2012年12月31日月曜日

トモダチ作戦の米軍人が 東電 に損害賠償の訴訟


東日本大震災後、救助活動を支援するトモダチ作戦で三陸沖に派遣された米原子力空母ロナルド・レーガンの乗組員8人が、東電から福島原発事故の影響が正確に伝えられなかったために被曝したとして、同社を相手に計11000万ドル(計約94億円)の損害賠償と、それとは別に将来の医療費支出に備えて1億ドル(約85億円)の基金創設を求める訴えを、カリフォルニア州サンディエゴの米連邦地裁に起こしました。 

原告は、東電や日本政府は低線量の被曝でもそれが健康を脅かすことや放射線が度環境中に放出されるとそれが遠くまで到達するという知識を持っていながら、原子炉が深刻なメルトダウンを起こし、高レベルの放射線が排出されていたことを正確に伝えなかったために被曝したとしています(26日付米紙ロシア・トゥデイ)

空母の乗組員は5,500人、トモダチ作戦に参加したメンバーは24,000人ということなので、単純に損害賠償請求額を比例計算すると、乗組員総数当たりでは約65千億円、トモダチ作戦総メンバー当たりでは約28兆2千億円という莫大な数字になります。 

日本が米軍に出動を頼んだわけではないし、まだ健康被害は出ていないのにあまりにも莫大な要求だ・・・というのが多くの日本人の感覚ではないでしょうか。
 これに関して元原子力安全委員会の専門委員をしておられた武田邦彦教授は、「どれくらい被曝したら病気になるのかということではなく、『被曝自体が損害である』という国際的合意が出来ているので、たとえ軍人であっても、国を守るという正当な目的以外で不当な損害を受けた場合は賠償を請求できる」としています。(28日付 武田邦彦ブログ「被曝のアメリカ兵の訴訟が意味するもの」

 当時内閣官房長官であった枝野氏は、国民に対して耳にタコができるほど繰り返し「『直ちには』健康に影響はない」と発表しました。同氏は弁護士でもあったので、当然国内で訴訟が起きたときのことを予想してそういう「時間限定」を付けた筈ですが、果たして通用するものなのでしょうか。その責任もあるので、いまこそしかるべき場に臨んで真剣に対峙して欲しいものです。 

 以下にスポーツニッポンの記事を紹介します。
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トモダチ作戦参加の米兵8人 東電に94億円賠償請求
スポーツニッポン 20121227 

 東日本大震災後、三陸沖に派遣された米原子力空母ロナルド・レーガンの乗組員8人が27日までに、東京電力福島第1原発事故の影響が正確に伝えられず被ばくし健康被害を受けたとして、同社を相手に計11000万ドル(計約94億円)の損害賠償を求める訴えをカリフォルニア州サンディエゴの米連邦地裁に起こした。米メディアが伝えた。 

 乗組員らは、米軍による被災地支援の「トモダチ作戦」で急派され、搭載機が発着する飛行甲板などで作業していた。東電によると、事故収束作業をめぐり、海外の裁判所で同社が訴えられたケースはないという。
 東電は「訴状が届いておらず、コメントは差し控えたい」としている。 

 訴えたのはロナルド・レーガン乗組員のリンゼイ・クーパーさん(階級不明)ら。米兵8人のほか、その家族1人が原告に加わっている可能性もあるという。
 原告側は、東電が米軍や市民に対し、事故で放出された放射性物質の危険などについて「事実と異なり、誤解を招く情報」を広めたと主張。米軍側は安全だと信じてトモダチ作戦を遂行したため、乗組員が被ばくし、がんのリスクが高まったなどとしている。
 米メディアによると、8人は実際の被害に対する金銭補償としてそれぞれ1000万ドルを請求。これとは別に、算定不能な精神的苦痛や再発防止に向けた抑止効果を狙った「懲罰的賠償」として、全員で合わせて3000万ドルを請求した。 

 トモダチ作戦は震災発生2日後の昨年313日から開始され、空母などを投入し支援物資を輸送するなどした。在日米海軍司令部(神奈川県横須賀市)は「こうした訴えがこれまでに起こされたという話を聞いたことはない」としている。 (共同)
 
