2020年11月30日月曜日

3週間でコロナ収束は困難/『検査と隔離』の基本に立ち返れ

 政府は「感染防止と経済活動の両立」を謳いますが、感染防止の方は何ほどのこともしないまま「Go To」の方だけ走らせました。いち早く北海道が見舞われたように、それが寒冷期のコロナ第3波と重なればどうなるのかは明らかです。

 経済活動の維持はほかならぬ国民自身の望みであって、それが可能なようにコロナを鎮静させることが政府の役目です。コロナの鎮静は偏に「検査と隔離」それしかありません。
 当初から言われ続けているその鉄則が、この期に及んでも全く不十分なままであったことは、早くも各所で「医療崩壊の瀬戸際」と叫ばれていることからも明らかです。

 では政府は何をやってきたのか、「Go To」による事実上の経済活動の優先です。
 要するにやるべきことはやらないままで、やってはいけないことを進めたのでした。そして、ここにきてようやく北海道と大阪市に関して「Go To」を中止にする程度の中途半端な対策を打ったのですが、そんなことでコロナが鎮静に向かうとはとても思われません。

 Googleが新たに出したAIによる日本の感染予測では1124日~1221日の陽性者は6万41677人で1日当たり約2300です。既に19日に2383人/日と予測値に達しました。今後もほぼ予測通りに乃至はそれ以上に進む可能性があります。

 25西村経済再生相「緊急事態宣言が視野に入ってくる」「今後の3週間が勝負」と国民に協力を呼び掛けたそうですが、それは国民に責任を転化するもので「収束しない事態を予測して予防線を張ったもの」と批判されるのは当然のことです。

 日刊ゲンダイが「3週間でコロナ収束は困難…Xmas緊急事態宣言『3つの根拠』」とする記事を出しました。
 併せて舛添要一氏の「無症状者が急増、もはやPCR検査を徹底する他ない 感染症対策の基本『検査と隔離』に立ち返れ」を紹介します。
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3週間でコロナ収束は困難…Xmas緊急事態宣言「3つの根拠」
                          日刊ゲンダイ 2020/11/27
「緊急事態宣言が視野に入ってくる」――。25日の西村経済再生相の発言が波紋を広げている。加藤官房長官は26日、「西村大臣の発言はそういった状態にならないよう、対策を強化する必要があるという趣旨で言われた」と語り、火消しに追われた。
 西村氏は「今後の3週間が勝負」として「皆さんの協力」を呼び掛けた。3週間後も感染拡大なら、「協力不足」の国民のせいにできる ――。有事に備えて予防線を張ったのだろうが、3週間後の収束は極めて困難だ。根拠はいくつもある。

3連休の影響
 今月21日からの3連休は、「Go To」の後押しもあり、各地では老若男女で賑わった。この先、連休の賑わいが感染者増に反映されていく可能性が高い。第1波では3月20日からの3連休後、第2波では7月23日からの4連休後、感染者数はピークに向かってジワジワ増えていった。

気温の低下
 第1波、第2波は日を追うごとに気温が上がっていったが、第3波は逆だ。気象庁によると、東京の11月下旬の最低気温は平年6度程度だが、12月は一気に冷え込む。中旬に3度台、下旬に2度台、年末には1度台になる。加えて、今年は南米ペルー沖で「ラニーニャ現象」が継続中。列島に大寒波が襲ってくる恐れもあるのだ。
 厳寒は、低温ほど長生きするウイルスには好都合。また、冷え込むと換気がおろそかになり、感染リスクは高くなる。

時短営業は焼け石に水
 勝負の3週間の感染抑制策はどうか。Go To トラベルの一時停止は大阪市と札幌市(目的地)にとどまる。時短営業要請も札幌市、大阪市のキタとミナミ、東京23区と多摩地域、名古屋市の栄・錦地区のみだ。西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)が言う。
「第3波の感染場所は家庭内、職場、高齢者施設、病院など多岐にわたっています。今さら、一部地域の飲食店に時短要請しても焼け石に水。Go Toの継続や気温など感染拡大の要因が目立ち、3週間後に収束に向かうとは到底思えません
 グーグルの感染予測によると、11月24日~12月21日の陽性者は6万4167人で1日当たり約2300人。歯止めがかからないとみている。WHO(世界保健機関)はカナダで10月の感謝祭後に感染者が急増したことを紹介し、クリスマス休暇に警鐘を鳴らしている。
 緊急事態宣言下のクリスマスも現実味を帯びる。最悪の年末年始になりそうだ。


