2023年2月27日月曜日

反戦 黙らない 岸田大軍拡反対パレード 東京・渋谷(しんぶん赤旗)

 25日、「反戦行進0225NO WAR MARCH」と題したパレードが行われました。
 岸田大軍拡反対・ウクライナ侵略の収束を目指し、アパレルや音楽関係者、研究者をはじめ幅広い市民有志でつくる実行委員会が呼びかけました。
 行進の様子は下記の動画でご覧になれます(行進は動画の22分過ぎからスタート)。
    動画: https://youtu.be/weQSCj3f6cA  (1:42:26)
          (ユーチューブ TAKASHI MANABE) 
    お知らせ
  都合により28日は記事の更新が出来ません。ご了承ください。
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反戦 黙らない 岸田大軍拡反対 市民がパレード 東京・渋谷
                        しんぶん赤旗 2023年2月26日
 「反戦行進0225/NO WAR MARCH」と題し、アパレルや音楽関係者、研究者をはじめ幅広い市民有志でつくる実行委員会が呼びかけました。


(写真)「戦争反対」「軍事費増やすな」などとコールしながら行進する人たち=25日、東京都渋谷区


 実行委員のひとりで、ライブハウス「LIVE HAUS」店長のスガナミユウさんは、ロシアによるウクライナ侵略から1年が過ぎ、多くの人が物価高騰などに苦しむなか、「軍事費の大幅増額など、戦争へ向けた準備が進められています。そうした政治に反対する、市民の声を大きく可視化させたい」と述べました。

 若い世代の参加者が目立ち、東京都杉並区の男性(31)は、安保3文書など大軍拡へと突き進む岸田政権に不安を感じてパレードに来たと話し、「私の声は小さいかもしれないが、国民の命と暮らしを無視するなと表明したい」と話しました。
 東京都立川市に住む大学3年生(21)は、ロシアによるウクライナ侵略が終わらないことに胸を痛めていると話し、「黙っていたら、日本でも政治家によって戦争が引き起こされてしまうかもしれない。私は戦争に反対です」と語りました。