 
 

日本はアメリカの駒だと


 30日の中国網日本語版にかなり辛口の日本批評が載りました。
曰く、米国は再びアジア太平洋地域の覇者になるために日本を利用しているだけだが、日本の側はそれを軍国主義に変貌するチャンスにしようとしている。だがその実、米国に首根っこを押さえられたままの現実にもがいている・・・と。 

 まことに身も蓋もない言い方ですが、それだけに他者に写る日本の姿が良く分かります。

以下に同記事を紹介します。
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米国のアジア回帰、日本は使い捨ての駒だ =中国報道
サーチナ 20121230 

尖閣諸島(中国名:釣魚島)の領有権をめぐる日中の対立は激化の一途をたどり、日中関係も冷え切ったままだ。日本の政治家の軽はずみな言動により、この問題はまったくクールダウンの兆しを見せない。中国網日本語版(チャイナネット)は米国のアジア回帰において、日本は使い捨ての駒だと論じた。以下は同記事より。
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だが、そのヒートアップを助長しているのは、米国政府が中立姿勢を強調しながらも、その実、日本に肩入れしていることが直接の原因のようだ。米国はアジア太平洋地域の覇者として返り咲くために、単に日本を利用しているに過ぎない。日本も軍国主義へと変貌できるチャンスとばかりに、この情勢を利用する。抜け目のない日本だが、その実、米国に首根っこを押さえられたままの現実にもがいている。 

■日本は米国の使い捨ての駒
米国は日本国内の軍事基地を通して、アジア太平洋地域に睨みを利かせるために、日米同盟を結んだに過ぎない。日本は地理的に都合がよかったのだ。長い歳月を経て、米国は東北アジア基地群、東南アジア基地群、グアム基地群、駐豪米軍基地群の4大基地群を要とするアジア太平洋地域の軍事基地体系を築き上げた。うちもっとも重要な基地群は東北アジア基地群で、そしてその主体は日本国内にある。

Joint Air-Sea Battle Concept (海と空の統合的な作戦構想)において、日本は2つの重要な任務を担う立場にある。1つ目は中国の軍備増強への対抗手段である。今後、可能な限り多くの兵士が配備されるだろう。

 2つ目は、反撃戦の際、米国海軍・空軍の前線基地となることである。ここ数年における日本国内の日米軍事施設の建設を見ると、日米両国がこれに乗じて、海、空、宇宙空間における戦闘力を強化しようとしているのが明らかである。つまり、米国のアジア太平洋地域における前衛部隊として日本が配置されたに過ぎない。必要ならば、米国は日本を使い捨てにすることもできるのだ。 

■在日米軍兵士の悪行
日本は米国本土から1万キロメートル以上離れているにもかかわらず、在日米軍兵士の数は数万人におよんでいる。日本政府にとって米軍は目障りな存在であるが、また頭の上がらない相手でもある。在日米軍を利用して、大日本帝国時代の軍事力を再び実現させることは多くの日本人の夢でもある。だが、沖縄県民にとって、県内に駐留する2万もの米軍兵士は憎しみの対象でしかない。もともと軍紀はゆるいうえに、「敗戦国」で駐留する兵士達のやりたい放題の犯罪が続出している。 

1990年-2006年の統計データによると、在日米軍兵士による犯罪事件は計1700件以上起こっている。うち、凶悪犯罪事件の数は116件におよんでいる。1952年-07年の統計データによると、在日米軍兵士による交通事故は計2万件以上も起きており、死亡した日本人の数は1027名におよぶ。米軍兵士のこうした悪行・犯罪に日本人は常に泣き寝入りを強いられてきた。その苦しみは日本人でなければ分からないものだ。 

■ステルス戦闘機F35の高騰
米国は「中国脅威論」を振りかざし、日本に対中懸念を植え付け、史上最高価格とされる戦闘機F35の市場開拓に成功した。この新鋭ステルス戦闘機F35の導入を巡って、米国が提示するその価格は高騰を続けたため、日本政府は当該戦闘機の導入を断念するかもしれないとまで表明したほどだ。

