2023年10月7日土曜日

ウクライナで敗北した米政権は東アジアで軍事的な緊張を高め、戦争の準備 

 訪米した木原稔防衛相は10月4日、国防総省で巡航ミサイル「トマホーク」の購入時期を1年前倒しすることに合意しました。当初の計画では26年度から最新型を400機導入するというものでしたが、それを25年度から旧来型を最大200機に変更しました。全て米国の指示に基づくものです。
 米国は地上配備型の中距離弾道ミサイルで中国を包囲しようと計画していて、インド太平洋でそうしたミサイルの配備を容認している国は日本以外にはいないということです。ここでも日本は突出しています。
 ところで木原稔氏は自民党の中でも頭抜けた極右として知られています。そうした人物を敢えて防衛相に任じた岸田氏は、やはりハト派どころかかなりの右派であることが分かります。櫻井ジャーナルの記事を紹介します。
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ウクライナで敗北した米政権は東アジアで軍事的な緊張を高め、戦争の準備 
                         櫻井ジャーナル 2023.10.06
 木原稔防衛相は10月4日、アメリカ国防総省でロイド・オースチン国防長官と会談、アメリカ製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入時期を1年前倒しすることを決めたという。つまり、そのようにアメリカで命令されたわけだ。
 当初の計画では2026年度から最新型を400機だったが、25年度から旧来型を最大200機に変更するとされている。トマホークは核弾頭を搭載でき、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートルとされている。
 日本列島へのミサイル配備はアメリカ側の事情が反映されている。国防総省系シンクタンクの「RANDコーポレーション」のレポートによると、アメリカはGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようと計画している

 ところが、インド太平洋地域でそうしたミサイルの配備を容認する国は日本以外にない。日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力するという形にすることになったのだが、そうしたことを言っていられなくなったのだろう。
 そのASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画のようだ。自衛隊は2016年に軍事施設を与那国島に建設、19年には奄美大島と宮古島にも作り、2023年には石垣島でも完成させている。地上発射の改良型ミサイルは2024年度にも配備するとされていた。
 RANDコーポレーションがレポートを書いた当時、アメリカの好戦派はロシアとの戦争で簡単に勝てるとたかを括っていたようで、ジョー・バイデン大統領は大統領に就任して以来、ロシアの「縄張り」とも言うべき黒海へ軍艦を入れ、軍用機を飛行させて恫喝、あるいは挑発してきた。国境近くに数万人規模の部隊を集結させたこともある。2022年3月にはドンバスをウクライナ軍に攻撃させ、住民を虐殺、ロシア軍を引っ張り込もうとしていたとも言われている。アフガニスタンの時を同じ手口だ。
 ところが、ロシア軍はその直前、昨年2月24日に動く。ドンバス周辺に集結していたウクライナ軍をミサイルで壊滅させ、キエフ側の航空基地、レーダー施設、また生物兵器の研究開発施設などを破壊している。この段階でウクライナ軍の敗北は決定的だったが、ロシアを疲弊させたいアメリカやイギリスはウクライナ政府に戦争を継続するよう命じ、そのために資金や武器弾薬をつぎ込んだ。

 ところが戦況に変化はなく、アメリカ/NATOの兵器庫は空になりつつある。しかもアメリカ政府の「制裁」がロシアの国内産業にとって追い風になり、生産力が高まっている。兵器の製造能力も西側の2倍だという。ウクライナでアメリカ陣営は崩壊寸前の様相を呈している。
 そうした中、アメリカは東アジアに火をつけようとしている。台湾を発火点にしようと考えているようだが、戦いの拠点は日本。韓国は大陸を攻撃する橋頭堡になりそうだ。
 すでにアメリカはオーストラリア、インド、日本と「クワド」を編成しているが、インドはアメリカへの従属度が足りない。アメリカ、オーストラリア、イギリスのアングロ・サクソン系3カ国で「AUKUS」という軍事同盟を組織したものの、東アジアの国ではない。そこで日米韓軍事同盟を組織、7月18日にソウルでNCGの第1回会議が開かれた。
 その直後、7月25日にロシアのセルゲイ・ショイグ国防相が朝鮮を突如訪問した。朝鮮戦争終結を記念する戦勝記念日の行事に出席するためだが、李鴻忠党中央政治局委員を含む中国の代表団とそこで合流している。アメリカが日本や韓国を巻き込んで整備している軍事同盟に対抗することが本当の目的だろう。
 ウラジミル・プーチン露大統領の招きで、朝鮮の金正恩労働党委員長は9月12日から17日までロシアを訪問した。9月10日から13日にかけてウラジオストックではEEF(東方経済フォーラム)が開催されていた。

 金委員長はプーチン大統領と会談した後もさまざまな要人と会い、さらにSu-35を含むロシアの新鋭戦闘機を生産するユーリ・ガガーリン航空工場を含む工場、あるいは研究所を訪れ、戦闘機の胴体を組み立てる工場では、Su-57などの第5世代戦闘機に関する技術的な特徴について詳しく質問していたと伝えられている。セルゲイ・ショイグ露国防相と太平洋艦隊のフリゲート艦「マーシャル・シャポシニコフ」も訪れている。
 アメリカの圧力で日本、韓国、台湾は中国やロシアという重要なビジネス相手を失いつつあり、EUのような惨状が待っているかもしれないのだが、朝鮮はロシアに接近、軍事面だけでなく経済面でも状況は好転する可能性が高い。
 ちなみに、西側でしばしば朝鮮の情報源として登場するデイリーNKと密接な関係にあり、スポンサーでもあるNEDはCIAの資金を流している団体。ここから出てくる情報はCIAが作る幻影にすぎない。