ビキニも第五福竜丸の被ばくも2・26事件も忘れてはならない(澤藤統一郎氏)。

 かつての2・26事件から3・1ビキニデーにつながるこの時期に、澤藤統一郎氏が掲題のブログを発表しました。

 今の大学生の中には、日本軍による真珠湾先制攻撃、太平洋戦争中の米軍B29重爆撃機による日本爆撃、そして戦死を忌避させないために戦死者を靖国神社に「英霊」として祀るという「仕掛け」等について全く知らない人たちが増えていて、中には、『英霊』『真珠湾』『B29』について、『英霊とは英国の幽霊」「『真珠湾とは、伊勢の養殖真珠産地」「『B29』とは特別に濃い鉛筆」と認識している学生もいたということです。
 5・15事件・2・26事件などの戦前の過ちからの教訓もすっかり忘れられ、69年前にビキニ環礁で行われた水爆実験(米国)で第五福竜丸ほか多くの漁船の乗組員が被爆した事件の記憶も微かになりました。
 これでは大切な戦争体験の承継できません。ビキニ環礁での水爆実験はそのまま核兵器・核戦争の原点であるとともに、原発事故による被ばくの原点でもあります。
 尤も、これらは何も若い人たちだけの問題ではありません。政治家はいまや戦後派だけになりました。日本が、太平洋戦争以前から『支那事変』と称して中国に対して数々の加害を続けてきた歴史を思えば、現政権が公然と中国敵視の発言をするのは理解に苦しむことです。
 日本は「戦争狂」の時代に向かっています
    (文中の赤紫色強調部分は原文に拠っています)
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ビキニも第五福竜丸の被ばくも2・26事件も、忘れてはならない。
                   澤藤統一郎の憲法日記 2023年2月26日
 昨日、公益財団法人第五福竜丸平和協会の役員懇談会。来年2024年は、ビキニ事件・第五福竜丸被ばくから70年になる。その翌々年2026年は、展示館開館50周年。どのような基本理念で、どのような企画をなすべきか。「ビキニ事件を直接知らない世代が圧倒的多数となる時代に対応する取り組み」についてのフリートーキング。
 最初に、奥山修平代表理事から語られたのが、「核兵器の使用も原発への攻撃も、今差し迫った問題となっており、終末時計が1分30秒前まで進行している現状。一方、ビキニ事件を直接には知らない世代が圧倒的多数となっている。こんな時代の節目の時に、どのような事業をなすべきか率直にご意見を伺いたい」という問いかけ。
 この冒頭挨拶の中に、こんなエピソードが添えられた。「ある大学の教員が、学生に三つのキーワードでの作文を求めた。『英霊』『真珠湾』『B29』もちろん日本の戦争への加害と被害の認識を問うたものだが、期待した反応は少なかったという。中には、『英霊とは英国の幽霊』『真珠湾とは、伊勢の養殖真珠産地』『B29とは特別に濃い鉛筆』というコメントもあって、愕然としたという。大切な戦争体験の承継ができていない。ビキニ事件も、記憶を失ってはならないし、失わされてはならない」
 この冒頭発言に続く提案として、「映像世代の若者をターゲットに、動画やユーチューブサイトの活用を」「若者には、アニメが訴える力を持っている。自主作成援助の企画を」「平和の折り鶴という固定観念を打ち破るドラゴンの折り紙はできないか」「来年は辰年、ドラゴンのオブジェに、ウロコにたくさんのメッセージを書いてもらう参加型イベントはどうだろうか」「フィールドワークの充実を」と意見が飛び交う。いちいちもっともで、私なんぞが口出しのしょうもない。
 ところで、本日は2月26日。1936年の今日、雪の降る東京で陸軍の一部がクーデターを起こしている。翌2月27日「戒厳」が宣せられ、同月29日に鎮圧されている。この事件で陸軍の統制派が権力を掌握して軍部独裁を確立し、国家総動員法(38年)から大政翼賛会(40年)、そして太平洋戦争(41年)へと転げ落ちていくことになる。
 5・15事件も、2・26事件も、しっかりと記憶を新たにし、教訓を噛みしめておかねばならない。若者が『英霊』も『パールハーバー』も『B29』もよく分からないというのでは、戦前の過ちを繰り返さぬような社会を作れるのか、心もとない。2・26事件では、戒厳令の危険を知ってもらわねばならない。
 戒厳令問題は、過去の話ではない。自民党改憲草案(2012年4月27日)の緊急事態条項(「第9章」98条・99条)には、国家緊急権発動の一態様として「緊急事態宣言」が書き込まれている。戦争・内乱・大災害等の非常時に、憲法を一時停止して政権の専横を可能とするもの。自民党は、明文会見によって「戒厳令」の復活をたくらんでいるのだ。
 大江志乃夫「戒厳令」(岩波新書・1978年)は、今読み直されるべき書である。戒厳令についての詳細を理解し、自民党改憲案の危険に警鐘を鳴らすために。
 この書では、2・26事件の顛末を次のとおり、簡明にまとめている。

「いわゆる皇道派に属する青年将校が部隊をひきいて反乱を起こした「政治的非常事変勃発」である。反乱軍は、首相官邸に岡田啓介首相を襲撃岡田首相は官邸内にかくれ、翌日脱出、内大臣斎藤実、大蔵大臣高橋是清、教育総監陸軍大将渡辺錠太郎を殺害し、侍従長鈴木貫太郎に重傷を負わせ、警視庁、陸軍省を含む地区一帯を占領した。反乱将校らは、「国体の擁護開顕」を要求して新内閣樹立などをめぐり、陸軍上層部と折衝をかさねたが、この間、2月27日に行政戒厳が宣告され、出動部隊、占拠部隊、反抗部隊、反乱軍などと呼び名が変化したすえ、反乱鎮圧の奉勅命令が発せられるに及んで、2月29日、下士官兵の大部分が原隊に復帰し、将校ら幹部は逮捕され、反乱は終息した。事件の処理のために、軍法会議法における特設の臨時軍法会議である東京陸軍軍法会議が設置され、事件関係者を管轄することになった。判決の結果、民間人北一輝、西田税を含む死刑19人(ほかに野中、河野寿両大尉が自決以下、禁錮刑多数という大量の重刑者を出した。」