もっとも重要なことは、日本が戦闘機F35を航空自衛隊の次期主力戦闘機と見なしている事だ。これは日本の安全を守るためというよりも、中国やロシアの軍事力に対抗するためのものと解釈したほうがいい。 

先だって、中国が開発した2機目のステルス戦闘機「殲-31」の初テスト飛行成功のニュースに、日本が焦る姿は火を見るより明らかだ。米国の戦闘機F35交渉価格つり上げに、不本意とはいえ、どうやらその条件をのむしかなさそうだ。
(編集担当:米原裕子)
 
 

2012年12月30日日曜日

福島市に甲状腺検査のできる診療所が開設


暗いニュースが続いた中で、福島で明るい出来ごとがありました。
福島市で121日、児童の甲状腺検査をしてくれる「ふくしま共同診療所」が開設され診療を開始しました。院長は国立ガンセンター病院で放射線治療を担当していた医師です。

同診療所は、市民・労組・学生組織などが約4,000万円の募金活動を行って設立したもので、これまでわざわざ福島県外の病院まで行かないと児童の甲状腺の再検査・精密検査を受けることが出来ない、という事態がこれで解消されました。

児童の甲状腺検査の結果は、例えば「小さな結節やのう胞がありますが、2次検査の必要はありません」という風に知らされるだけで、保護者がそれ以上詳しいことを知ろうとすると、情報開示請求の手続きを取らされました。しかしそれによって開示されるものは「甲状腺エコー画像」の不鮮明なカーボンコピーなどで、再検査用のデータにはあまり有効でなかったということです。
そもそも病院に行って再検査・精密検査を受けようとしても、福島県内ではどの医師も診療を断わられました

それは県内の甲状腺学会員(医師)に対して、甲状腺学会理事長の肩書を持つ福島医科大山下俊一氏らから「・・・保護者から問い合わせや相談が少なからずあると思うが、自覚症状等が出現しない限り(次回=2年後 の検査を受けるまでの間)、追加検査は必要がないことを理解して、それを保護者に説明されたい(要旨)」という116日付の通達が回されていたためでした。 

検査結果の開示が不十分であり、別の医師による再診断が福島県内では事実上受けられないことについては、当初から、そして繰り返し市民団体や人権団体から改善を要求されており、来日して調査した国連人権理事会の助言者からも、「対象範囲が不十分であり放射能汚染区域全体で実施すべきこと、健康診断・アンケートの内容が不足していること、検査結果の開示方法に問題があること、子どもの症状について別の医師の見解を聞いたり、検査を受けたりする権利が守られていない」ことなどを指摘されました
  1128日付 「福島の健康調査は『不十分』、問題がある と指摘」

 追記. かなり以前に市民団体から通達の取り消しの要求が出て、医大との交渉の場で諒解されましたが、実際にはまだ行われていないようです。
    また、放射能の影響のない地域での児童の甲状腺の結節やのう胞の保有率を調べる計画も8月以前に公表されましたが、それもいまだに実施されていないようです。 

 以下に1124日付の毎日新聞記事を紹介します。
事務局がこのニュースを見落としていたため、これまで紹介できませんでした
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原発事故:福島に募金診療所が開院へ 住民の不安に応え
毎日新聞 20121124 

 東京電力福島第1原発事故に伴う被ばくへの健康不安に応えようと、市民らが募金活動をした「ふくしま共同診療所」が121日、福島市太田町に開院する。18歳以下を対象にした県の甲状腺検査用機器も備え、セカンドオピニオンを提供して不安解消を目指す。呼び掛け人の一人で「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」の佐藤幸子代表は「住民の心のよりどころになる診療所を目指したい」と話している。 

 3階建てビルの1階部分約40坪を改装し、二つの診察室やレントゲン室を設けた。内科と放射線科があり、甲状腺検査もできる超音波診断装置を導入し、希望すれば尿・血液検査なども受けられる。松江寛人・元国立がんセンター病院医師が院長に就き、県外の医師4人も非常勤で勤務するという。

