2023年10月16日月曜日

イスラエルはガザへの軍事侵攻を延期 /イスラエルが兵糧攻めを宣言

 イスラエル軍は悪天候を理由にしてガザへの地上部隊投入を延期すると語ったようですが、悪天候が延期の理由なのかは不明です。イランの外相はすでにイラク、シリア、レバノン、そしてヒズボラの指導者を訪問し、戦争を踏まえた「起こりうる結果」と「とるべき立場」について話し合ったということです。イスラエル軍の地上部隊は、2006年7月から9月にかけてレバノンへ侵攻した際にはヒズボラに敗北しています。
 ガザでの戦闘が続いた場合、イランは軍事介入すると国連を通じてイスラエルに伝えたとも報道されています。何とか侵攻への抑止力が働いて欲しいものです。

 イスラエルの攻撃を支援するため、米国はガザ沖に空母巡洋艦駆逐艦4隻を派遣することを決め、英国も地中海東部に哨戒機、偵察機、艦船2隻を派遣すると発表しました。直接的には海上封鎖が目的ですが、これまでと同様にイスラエルの肩を持つことを世界に対して宣言するものです。岸田首相は早速ハマスの攻撃を非難する談話を発表しています。
 
 ロシアのプーチン大統領はキルギスでの記者会見で、イスラエルのガザに対する攻撃を第二次世界大戦におけるドイツ軍の「レニングラード包囲戦に準え、「容認できない」と非難しました。1941年9月から44年1月にかけて行われた包囲戦で餓死したり行方不明になったソ連人は100万人を超したと言われています
 櫻井ジャーナルの2つの記事を紹介します。
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予想以上の逆風のためか、イスラエルはガザへの軍事侵攻を延期 
                         櫻井ジャーナル 2023.10.16
 イスラエル軍は悪天候を理由にしてガザへの地上部隊投入を延期すると伝えられている。地上戦が容易でないことはイスラエルも熟知しているはずだ。
 2006年7月から9月にかけてイスラエル軍の地上部隊がレバノンへ侵攻した際、ヒズボラに敗北イスラエルが誇る「メルカバ4」戦車も破壊されている。ガザにいるハマスとヒズボラでは戦力が違うものの、ハマスは地下に軍事施設を建設、イスラエル軍の侵攻に備えているはずだ。そこで空からの攻撃が主体にならざるをえない。
 地下施設を破壊するため、イスラエル軍はGBU-43/Bを使う可能性がある。この爆弾をアメリカ軍は2017年4月にアフガニスタンでダーイッシュの司令部と思われる場所に投下したという。
 強制収容所のような地域に押し込められ、殺されているパレスチナ人を「国際社会」はこれまで助けようとしなかった。イスラム世界の中にもパレスチナ人を見捨てた国がある。そのパレスチナ人を今回の戦闘は表に出した。

 イスラエル軍はヒズボラに対する攻撃も行ったが、そのヒズボラと関係の深いイランもガザへの攻撃を止めるよう呼びかけている。イランの外相はすでにイラク、シリア、レバノンを訪問し、ヒズボラの指導者サイエド・ハッサン・ナスラッラーやレバノンの高官と会談、戦争を踏まえた「起こりうる結果」と「とるべき立場」について話し合ったとされている。イスラエルの要請もあり、ハマスに資金を提供してきたカタールもイラン外相は訪問、そこでハマスのイスマイル・ハニェと会ったとも伝えられている。
 ヒズボラが戦闘に参加した場合、イスラエルやアメリカは厳しい状況に陥るこの戦闘組織は精密誘導ミサイルを含む約15万発のロケット弾やミサイルを保有、イスラエルのどこでも攻撃できる。また数千人の戦闘慣れした兵士が存在、様々な種類の軍事用ドローンを保有している。ビズボラはレバノンを拠点にしているが、そのレバノンの外相もパレスチナ人との連帯を表明した。
 イスラエル軍の地上部隊がガザへ軍事侵攻した場合、ビズボラが戦闘に参加、イスラエルも戦場になる可能性がある。ガザでの戦闘が続いた場合、イランは軍事介入すると国連を通じてイスラエルに伝えたとも報道されている
 パレスチナからアラブ人を追い出すことをシオニストはイスラエルを「建国」する前から計画していたはずだが、完全には追い出すことができず、戦争を仕掛けて領土を拡大してきた。