無症状者が急増、もはやPCR検査を徹底する他ない
感染症対策の基本「検査と隔離」に立ち返れ
                        舛添 要一 JP press  2020.11.28
                                 国際政治学者
 全国で新型コロナウイルスの感染が急激に再拡大し、危機的な状況になりつつあると専門家たちは警鐘を鳴らしている。現状をどう見るのか、そして、どのような対応を採るべきなのか。諸外国の例も参考にしながら考えてみたい。結論から先に言えば、あらゆる感染症対策の基本である「検査と隔離」の原則に戻るべきだということである。

無症状者による市中感染を防げ
 まず現状認識であるが、深刻な状況であることは間違いない。それは、11月25日に開かれた政府のコロナ対策分科会でも強調され、とくに感染急増地域として札幌市、東京23区、名古屋市、大阪市が挙げられた。また、感染拡大をこの3週間で抑えることができなければ、緊急事態宣言も視野に入るという認識すら西村担当大臣は示している。
 26日には、感染者が全国で2504人と急拡大している。東京481人、埼玉160人、千葉82人、神奈川254人、合計977人と首都圏で約1000人もの感染が判明している。また、関西でも、大阪326人、兵庫184人、京都33人、奈良22人と500人を超える状況である。
 とりわけ問題なのは、重症者の数が増えていることであり、26日には重症者が410人、死者は29人となっている。そのため、医療資源が逼迫してきている。とくに医療スタッフの不足が問題であり、病床使用率が示すよりも深刻な事態が各地で発生している。また、軽症者用のホテルなども余裕がなくなりつつある。
 なぜ、今になって感染が再拡大しているのか。
 第一に、春の緊急事態宣言のときのような緊張感がなくなり、人出が急増しているからである。コロナに感染してしまった人でも、発症前ならその事実に気づかない。そしてそうした症状が出る前の人が、これまた気づかぬうちに他人にウイルスをうつしてしまう。そのために無症状の人からの感染が増えているのである。こうなってくると、従来のクラスター対策では限界がある。「市中感染」にどう対応するかを考えなければならないのである。
 私は、このこと、とくにPCR検査の重要性を年初から警告してきたが、政府の対策の主流とはならなかった。当初、クラスター対策主体の対応が何となく上手く行ったというだけで、結局は第二波、そして第三波を招いてしまったのである。
 緊急事態宣言によって経済の冷え込みを招いてしまったため、政府は経済と感染防止の両立を政策目標に掲げた。これは、日本のみならず、ヨーロッパなどでも同じである。
 欧州では、夏のバカンスに大勢の人が出かけ、国境を越えてウイルスが拡散し、秋以降の感染者増となっていった。マスクを装着せず、人との距離もとらず、夜遅くまで大声で喋りながら飲食を楽しむといった光景が日常となってしまったのである。
 日本でも、各種のGo Toキャンペーンによって、観光地や飲食店などが賑わったが、それが感染を広げたことは否めないであろう。
 札幌市のススキノは、その代表例であり、北海道は感染が深刻な状態になっている。北海道は冬の到来が早く、寒冷地であるため、住居も外気を入れないような設計になっている。それで、寒さ、乾燥、密閉空間という条件が揃い、感染の拡大に繋がっていったと思われる。
 本州以南も次第に寒くなってきており、東京23区、名古屋市、大阪市も同様な状況になっている。いずれも、感染状況が2番目に深刻なステージ3になっていると考えてよい。