 県の甲状腺検査では、子どもに結節やのう胞が見つかっても大半が2次検査不要と判定され、保護者から「検査結果が分かりにくい」などの声が上がっている。低線量被ばくによる健康不安を抱えている県民も多い。

 診療所は県内外の市民や医師14人が呼び掛け人となり建設委を発足、今年1月から約4000万円の寄付金を集め開院にこぎつけた。70年代に相次いで白血病を発症した広島の被爆2世らが開設した広島市の「高陽第一診療所」をモデルにした。 

 チェルノブイリ原発事故では、45年後に小児の甲状腺がんの増加が確認された。松江医師は「放射線の影響が出るとすればこれから。症状は甲状腺だけとも限らず観察が必要だ」と話す。診療は毎週火、木、金、土曜日。問い合わせは同診療所(0245739335)へ。   【蓬田正志】
 
 
 

 

2012年12月29日土曜日

米国と国連投票で別行動


 HP開設初年度は、放射能による健康被害の兆候が現れ、貧困化が進み、非正規労働者が増えるなど、暗く悲しいニュースばかりでした。
 そんななか年の瀬に、ホンの少しだけホッとする話が舞い込みました!? 

27日付の朝日新聞に『1 票への熱い反響』と題して、国連総会で、米国が反対し、英国・韓国などが米国に遠慮して棄権したテーマに日本が賛成票を投じたので、パレスチナやアラブ諸国から感謝されたという「特派員メモ」が載りました。
投票のテーマは、パレスチナを国連の「オブザーバー組職」から「オブザーバー国家」へ格上げするというものでした。 

アラブ諸国の称賛の裏には「あの日本がアメリカと別行動を取るとは・・・」という、率直な驚きがあった筈です。
では日本がいつも追随している米国は、国連においてどういう存在なのでしょうか。 

やや古いデータですが、常任理事国が拒否権を行使した件数の国別集計があります(下表)。
国連がスタートしてから20年間はソ連(当時)の拒否権行使が目立ちましたが、それ以降はアメリカが常にダントツに行使して来たことが分かります。 

 1966年~2004






4

14

29

80

16

 1996年~2004






2

0

0

10

1

   この10年間も、イスラエルのパレスチナに対する「非人道的殺戮行為」に関し、国連安保理でイスラエル非難決議案が出る度に、アメリカは拒否権を発動   若しくは発動すると脅迫して、決議を葬ってきました。かくしてイスラエルの大量殺戮行為を米欧の多くは見て見ぬふりをしてきました。そしていつもそれに追随して来た日本は、アラブ諸国から(心の中では)軽蔑されていたに違いありません。 

 この程度のことで「少しホッとする」などというのは、実に情けない話ですが・・・
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1 票への熱い反響   ◆ニュ-ヨーク 特派員メモ
朝日新聞 20121227 

こちらが痛いと思うほど、力がこもっていた。

国連総会でパレスチナがアラブ諸国など138力国の賛成を集め、「オブザーバー組職」から「オブザーバー国家」へ格上げを決めた先月末の採決後、パレスチナ人の外交官に握手を求められた。

 米国は反対し、英国や韓国など米国とつながりの深い国は棄権した。米国の同盟国である日本が、米国と立場を異にしてパレスチナを支持したことに、繰り返し感謝された。

レバノンやサウジアラビア、モロッコの外交官、記者からも「日本は正しい選択をした」と声をかけられた。国連を担当して2年近くになるが、日本の投票にここまで反響かあったのは初めてだ。

米国とともに反対していたら、どうなっただろうか。後日、アラブ諸国の外交官が集まった席で尋ねると、「日本を尊敬できなくなっていただろう」という声が相次いだ。

国連は各国の思惑が渦巻き、様々な駆け引きが演じられる場。日本の1票にはマイナス面もあろう。でも、こんなに熱く受け止められているのだ。中東和平にとっても、日本にとってもプラスになると信じたい。  (春日芳晃)
 
 
 

 