 この書の冒頭に、2・26事件を起こした反乱青年将校たちが自分たちの政治綱領として信ずることの厚かった『日本改造法案大綱』の第一条が紹介されている。

「天皇ハ全日本国民ト共二国家改造ノ根基ヲ定メンガ為ニ、天皇大権ノ発動ニヨリテ三年間憲法ヲ停止シ両院ヲ解散シ、全国ニ戒厳令ヲ布ク」

 これは、初めてクーデターの手段としての戒厳を公然と主張したものだという。天皇親政を実現するために、憲法を停止する。具体的には、「貴衆の両院を解散し、全国に戒厳令を布く」というのだ。これが、皇道派青年将校が企図したクーデターだった。
 自民党改憲草案も読み較べておきたい。
 第99条1項 「緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。」
 緊急事態宣言下、内閣は国会を無視して独裁者として振る舞うことができる。国民は内閣のいうことを聞かねばならなくなる。内閣は、政令を作って「集会若クハ新聞雑誌広告等ノ時勢ニ妨害アリト認ムル者ヲ停止スルコト」ができる。もちろん、テレビの放送の停波など簡単なこと
 広島も長崎も、ビキニも第五福竜丸も、そして5・15も2・26も、忘れぬようにしよう。国民が忘れたと見るや、為政者は欺しにかかってくるのだから。 

書評『統一協会=勝共連合とは何か』 教義の虚偽性を分析 杉井静子氏

 統一協会の教祖・文鮮明は米国で脱税で刑務所に入り、北朝鮮では淫行の罪で実刑受けているということです。
 彼は自分をキリストと並ぶ「メシア」だと称したようですが、死後には何も起こっていません。これでは単に「自称」しただけということになるのではないでしょう。
 しんぶん赤旗に、1978年6月の東京・立川市議選で勝共連合と対峙た弁護士・杉井静子氏による 日隈威徳 著『統一協会=勝共連合とは何か』(新日本出版社・1800円)についての書評が載りました。
 短い記事ですが〝統一協会=勝共連合″の本質が良く分かります。
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書籍評論文
再読 日隈威徳 著『統一協会=勝共連合とは何か』
 教義の虚偽性を分析 反共謀略の実態暴く 杉井静子(=評者)
                       しんぶん赤旗 2023年2月26日
 本書は1984年9月に刊行された日限威徳著『勝共連合』に元赤旗記者柿田睦夫さん書き下ろしの解説を加えて、新装再刊されたものである。

政治との癒着
 統一協会の霊感商法等による被害の救済については、不十分ではあるが昨年末立法措置がされた。しかし政治との癒着、とりわけ自民党との組織的な癒着については、いまだ全容は未解明である。だからこそ本書は時宜を得ている。解説にあるように、綿密な取材と事実に基づいて統一協会=勝共連合の実態を暴いている。さらに宗教学者らしくその教義″のいかさまぶりを深く分析、諭じている
 本書で教祖文鮮明の反社会的な人間性、すなわち、アメリカで脱税で刑務所に入り、北朝鮮では淫行の罪で逮捕、実刑も受けていることを改めて教えられた
 評者は1978年6月の東京・立川市議選で勝共連合と対峙た。彼らは市内各所で日本共産党の演説を妨害し、投票日前日、反共謀略ピラを全戸配布しようとしたのだ。私たち弁護士は深夜でかかって裁判官を説得し、ビラ配布差し止め処分を勝ち取った。
 本書ではこうした謀略的な選挙妨害は1970年の京都府知事選から始まること、1960年代はじめKCIA(韓国中央情報部)に指導され、国際的な反共謀略集団に成長転化″した過程と、それが岸信介はじめ右翼政治家と深く関係していることが明らかにされている。

家族観の一致
 あからさまな選挙妨害は2000年代に入ると見えなくなるが、彼らは教科書攻撃、スパイ防止法制定促進等、地方議会決議をあげる運動を展開するようになる。それを通じて自民党や保守政治家を取り込む。そして選挙支援の運動員等を派遣し、その返礼として催しへの出席、挨拶、祝電、祝辞を取り付ける。政治との癒着の実態が解明されている。
 そ癒着の根っこには「家族観」の一致がある。鮮明の「血分け」で清められ、文に指名される集団結婚″。文夫婦を父母とする大家族。このゆがんだ家父長制度は自民党の改憲草案にも通ずる家族観である。そこに「同性婚反対」「夫婦別姓反対」等、保守的政治家との共通基盤があったことが分かる
 本書は「『勝共』とは、反平和、反民主、反主権、反人権、反理性の謂である」とし、「かれらとのたたかいは、民主主義と平和をまもり発展させるたたかいであり、それ故に、民族的、国民的な課題となっている」と結ぱれている。
 統一地方選を前にして彼らの正体を見破るための必読書と言える。

