2022年4月23日土曜日

自民安保調 相手国中枢攻撃を提言 GDP2%の大軍拡も

 自民党安全保障調査会21日、政府の指針となる「国家安全保障戦略」など3文書改定に向けた提言案を了承しました。提言案ではこれまでの「敵基地攻撃能力」「反撃能力」と言い換え、攻撃対象について「ミサイル基地に限定されるものではなく、相手国の指揮統制機能等も含む」として攻撃の対象を広げました。

 「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」と言い換えたからといって、憲法違反ではなくなるというものではなく、あまりにも子供だましの対応というしかありません。
 提言案はまた軍事費について、NATOが加盟国に国防予算の国内総生産比目標2%以上を求めている点を念頭に「5年以内に防衛力を抜本的に強化する」として、当初予算で54兆円規模の軍事費を11兆円規模まで拡大する大軍拡を狙いました。
 ただただ呆れるしかないことで、一体どこにそんな必要があるというのでしょうか。米国から不要で高額な兵器を買わされるのが関の山とも言われています。
 それに5年以内というのは、中国が人民解放軍の創設100年にあたる2027年までに台湾を侵攻する可能性があり、その時に(米国と共に)参戦するからというもので、本当にそんな可能性があるのか、仮にそうなったとしても何故日本が参戦しなくてはならないのか、荒唐無稽というしかないものです(米国は元々中国と主体的に戦争する意思はなく、日本に戦わせる積りと言われています)。
 いずれにしても米国追随の政治を続ける自民政権下では日本の安全は図られません。
 しんぶん赤旗と東京新聞の記事を紹介します。
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自民、相手国中枢攻撃を提言 「指揮統制機能」対象 「GDP2%」大軍拡も
                       しんぶん赤旗 2022年4月22日
 自民党安全保障調査会(会長・小野寺五典元防衛相)は21日、政府の安全保障戦略の指針となる「国家安全保障戦略」など3文書改定に向けた提言案を了承しました。提言案では、政府が「違憲」としてきた「敵基地攻撃能力」について、「専守防衛の考え方の下、弾道ミサイル攻撃を含むわが国への武力攻撃に対する反撃能力を保有し、抑止、対処する」と明記。名称を「反撃能力」とした上で、攻撃対象について、「ミサイル基地に限定されるものではなく、相手国の指揮統制機能等も含む」としました。

 軍の司令部だけでなく、相手国家の政府機関など「中枢」の攻撃にもつながる動きであり、「専守防衛」では到底説明がつきません。同党は党内手続きを経て、月内に岸田文雄首相に提出する考えです。首相も安保戦略などの改定に向け、「敵基地攻撃能力の保有」検討を表明しています。
 また、提言案は軍事費について、北大西洋条約機構(NATO)が加盟国に国防予算の国内総生産(GDP)比目標2%以上を求めている点を念頭に「5年以内に防衛力を抜本的に強化するため必要な予算水準の達成を目指す」としました。当初予算で54兆円規模の軍事費を11兆円規模まで拡大する大軍拡を狙っています。

 さらに、海外への武器輸出の要件を大幅に緩和した「防衛装備移転三原則」の見直しも盛り込みました。国際法違反の侵略の被害を受けた国に対し、殺傷性のある弾薬などを念頭「幅広い分野の装備」移転を可能とする制度の検討を求めました。ウクライナへの軍事支援をめぐっては、対戦車砲の提供を要請されたものの、法的根拠がないため、防弾チョッキなどの提供を行いました。
 中国の台頭やロシアのウクライナ侵攻を受け、中国を「重大な脅威」、ロシアを「現実的な脅威」にそれぞれ引き上げる方針も盛り込みました。


「敵基地攻撃能力」保有に踏み込む危険な道――憲法9条違反は明瞭
  自民の提言案 志位委員長が会見
                       しんぶん赤旗 2022年4月22日
 日本共産党の志位和夫委員長は21日、国会内での記者会見で、自民党安全保障調査会が国家安全保障戦略の改定に向けてまとめた提言案について「敵基地攻撃能力」(反撃能力」と改称)の「保有」へと踏み込んでいるとして、安保法制のもとで米軍とともに「指揮統制機能等」=相手国の指導部まで攻撃全面戦争に発展しかねない極めて危険なものだと厳しく批判しました。

 志位氏は「これまで『敵基地攻撃能力』の『保有の検討』が政府の立場だった。『検討』を、『保有する』という結論に持っていこうという動きだ」と指摘。これまで政府が国会で、「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っていることは、憲法の趣旨とするところではない」(1959年3月19日の衆院内閣委員会、伊能繁次郎防衛庁長官)、「文民優位を徹底するということ、非攻撃性の装備でなければならないということ、徴兵を行わないということ、海外出兵を行わないということ、これらは日本国憲法の命ずるところであると解す」(70年2月19日の参院本会議、中曽根康弘防衛庁長官)と答弁し、攻撃的な兵器=敵基地攻撃能力の保有は「憲法違反」だとはっきり表明してきたことを示し、「これは憲法9条との関係で決定的な矛盾が起こってくる」と強調しました。