2012年12月28日金曜日

日本の対イラク戦争対応の検証を批判する緊急声明が


 21日、外務省は政権交代の間隙を縫うようにして、対イラク戦争への日本の対応についての検証結果を発表しました。
これまで対イラク戦争の検証に関しては、英国では第者検証委員会でブレア元首相招致をも含めて行いました。オランダでも第者検証委員会を作って行いました。米国ではブッシュに史上最低の大統領という評価を与えました。 

しかし日本の外務省は、「イラクが大量破壊兵器を隠し持っている」と信じ込んだ経緯に関し、「存在しないと証明する情報がなかった」と結論付けて、「事実を誤認したのはやむを得なかった」とする内容の、要旨4枚の発表を以て詳細未公表のままで幕引きをしようとしています。
小泉首相(当時)は、数次のイラク査察を行ったIAEAが「大量破壊兵器保有の証拠はない」と表明しているのを無視して、ブッシュの開戦演説に真っ先に賛同しましたが、その根拠の説明や誤りだったと判明したことに対する釈明が、その程度のことで済ませられるのでしょうか。 

26日、「イラク戦争の検証を求めるネットワーク」他の団体が連名で、外務省の検証を批判する緊急声明を出しました。
そこではイギリスやオランダの例に倣って報告書を完全に公開すること、検証は独立した第三者検証委員会で行うこと、個人も含めた道義的・法的な責任の所在を明らかにすること、などを求めています。 

以下に同声明および21日の新聞記事を紹介します。
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外務省「対イラク武力行使に関する我が国の対応(検証結果)」に対する緊急声明 

内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
参議院議長 平田 健二 殿
衆議院議長 伊吹 文明 殿
外務大臣 岸田 文雄 殿 

外務省「対イラク武力行使に関する我が国の対応(検証結果)」に対する緊急声明
― 情報開示と政府による検証を求める 

先週 12 21 日、外務省は「対イラク武力行使に関する我が国の対応(検証結果)」として、20033 月に開戦したイラク戦争への、同省としての対応を検証したと公表した。一部報道では、「分厚い」報告書がまとめられたと報じられているが、公開されたのは、わずか4ページの要旨のみであった。これをもって日本のイラク戦争への対応が検証されたとはとても言えない。私たち市民団体とNGO は、以下の二点を求める。
1.  外務省の「検証」報告書の全文を公開すること
2.  外務省のみならず政府および国会における独立した第三者の検証委員会により検証が行なわれること 

1. 報告書の公開に関して
今回の「検証」報告書について、外務省は外交的配慮を理由に公開しないとしている。だが、日本に先駆けてイラク戦争への対応を検証したオランダでは、「国連決議1441 に基づくイラク攻撃は国際法違反」「オランダ政府のイラク戦争支持は誤り」として550 ページにわたる報告書が2010 1月にまとめられ、公開されている
2009 7 月から検証が開始され、来年中には最終報告がまとめられると見られるイギリスにおいても、独立した検証委員会がトニー・ブレア元首相を筆頭に当時の政府関係者への聴取や政府文書の開示を行い、それらは検証委員会のウェブサイトで公開されている

これらの先例にくらべ、今回の外務省の「検証」はあまりに閉鎖的であり、客観的な批判に耐えうるものとは言えない。そうした閉鎖性こそ、「イラクが大量破壊兵器を所有している」という誤った情報を開戦にいたるまで主張し続けることとなった原因のひとつである。報告書を公開し、一般(市民)からも広く意見を求めるべきである。 

2. 第三者の検証に関して
私たちは、今回の外務省の「検証」が、日本におけるイラク戦争検証の幕引きとされることを強く憂慮する。オランダやイギリスの検証は、政府の指示の下に、独立した検証委員会が、イラク戦争と自国の関与について多角的に検証しているものである。
それに対し、今回の外務省の「検証」は、同省がイラクの大量破壊兵器に関する情報について、誤った情報しか持ち得なかったことを認めたにすぎない 

