2019年1月31日木曜日

水道事業、種子法 … 安倍政権が進めた政策から見えてきたもの(適菜収氏)

 安倍晋三を強烈に批判する適菜収氏の論文が出ました。
 余りにも強烈で読むと頭がクラクラするほどです(文中の太字強調個所はすべて原文に拠っています)。
 
 論文は冒頭で、安倍応援団のネトウヨは「売国勢力」を見抜けない情報弱者だと切って捨て、安倍がどう見ても「売国(奴)」であることを、彼が対外的構造改革論者であり、2013年シンガポールで「岩盤規制を打ち破る」と述べ、同じくウォール街での演説で「規制緩和により障壁を取り除くから日本の株を買うのは」と打ち上げ、2014ダボス会議で徹底的に日本の権益を破壊する」(⇒ 電力市場の完全自由化、医療の産業化、コメの減反の廃止、法人税率の引き下げ、雇用市場の改革、外国人労働者の受け入れ、会社法の改正)と宣言したことで、戦後わが国が積み上げてきたものわずか6年で完全に崩壊させられたとしました。
 
 それだけでなく、放送法4撤廃して外資が放送局の株式20%以上保有できるようにすることを目論み、水道事業を売り飛ば、種子法廃止を押し通したりと、まさに売国の所業に徹していると述べています。
 
 国会でも外交の場でも彼は平気な顔で嘘をつき、自衛隊の日報隠蔽、裁量労働制のデータ捏造、森友事件における公文書改竄、そして政策立案などに使われる「基幹統計」もデタラメだったことが明らかになりました

 そして「なぜそんな政権が続いているのかについては、「日本を破壊したい」という悪意をもって安倍政権を支持している人間はごく一部であり、ほとんどは無知で愚鈍な、いわば思考停止した大衆が支持しているからであり、「大事なことは安倍にすら悪意がないことで、彼には記憶力もモラルもない。善悪の区別がつかない人間に悪意は発生しない。歴史を知らないから戦前に回帰しようもない。恥を知らない。言っていることは支離滅裂だが、整合性がないことは気にならない。中心は空っぽ。そこが安倍の最大の強さだ」とし、「このままでは国は滅びる」というのは認識が甘く、「日本はすでに滅びているのだ。これから日本人は、不道徳な政権を放置してきたツケを払うことになるだろう」と述べています
 
 これほど強烈な安倍晋三批判にかつて接したことはありません。以下に紹介します。
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水道事業、種子法、北方領土……。安倍政権が進めた政策から見えてきたもの
 適菜収 ハーバー・ビジネス・オンライン 2019年1月28日
 この30年にわたり、構造改革による国の解体を急激に進めてきた連中がいる。 
 彼らは政治に寄生する形で、自分達の利権を確保してきた。そして思考停止した社会の中で、複数の宗教団体や外国の力を利用しながら、日本を乗っ取ってしまった。反日勢力、売国勢力がいつも同じ衣装をまとっているわけではない。連中もそれほどバカではない。それに気づかないのがネトウヨや自称「保守」という情弱情報弱者である。 
 
安倍政権がどうみても「売国」である理由
 すでにメッキの皮は剥がれているが、安倍晋三は保守ではなくて、構造改革論者のグローバリストである。2006年9月26日の第一次政権の総理就任演説では、小泉構造改革路線を「しっかり引き継ぎ」、「むしろ加速させる」と発言
 
 2013年7月には、シンガポールで「岩盤のように固まった規制を打ち破る」ために、自分は「ドリルの刃」になると述べ、「規制改革のショーケースとなる特区も、総理大臣である私自身が進み具合を監督する『国家戦略特区』として、強い政治力を用いて、進めます」と発言。 
 同年9月にはニューヨークのウォール街で、自分が規制緩和により、障壁を取り除くから、日本を買うなら今だと訴えた。
 2014年1月の世界経済フォーラム年次会議(ダボス会議)では、徹底的に日本の権益を破壊すると宣言。電力市場の完全自由化、医療の産業化、コメの減反の廃止、法人税率の引き下げ、雇用市場の改革、外国人労働者の受け入れ、会社法の改正などを並べ立て、「そのとき社会はあたかもリセット・ボタンを押したようになって、日本の景色は一変するでしょう」と言い放った。 

