旅行なんて、一部の富裕層だけの特権になるだろう。
 海外旅行は我慢できても、電気料金もガソリンも加速度的に値上がりして国民生活は逼迫。預金金利は上がらないのに銀行手数料だけは上がり、それでも収まらずに銀行が潰れ、預金封鎖で大混乱の事態も考えられる。
 アベノミクスの負の遺産が噴出し始めたところで岸田無策政権では、円クラッシュの現実味は増すばかりだ。