厳しい規制を回避したフランスは都市封鎖
 第二の問題は、コロナ対応として、日本政府が、中国や台湾型ではなく英仏などの欧州主要国型を採用したことである。
 前者は、徹底的な「検査と隔離」を実行した。中国は共産党独裁体制ということもあって、強力な都市封鎖も厭わない。しかもPCR検査を徹底的に行い、陽性者を炙り出して隔離した。たとえば北京市では2000万人の全市民の半分1000万人にPCR検査を行っている。その結果、ウイルスの封じ込めに成功したのである。
 そこで新たな発生の主たる原因は、外から流入する者が持ち込むウイルスである。それは水際対策を徹底すれば防ぐことができる。
 後者のヨーロッパ型では、経済のことを考えて、夏以降は厳しい規制措置を差し控えてきた。そのためマスクを使用しない人が増え、コロナ感染前と同じような日常に戻ってしまった。
 確かに経済は一時的に回復したが、10月以降、急激な感染再拡大になってしまった。そして各国ともまた都市封鎖といった厳しい規制措置を講じざるをえなくなったのである。
 たとえば、フランスは、10月30日に都市封鎖に踏み切っている。もちろん、飲食店の経営者たちは反発し、各地で抗議のデモを繰り返したが、政府は強硬策を維持した。それが功を奏して、感染は2〜3週間でピークアウトした。
 11月7日に8万6852人だった感染者が23日には4452人にまで減少した。26日は1万3563人である。グラフで感染者数の推移を見ると、ピークは11月7日で、それ移行は減少傾向にあることが分かる。
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 その結果を受けて、11月24日、マクロン大統領は、今後3段階で、規制緩和をする方針を明らかにした。具体的には、(1)11月28日から20km圏内、3時間以内の外出を許可する、(2)12月15日、一日の感染者が5000人以下を条件に都市封鎖を解除する、(3)1月20日から飲食店、ジム、高校を再開するといった内容である。
 レストランの経営者たちは、「あと2カ月も店を閉めていたのでは干上がってしまう」と猛反発して、街頭で抗議行動に出ている。

12月中のピークアウトは可能か
 日本は欧州型を採用したが、今後ヨーロッパと同じようになるのかどうか、注意して見る必要がある。問題なのは、このフランスの例と違って、日本政府が、感染防止対策について規制強化や規制緩和の基準を明確に示していないことである。フランスの場合、約5万人というピーク時前後の感染者数の10分の1の5000人という数字を提示していている。この例を真似るとすると、「1日の全国の感染者が今は約2500人であるが、250人に減ったら営業停止を解除する」という基準になる。
 なぜ日本はこういう基準を明示しないのか。目標数字があれば、国民もその達成のために努力するであろう。しかし、それは示されないまま、一連のGo Toキャンペーンは継続する姿勢である。
 フランスについても、今後の推移を見守る必要があるが、今のところ、再度の都市封鎖の効果は上がっている。つまり、いったん感染が急激に再拡大したら、緊急事態宣言のような強力な措置をとると、2〜3週間で感染を抑え込むことができるということである。そして、都市封鎖前の状態に戻すには、規制解除後、約2カ月が必要だということである。
 これから強力な感染対策を講じて、12月半ばにピークアウトできるかどうかが最大の注目点である。規制強化によって確実に成果が上がるのなら、国民は我慢するであろう。営業停止になった店などには、政府が税金で休業補償をすれば済むことである。
 逆に、中途半端な対策を続けていけば、危機はズルズルと長引く。多くの感染症の専門家はその危惧を表明しているが、菅首相は「Go Toキャンペーンと感染者数の増加には因果関係がないと」表明するのみで、フランスのような強力な対策を講じる考えはない。

まだまだ日本のPCR検査は不十分
 第三の問題は、諸外国に比べて、PCR検査がまだ不十分なことである。政府は、一日に20万件可能だと言っているが、誰もが簡単に検査できる状況とはほど遠い。検査の相談が可能な病院の名前も、風評被害を恐れて公表できないでいる。この不況のときに、自費で何万円も捻出して検査を受けようという人はあまりいない。ワクチン接種の無料化を言う前に、検査の充実に予算を使うべきではないか。
 ドライブスルー検査を導入すれば、病院が風評被害を受けることもない。しかし、10カ月経ってもほとんど実行していない。
 人口当たりで見ると、日本のPCR検査数は、ドイツの10分の1である。今でも、誰でも、気軽に、安価に、好むときに検査ができる体制にはほど遠い。
 感染防止対策を困難にしているのは、新型コロナウイルスが無症状者を感染させるという特性を持っているからである。米CDCの調査でも、新型コロナウイルスの感染の多くは無症状者によるという結果が出ている。日本でも同様に、市中感染が拡大しているのであって、クラスター対策だけでは感染は防げない。やはり検査なのである。
 世田谷区は、高齢者施設や保育園などで全職員を対象にPCR検査の実施を開始した。11月13、14日に、ある特養で61人の職員に検査を行ったところ、無症状の職員10人の感染が確認された。もし検査をしていなければ、彼らは業務を続けていたはずであり、高齢の入所者に感染させていた可能性がある。
 遅きに失したが、11月17日、田村厚労相は医療施設や高齢者施設で一斉にPCR検査をするように指示した。PCR検査が進まないのは、厚労省や感染研の情報独占、情報隠蔽、権限死守といった体質が背景にあることは何度も指摘してきたところである。
 医療や介護の関係者だけではなく、スーパーの店員、郵便や宅配便の職員、公共交通機関の職員、警察・消防・自衛隊・海上保安庁職員などエッセンシャルワーカーには無料でPCR検査ができるようにすべきである。
 感染症対策の原則は「検査と隔離」であり、この基本に戻らなければ、事態の悪化は防げないであろう

