2023年10月27日金曜日

27- 岡真理はXで発信を イスラエルの大虐殺とレイシズムに反対の声を上げない左翼リベラル

 26日夜、イスラエルの戦車隊がガザ北部に侵入しました。これは地上侵攻の準備と見られています。ガザでは空爆によって既に7000人超の人命が失われ、このうち約3000人が子どもです。
 世に倦む日々氏が25日、掲題の記事を出しました。Xとは旧名ツイートのことで、岡真理氏はそれによって大々的に世の中に発信して欲しいという願いです。
 そしてイスラエルによるガザの大虐殺、民族浄化に対して、日本では厳しい批判が起きていないことに対する渾身の告発です。

 世に倦む日々氏は、20日に京都大学で行われた岡真理氏による緊急学習会ガザとはなにか」の動画によって受けた強烈なショックを語っています。
 講演の内容はIWJによって①~④編の動画(全2時間44分)で紹介されています。『岡真理 ガザとはなにか』で検索すればアクセスできます。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
岡真理はXで発信を - イスラエルの大虐殺とレイシズムに反対の声を上げない左翼リベラル
                       世に倦む日日 2023年10月25日
岡真理の『緊急学習会 ガザとは何か』と題した講演がネットに上がっている。10/20 に京大で行われた講演を収録して公開した動画だ。ほぼ同じ内容の講演が『ガザを知る緊急セミナー』と題して 10/23 に早大戸山でも行われていて、多くの視聴者が参加して盛況だったようだ。10/20 の動画を見た。全体が2時間44分と長く、見ようかどうしようか若干迷った。岡真理といえば有名なフェミニストで、その方面での評価や第一印象からも躊躇を覚えたのは事実である。が、動画を見始めると、最後まで中断することなく、退屈を全く覚えず、興奮ばかりで見終わる次第となった。正直な感想だ。内容がいい。過不足ない。目の前で起きているガザの惨劇について、実に当を得た標準的知識が提供されている。完璧と言える教育コンテンツに仕上がっiている。

いずれ、この講演は一冊の本になって出版される予感がする。客観的に見たとき - 称賛過剰かもしれないが - ここまでの説得的なメッセージとデータを、コンパクトにタイムリーに、中身濃く整理して投擲できる論者は世界にも多くないだろう。この問題の解説として世界的な佳作と評価でき、国連の関連委員会に呼ばれて専門家として登壇するに十分だ。最大の誉め言葉を与えるとすれば、「日本のサイード⇒エドワード・サイード、パレスチナ系米人の文学研究者」の出現と言える。何にも忖度していない。真実を射抜く視線と表現に曇りと歪みがなく、科学的に正しい態度が貫かれている。真実の歴史が誤りなく整理・説明されていて、真実を歪める不当で佞悪な政治的恣意が、渾身の怒りと共に暴露し告発されている。見事であり、サイード的だと言える。人文社会科学者はこうでなければならない。お手本の労作だ。

せひ、今回の岡真理の秀逸な講演を、韓国語に、中国語に、ベトナム語に、アラビア語に、英語に翻訳し、アジア諸国と世界中の人々に聴いてもらいたい。感動と良質な知見を与えるだろうし、日本人の名誉を守ることができる。そう思う。動画の視聴は期待した以上の収穫と感銘があった。見る前はもっと平板なものかと思った。日本の現在のアカデミーらしい、上っ面を撫でただけの、マイノリティ論とジェンダー論を振りかざしただけの、文科省に媚を売って浅薄なリベラル左翼の消費を満足させるだけの、中立を演出し保身して面妖な言葉を選んだだけの、高橋和夫や錦田愛子と似たり寄ったりの言説だと想定していた。そうではなかった。まさに、私が求める知的内容と知識人の主張がそこにあった。数時間後の死を覚悟して境界壁を突破したハマス戦闘員の勇気を讃えていた。

それは言ってもらいたいことだった。専門家による果敢な熱の籠った代弁があった。イスラエルの「情報戦」の内実と真相も伝え、ガザからの発信を無力化する狡猾なカウンターの術策を暴露していた。イスラエルの「封鎖」を暴力だと正当に定義していた。今回、ハマスの襲撃を受けたイスラエル市民の女性が、ハマス戦闘員の紳士的対応とイスラエル軍の自国民への残虐行為を証言した(イスラエル公共放送の)報道も紹介され、イスラエルのプロパガンダの悪辣な手口が明らかにされていた。ジェノサイド条約の紹介もあり、国際法と歴史過程の説明も十分で、テレビで流れている情報が噴飯すぎて消し飛んでしまう。ガザの下水の汚染の現状の深刻さや、それに伴う感染症の危機も訴えられていた。境界壁に向かって突進して、イスラエル軍に撃たれて死ぬ若者の自殺の形態と選択には胸が詰まった

