2022年4月21日木曜日

停戦平和を望むウクライナ国民と戦争拡大に進むゼレンスキー政権(世に倦む日々)

 ウクライナ侵略戦争は悲劇の度合いを深めていますが、バイデンにもゼレンスキーにも停戦に向かわせようとする意志が見られず、戦争を長引かせようとしているように見えます。バイデンはそれによってロシアを疲弊させるとともに大儲けも出来るので分からなくもありませんが、ゼレンスキーはどんな意図からなのでしょうか。

 ロシアは、既にゼレンスキー政権交代の要求は取り下げ、非ナチ化、ミンスク合意の実行、NATO加盟の断念に絞っている筈です。
 世に倦む日々氏が、「停戦平和を望むウクライナ国民と戦争拡大に進むゼレンスキー政権」という記事を出しました。
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停戦平和を望むウクライナ国民と戦争拡大に進むゼレンスキー政権
                          世に倦む日々 2022-04-19
アメリカのNBCニュースが、米国政府が現在のところ公式には、ブチャの虐殺をロシアのジェノサイドとは認めていないと報道している。4月16日の記事だ。バイデンは13日にそれをジェノサイドと断定してロシアを非難、大きなニュースになったが、政府内部は未だ認定しておらず、すなわち、バイデンの先走りと勇み足にして留保している。大統領の政治的パフォーマンスだと位置づけ、事実認識については慎重な態度を示している。この報道は日本では紹介されていない。

記事によると、米国の情報機関は、ウクライナに関する諜報報告では、現時点でジェノサイド(大量虐殺)の指定を支持してないと、当局者がそう証言している。ジェノサイドの法的基準を理由にしての実務的な慎重判断なのだが、日本のマスコミの空気や常識とはずいぶん話が違っていて興味深い。日本では「ロシアによる大量虐殺」で決まりであり、誰もそれを疑っていない。CIAと米国政府は、ブチャ虐殺をロシア軍によるジェノサイドとはまだ正式認定してないのだ。

実は私も同様で、ブチャ虐殺事件をロシア軍の犯行だとは確信できていない。マスコミの報道と説明とは裏腹に、仕組まれた謀略の疑いを拭えず、ウクライナ軍がロシア軍協力者を掃討処刑し、その遺体を路上に並べたり、集団墓地に埋めたりした可能性があると推理している。その上で、それをロシア軍の仕業だと情報工作して、プロパガンダしているのではないかと疑念を抱いている。少なくとも、路上に放置されていた遺体はそうだろう。

キエフ州の民間人犠牲者は三つあり、(1)ロシア軍によってスパイの嫌疑をかけられて拘束殺害された者もいれば、逆に、(2)ロシア軍撤退直後に、ウクライナ内務省軍によってロシア軍協力者が報復殺害されたケースもあるに違いない。無論、(3)ロシア軍の爆撃で吹き飛ばされたり、建物の下敷きになった犠牲者も多い。それらを一つ一つ検証してカウントする作業が必要であり、すべてを十把一絡げにして「ロシア軍による非人道的な大量虐殺」と決めつけるのは正しくない

ブチャ事件について最も正確かつ詳細に掌握しているのは、実は米情報機関である。仮にウクライナ軍側の狡猾な工作であったとしても、それを指導し差配し演出した黒幕はCIAだ。その当のCIAが、事件のレポートでロシア軍によるジェノサイドだと正式認定せず、NBCの取材に対してお茶を濁している点は興味深い。このCIAの手堅い態度の裏側にある意味と真実は何だろうか。私は、これは、後々のための布石であり、担保であり、周到なエクスキューズではないかと睨んでいる。

つまり、何年か後に、実はブチャの路上の遺体はアゾフ大隊(ウ内務省軍)が仕組んだものだという真相が露呈したとき、米国政府の立場を守るアリバイ情報を置いているのではないか。あのとき、米国政府はNBCの取材に対して「政府はそれをロシア軍のジェノサイドだと認定していない」と回答したはずだと、そう弁解することができる。責任逃れの担保。そこから、CIAの意図なり本音が読み解けるだろう。全てを知っていて、証拠も誰より完璧に押さえているはずのCIAが、ブチャ虐殺についてロシア軍のジェノサイドだと断定していない。