新型コロナQ&A第6弾 「第3波」抑止へ 共産党が提案

 新型コロナウイルスの感染が急拡大し深刻化しています。私たちの命やくらし、営業を守るために、いま政治はなにをすべきなのか、しんぶん赤旗が「Q&Aで考え」る記事を出しました。8000字余りの長文のため、文字の大きさを10.5ポイント⇒10ポイントに小さくして紹介します。

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新型コロナQ&A 第6弾 「第3波」抑止へ 共産党が提案
                       しんぶん赤旗 2020年11月29日
 新型コロナウイルスの感染が急拡大し、深刻化しています。私たちの命やくらし、営業を守るために、いま政治はなにをすべきでしょうか。Q&Aで考えます。

検査・追跡・減収補填
 Q 感染者が連日2000人超え。「第3波」が来ていると言われ、不安です。どうしたら、抑えられますか?
 A 全国各地で新型コロナウイルスの感染者が急増し、連日、新規陽性者数、重症患者数が最多を更新する状況です。春の「第1波」、7~8月の「第2波」に続く、「第3波」の感染拡大が起こっています(図参照)。

 北海道、首都圏、中部圏、大阪などでは、重症患者の増大が病院のベッド(病床)やマンパワー(人的資源)の限界を超え、医療体制が機能不全になる「医療崩壊」の瀬戸際におちいる地域も出てきています。
 こうした深刻な事態が起こっているにもかかわらず、菅政権は「静かなマスク会食」など、国民に自助努力を求めるだけ。専門家でつくる感染症対策分科会が「Go Toトラベル」の一時停止を提言しても、まともに受け止めず迷走しています。検査や医療の体制を拡充する施策や雇用・営業・くらしを守る抜本的な政策を、何も打ち出そうとしない無為無策に、国民の不安と失望が広がっています。
 菅政権は「経済を回さなければならない」といいますが、日本医師会の中川俊男会長は「感染防止策が、結果的には一番の経済対策」と指摘します。
 日本共産党は、感染の爆発的拡大を抑え、医療体制を維持・強化し、国民のいのちと健康をまもるため、(1)医療機関や高齢者施設などを守るための「社会的検査」、繁華街など感染急増地となるリスクのあるところへの「大規模・地域集中的検査」を政府の大方針にすえて推進する (2)感染追跡を専門的に行うトレーサーを確保し、保健所の体制を抜本的に強化する (3)病院・診療所への減収補填(ほてん)など医療機関への全面支援を行う (4)全国一律の「Go To」はやめて地域ごとの支援策に切りかえる―という四つを提案。その実現に向け各地で運動を進めています。

全国一律のGoTo停止を
 Q 政府は「Go Toトラベル」の見直しを表明しましたが、事業に期待している業者もいると聞きます。どうしたらいい?
 A 日本医師会会長や、世界保健機関(WHO)のシニアアドバイザーなど多くの専門家から、政府による「Go Toトラベル」事業の推進が、感染者急増の契機になったという指摘がされています。
 新規陽性者・重症者数が最多を更新し、政府のコロナ対策分科会からも「Go Toトラベル」の「一時停止」が提言されるなか、政府もようやく事業の「見直し」を言いだしましたが、あまりにも遅すぎる対応です。
 「見直し」の内容も、「Go Toトラベル」事業自体はあくまで継続し、どの地域を対象から外すかは都道府県知事の判断に“丸投げ”するというものです。そのため、新規感染者数がもっとも多い東京は、いまだ対象地域から外れていません
 札幌市、大阪市についても、政府は当初「目的地」とする旅行は対象から除くが、両市を「出発地」とする旅行は対象に残し支援すると表明。それが世論の批判を浴びると、今度は両市を「出発地」とする旅行は対象に残しつつ「自粛」をお願いすると言い出すなど、もはや完全な迷走状態です。
 その一方、観光・宿泊関連業者に対する代替の支援策はなく、「Go Toトラベル」の対象から外れる地域や、感染拡大の影響で利用客が激減した地域の業者の打撃は放置されたままとなります。
 日本共産党は、全国一律の「Go Toトラベル」はやめ、地域ごとに観光・宿泊業者を支援する制度に切りかえることを提案しています。その際、支援の枠組みを、小規模な事業者にも届くよう事業の在り方を見直すことや、持続化給付金の第2弾などの直接支援を組み合わせ、観光・宿泊業者に対する支援を強化することも提起しています。
 感染拡大を抑止しながら、観光・宿泊業者をまもるため、Go To」事業の根本的な見直しを政府の責任で進めるべきです。