 この“ファミコン脳”の言葉通り、戦後わが国が積み上げてきたものは、わずか6年で完全にリセットされた。左翼も麻原彰晃も、安倍の足下にも及ばなかった。仕舞いには安倍は「我が国がTPPを承認すれば、保護主義の蔓延を食い止める力になる」などと言いだした。
 
 外国勢力が放送を乗っ取るようにお膳立てしたのも安倍だった。放送法4条の撤廃を目指した放送制度改革で、安倍は、外資が放送局の株式を20%以上保有することを制限する規定の撤廃を目論んでいた。水道事業を売り飛ばそうとしたり、種子法廃止を押し通したり。ロシアにカネを貢いだ上、北方領土の主権を棚上げ、日韓基本条約を蒸し返して韓国に10億円を横流しした。「移民政策はとらない」と大嘘をつきながら、国の形を完全に変えてしまう移民政策を推し進めた。結果、日本はすでに世界第4位の移民大国になっている
 安倍がやっていることは、一昔前の「保守論壇」が厳しく非難してきたものばかりだ。

 その妥当性はともかく、村山談話・河野談話を踏襲し、 憲法九条第一、二項を残しながら、第三項を新たに設け、自衛隊の存在を明記するという意味不明の加憲論により、改憲派が積み上げてきた議論を全部ぶち壊したさらには、震災の被災者の方々に寄り添う天皇陛下のものまねをして、茶化して見せた

 安倍は、ポツダム宣言を受諾した経緯も、立憲主義も、総理大臣の権限もまったく理解しないまま、「新しい国」をつくるという。そもそも、「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」などという「保守」がいるはずがない。安倍信者の中では国益や国辱にこだわる時代も過ぎ去ったのだろうか? 

 国会でも外交の場でも安倍は平気な顔で嘘をつく。漢字も読めなければ、政治の基本もわからない自衛隊の日報隠蔽、裁量労働制のデータ捏造、森友事件における公文書改竄……。政策立案などに使われる「基幹統計」もデタラメだった。
「消費や人口、学校など、いずれも私たちの生活と密接に関わる56の『基幹統計』のうち点検の結果、約4割にあたる22で間違いがあった」(「ロイター」1月25日)。 

 財務大臣の麻生太郎は「日本という国の信頼が、そういった小さなところから崩れていくのは避けなければいかん」と言っていたが、なにが「小さなところ」なのか?
要するに国家の根幹がデタラメなのである。 

安倍信者のメンタリティー
 状況を嘆いているだけでは仕方ないので、なぜこのような政権が続いているのかについて述べておく。 
 一つは現実を見たくない人が多いからだろう。「日本を破壊したい」という悪意をもって安倍政権を支持している人間はごく一部であり、ほとんどは無知で愚鈍だから支持している。左翼が誤解しているように安倍を支持しているのは右翼でも「保守」でもない。そもそも右翼が4割もいるわけがない。安倍を支持しているのは思考停止した大衆である。

 大事なことは、安倍にすら悪意がないことだ。安倍には記憶力もモラルもない。善悪の区別がつかない人間に悪意は発生しない。歴史を知らないから戦前に回帰しようもない。恥を知らない。言っていることは支離滅裂だが、整合性がないことは気にならない。中心は空っぽ。そこが安倍の最大の強さだろう。たこ八郎のノーガード戦法みたいなものだ。そして、中身がない人間は担がれやすい。 

 ナチスにも一貫したイデオロギーはなかった。情報機関は常に攻撃の対象を用意し、社会に鬱積する不満やルサンチマン(強者への怨念)をコントロールする。大衆と権力機構の直結。20世紀以降の「悪」は純粋な大衆運動として発生する。 