ここで想起すべきは「カチンの森」事件の政治である。第二次大戦中、1940年3月に2万人以上のポーランド人がカティン付近で虐殺された。犯人はソ連(NKVD・内務人民委員部)である。だが、ソ連はそれをナチスドイツの所業であると主張、遺体を発見して告発したナチスドイツの側に濡れ衣を着せた。ドイツ側は抗弁したが、ファシズム対反ファシズムの戦いである第二次大戦の敗者となり、また、ユダヤ人ホロコーストを含めた数々の残虐非道行為の責めを負う極悪人の立場となり、濡れ衣の訴えは国際社会で認められなかった。

真実が白日に下に暴かれ、ソ連の犯行として確定したのは、ゴルバチョフが正式に認めて謝罪した1990年だ。時間がかかっている。ドイツは弁駁する立場がなかったため、濡れ衣のままの時間が続いた。おそらく、ブチャの虐殺も似た構図ではないかと私は考えている。今、どれほどロシア側が無実潔白を訴え、反証の説得材料を並べても、侵略戦争を始めて国連総会で非難決議を受けたロシアに立つ瀬はなく、第三者たる国際社会は聞く耳を持たない。謀略を仕掛けた側は、戦争の作戦としてのプロパガンダだから、10年後にバレても問題ない。当事者はもう責任ある地位にいない。昔話の後の祭りになっている。

戦争プロパガンダで報道される事実は、正しい事実でなくてもよく、ウソの混じった作り話でもよいのだ。受け取った大衆が事実だと信じればよく、その情報を元にロシアを糾弾しウクライナを応援する意識を強めることが先決なのだ。結果が大事なのだ。現在、西側のマスコミはNATO大本営報道部になっている。ウクライナ情勢については、作為的意図的にウソ混じりの戦争プロパガンダをシャワーし、信じ込ませ、ウソの言説を何重何層にも追加構築し、国民の意識をウクライナ政府およびNATOの論理と一体化させている。

CIA御用学者も、防衛研の陣笠も、番組キャスターも、自分がウソ混じりの講説(=プロパガンダ)を放送していることは自覚し、理解している。だが、それがウクライナの戦争勝利に利するもので、ロシアを敗北させるための正義の貢献であり、普遍的価値観のための情報提供活動だから構わないと思っている。目的は手段を浄化するという信念の下で、少々歪曲が入ってもいいと自認してやっている。後で文句を言われる局面になっても、あのときはウクライナを勝たせるために必死だったのだと言い訳でき、テレビの全員が同じ言動をしていたと逃げられる。

公共の電波で間違いのない内容を話すことよりも、ウクライナを戦争で勝たせることの方が意義があり、優先されるのだと、そういう価値判断の下でプロパガンダ発信の主体(=工作員)になっている。アメリカでは、わりと正直に報道関係者がその点を明確にしている感があり、「正義のためにプロパガンダを言うから騙されてくれ」という姿勢がハッキリしている印象がある。日本は、テレビに出る全員が異論なく一つなため、ウソをウソと自覚する程度が弱く、ウソを真実とを自らの頭の中でスリカえ、混ぜ合わせて、論者たちが仲良く自己欺瞞しているように見える。視聴者も同じである。日本らしい。

ブチャ虐殺事件が表に出たのは4月4日で、この問題発生はウクライナと西側にとってはドンピシャのタイミングだった。ここから西側の世論が沸騰し、戦車もドローンも対空ミサイルも何でも武器を入れろという好戦論になり、東部に戦線を集中するロシア軍を押し返す攻撃兵器を無尽蔵に送れという流れになった。EU委員長と英国首相がキエフに飛び、軍事支援を約束して武器を大量供給する方向となった。政治的に経過を検証すると、やはりブチャの事件報道の衝撃と影響が大きく、西側の戦争態勢がギアチェンジされる契機となったのは間違いない。