感染拡大を抑えるには 高齢者施設など「社会的検査」
 Q 共産党のいう「社会的検査」とは何ですか?
 A 医療機関(病院・診療所)、介護・福祉施設、保育園・幼稚園、学校、学童クラブなど、クラスター(感染者集団)が発生すれば多大な影響が出る施設等で定期的なPCR検査を行うことです。
 厚生労働省によれば、全国の医療機関での院内感染は386件、福祉施設(高齢者・障害・児童)での施設内感染は452件で合計838件に達しています(11月24日時点)。大阪府では、「第2波」以降に発生したクラスターのうち、医療機関と高齢者施設等で発生したクラスターが7割を占めました。いまや、クラスターの中心は、医療機関と介護・福祉施設です。そこに入院・入所する人の大半は高齢者であり、ここでの集団感染を防ぐことは重症・死亡事例の発生を抑えることにも直結します。
 この間、東京都の世田谷区や千代田区、神戸市などで、高齢者施設等への「社会的検査」が始まっています。沖縄県は、医療機関と介護施設への定期検査を始めようとしています。
 政府も、感染者多発地域などにおける医療機関、高齢者施設への「一斉・定期的な検査」を自治体に「お願い」する「事務連絡」を出していますが(9月15日、11月16日、同19日、同20日)、そうした検査を実施する費用は、国の負担が2分の1、地方の負担が2分の1です。その負担が重いために、検査拡大に二の足を踏む自治体も少なくありません
 日本共産党は、“自治体任せ”ではなく政府が自ら先頭に立って「社会的検査」を推進すること、検査の地方負担問題を解決するため、“全額国庫負担の行政検査”の仕組みをつくることを求めています。

感染多発地域で「面の検査」も
 Q 「大規模・地域集中的検査」とは、どういう検査?
 A 感染拡大を抑止するには「クラスター対策」―「点と線」での検査にとどまらず、感染急増地(ホットスポット)となるリスクのあるところに対し、無症状の感染者を把握・保護するための「面の検査」を行うことが必要です。
 政府も、8月に決めた「今後の取組」で、感染状況を踏まえた「地域の関係者への幅広い検査」を打ち出しました。さらに、11月10日の政府コロナ対策推進本部に出された資料は、7~8月の「第2波」に際し、東京都新宿区・歌舞伎町において、「大規模・地域集中的なPCR検査を実施したことにより、陽性者数が減少したことが統計的な分析で明らかになっ(た)」と、その効果を認めています。
 そうであるなら、「大規模・地域集中的検査」を政府の大方針に位置づけ、強力に推進するべきです。
 日本共産党は、医療機関や高齢者施設に対する「社会的検査」とともに、感染集積地域における在勤・在住者など幅広い関係者への「面の検査」を、政府の責任で行うことを求めています。その費用は、全額国庫負担でまかなうべきです。

保健所強化し追跡担当者確保
 Q 共産党の提案にある「トレーサー」って何ですか?
 A 「トレーサー」とは、検査で陽性となった人を保護して行動履歴や健康状態を把握したり、接触歴をたどって感染が疑われる人を見つけだすなど、“感染追跡”を専門に行う人のことです。
 現在の急激な感染拡大に対応し、陽性者を着実に把握・保護していくには、トレーサーの役割が不可欠です。
 この間、欧米で感染の再拡大が起こっている要因の一つに、それらの国々では感染が疑われる人への大量の検査が行われる一方、陽性者の追跡(コンタクトトレーシング)が十分にできていないことがあると指摘されています。
 ところが、今、日本では保健所の人員・体制が大幅に不足し、感染者の急増に追跡業務が追いつかない事態が起こってきています。
 各地の保健所の追跡業務を応援するため、国は1200人の“派遣要員”を登録しているといいますが、全国2万8000人の保健所職員がフル稼働しても全然足りない現場を支えるには“焼け石に水”でしかありません。
 日本共産党は、国の責任で緊急に、感染追跡の業務を担う人員の確保・養成を図ることを求めています。保健所の体制強化とトレーサーの確保により、「検査・保護・追跡」を一体に推進してこそ、感染拡大を抑止できます。