 空気を醸成するためのテンプレートはあらかじめ用意される。「安倍さん以外に誰がいるのか」「野党よりはマシ」「批判するなら対案を示せ」「上から目線だ」。ネトウヨがこれに飛びつき拡散させる。ちなみにネトウヨは「右翼」ではない。単に日々の生活の不満を解消するために、あらかじめ用意された「敵」を叩くことで充足している情報弱者にすぎない。 

 安倍政権が引き起こした一連の惨状を、日本特有の政治の脆弱性の問題と捉えるか、近代大衆社会が必然的に行き着く崩壊への過程と捉えるかは重要だが、私が見る限りその両方だと思う。前者は戦前戦中戦後を貫く日本人の「改革幻想」や選挙制度についての議論で説明できるし、後者は国際社会が近代の建前を放棄し、露骨な生存競争に突入したことで理解できる。 
 いずれにせよ、こうした中で、わが国は食いものにされている。 

 対米、対ロシア、対韓国、対中国、対北朝鮮……。すべて外交で失敗しているのに、安倍信者の脳内では「外交の安倍」ということになっているらしい。たしかに海外では安倍の評価は高い。当たり前だ。安倍の存在によって利益を得ている国がケチをつけるわけがない。プーチンにとってもトランプにとっても、北朝鮮にとっても中国にとっても、安倍政権が続いていたほうが都合がいいのだ。 
 結局、負けたのはわれわれ日本人である。

 北海道のある大学教授が「このままでは国は滅びる」と言っていたが、状況認識が甘い。日本はすでに滅びているのだ。これから日本人は、不道徳な政権を放置してきたツケを払うことになるだろう。 

<文/適菜収> てきなおさむ●1975年山梨県生まれ。作家。哲学者。大衆社会論から政治論まで幅広く執筆活動を展開。近著に『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか』(講談社+α新書)他、『日本をダメにしたB層の研究』『日本を救うC層の研究』(ともに講談社)『バカを治す』(フォレスト出版)など多数。山崎行太郎氏との対談本に『エセ保守が日本を滅ぼす』(K&Kプレス)も好評発売中

辺野古基地建設 前提崩れ続行許されぬ(北海道新聞)

 国は辺野古基地の新設に当たり、今春にも地盤改良工事に向けた設計変更に着手する方針です。
 埋め立て予定地に軟弱地盤が含まれていることは早くから分かっていたことで、昨年11月に行われた沖縄県と政府との協議でも、防衛省の当初計画では辺野古移設の総工費は3500億円程度、工期は5年とされているが、地盤改良工事が加わると県の試算によれば費用は25500億円に跳ね上がり、工期も13年になるとして着工に反対しました。
 国はそれを黙殺する形で12月から土砂投入の既成事実を作り、ここにきて「設計変更」を言い出しました。県は当然、地盤改良のための計画変更も承認しない方針です。
 
 そもそも当初計画に対して、予算規模で10倍近くにもなる変更を「設計変更」で処理するのには無理があります。
 北海道新聞は、「設計変更は従来の計画に不備があったことを示すものだ。工事を行う前提は崩れたと言える。国は基地建設をただちに中止するべきだ」と述べています。
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社説 辺野古基地建設 前提崩れ続行許されぬ
北海道新聞 2019年1月30日
 米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古への移設を巡り、国の対応に矛盾が生じている。
 防衛省は辺野古沿岸部の埋め立て予定海域で、今春にも地盤改良工事に向けた設計変更に着手する方針を固めた。マヨネーズ状とも指摘される軟弱地盤が工区の近くに存在していることが理由だ。
 にもかかわらず、沖縄防衛局は新たな護岸の造成を始めた。昨年末から始めた土砂投入区域とは別の場所で、軟弱地盤に近い。
 設計変更は従来の計画に不備があったことを示すものだ。工事を行う前提は崩れたと言える。
 国は基地建設をただちに中止するべきだ
 