                          (すぎい・しずこ 弁護士)

27- 統一協会へ4回目の質問権行使 地方選前には解散請求はしないということ

 文科省は、統一協会への4回目の質問権行使に向けて、来週にも宗教法人審議会を開く方針です。文科省は3月下旬に回答についての審議会開催を検討しており、解散命令請求の可否について結論を出す時期は4月以降になる見通しで、統一地方選前に解散命令請求をすることはないだろうと見られています
 解散命令請求の可否がいまだに決まらないのは、地方選中に統一協会問題が争点になって自民党議員の選挙が不利になることや統一協会側からの応援が得られなくなることを避けるためです。
 全国弁連は当初から質問権を行使しなくとも裁判は維持できるという見解でした。それでも文科省は念のために質問するのだろうと思われていたのですが、延々と4回に及んでいまだに埒が明かないのでは、文科省による意図的な遅延策と思われても仕方がありません。
 「くろねこの短語」のブログを紹介します。
 併せてしんぶん赤旗の「きょうの潮流(23年2月26日)を紹介します。
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統一教会へ4回目の「報告徴収・質問権」行使・・気の長い話だ。ようするに、解散命令請求するつもりはないってことか!! & 衆参議員がトルコ地震にひとり5千円の義援金・・せこっ、ゼロがひとつもふたつも足りないだろう!!
                     くろねこの短語 2023年2月26日
 いったい何回「報告徴収・質問権」を行使すれば、統一教会(現世界平和統一家庭連合)の解散命令請求をするつもりなんだろう。なんと、来週にも4回目の「報告徴収・質問権」行使のための宗教法人審議会を開くんだとか。
 で、「教団からの回答の締め切りは3月中下旬」に設定して、「解散命令請求の可否について結論を出す時期は4月以降」になるってさ。
 いやあ、気の長い話だこと。そうこうしているうちに、統一教会問題なんか世間は忘れちまう、って思ってるんじゃないのかねえ。でなけりゃ、ここまで引き延ばす理由がわからない。
 実際に、統一教会がらみの報道は、確実に減ってますからね。あれだけ飛ばしていた日本テレビ『ミヤネ屋』もすっかりおとなしくなっちゃって、こういう状況こそ統一教会と自民党の思う壺ってなのだ。
 おそらく、統一地方選前に解散命令請求をすることはないだろう。そんなことしたら、改めて統一教会問題が争点になって、自民党の壺議員の当選は覚束なくなりますからね
 しかしまあ、朝日もこういう記事を無批判に垂れ流すようじゃだめだろう。こうした事実を朝日はどう捉えているのか・・・そういう視点が、朝日に限らずすべてのメディアに欠けてることが、この国のジャーナリズムが政権の広報に堕しているひとつのよ要因ってことなのだ。
 旧統一教会への解散命令請求、判断は4月以降に 文科省方針

(ツイッター↓)

小沢一郎(事務所)@ozawa_jimusho  午後1:05  2023年2月25日
結局、自民党と統一教会は簡単に絶縁なんてできないし、するつもりも毛頭無いということ。自民党政権の維持が第一の政治。国民の命や生活は後回し。全国で被害を拡大させても反省の欠片もない。「国民はニコニコ自民党を支持してくれるさ」と思われている。統一地方選は重要。
 旧統一教会への解散命令請求、判断は4月以降に 文科省方針

 最後に、チンケなニュースをひとつ。衆議院と参議院の議員がトルコ・シリア大地震支援のための義援金を送ることに決めたのはいいけれど、その額がなんとまあ5000円だってさ。
 なんともみみっちい話だ。ゼロがひとつもふたつも足りないだろう。日本の国会議員の報酬は世界でもトップクラスだってのに、このセコさは何なんだろうね。ちなみに、国会議員全員で、その額は350万円前後というから、情けないったらありゃあしない。。
 こういう時こそ「売名」でいいからドンと義援金送るくらいの見栄を張れないものかねえ。杉良太郎の爪の垢でも煎じて飲んでみやがれ。
 衆参議員がトルコ地震義援金、歳費から5000円ずつ寄付へ
                                (後 略)