私たちは、政府と国会に対し、改めて以下のことを求める。
1) 独立の「第三者検証委員会」を政府および国会のもとに設け、「イラク戦争支持の政府判断の是非」、「自衛隊イラク派遣の判断の是非」、「政府のイラク復興支援の適否」の3 点を検証すること
同委員会が上記3 点についての情報開示や調査を行い、個人も含めた道義的・法的な責任の所在を明らかにすること

2) 「第三者検証委員会」による検証のプロセス、最終報告などが最大限公開され、誰にでもアクセスできるようにすること

3) 「第三者検証委員会」による最終報告を受けたうえで、日本政府としての見解を国内外に発表するとともに、必要とされる人道支援、被害者支援を行うこと 

イラク戦争の検証を行うことは、第166 回国会で内閣提出の法案第89号(イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案)可決の際の附帯決議で定められた国会の意思である。
政府及び国会は、早期かつ内外の評価に充分耐えうる内容をもったイラク戦争の検証の実現に尽力すべきである。

2012 12 26  

イラク戦争の検証を求めるネットワーク
(特活)日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET
(特活)日本国際ボランティアセンター(JVC
ピースボート
非戦を選ぶ演劇人の会
WORLD PEACE NOW
 

米国支持、やむを得ず イラク戦争で外務省
東京新聞 20121221 

 外務省は21日、2003年のイラク戦争で日本が米国の開戦を支持した経緯を検証した報告書の概要を発表した。「イラクが大量破壊兵器を隠し持っている」と信じ込んだ経緯に関し「存在しないと証明する情報がなかった」と結論付け、事実を誤認したのはやむを得なかったとの見方を示した。

 イラク戦争への対応を検証したのは初めて。概要は「イラクが大量破壊兵器を隠匿している可能性があるとの認識が国際社会で広く共有されていた」とも述べている。米英両国などは当時、イラクによる大量破壊兵器の隠匿を開戦の大義名分に掲げていた。 (共同)
 
 
 

9条改憲ムードの阻止を


 毎日新聞が憲法9条の改正その他について2627日に行った全国世論調査によると下表の結果でした。
憲法9条の改正、集団的自衛権の行使は、いずれも圧倒的多数というわけではありませんが、「反対」が明確に「賛成」を上回りました。 


項   目

賛 成

反 対

その他

憲法9条の改正

36%

52%

12%

集団的自衛権の行使

28%

37%

35%

消 費 税 増 税

41%

52%

7%

 しかしながら「改憲賛成」がある程度の比率を占めているのも事実です。これは連日尖閣列島が危機的状況にあるかの如くに報じられ、先般の衆院選では安倍首相、石原氏、橋下氏らが揃って憲法改正を主張したにもかかわらず、それを批判するマスメディアは皆無というような状況のなかで、改憲のムードが一定程度醸成された結果であると思われます。 

改憲のムードをこれ以上助長させないためにも、「もしも憲法9条を改悪して国防軍を持ったとしたら、我々の生活はどうなるのか」、「機密保護法・軍事裁判所のもとで基本的人権は守られるのか」、「そもそも国防軍を持ったら平和は維持されるのか」等々の議論を起こしていく必要がありそうです。 

 以下に毎日新聞の記事を紹介します。
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本社世論調査: 9条改正「反対」52%
毎日新聞 20121227 

 毎日新聞が2627両日実施した緊急全国世論調査によると、自民党が先の衆院選公約に盛り込んだ憲法9条改正について「賛成」と答えた人は36%にとどまり、「反対」が52%を占めた。集団的自衛権を行使できるよう現行の憲法解釈を変更することに関しても「反対」37%で、「賛成」(28%)を上回った。 

 憲法9条改正に「賛成」と答えた人は、自民支持層で56%と半数を超えたものの、連立政権を組む公明支持層では9%。「支持政党はない」と答えた無党派層では24%だった。集団的自衛権の行使も、自民支持層で「賛成」44%、「反対」15%だったのに対し、公明支持層では「賛成」14%、「反対」46%と逆転している。 