 軟弱地盤は防衛省が2014~16年に実施したボーリング調査で確認されていたことが昨年3月、情報公開請求で明らかになった。
 防衛省は追加調査を実施して年度内に結果をまとめ、県に設計変更を申請するという。承認が得られるまで、地盤に問題のない海域で埋め立てを進める方針だが、すべての工事を中止するのが筋だ。
 
 県はこれまで地盤改良工事や環境保全措置を再三求めてきた。昨年8月、辺野古沿岸部の埋め立て承認の要件を充足していないとして、承認を撤回した理由にも軟弱地盤の問題が含まれていた
 しかし、防衛省はこうした声に耳を傾けてこなかった。行政不服審査法に基づく「撤回の効力停止」を申し立て、同じ政権内の石井啓一国土交通相がこれを認めて、工事は続けられている。
 
 設計変更を余儀なくされたことは、これまでの強引な進め方が限界に達したことを意味しよう。
 昨年11月の国と県の集中協議で、玉城デニー知事は地盤改良などが新たに必要なことから、新基地の運用まで最低13年かかり、費用も政府想定の10倍を超す2兆5500億円に上ると指摘した。
 国はこの問題についても説明する責任がある
 
 安倍晋三首相は年初に「土砂投入に当たってサンゴは移している」と述べた。だが移植対象の7万4千群体の大半は実施しておらず、保全措置を急がねばならない。
 きのう、辺野古移設に関する県民投票を巡り、沖縄県議会は条例改正案を可決した。当初の「賛成」「反対」の2択に「どちらでもない」を加えた3択で実施される方向になった。
 県全体でしっかり意思表示したいとの県民の思いの表れだろう。その意義の大きさを安倍政権はかみしめるべきだ。

31- 印象操作 NHKを批判 醍醐東大名誉教授が意見書

「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」共同代表醍醐聰・東大名誉教授は28日、NHKのニュース報道のあり方について、個人として意見書を送付しました。
 醍醐氏が問題にしたのは、25日の「ニュース7」と「ニュースウオッチ9」で、前日の衆参両院の閉会中審査で、厚労省の「不正調査」問題の真相を調査する特別監察委員会の調査の「お手盛り」ぶりが明らかになり、根本匠厚労相再調査を約束する事態に追い込まれた件について、報道する順番が6番めと下位で、内容も「不適切な調査」の核心にあたる具体的事実を一切伝えなかったことです
 
 一事が万事、NHKは報道において常に政府側の非を隠蔽するか、目立たないように報道すること腐心していて、これでは政府の広報機関の役割しか果たしていません。
 NHKは政府に従属するのは止め、厳正に公共放送の役割に徹するべきです。
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印象操作 NHKを批判 醍醐東大名誉教授が意見書
 しんぶん赤旗 2019年1月30日
 厚労省の毎月勤労統計の不正・偽装が、国政を揺るがす大問題になっているなか、「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」の共同代表でもある醍醐聰・東大名誉教授は28日、NHKのニュース報道のあり方について、個人として意見書を送付しました。
 醍醐氏が問題にしたのは、25日の「ニュース7」と「ニュースウオッチ9」。24日の衆参両院の閉会中審査で、問題の真相を調査するはずの特別監察委員会の調査自体の「お手盛り」ぶりが明らかになり、根本匠厚労相は25日、再調査を約束する事態に追い込まれました。
 
 ところが、両番組が、「厚労省 不適切な統計調査」として、報じたのはいずれも6番目。しかも、配分時間は、センバツ高校野球の出場校決定のニュースの半分以下でした。
 問題の伝え方も、「内部的な調査にとどまっている」という抽象的な指摘ですませ、調査報告書の素案を厚労省職員がつくっていたことなど、「不適切な調査」の核心にあたる具体的事実を一切伝えませんでした
 
