2023年10月30日月曜日

イスラエルが ガザの通信を遮断したのは 殺人者は目撃者を好まないためだ

 イスラエルの国防相は9日、ハマスの人たちをヒューマンアニマル(人間獣)と呼びました。ある評論家は、これは今後起こされるガザでの大虐殺への批判を緩和する意図からの発言だと評しました。イスラエルの首相の様々な発言も「ガザ」での大虐殺を思わせます。

 西側の諸国はハマスのこの度の攻撃を許されないこととしていますが、それは長い間顔を踏み続けられた人がその足に嚙みついたということに過ぎないと見る人もいます。
 空爆で既にガザの人たち8000人超が亡くなっています(イスラエル側は少なくとも1400人)が、この先どこまで拡大するのか見当もつきません。
 ケイトリン・ジョンストンが掲題の記事を出しました。
 人道支援団体や主要報道機関によれば現在ガザの連絡先との連絡は自家発電用の燃料が無くなったために途絶えたということです。
 併せて櫻井ジャーナルの記事:「イスラエル軍はガザで取材中のジャーナリストを爆撃の目標にしている可能性 」と「イスラム国のイスラエル包囲網に露国と中国が連結、窮地に陥った米政府」の2つの記事を紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ガザの通信をイスラエルが遮断したのは、殺人者は目撃者を好まないためだ
              マスコミに載らない海外記事 2023年10月29日
 自分の犯罪が白日の下に記録され、世界と共有されるのがいかに不利か、おそらく地球上他のどの政府より、イスラエルは痛感している。
                 ケイトリン・ジョンストン 2023年10月28日
 イスラエル地上部隊はガザでの活動を強化しており、匿名アメリカ当局者が報道機関に語ったところによると、これは長年期待されていた地上侵攻の「ローリング・スタート」だ。
 他の全てを叩きのめし、同時に、イスラエルは、飛び地に最後に残った外界との接点だったガザ最大の通信サービスを麻痺させた。現代未曾有レベルの情報遮断により、ガザの連絡先との連絡は途絶えたと人道支援団体主要報道機関は述べている。
 「この情報遮断は、大規模残虐行為を隠蔽し人権侵害をしても何のおとがめもなく済むのを助長する危険性がある」とヒューマン・ライツ・ウォッチは正しく指摘している
 一歩先に進んで、それはおそらくイスラエルにとって単に都合の良い偶然ではないはずだと私は言いたい。真っ暗闇の中での大量虐殺は虐殺をする連中に非常に有利に働く
 イスラエル包囲戦がガザの人々を電気と通信両方から遮断する中、ガザの明かりがさまざまな形で消えるのを我々は目の当たりにしている。

 イスラエル軍によるジャーナリスト殺害の横行により、光はさらに暗くなった。ウィキペディアは、悪名高い不正編集システムで、アメリカ情報権益に有利なよう情報を歪曲する傾向があるが、それでも現在、この猛攻撃で、イスラエル国防軍によりガザで殺害された17人のジャーナリストと南レバノンで殺害されたジャーナリスト人を列記している。NPRはもう少し多い数値を挙げているが誰が殺害したかは都合よく言うのを避けている。
 ガザ地区でのイスラエル空爆で妻、息子、娘、幼い孫を失い、死んだ息子の遺体にひざまずきながら「連中は私たちの子供を殺して復讐しているのだ!」とアルジャジーラ記者ワエル・ダフドゥーは放送で語った。報道によると、彼はイスラエルの退避命令に従って、それが彼らの安全を守ると信じて彼らをガザ市の南に移動させていた。
 ロイター通信によると、現在イスラエル国防軍は、ロイター通信とAFP通信両社に対し、ガザ地区で活動を続ける記者の安全は保証できないと伝えている。過去3週間、イスラエルがジャーナリストに対し歴史的に未曾有の攻撃をしているのを考えると、これは脅迫としか解釈できない。
 以前にもお話しした通り、スマートフォンの登場とソーシャル・メディアの普及により、人権侵害の生のビデオ映像を共有し、流通させる能力が出現したため、益々悪化するPR危機にイスラエルは何年も苦しんでいる
 「内部告発、異議申し立て、説明責任国際フェスティバル」で2021年にビデオ出演した際、イスラエルを拠点とするジャーナリスト、ジョナサン・クックはイスラエルがガザ地区の全ての明かりを消そうと躍起になっている中、私がしばしば考えていることと同じ発言をした。スマートフォンとインターネットによって同情的な欧米活動家の活動に対するパレスチナ人の依存度が下がり、自ら虐待映像の直接共有が可能になったとクックは説明している。
 以下は引用だ。

 「悲しいことに、ほとんどの企業ジャーナリストは、これら活動家の活動にほとんど注意を払っていなかった。いずれにせよ彼らの役割は直ちに消し去られた。それは、イスラエルが、彼ら何人かを銃撃することが、他の人々に近づかないよう警告する非常に効果的な抑止力として機能すると学んだためだ。」
 「しかし、それはまた、テクノロジーがより安価で利用しやすくなり、やがて誰でも持つと期待される携帯電話に到達するにつれ、仲介なしに、即座に、自分たちの苦しみをパレスチナ人が記録できるようになったためでもあった。
 「兵士や入植者によるパレスチナ人への虐待を描いた初期の粗い画像を『パリウッド』(パレスチナのハリウッド)としてイスラエルが切り捨てたことは、イスラエル自身の支持者にとってさえ益々説得力がなくなった。やがて、パレスチナ人は自分たちが虐待される様子を高解像度で記録し、YouTubeに直接投稿するようになった