 さらに、「攻撃の対象を『敵基地』だけにせず、『指揮統制機能等』にまで広げようという議論も行われているようだ」と指摘。「『指揮統制機能等』=国の指導部まで攻撃対象にするとなると、全面戦争になる」と警告しました。
 その上で、「この問題は、安保法制のもとでの議論だという点が非常に危険だ。日本に対する武力攻撃がなくても、アメリカがどこかの国との戦争を始めたときに、日本の自衛隊が一緒になって相手国の敵基地だけにとどまらず、『指揮統制機能等』までたたいていくということだ。絶対認めるわけにいかない議論だ。この道には厳しく反対するという立場で対応したい」と表明しました。
 志位氏は「憲法9条を生かした外交の力で東アジアを平和な地域にしていく努力こそ必要だ」と強く主張しました。


憲法の根幹、骨抜きする恐れ…自民党「敵基地攻撃能力」提言案、
 財政難でも「防衛費5年で倍増」
                         東京新聞 2022年4月22日
 自民党安全保障調査会が21日、岸田文雄首相が表明した敵基地攻撃能力の保有検討を後押しする提言案をまとめた。ミサイル発射地点にとどまらず、国家の指導部や軍の司令部を念頭に「指揮統制機能等」を標的にする装備の導入を求め、防衛費も5年以内に倍増させることを視野に入れる内容。専守防衛や「軍事大国とならない」といった基本政策との隔たりは大きく、ボールを受け取る政府の対応次第では、憲法の根幹である平和主義が骨抜きになりかねない。(川田篤志、佐藤裕介、市川千晴)

◆専守防衛を逸脱か
 「ミサイル防衛(MD)システムだけで国民を守れない。相手領域内でも必要なら対応せざるを得ない」
 安保調査会の会合後、会長の小野寺五典元防衛相は記者団に敵基地攻撃能力を保有する必要性を訴えた。
 手の内を明かせないとの理由から、提言案では「指揮統制機能」の具体的内容には触れていないが、攻撃の意思決定を行う指導部や、軍の運用を担う司令部など幅広い攻撃対象が想定される。武力行使を自衛のための必要最小限にとどめるという専守防衛の理念を逸脱する恐れが強い。
 能力を裏付けるため、軍事動向を把握・監視する衛星や地下施設を破壊する弾道ミサイルなど、新たに膨大な装備を保有することにもつながる。共産党の志位和夫委員長は21日の記者会見で「憲法9条との関係で決定的な矛盾が起こる」と批判した。

◆政府・与党内でも異論
 防衛費の増額方針と期間は、欧米の軍事同盟・北大西洋条約機構(NATO)の対国内総生産(GDP)比2%以上の目標を念頭に設定した。期限を区切ったのは、意見聴取した専門家から、中国が人民解放軍の創設100年にあたる2027年までに台湾を侵攻する可能性を指摘されたからだ。
 財源の記述はない。自民党内では、安倍晋三元首相らが国債で賄う正当性を主張するなど、財政難の中でも「聖域化」しようとする動きがある。安保上の危機を強調することで、予算の制約という「壁」を突破したい思惑が透ける。
 政府・与党内では異論も相次ぐ。財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は20日の分科会で、国債頼みの防衛力強化は経済・金融の不安定化を招き「それ自体がわが国の脆弱ぜいじゃく性になりかねない」と指摘。公明党の山口那津男代表は、増税や他の予算削減で対応するのは国民の理解が得られないとして「急激に増やすのは困難だ」とけん制する。

◆「武器輸出」も緩和
 提言案では、武器輸出のルールを定めた「防衛装備移転三原則」を緩和し、他国から侵略された国・地域への「幅広い分野の装備の移転」の検討を打ち出した。今は原則として武器・弾薬の提供を認めていないが、ロシアの侵攻を受けるウクライナの支援を巡り、米欧に引けを取らない貢献ができないというジレンマがにじむ。党中堅議員は殺傷力のある武器を念頭に「世界の潮流を見れば、防弾チョッキだけ渡せばいいとはならない」と語る。
 だが、政府が1960年代に「武器輸出三原則」を表明し、全面的な禁輸政策を採用したのは、憲法の平和主義を実践するためだ。米国などとの協力強化を名目に徐々に緩和されたが、提言案のようにたがを外せば、日本が提供した武器が他国の紛争で殺傷に使われる可能性が高まる。