減収補填して医療体制を守れ
 Q 「医療崩壊」を起こさないために何が必要?
 A 各地で感染症が急増するなか、病床は逼迫(ひっぱく)し、重症患者の増加に医療の体制・人員が耐えきれなくなる、「医療崩壊」の危機がせまっています。そうなれば、コロナ患者の救命ができないだけでなく、がんや脳疾患、心臓病や事故による大けがの患者なども救えなくなり、大量の死者が出る事態が起こりかねません。医療体制を維持・強化するための抜本的な施策が必要です。
 菅首相は、「コロナ患者に対応する医療機関を支援するため、3兆円の予算を投入した」といいますが、実際に医療現場に届いたのは、予算の2割程度です。
 この間、多くの病院・診療所が、患者の受診抑制などによる大幅減収で「コロナ経営危機」に直面し、医療従事者の「コロナ賃下げ」が起こっていますが、政府は一貫して、「医療機関への減収補填はしない」という姿勢をとっています。
 日本共産党は、政府が決めた医療機関への支援策をすぐに現場に届けるとともに、地域医療を支えるすべての病院・診療所に減収補填を行い医療体制を全力で守ることを求めています。不足している感染防護具や医療用機材を国の責任で現場に届けることも必要です。軽症・無症状者を保護するためホテルなどを借り上げて設置する宿泊・療養施設を自治体が確保できるよう、予算の緊急的な追加を行うことも求められます。

教育・文化を守るには 文化芸術の支援へ「復興基金」
 Q 「第3波」到来で再びコンサートやイベントが中止になる恐れもあります。文化・芸術を守るために何が必要ですか。
 A 第2次補正予算で、芸術家や芸術団体を支援する「文化芸術活動の継続支援事業」が7月からとりくまれています。しかし、この事業の予算(文化庁分430億円)のうち、実際に交付決定されているのは、34%にすぎません。いまだに支援を必要としている多くの人に届いていません
 日本共産党の小池晃書記局長は、6日の参院予算委員会で、採択の遅れの問題を追及。萩生田光一文科相は「今後は迅速な審査を図ってまいりたい」と答弁しました。
 関係者の強い要望をうけ、25日からは、追加募集も始まりました(申し込み締め切りは12月11日)。新規募集だけでなく、すでに申請した人も再度申請できます(詳細は文化庁ホームページ参照)。
 感染が急速に拡大している中で、クリスマスやお正月のイベント、公演のキャンセルも出てきました。公演の中止が広がれば、芸術家やスタッフの収入が絶たれることになりかねません。「休業と補償はセット」でなければなりません。
 文化の灯を消さないためにも、超党派の「文化芸術振興議連」も提案している「文化芸術復興基金」を創設することが必要です。数千億円規模の国費を投入して基金を創設することは、「国は、芸術・文化を見捨てない」という大きなメッセージになります。

苦境学生に給付金・学費半減
 Q コロナ禍でアルバイトもなくなり、日々の食事にも事欠くありさま。それなのに授業料は高いまま。なんとかならないの?
 A 民青同盟が全国で取り組む学生向け食料支援活動の利用者は、のべ1万人を超え、増加の一途です。
 政府の学生向け「緊急給付金」(10万~20万円給付)は、対象が全学生の約1割に絞られ、「希望者全員に給付」できた大学は19%です。要件が厳しく申請を自粛した学生もおり、困窮していても多くが給付を受けられていません。
 党国会議員団は、民青同盟の食料支援などでつかんだ学生の実態を突きつけ、「緊急給付金」の再実施を、政府に繰り返し迫ってきました。そのなかで、「再追加配分を実施する」(萩生田光一文科相、27日)ところまで政府を動かしました。学生の実態が深刻さを増すなか、政府も「さらに何らかの措置を行うか…検討したい」(同前)と述べています。「緊急給付金」の要件を緩和しての抜本拡充と継続実施が大事になっています。
 また、コロナ禍は、高学費をアルバイトと奨学金=借金という学生の“自己責任”に押し付けてきた自民党政治の矛盾を浮き彫りにしました。いまこそ学費は値下げに転換すべきです。野党は共同で学費半額免除などを盛り込んだ「学生支援法案」を国会に提出しています(5月)。
 「バイトもできず実家にも帰れず、1人で年越しする」「採用抑制が広がり、就職が決まらない。奨学金返済が不安」―高学費とコロナ危機で押しつぶされそうな学生に、学費半額こそ最大のエールではないでしょうか。