もし、ブチャ虐殺事件がなかったら、事態はどう進行していただろう。昨夜(18日)、報ステでリヴィウの町の様子が中継されていた。避難民が駅に押し寄せて緊張した1か月前とは一変し、二人連れの若い女性が街路を歩いている。落ち着いた普段の日常が復活した気配が窺えた。ロシア軍がキエフ周辺の北部から撤退し、戦場が遠い東部南部に離れたため、リヴィウの市民は安堵して元の生活を取り戻したのではないか。つまり、ウクライナの(東部南部地域を除く)一般国民の感覚では、戦争は縮小され、平和が拡大していることが分かる。

その証左として、一度国境を出て避難した市民が再び国内に戻っている。東部南部以外なら安心して暮らせるという見込みの上での行動ではないか。NATOが事実上ウクライナを同盟の保護下に引き入れ、強固に安全保障する体制になったから、もうキエフがロシア軍に狙われることはないだろうと、そういう想定で動いている雰囲気が漂っている。侵攻前の8年間のドンバス紛争の状態に戻ったと、そう現状を捉えているのではないか。いずれにせよ、リヴィウの市民の表情は1か月前よりも柔らかくなっていた。

私の推測だが、ウクライナの(東部南部を除く他の地域の)市民は、そろそろ本格的停戦を欲しているのではないだろうか。キエフの市民も、徹底抗戦ではなく本格和平を望んでいるのではあるまいか。そうした空気を察しつつ、その意思や希望とは逆方向に、ゼレンスキーと英米はこれから大型の戦争を始めようとしている。ロシア軍を徹底粉砕して戦争継続を断念させ、国境の外に完全に追い出す作戦を計画している。ドンバスだけでなくクリミアも奪還し、プーチン政権を打倒する展開を目論んでいる。大きな戦争を遂行して勝利を得ようと算段している。

そのため、帰国を急ぐ避難民に「まだ帰って来るな」と言っているのだろう。アメリカが戦争を続けたいのだ。その動機と理由は、ロシアに戦争で完勝できるからだ。プーチン政権転覆だけでなく、ロシアの国連常任理事国追放まで視野に入り、さらに、カラー革命によるベラルーシ崩壊とロシア連邦解体まで展望に収まってきたからだ。核戦争さえ阻止できれば、通常兵器でロシアに勝てる。今のウクライナ軍は、戦闘員だけがウクライナ兵で、後のすべての要素はNATO軍に他ならない。武器も弾薬も車両も燃料も医薬品も資金もとめどなく補給・充当されている

偵察衛星と通信傍受の情報面も完璧で、電子戦で優位に立ち、制空権も事実上握っている。黒海上空のAWACSが巡洋艦モスクワの位置を教えていたと小泉悠が解説していた。すなわち、核を除く軍事力でロシアよりはるかに優勢にある。一方のロシアはジリ貧で、兵員に欠乏をきたし、今度の東部戦線でも兵站を維持できるかどうか不安がある。したがって、米英ウ側に戦争を今やめる理由はない。だから、ゼレンスキーはマリウポリを口実にして停戦交渉の破棄を言っているのだろう。ウクライナの国民は戦争をやめたいが、政権と西側は戦争を続けたい

今、そういう状況にある。われわれも同じだ。日本国民も少なからず厭戦気分の影が差している。もうプロパガンダ漬けに内心飽きている。だが、大本営の連中はそうではない。だから、毎日毎晩テレビで発破をかけ、ゲーム解説のように新ネタを仕込んで戦争情勢を垂れ、大衆の関心を焚きつけている。世論調査で「欲しがりません、勝つまでは」の数字を出して念を押している。ゼレンスキーが3月に野党を活動停止に追い込んだのは、停戦を求める国内の声を封じ込める目的があったからではないだろうか。無論、指図したのはアメリカだろうが。

この戦争でアメリカが一番得をするのだから