きょうの潮流
                       しんぶん赤旗 2023年2月26日)
 生まれながらにして「神の子」といわれてきたといいます。信者同士の集団結婚で組み合わされた両親から生まれた「祝福2世」。しかし周りとはかけ離れた環境や、洗脳のもとで次第に心はぼろぼろに
 統一協会2世だった小川さゆりさんが自身の体験を『みんなの宗教2世問題』のなかで語っています。とくに精神の危機をむかえるくだりはすさまじい。韓国の修練会で錯乱状態になって麻酔で眠らされたり、パニック発作が起きて毎日死にたいと考えたり…
 家を出ても染みついた教えが抜けず苦しむ日々。親は安倍元首相の銃撃事件についても容疑者のことをいっさい認めず、じつはスナイパーが撃った、共産党のもくろみだと陰謀論を信じ込んでいるそうです
 詐欺や高額献金で生活を壊し、家族を崩壊に追い込むカルト集団の被害は今も。しかし文科省は解散命令の請求をずるずると引き延ばしています。4回目の質問権を行使する方針で解散請求の判断は4月以降にずれ込むとの見方もあります
 いまさら永岡文科相は実態の把握と証拠のつみ重ねを強調しますが、統一協会の活動の違法性は数々の裁判でも明らかに。いたずらに時間をかけるのは政権が統一地方選挙への影響をにらんでのことか
 もう被害者を出したくない。小川さんら声をあげた元信者やこの問題を追及してきた人たちはこうした悪質な団体を規制・解散させる法をつくるところまでいかないと、解決も終わりもないといいます。政治との癒着を断ち切るためにも。

2023年2月26日日曜日

ウクライナ侵略1年 食料供給に打撃 農業守ってこそ真の「国防」

 24日でロシアのウクライナ侵攻から1年となり、世界の食料・エネルギー事情にも大きな影響を及ぼしています。

 日本の食料自給率はカロリーベースで38%という低さですが、種やヒナはほぼ輸入という農産物が多いので、それを加味した実質的な自給率はコメ10%、野菜8%という壊滅的状況です。日本を痛めつけるには武器など不要で、食料さえ止めればいいというのが現実です。
 岸田首相は対中戦争を念頭に5年間で43兆円を投じる大軍拡を目指していますが、もしも対中戦争が起きれば、シーレーンは封鎖され日本に物が入ってこなくなるし、そもそも中国が日本への食料輸出を止めたら日本は終わりです。
 日本は米国に追随する中で、農業・牧畜をあまりにも軽視して来ました。この期に及んでも「コメは作るな」「牛乳は搾るな」「牛4万頭を殺せ。1頭殺せば15万円払う」と無責任な農業つぶしを続けています。
 「戦争ごっこ」しか念頭にない岸田首相は真の国防が何なのかを分かっていません。
 しんぶん赤旗日曜版が、鈴木宣弘・東京大学大学院教授に話を聞きました
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ウクライナ侵略1年 食料供給に打撃 農業守ってこそ真の「国防」
 コメの実質自給率10%なのに「作るな」と迫る日本政府 
  軍拡一色安全保障の基本と真逆 東京大学大学院教授 鈴木宣弘さん
                   しんぶん赤旗日曜版 2023年2月26日号
   すずき・のぶひろ
    1958年生まれ。農林水産省勤務、九州大学教授などを経て、東京大学大学院農学
    生命科学研究科教授『世界で最初に飢えるのは日本『農業消滅』『食の戦争一
    米国の罠に落ちる日本など著書多数
 24日で勃発から1年となる□シアによるウクライナ侵略戦争は世界の食料・エネルギー問題にも大きな影響を及ぼしています。ここで日本こそ切実な教訓を学ぶべきだと説く鈴木宣弘・東京大学大学院教授に話を聞きました。    坂口明記者

 「世界の穀倉地帯」であるウクライナでの戦争が長引き、小麦やトウモロコシが種もまけず輸送もできない事態になりました。同国から直接輸入するアフリカ諸国などが大打撃を受けています。