大学の感染症対策 国の財政支援こそ
 さらに、学生は学園での学びと交流の場を失うという困難にも直面しています。各大学でオンライン授業だけでなく、対面授業を実施する努力が強められています。ところが、肝心の感染症対策に対する国の財政支援はほとんどありません。「対面授業の割合が低い大学名を公表する」(文科省)という“脅し”はやめ、安全と安心の大学環境づくりにふさわしい財政措置こそ求められます。

くらし・営業を守るには 「自粛」要請なら今度こそ補償を
 Q 酒類の提供を伴う飲食店などに営業の自粛を要請する自治体が出ていますが?
 A 新型コロナの感染急拡大を抑えるには、「密閉・密集・密接」を避けるとともに、営業時間の短縮なども求められています。
 しかし、時短など「自粛」を要請するなら今度こそ補償とセットで行うことが必要です。自粛に伴う収入減や負担増への補償がなければ効果は限られたものにとどまり、感染防止の実効性も担保されません。それはこれまでの感染拡大で実感したことです。
 今回の「第3波」ともいわれる感染拡大を受けて、居酒屋などに対して「営業の自粛要請」が、一部の自治体などから出されています。
 しかし、これに応じた業者に対する補償はありません。「協力金」という名の支援金は東京で40万円(20日間)で、「家賃にもならない」との声も出ています。支給要件も自治体によりばらばらです。
 そもそも、自粛要請によって生じた損失を、国・自治体の責任で補てんするのは当然のことです。憲法29条3項は「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」と規定しています。
 菅首相は、営業時間の短縮要請について「協力した全ての店舗に国として支援していきたい」(26日)とのべましたが、具体的中身は明らかにしていません。今度こそ国はきちんと財政負担し、十分な補償を行うべきです。

業者直接支援策の追加・延長を
 Q 商売をやっているが、このままでは「年が越せない」……。
 A 中小業者のみなさんの声と野党の国会論戦で持続化給付金、家賃支援給付金などの直接支援が実現しました。
 しかし、「一時的にしのいでいる。この状況が長引けば経営継続が難しい。第二、第三の給付金が必要だ」との声は切実です。コロナ禍が長引いているもとで有効な対策がとられなければ年末にかけての倒産・廃業が急増し、「『大廃業時代』が現実味をおびてきた」(「東京商工リサーチ」9月23日公表)といわれています。
 菅政権はこうした現実に背を向けています。コロナによって売り上げが急減しているにもかかわらず、個人大家、みなし法人などは持続化給付金の対象から外されています。また家賃支援給付金は、支給件数が55万件で約4900億円、予算額(1兆9300億円)の4分の1にすぎません(11月20日現在)。しかも、これらの給付金の申請期限は2021年1月15日です。
 財務相の諮問機関である財政制度等審議会は、25日にとりまとめた「建議」(意見書)で持続化給付金や家賃支援給付金について「政府の支援への依存を招(く)」などとして、「終了」=打ち切りを提言しています。
 もともと給付金は、「第2波」や「第3波」を想定していなかった段階のもの。給付金制度の「終了」はもってのほかで、逆に柔軟な運用、申請期限の延長をはじめとした改善とともに、コロナ収束まで、第2弾、第3弾の給付金の継続的支援が必要です。

農林水産業者のみなさんも対象に
 持続化給付金について、政府は「いわゆる農林水産業に係る所得を申告しておられる方々、全ての方々が対象になると理解しております」(5月12日、江藤拓農水相・当時)と答弁しています。