 今回はガザから約100万人のアラブ系住民を追い出し、難民にするつもりのようだが、そのひとつの理由は地中海東部、エジプトからギリシャにかけての海域で見つかった天然ガス田だろう。この海域には9兆8000億立方メートルの天然ガスと34億バーレルの原油が眠っている。ガザ沖の天然ガスを手に入れるためにはガザを乗っ取らなければならない
 イスラエル北部で推定埋蔵量約4500億立方メートルの大規模なガス田を発見したとノーブル・エナジーが発表したのは2010年。ビル・クリントン元米大統領はノーブル・エナジーのロビイストだった。
 ここで採掘される天然ガスや石油のマーケットはヨーロッパが想定される。その強力なライバルになるはずだったロシア産の天然ガスはウクライナでのクーデター、そしてノードストリームとノードストリーム2の爆破で排除された。
 イスラエル軍によるガザへの攻撃を止めるため、ロシア軍がイスラエルを海上封鎖する可能性もあるのだが、その前にアメリカ軍はガザ沖に空母ジェラルド・R・フォードを中心とする艦隊を派遣したが、さらに空母ドワイト・D・アイゼンハワーを中心とする艦隊もガザ沖に向かわせた。


パレスチナ人に対する残虐行為を長年続けてきたイスラエルが兵糧攻め宣言
                          櫻井ジャーナル 2023.10.14
 ロシアのウラジミル・プーチン大統領はキルギスでの記者会見で、イスラエルのガザに対する攻撃を第二次世界大戦におけるドイツ軍のレニングラード封鎖に準え、「容認できない」と非難した。「レニングラード包囲戦」の際、プーチンの2歳になる兄が死んでいる。
 この包囲戦は1941年9月から44年1月にかけて行われ、アドルフ・ヒトラーはレニングラード市民を餓死させると宣言していた。その包囲戦で死亡したり行方不明になったソ連人は100万人を超したとも言われている。
 イスラエルのヨアブ・ギャラント国防相はガザの「完全包囲」を命じたと語った。「電気も、食料も、燃料も、何もかもが封鎖される」としている。レニングラードのような兵糧攻めを行うという宣言だ。
 兵糧攻めは最も残虐な戦術だと言われているが、イスラエルは化学兵器の一種である白リン弾も使っている。そうしたことを「正当化」するため、ギャラントはパレスチナ人を「人間獣」だと表現した。ベンヤミン・ネタニヤフ政府は完全にナチス化している。
 そうしたイスラエルの攻撃を支援するため、アメリカのジョー・バイデン政権はガザ沖に空母ジェラルド・R・フォード、巡洋艦ノルマンディー、駆逐艦トーマス・ハドナー、ラマージュ、カーニー、ルーズベルトを派遣することを決定した。イギリス政府もイスラエルを支援するため、地中海東部に哨戒機、偵察機、艦船2隻を派遣すると発表した。海上封鎖が目的だ。

 今回の軍事衝突をプーチン大統領はドイツ軍のレニングラード封鎖に準えた。世界は勿論、アメリカ国内でも孤立しつつあるジョー・バイデン政権のネオコンは計画を実現するために強行突破を図るしかない。2001年9月11日の直前と似た状況だ。
イスラエルの国連大使は10月8日に安全保障理事会で「これはイスラエルの9/11だ」と演説、アメリカの アントニー・ブリンケン国務長官はハマスの攻撃について「9/11の 10回分に相当する」と主張した。
 ジョージ・W・ブッシュ政権のネオコンは9/11を利用して国内の収容所化を一気に進め、国外では侵略戦争を本格化させたが、ブッシュ政権の戦略は2000年にPNAC(新しいアメリカの世紀プロジェクト)が発表した『アメリカ国防の再構築』という報告書に基づいている。その報告書がベースにしたのは1992年2月に国防総省の「DPG(国防計画指針)草案」という形でネオコンが作成した世界制覇計画、通称「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」だ。