 安倍晋三首相は先に首相を務めた07年、集団的自衛権行使を容認するケースとして、公海上の米軍艦船の護衛や米国を狙った弾道ミサイルの迎撃など4類型を提示している。首相は26日の就任記者会見で、集団的自衛権の行使について「検討を始めたい」と表明。今回の調査では「よく分からない」が31%を占めており、有権者との「温度差」が浮き彫りになっている。 

 自民、民主、公明3党が合意した消費増税については「反対」がなお52%に及び、「賛成」41%を上回った。144月の消費税率引き上げに向け、政府は1310月に最終判断をする必要があり、自公政権が世論の理解を得られるかが課題になりそうだ。 

 景気回復を目指す第2次安倍内閣が防災対策などの公共事業を増やす方針を掲げていることについて、「公共事業を増やすべきだ」は37%にとどまった。逆に「増やすべきでない」が53%に上る。公共事業を増やすため国債を増発せざるをえず、世論調査の結果からばらまき懸念もうかがえる。【小山由宇】
 
 
 

2012年12月27日木曜日

取手市で小中学生の心臓検診「要精密検査」が急増


 茨城県取手市の小中学生の心臓検診で、「要精密検査」と診断された生徒の数が前年度の2.63倍に、また突然死の惧れがある「QT延長症候群1」は、前年度の4倍に急増していることが分かりました。被曝との関係が大いに疑われます。
註 1 QT延長症候群 : 本来は、心室頻拍のリスクを増大させるまれな先天的な心臓疾患で、突然死につながる可能性がある。特定の薬の投与後に発生する可能性がある。 

放射性セシウムは筋肉に多く蓄積するので、筋肉の塊である心臓は当然ダメージを受け、白血病やガンよりも先に不調を起こします。心臓以外では腎臓、甲状腺、脾臓、そして大脳などに蓄積されるといわれています。
    チェルノブイリ近傍のベラルーシのゴメリ地区では、大人の死亡原因のトップは心臓病で、死因の約52と際立っています(二番目がガンで14%)。
チェルノブイリ(の近傍)ではいま子どもたちの健康被害が大変な問題になっていますが、その具体的な病状は心臓病、血管や呼吸器障害、甲状腺ガンなどとされやはり心臓病がトップに出てきます2
註 2 102日付記事「チェルノブイリ原発事故による健康被害の現状」参照 http://yuzawaheiwa.blogspot.jp/2012/10/blog-post_2.html 

この件はたまたま取手市の市民団体が問題提起をして明らかにされましたが、取手市よりももっと被曝量の多い福島県などその他の地区ではどうなのか、大いに懸念されます。また子どもの甲状腺ガンについてもその後殆ど事実が公表されないので、実態がどうなっているのか気にかかります。 

 以下に東京新聞の記事を紹介します。
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73人が「要精密検査」 取手市内24校心臓検診
東京新聞 20121226 

 (茨城県)取手市の市民団体は25日、市立小中学校24校の2012年度の心臓検診で、一次検査で「要精密検査」と診断された児童・生徒の数が11年度に比べて急増していることを公表した。 

 心臓検診は取手市教委が毎年5月中に小学1年生、中学1年生に実施している。公表したのは「生活クラブ生協取手支部」(根岸裕美子代表)、「放射NO!ネットワーク取手」(本木洋子代表)、「とりで生活者ネットワーク」(黒沢仁美代表)の3団体で、市教委などの資料を基に調べた。
 それによると、12年度に一次検診を受けた小中学生1655人のうち、73人が要精密検査と診断された。11年度の28人から2.6倍になり、中学生だけで見ると、17人から55人と3倍強に増えていた。
 また、心臓に何らかの既往症が認められる児童・生徒も10年度の9人から11年度21人、12年度24人と推移。突然死の危険性が指摘される「QT延長症候群」とその疑いのある診断結果が、10年度の1人、11年度の2人から8人へと急増していた。 

 市民団体は「心臓に異常が認められるケースが急増しているのは事実。各団体と相談して年明けにも関係各機関に対応策を求めていきたい」としている。

 藤井信吾市長の話 データを確認したうえで対応策を考えたい。 (坂入基之)