不思議に思うのは、TBSの報道1930に岡真理がコメンテーターとして出演しないことだ。何故だろう。10/11 の放送回には重信メイが登場してイスラエル大使から抗議が炸裂し、右翼がTBSと重信メイを袋叩きにする場面が現出した。10/12 のXトレンド欄とヤフー検索欄はこの政治リンチの攻勢で埋まった。岡真理を出演させておけば、このような事態は発生しなかったはずだ。岡真理はジェンダー論の重鎮であり、アカデミーの正統幹部であり、実績と名声のある女性研究者という立場である。すなわち、政府とアカデミーにとって「無条件にリスペクトするグレートな学者」に他ならない。比喩すれば、額の上に水戸黄門の印籠を掲げて歩いているようなシンボル的存在で、その威光の前に誰も手出しできない。時代の思潮のメインストリームの権威であり、たとえ多数派の右翼でも簡単に非難や罵倒などできない。

どれほど、テレビでの彼女の発言内容がアメリカにとって不都合でも、SDGsと欧米リベラル主義のイデオロギーで日本を改造し一色化しようとするCIA(NED)からすれば、重信メイと同列ではない。安易に叩いて潰せない相手だ。であれば、松原耕二と堤伸輔は、重信メイではなく岡真理をゲストに呼ぶべきだっただろう。深察するなら、おそらく岡真理ではあまりに説得力が強烈すぎ、日本の世論が一気にパレスチナ寄りに触れる可能性があり、また、堤伸輔程度の知識では到底太刀打ちできる相手ではないため、彼女の起用を避けたのだろう。NHKも無論である。マスコミは、忖度せずに正論をストレートに言う知識人の岡真理を出せない。ということで、残念ながらテレビで岡真理の議論を聞くことができない。であれば、あとはネットで情報機会を作るしかなく、ネットで岡真理の解説と主張を拡散するしかない

だが、これほど価値があると思われる岡真理の言説は、なぜか意外にもネットで広く拡散されておらず、十分に周知されていない。これこそ不思議中の不思議の問題だ。現在、ガザの支援運動の中心で動いているのは杉原浩司で、彼のXアカウントが準ポータル⇒入口案内の役目を果たしている。日本各地での抗議行動やセミナー開催を告知・案内し、重要なメッセージや世界の動きをよく中継・配信している。精力的に動いているが、閲覧数は少なく、十分で満足なインフル―エンスを達成できていない。Xのフォロワー数は1万。私は誰もフォローしてないので、こうしたネット環境の政治影響力の構造と事情に疎いのだけれど、一般に左翼リベラルが時事の言論のトレンドや勢力バランスを観察する上で参考にするのは、内田樹のXアカウントだと思われる。フォロワー数26.8万人。フォロワー数22.9万人の志位和夫もその一人である。

その内田樹のXタイムラインを見ると、実はガザ問題について全く本人の言及がない点に気づく。山崎雅弘の発言を拾って載せている程度で、本人がガザ問題に積極的な関心がない事実が分かる。明らかに目を背けた態度を示している。毎日毎日、人口密集地に住む無抵抗の民間人に白リン弾が降り注がれ、最新鋭の高性能ミサイルが絶え間なく撃ち込まれ、世界注視の中で、殺戮ショーのように子どもが一日に180人殺されているというのに、内田樹は関心を示さず言葉を発しない。本当なら、岡真理の講演を紹介し、左翼の大衆に推薦するべきだろう。岡真理の講演をエンドース⇒裏書保証して拡散するのが内田樹の役目だと思われる。知らない同士でもないに違いない。そうした権威様のリアクションがあれば、今よりは岡真理の講演が注目され、メッセージに共感する者が増え、この国の世論やマスコミを動かす契機になるに違いない。