 自分の犯罪が白日の下に記録され、世界と共有されるのがいかに不利かをおそらく地球上の他のどの政府より、イスラエルは痛感しているそれが、ガザの明かりを消した理由だ。殺人者は目撃者を好まないためだ
          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 私の記事は完全に読者に支持されているので、この記事を良いと思われた場合、必要に応じて私のチップ入れにお金を入れる選択肢がいくつかある。私の記事は全て、自由にコピーでき、あらゆる方法、形式で利用可能だ。皆様が望むことは何であれ、記事を再発行し、翻訳し、商品に使える私が公開している記事を確実に読む最良の方法は、Substackメーリングリスト購読だ。全ての記事は夫のティム・フォーリーとの共著。

記事原文のurl:https://caitlinjohnstone.com.au/2023/10/28/israel-cut-off-gazas-communications-because-murderers-dont-like-witnesses/


イスラエル軍はガザで取材中のジャーナリストを爆撃の目標にしている可能性 
                          櫻井ジャーナル 2023.10.29
 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は9月22日、国連総会で演説した際、パレスチナを消し去った地図を示した。現在、イスラエル軍はガザに対する攻撃を始めているが、これはパレスチナを地図から消し去ることを目的にしているのだろう。



 ガザに対するイスラエル軍の攻撃は全てのパレスチナ人が対象で、破壊と虐殺が繰り広げられている。そうした残虐行為に対する怒りはイスラム世界だけでなく、全世界に広がった。アメリカのバラク・オバマ政権がウクライナで実行したクーデターがロシアと中国を戦略的同盟国にしたのと同じように、今回のガザ攻撃はイスラム世界を団結させてしまった。
 イスラエルやアメリカに対する怒りが広がらないように情報統制が図られている。ガザの惨状が外部に知られないようにするためで、通信が遮断されたほか、現地で取材しているジャーナリストやその家族が狙われている。
 すでにイスラエル軍の空爆で20名以上のパレスチナ人ジャーナリストが殺害され、アルジャジーラ・アラビックのガザ支局長を務めているワエル・ダフドウの場合、彼の妻、息子、娘、そして孫が殺された。情報を伝えないよう、アメリカやイスラエルは脅しているのだ。(​ココ​や​ココ​や​ココ​など)
 アル・ジャジーラはカタールの国営メディアだが、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は10月13日、ドーハでカタールの首相と会談した際、「ガザでの戦争に関するアルジャジーラのレトリックを弱めるよう」求めたと伝えられている。その後、イスラエル軍の対ジャーナリスト攻撃は始まった。記者を狙っていることをイスラエルは隠していない。ソーシャルメディア・プラットフォームも統制の対象になり、イスラエルにとって都合の悪い情報を発信するアカウントは停止されている。
 アメリカをはじめとする西側の支配者たちは事実を恐れる。内部告発を支援する活動をしてきたウィキリークスを敵視したのはそのため。そして2019年4月11日、ウィキリークスの看板的存在だったジュリアン・アッサンジはロンドンにあるエクアドル大使館の中でロンドン警視庁に逮捕された。
 その後、イギリス版グアンタナモ刑務所と言われているベルマーシュ刑務所で拘束され、ウェストミンスター治安判事裁判所は2022年4月20日、アッサンジをアメリカへ引き渡すように命じている。ヨーロッパを活動拠点にしてきたオーストラリア人をアメリカ政府はイギリスに逮捕させ、自国へ引き渡させようとし、その命令にイギリスは従っているのだ。
 アメリカの当局はアッサンジをハッキングのほか「1917年スパイ活動法」で起訴している。本ブログでは繰り返し書いてきたが、ハッキング容疑はでっち上げだ。アッサンジがアメリカへ引き渡された場合、懲役175年が言い渡される可能性がある。
 ウィキリークスが公表した情報の中に、​アメリカ軍のAH-64アパッチ・ヘリコプターが2007年7月に非武装の一団を銃撃、十数名を殺害する場面を撮影した映像​がある。犠牲者の中にはロイターの特派員2名が含まれている。その映像を見れば、武装集団と間違ったわけでないことは明白。この映像は2010年4月に公表された
 その情報源だったアメリカ軍のブラドレー・マニング(現在はチェルシー・マニングと名乗っている)特技兵はすぐ逮捕され、スウェーデンの検察当局は2010年11月にアッサンジに対する逮捕令状を発行している。
 こうした情報統制を行なっても、ガザでの虐殺は隠しきれない。虐殺はイランを戦争へと導く可能性があり、イスラム世界は一致団結して欧米と戦うと考えなければならない。すでにロシアや中国はアメリカからの攻撃に応じる準備を始めているようだ。