相次ぐ輸出規制
 日本のウクライナからの輸入は限定的です。しかしウクライナが輸出できなくなると、日本が食料を輸入してきたほかの諸国に需要が集中し、食料の争奪戦が始まってしまいました。特に人口14億人の中国が高額で大量に買い付け、穀物も肉も魚も牧草も日本が買い負ける状況が強まっています
 そのもとで小麦の生産が世界2位のインドが、自国民を守るために輸出をやめています。そういう防衛的な輸出規制をする国が30力国ぐらいになっています。これがさらに増えると極めて重大です。
 日本は肥料用のカリウムをロシアやベラルーシに依存していましたが、両国は今「ロシアに敵対する日本には売らない」と言っています。食料や生産資材が武器として使われているのです。

種などほぽ輸入
 さらに「台湾有事」など起こってはいけませんが、もしそんなことになればシーレーン(海上交通路)は封鎖され、日本に物が入ってこなくなります。日本の食料自給率はカロリーベースで38%という低さです。ところが種やヒナはほぼ輸入という農産物が多く、それを計算に入れた実質的な自給率はコメ10%、野菜8%という壊滅的状況です()。日本を痛めつけるには武器など不要で、食料さえ止めればいいというのが現実です。
 不測の事態に国民の命を守るのが安全保障です。国内の食料を国民に、いつでも調達できるようにするのが、安全保障の基本中の基本です。ほかの国は全てそうしています。
 ところが日本では、なぜか、その根本が飛んでしまい、防衛費を43兆円に増やし「攻めていけばいいんだ」とか、むちゃくちゃな話になっています。トマホークなど使い物にならない米国の武器の在庫処分みたいなものに膨大な金を払えと言われています。
 そんなことに何十兆円も使うのなら、食料にこそしっかりと予算を付け、農家に頑張ってもらえるようにすべきです。ところが30兆円の補正予算を付けても、農家の赤字を直接的に補てんする予算はゼロです。それどころか政府は、この期に及んでも「コメは作るな」「牛乳は搾るな」「牛4万頭を殺せ。1頭殺せば15万円払う」と無責任な農業つぶしを続けています。

 

種と飼料の海外依存度も考慮した日本の実質的な食料自給率(%)

 

 

 

食料国産率

飼料・種自

食料自給率

 

 

 

(A)

給率(B)

(AXB)

 

 

コ  メ

97

10

10

 

 

野  菜

80

10

 

 

果  樹

38

10

 

 

牛乳・乳製品

61

42

26

 

 

牛  肉

36

26

 

 

豚  肉

50

12

 

 

鶏  卵

97

12

12

 

      2020年 鈴木信弘著『世界で最初に飢えるのは日本』に基づき作成

戦後政策の誤り米国の余剰処分場化
 こんなことになったのは戦後、「農産物を犠牲にし、食料は自動車などの輸出で得た金で外国から買えばいい」という政策が続いてきたからです。貿易自由化で小麦、トウモロコシ、大豆の国内生産が壊滅的打撃を受け、日本は米国の余剰農産物の処分場にされてしまいました。
 農水省が2006年に「食生活をコメ中心に見直すと食料自給率を63%まで上げられる」との試算を出したことがありますが、米国の怒りを恐れたからなのか封印されてしまいました。しかも「ミニマムアクセス」とかいって、日本より4割も高い米国のコメを無理やり買っています
 「日本は米軍に守ってもらっているから米国の言いなりにならなければ」と思考停止になっています。しかしもし「台湾有事」が起きれば米国は、日本の基地を使って日本を戦場にし、米本土に危害が及ばないようにすることは明白です。
 中国を敵視して武器をそろえても、中国が食料輸出を止めたら日本は終わりです。日本は東アジア米備蓄機構構)の設立を主導したことがあります。東アジア諸国がコメを備蓄し、緊急時に助け合う仕組みです。食料を通じてアジア諸国が仲良くし、平和を維持することができます。
 ウクライナ戦争に照らしても、軍拡でなく国内の食料と農業を守ることこそ真の「国防」であり、アジアの平和への道です。

)東アジア米備蓄機構構
 2012年に協定が発効した「ASEAN十3緊急米備蓄」(APTERR)。東南アジア諸国連合(ASEAN10カ国と日″中韓3カ国が参加。