 意見書は、こうしたことを伝えない一方で、根本厚労相の発言を“疑念生じないよう再調査”とおうむ返しに伝えるのは、「公正な報道から外れた番組編集」で、「厚労省の印象操作にNHKが加担し、拡散する政府広報といって過言でない」と批判しています。

2019年1月30日水曜日

首相施政方針演説 詭弁弄しても破綻は隠せない(しんぶん赤旗)

 28日の安倍首相の施政方針演説に対し新聞各社は29日、それぞれ批判する社説を掲げました。
 タイトルをざっと見ると、「甘言」・「聞こえのいい話」・「自画自賛」と評したものが4つ、国民の「不信」・「不安」に答えていない、「信頼回復に全力傾けよ」としたものが5つ、「難題」・「課題」に向き合っていないとしたものが3つ、という具合でした。
 
 何も語るべき実績がない中で「アベノミクスは今なお、進化」と語ったことは驚きでした。日銀は、もう異次元緩和の手仕舞に入っていなければならないのに、この時点で破綻をさせる訳に行かないからとためらって傷を深めている事態をどう考えているのでしょうか。
 
 昨年1月と10月の演説には形だけとはいえ「沖縄の皆さんの気持ちに寄り添い」との一節がありましたが、28日の演説からは消えました。
 その同じ日に防衛省は、辺野古埋め立て予定海域の東側N4)で新たな護岸を造る工事に強行着手しました。当然県民からは「横暴だ」と反発する声が上がっています
 この「沖縄県民投票」などは眼中にないという姿勢こそが安倍内閣の実態です。
 
 しんぶん赤旗の施政方針演説の関する記事と「主張」を紹介します。
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安倍首相の施政方針 こんな政治 もうサヨナラ
 しんぶん赤旗 2019年1月29日
 28日に始まった通常国会。安倍晋三首相は施政方針演説で、「日本の明日を切り開く」と述べましたが、安倍政治の破綻と矛盾はもはや取り繕いようがありません。
 
偽り 社会保障・消費税 全世代圧迫も増税も
「全世代型社会保障への転換とは、高齢者の皆さんへの福祉サービスを削減する、との意味ではまったくありません」―。安倍首相がこう弁明した施政方針演説は、相次ぐ社会保障制度改悪を進めるなか、目前の統一地方選と参院選で国民の批判をかわそうという狙いです。
 こんな弁明は通用しません。10月から低所得の高齢者向け給付金などを行うから“削減ではない”と言っても、それらは消費税10%への増税と引き換えです。毎月勤労統計調査の不正・偽装問題を受けて賃金の伸びが「下方修正」されたため、消費税増税の根拠は崩れ去りました。にもかかわらず増税は「どうしても必要だ」と述べ、全世代の暮らしを圧迫しようとしています。
 
 そのうえ、4月には年金支給額を実質削減し、10月には、75歳以上の低所得者の医療保険料を軽減する特例措置を廃止する計画です。参院選が終われば、全世代の負担増・給付減メニューの議論を本格化させます。特に要介護1~2の人向けの生活援助の保険給付外しなどは、今回も語った「介護離職ゼロ」に反するものです。全世代型社会保障への転換とは、消費税増税を国民にのみ込ませるための詭弁(きべん)にすぎません。
 
 3歳児以上の保育・幼児教育の「無償化」も消費税増税とセットのうえ、給食費は対象外です。無償化で保育ニーズは当然増えるのに、「子どもたちを産み、育てやすい日本へ」と言って推進しているのは、保育士配置基準などを緩和した企業主導型保育です。
 学童保育(放課後児童クラブ)も、職員配置を緩和できるようにして「充実を進める」と言います。施設を増やすには子どもを守る質は低下してもいいという考えです。
 真にすべての世代が安心できる社会保障へと抜本拡充を進めるには、消費税に頼らない別の道への転換こそが必要です。大企業や富裕層に応分の負担を求めれば財源はあります
 