イスラム国のイスラエル包囲網に露国と中国が連結、窮地に陥った米政府
                         櫻井ジャーナル 2023.10.30
 イスラエル軍のガザに対する攻撃で8000人以上の住民が殺されたと言われている。イスラエル軍は地上部隊も投入しているようだが、まだ総攻撃を始めたわけではない。総攻撃を始めた場合、ハマスは全長500キロメートルのトンネルで結ばれた地下施設から反撃する。
 2006年7月から9月にかけてイスラエル軍の地上部隊がレバノンへ侵攻した際、ヒズボラに敗北、イスラエルが誇る「メルカバ4」戦車も破壊された。イスラエル軍はガザの地下施設を化学兵器で攻撃するとも言われているが、そう簡単ではない。
 今回の戦闘でハマスはアメリカ製の武器を使用していることが映像から確認されているが、これはアメリカ/NATOがウクライナへ供給したものだと推測されている。そうした兵器の約7割が世界の闇市場へ流れているという。
 ハマスは10月7日に奇襲攻撃したのだが、攻撃の準備に1年程度は必要だろう。その間、イスラエルの情報機関が察知できなかったのなら、大変な失態だ。ガザを収容所化している壁には電子的な監視システムが設置され、人が近づけば警報がなるはずだが、そうしたことはなかったようだ。
 また、アメリカ政府はハマスの奇襲攻撃から数時間後、2隻の空母、ジェラルド・R・フォードとドワイト・D・アイゼンハワーを含む空母打撃群を地中海東部へ移動させたレバノンにいるヒズボラ、あるいはイランの軍事介入を牽制することが目的だとされているが、それほど早く艦隊を移動できたのは事前に攻撃を知っていたからではないかと考える人もいる。
 そもそもハマスの創設にはイスラエルが深く関係している。ハマスは1987年12月にシーク・アーメド・ヤシンがイスラム協会の軍事部門として創設した。イスラム協会が設立されたのは1976年。その前、1973年にはムジャマ・アル・イスラミヤ(イスラム・センター)が作られているが、いずれもシン・ベト(イスラエルの治安機関)の監視下で行われた。
 イスラエルは第3次中東戦争で占領地を拡大させた。その際、イスラム諸国は動きが鈍く、最も勇敢に戦ったのはヤセル・アラファトが率いるファタハだった。PLO(パレスチナ解放機構)はファタハが中心的な組織だ。そこでイスラエルはアラファトを失脚させようと必死になる。そのアラファトを抑え込むため、イスラエル政府はハマスを創設させたのだ。
 シーモア・ハーシュも書いているように、ベンヤミン・ネタニヤフは首相に返り咲いた2009年、PLOでなくハマスにパレスチナを支配させようとしている。そのためネヤニヤフはカタールと協定を結び、カタールはハマスの指導部へ数億ドルを送り始めたという。ところが今回、カタールはイスラエルを厳しく批判、敵対関係にある。
 アメリカのジョー・バイデン政権はウクライナでロシアに敗れた惨状から人びとの関心をパレスチナへ向けることに成功、ガザからパレスチナ人を一掃、さらにレバノンやシリアを占領して地中海東岸の天然ガスをイスラエルに独占させるという道筋がハマスの奇襲攻撃で見えたのだが、ガザに対する攻撃がそうした道筋を消した。
 ムーサ・アブ・マルズークが率いるハマスの代表団は10月26日、モスクワでロシアの政府要人と会談した。マルズークはロシアへ向かう前、ドーハでイランのバゲリ・カニ外務副大臣と会っている。そして10月29日、イランのエブラヒーム・ライシ大統領はイスラエルが「レッドライン」を越えたと宣言、またロシアのミハイル・ボグダノフ外務副大臣によると、近日中にパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長がモスクワを訪問してウラジミル・プーチン大統領と話し合うという。
 すでにレバノンとの国境周辺でイスラエル軍とヒズボラが戦闘を始まり、イラクではアメリカ軍基地だけでなく、シリア領内に不法駐留しているアメリカ軍も攻撃されている。イラン軍は軍事演習を始めた。
 ヒズボラ単独でもイスラエル全域を攻撃できる戦力があるが、イランが関与してくるとイスラエルだけでは対応できない。アメリカ軍が介入してくると、世界大戦へ発展する可能性があると懸念されている。さらに、イランはホルムズ海峡を封鎖できる。ガザに対するイスラエル軍の攻撃ではサウジアラビアもパレスチナ側につくはずで、中東から「親イスラエル国」へ石油が供給されなくなる事態も想定できる。
 ハマスの代表団がロシアを訪問する数日前、プーチン大統領がロシア軍参謀総長のヴァレリー・ゲラシモフと会談するため、ロシア軍の南部軍司令部を訪れた。原子力潜水艦から射程5500キロの弾道ミサイルを発射したこと、カムチャッカから射程1万2000キロの弾道ミサイルを発射したこと、TU-95爆撃機から射程5500キロの巡航ミサイルを発射したことについて、ゲラシモフはプーチンに報告したようだ。アメリカに対する報復攻撃のテストだったと見られている