もう一つ、関連してネットで発見した対照的な事実を報告したい。リテラと長周新聞である。どちらも名うての左翼系ネットメディアだ。リテラをご覧いただきたい。10/7 のハマス侵攻から2週間半の間に2本の記事が掲載されている。ガザ問題への言及はない。(私が「しばき隊メディア」と批判する)リテラなる媒体は、基本的に国内政治にフォーカスする傾向が強く、日本共産党系(しばき隊系)の問題意識で編集されている性格が強い。国際政治については関心が薄い。それは理解できるが、この2週間ほど、世界の市民は何を見て何に釘づけられていたのか。世界中が視線を集中していた事件は何だったのか。それを考えると、あまりにリテラの行動は不自然で非常識だ。ジャーナリズムの活動体失格だろう。一方、長周新聞の方は、10/8以降、9本のガザ関係の記事を立て、どれもマスコミでは聞けない正論の報道や解説を並べている

岡真理は、講演の中で、この暴力と惨劇に「人道危機」という言葉を当てるのは、欺瞞でゴマカシであり不当だと言っていた。私も同感だ。テレビ報道が何度も言い、この問題を定義づける「人道危機」という、いわば国連官僚用語に猛烈な内心の抵抗を覚える。この言葉は真実を伝えておらず、むしろ隠蔽している。イスラエルの異常な犯罪を意識させない言説機能を果たしている。そんな軽いもんじゃない。行われているのは、まさにナチスのユダヤ人虐殺の21世紀版であり、とてつもないレイシズムの暴力であり、ヘイト(民族憎悪)を動機とし信念とした、ヘイトを使命感とし正当性の根拠とした悪魔のジェノサイドだ。岡真理の指摘のとおりだ。そこで言いたい。日本の左翼は、口を開けば、二言目にはヘイトヘイトと言い、レイシズムレイシズムと言い、専売特許の主張にしてきたではないか。

日本の左翼リベラルの、君たちの「ヘイト」と「レイシズム」はどこへ行ったのだ。目の前のガザの現実はその凄絶な実態ではないのか。しばき隊左翼(日本共産党)は、なぜこの問題をヘイトとレイシズムの問題として措定し糾弾しないのか。日本の今の右翼の在日へのヘイトとレイシズムなど、イスラエルのパレスチナに対するそれと比較すれば、数十分の一の質量と被害のレベルに私には見える。敢言すればプロレスのショーのようなもので、しばき隊左翼の立場的優越性を世間にアピールしパフォーマンスする一種の政治機会にすぎない。日本語の「ヘイト」と「レイシズム」は、そうした軽い政治言語になっている。しばき隊の左翼利権を保障し、アカデミーやマスコミやネットでの特権的地位を担保する、先制的固定的な立場優位性を維持するキーワードになっている。

この問題を私はずっと前から論及し批判してきたが、今回のガザの問題を受けて、いよいよ日本の左翼の欺瞞が明瞭になった感を禁じ得ない。具体的に言おう。今年の関東大震災100年の折、中心的な話題になったのは福田村事件であり、朝鮮人大虐殺の問題だった。安倍晋三が死んで消えた経緯と、アメリカと西側による日本の思想改造(SDGs洗脳プロジェクト)の一環だと推察される。また、アメリカ(CIAとエマニュエル)が、日本と韓国を必死で接着させようと試み、そのイデオロギー的教宣材料として、関東大震災の朝鮮人大虐殺の歴史認識を持ってきたように思われる。悪いことではないが、魂が籠っておらず、日本の多数勢力である右翼は面従腹背だろう。一見、ヘイトとレイシズムを悪とする倫理教育が丹念に実施されたかに見えたが、このガザの問題に直面して、その概念を応用する日本人はどこにもいない。誰も言わない。言葉は消えている。

あれほど福田村事件の反省と教訓を言い、民族差別の悪が説諭され、マスコミ報道で教育されながら、なぜ、われわれはイスラエルのパレスチナに対するレイシズムの暴力には無言なのか左翼は黙っているのか。レイシズムの語が発されないのか。以上、ずいぶん脱線してしまった。この稿の大事な結論である提案の訴えが最後になった。岡真理は、どうしてXアカウントを自ら立ち上げて発信を試みないのだろう。今立ち上げれば、数万のフォロワーを瞬時に獲得し、個別ポストの閲覧数も万単位となり、巨大なインフル―エンス⇒影響とモメンタム⇒推進力を獲得できる展開は疑いない。ネット言論の台風の目となり、ガザ問題の左派の標準ポータルとして確立するはずだ。マスコミも岡真理をテレビ出演させざるを得なくなり、アメリカに忖度するお茶濁しの面々(田中、高橋、錦田)は消えてなくなる。岡真理にはその行動が必要だと思う。政治を、世論を動かさないといけないのだから。

ビジビリティ⇒可視化を上げて欲しい。