野望 大軍拡・改憲 「戦争する国」へ加速
 施政方針演説で安倍首相は、大軍拡へのまい進と、9条改憲への執念を表明しました。日本を「戦争する国」へと改造しようという野望です。
 安倍首相は「安全保障政策の再構築」で、日米同盟が「外交・安全保障の基軸」だと強調。同時に「自らの手で自らを守る気概なき国を、誰も守ってくれるはずがない」と述べ、新たな防衛大綱のもとでの抜本的な体制強化とその加速を表明しました。
 新「防衛大綱」の下での“体制強化”こそ、憲法違反の大軍拡に他なりません。歴代自民党政権が掲げてきた「専守防衛」の建前すら投げ捨て、空母や巡航ミサイルの導入を推進。トランプ米大統領の言うままに米国製兵器を「浪費的爆買い」し、ステルス戦闘機・F35の147機の大量購入の費用は、政府発表の資料で計算しても総額6・2兆円に上ります。
 
 改憲問題では、首相は「国会の憲法審査会の場において、各党の議論が深められることを期待」すると発言。再び国会の壇上で、改憲論議の加速を呼びかけました。これは三権分立に反し、憲法尊重・擁護義務(憲法99条)にも反するものです。立憲主義を踏みにじる改憲への執念に変わりはありません。
 一方で、「各党の改憲案の提出」などを訴えた前臨時国会の所信表明演説のような国会に対する具体的指図は引っ込めざるを得ませんでした。強硬で拙速な改憲姿勢が国民世論と野党の強い反発を招き、臨時国会で改憲案提示の断念に追い込んだ国民の運動の成果が反映されています。
 
背信 辺野古・外交 不都合隠し国益放棄
「沖縄県や市町村との対話の積み重ねの上に辺野古移設を進めていく」―。安倍首相は、昨年の沖縄県知事選で示された新基地反対の民意を切り捨て、建設工事を強行する考えを改めて表明しました。故・翁長雄志前知事やデニー知事の再三にわたる真摯(しんし)な協議要請を無視してきた安倍政権が「対話」などと言う資格はありません。
 一方、軟弱地盤の存在、埋め立て承認撤回の効力停止への国の「違法な関与」などの指摘が相次ぐ現状には一切ふれませんでした。沖縄の民意や日本の法律よりも日米同盟を優先する法治国家にあるまじき態度です。
 
 不都合なものを隠す姿勢は外交分野でも顕著です。安倍首相はロシアとの領土問題を解決して「日ロ平和条約を締結する」「必ずや終止符を打つ」と意気込みました。しかし“第2次大戦の結果を受け入れろ”などとするロシア側の不当な主張に反論もせず、領土不拡大の原則に反した戦後処理の不正をただす姿勢なしに交渉を進めれば、領土問題の根本的な解決は遠のくばかりです。
 北朝鮮との国交正常化や拉致問題解決を目指し金正恩(キム・ジョンウン)委員長との会談に意欲を表明し、「米国や韓国などと緊密に連携する」と述べました。しかし、各国が北朝鮮との対話や信頼醸成を進める中で日本だけが取り残されている現状は変わりません。元徴用工問題などをめぐり緊張する日韓関係にはほとんど言及もなく、打開の道筋さえみえません。
 また、安倍首相は「自由で開かれたインド太平洋」を日本が築くと主張しましたが、米軍がインド太平洋地域での即応体制強化を進めるなか、日本を含むアジアが軍事作戦の拠点とされる危険があります。
 