生活困窮者への支援を活用
 Q 親一人、子一人、このままでは暮らしていけない。
 A コロナ禍による生活困窮者への国の支援策には、(1)個人向けの生活福祉資金の特例貸し付け(窓口は自治体の社会福祉協議会)(2)家賃への補助を行う住居確保給付金の特例(窓口は自治体の生活困窮者自立支援制度の主管部局)(3)生活保護制度(窓口は自治体の福祉事務所)―などがあります。
 (1)は、「緊急小口資金」と「総合支援資金」の2種類あり、両方で最大140万円まで借りられます。自営業者、個人事業主、フリーランスはもちろん、学生のアルバイト収入減でも可能。償還時に住民税非課税世帯以下の場合、返還免除が可能です。
 (2)は、離職・廃業または休業による収入減少や社員寮に住む人が住居を失うおそれがある場合にも活用できます。「家賃相当額」(上限あり)を自治体が原則3カ月払います。「特別な事情」がある場合、最長9カ月まで延長が可能です。
 しかし、(1)は12月末に、(2)は給付開始から9カ月をすぎれば期限が来ます。支援の命綱がなくなれば、路頭に迷う人が続出します。支援策の延長がどうしても必要です。政府も検討をはじめたと報じられています。
 (3)は、憲法にもとづく国民の権利です。6月15日の参院決算委員会で、日本共産党の田村智子参院議員の質問に、安倍前首相は「文化的な生活を送る権利がある。ためらわずに申請していただきたい」と答弁しています。しかし、5月以降の申請件数(対前年同月比)は減っています。窓口で追い返す「水際作戦」が大問題になっています。

低所得ひとり親世帯に緊急支援を 野党が法案提出
 11月16日に野党4党(共産、立民、国民、社民)は、衆院に低所得ひとり親世帯緊急支援法案を共同提出。低所得のひとり親世帯への臨時特別給付金(1世帯5万円、第2子以降1人につき3万円)の再支給やひとり親世帯以外の子どもがいる低所得世帯などへの給付金の検討を求めています。政府も再支給を検討しています。

雇調金や休業支援金で雇用守る
 Q 「会社から解雇するといわれた」「休めといわれたのに休業手当を払ってもらえない」。どうすれば?
 A 経営危機を理由にした解雇は「整理解雇」と呼ばれ、人員削減の必要性や解雇回避の努力などがなければ認められません。パートなど有期雇用の雇い止めも正当な理由なしに認められません。
 労働者に休業手当を出して雇用を維持する場合は、国から雇用調整助成金が出ます。
 コロナ特例で日額上限が1人あたり1万5000円、中小企業で解雇などを行わない場合は助成率が10割です。これを活用して雇用と賃金を確保することが必要です。厚労省はこの特例措置の期限を来年2月末に延期すると発表しましたが、3月以降は「縮小する」としています(27日)。コロナの「第3波」が深刻化し、多くの企業が先の見通しが立たない中で早々と「縮小」を打ち出すなど許されません
 休業手当がもらえない場合は、労働者が国に対して「休業支援金・給付金」を申請できます。賃金の8割まで補償します。しかし、対象が限定されていることもあって、いまだ予算の8%しか支給されていません。
 申請にあたっては、企業が休業指示を認めない場合でも、「週○日勤務」など勤務日が記載された「労働条件通知書」やシフト表、月4日以上の勤務を6カ月以上確認できる給与明細などがあれば支給決定されます。
 ただし、大企業で働く労働者(非正規雇用を含む)は支援金の対象外となっており、すべての労働者が救済されるよう改善が必要です。

消費税5%減税と納税免除 必要
 Q 今年は消費税が猶予になったが、来年2年分は払えない。
 A 消費税を緊急に5%に減税することは、いま一番困っている所得の少ない人、中小業者にとって一番効果的な支援策です。
 もともと中小・零細業者にとって、10%の消費税増税は大打撃で、赤字でも納税せざるを得ません。
 経済協力開発機構(OECD)のグリア事務総長も、コロナ危機に対応するための緊急政策のなかに「一時的な付加価値税の減税または猶予」を挙げています。
 海外ではイギリス、ドイツ、オーストリアをはじめ37カ国が消費税(世界では付加価値税と呼ばれることが多い)の減税に踏み切っています(図 省略)。ドイツは標準税率を3%、食料品など軽減税率を2%引き下げました。
 また、19年度と20年度分の消費税納税分を免除することは、苦境にあえぐ中小業者を救済するうえで欠かせません。コロナ禍で多くの中小業者は納税にあえいでいます。納税猶予の特例で消費税は約4800億円猶予されましたが、今のままでは来年の確定申告で2年分の納税が求められます。これを放置すれば倒産、廃業に追い込まれてしまいます。
 「第3波」が中小業者を襲っているもとで、消費税の納税の免除は、営業と暮らし、日本経済を守るためにも必要です。