沈黙 原発・再エネ 総破綻で言及できず
 施政方針演説で安倍首相は「原発」や「再生可能エネルギー」政策について一言も触れませんでした。
 これまで安倍政権が「成長戦略」の目玉として進めてきた「原発輸出」計画は次々と破綻。1月には日立製作所が英国での原発建設計画の凍結を決めました。輸出案件は事実上ゼロとなり、安倍首相がトップセールスでおし進めてきた「原発輸出」計画は完全に暗礁に乗り上げています
 安倍政権は、2030年度に電力の20~22%を原発でまかなう計画を策定するなど、今なお原発に固執し続けていますが、原発について何も語れなくなっています。
 海外では太陽光や風力などの普及が進み、発電コストが下落する一方、安全対策強化が求められる原発のコストは年々上昇しています。脱原発、脱炭素、再生可能エネルギーという世界の流れに反する原発輸出や国内での原発再稼働にまったく道理はありません。
 
 
主張 首相施政方針演説 詭弁弄しても破綻は隠せない
しんぶん赤旗 2019年1月29日
 政権復帰から7年目に入った安倍晋三首相の施政方針演説を聞きました。毎年の初めに、首相が政治の基本方針を明らかにするものですが、今年は例年にも増して新味がありません。大問題になっている毎月勤労統計調査の不正・偽装問題は「おわび」や「検証」で片付け、「アベノミクスは今なお、進化」だの、「戦後日本外交の総決算」だのと、抽象的な言葉を重ねます。「平成の、その先の時代に向かって、日本の明日を切り開く」といっても展望は示せず、改憲についてだけは「憲法審査会の場において、議論が深められるのを期待」と、あくまでも固執します。
 
統計不正・偽装に無反省
 勤労統計の偽装は、国政の根幹を揺るがす重大事態で、首相の「おわび」の一言で片付くような話ではありません
 不正や誤りがあった政府の基幹統計は23にも及び、「アベノミクス」の「成果」などについての、これまでの政府の説明が、根底から疑われます。厚生労働省の調査は“お手盛り”が明らかになり、再調査に追い込まれました。雇用保険や労災保険などの過少給付に対策をとるのは当然ですが、いつからだれが何のために、偽装を続けたのか、事務方だけでなく、大臣などの責任はないのか、徹底して調査すべきです。首相演説には、真剣な反省も、誠意も全く感じられません
 
 安倍政権の経済政策、「アベノミクスは今なお、進化」といいますが、その根拠に挙げるのは、都合のいい数字ばかりです。経済は「成長」、税収は「過去最高」などと自慢しても、肝心の国民の暮らしが悪化を続けていることには、目をふさぎます。偽装が発覚して再集計した勤労統計の修正値も、昨年1~11月の現金給与総額は前年に比べ伸びゼロです。2014年の増税後、消費不振は続き、消費支出は年間25万円も落ち込んでいます。どんなに詭弁(きべん)を弄(ろう)しても、通用しません
 首相がそれにもかかわらず、「十二分な対策」をとるからと、今年10月からの消費税率の10%への引き上げに「ご理解とご協力を」と主張したのは論外です。
 
「総決算」するという外交も、「わが国の外交・安全保障の基軸は、日米同盟」と明言するように、アメリカべったりを解消するものではありません。経済外交ではアメリカとの交渉を「進める」、沖縄の基地問題では、米軍普天間基地の「辺野古移設を進め」るというなど、これまでと変わりません。力を入れてきたロシアとの領土交渉も、「加速」とのべるだけで、打開の道は示せません。「総決算」とは全くの“偽装”です。
 政治をゆがめ、私物化した「森友」や「加計」問題に言及がないのは、国民無視の異常な姿勢です。
 
一日も早い退陣こそ
 首相は演説の中で、「平成の、その先の時代に向かって」という言葉を7回も繰り返しました。安倍首相が長期政権で目指すのは「戦争する国づくり」です。首相が憲法9条に自衛隊を書き込む改憲を持ち出し、憲法尊重擁護義務も三権分立の原則も踏みにじって、国会の憲法審査会での「各党の議論」を求めているのはそのためです。
 世論で追い詰め、統一地方選・参院選で厳しい審判を下し、一日も早く安倍政権を退陣させることこそ、未来を開く最良の対策です。