2018年10月31日水曜日

首相の贔屓で復権した稲田朋美氏が“代表質問”で珍論・珍説を連発

 自民党の稲田朋美筆頭副幹事長は29日の衆院本会議で、首相の所信表明演説に対する代表質問を行いました。代表質問は三役らが臨むことが多く、筆頭副幹事長を当てるのは異例の抜てきです彼女は昨年7月防衛相辞任で失脚して以降、表舞台から遠ざかっていましたが安倍首相の意向で着々と復権に向かっています。
 
 稲田議員は、まず自民党の正当性を述べ、「安倍首相は再チャレンジ一億総活躍社会の実現を掲げ、保守の理念を政策分野においても実行されてきた」と持ち上げたのち、唐突に「明治維新150周年」の話にスライドしました。
「五箇条の御誓文は改革の集大成」で、さらに歴史を遡れば、聖徳太子の和を以て貴しとなす」こそ民主主義の基本であり、我が国古来の伝統であったとする珍説発表し、「明治以降の150年は、欧米から学び、欧米と戦い、欧米と協力して自由世界を築いてきた150年であったと思います」とものの見事に侵略の歴史を無視してみせました。
 まさに「飛鳥時代から民主主義だった」と日本を高く評価する一方で、都合の悪い事実はなかったことにするという修正主義の発露ですが、これほど幼稚で偏った史観を持つ人間が,複雑な世界の情勢を正しく認識出来る筈はないので、いくら安倍首相の外交を熱心に礼賛してもただただ空虚に響くだけです。
 
 そしてひとしきり「9条自衛隊明記」するという安倍改憲論を評価したのちに、「自衛隊を、誰からも憲法違反などとは言わせない。そのためにも憲法改正は急務だと思いますが、総理のご所見を伺います」と、安倍首相と打ち合わせた通りの地点に着地したのでした。トンダ猿芝居です。
 それに対して、安倍首相は一旦は「憲法改正の内容について、私が内閣総理大臣として、この場でお答えすることは差し控えたい」と言ったもののすぐに「お尋ねですので、あえて私が自民党総裁として、一石を投じた考えの一端を申し上げたい」と、「待ってました」とばかりに、「自衛隊を合憲と言い切る憲法学者は2割にとどまり、多くの教科書に合憲性に議論があるとの記述がある」という、例の主張を始めたでした。
 まさに語るに落ちた話で、なぜ「お答えすることは差し控えたい」で終わることが出来ないのか、自らが自らを貶めていることに気が付かないあたりが、安倍氏の限界なのでしょう。
 
 LITERAの記事を紹介します。
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安倍の贔屓で復権した稲田朋美が“代表質問”に立ちトンデモ連発! 「民主主義は聖徳太子以来の我が国の伝統」
LITERA 2018年10月30日
 ついに、あの人物が安倍首相の“喜び組”として息を吹き返した。昨日29日、衆院本会議で安倍晋三首相の所信表明演説への各党代表質問がおこなわれたが、自民党の代表質問に立ったのが、あの稲田朋美議員だったのだ。
 代表質問とはその名の通り、政党や会派を代表する人物が首相の施政方針演説や所信表明演説などに対して質問をおこなうもので、今年1月と昨年1月の代表質問では二階俊博幹事長が、昨年11月の代表質問では岸田文雄政調会長が立った。一方、稲田議員は先日の内閣改造で、筆頭副幹事長兼総裁特別補佐に引き上げられたばかりだが、まさか、さっそく代表質問に立たせるとは……。
 しかも、その質問の中身というのがもはや笑うしかないくらい酷いシロモノだった。
 
 まず、稲田議員が口にしたのは「(自民党は)失敗しても、いつからでもどこからでも、何回でもやり直せる社会を目指してきました」「安倍総理は再チャレンジ、そして一億総活躍社会の実現を掲げ、保守の理念を政策分野においても実行されてきました」というセリフ。
「何回でもやり直せる社会」とか「再チャレンジできる社会」とか、一体こいつは何を言っているのか? この国でそんなことが許されているのは、防衛相としてあんな失態をさらしながら、1年ちょっとで代表質問に立つほど復権したしたアンタをはじめ、安倍首相の周りの政治家だけだろう。それとも、これは自分を見捨てず復権させてくれた安倍首相への感謝の言葉なのか。
 
 などと思いながら聞いていたら、稲田議員のトークは唐突に「明治維新150周年」の話にスライド。そして、こんなことを言い出したのである。
「明治の精神ともいうべき五箇条の御誓文は改革の集大成
「歴史を遡れば、聖徳太子の『和を以て貴しとなす』という多数な意見の尊重と、徹底した議論による決定という民主主義の基本は、我が国古来の伝統であり、敗戦後に連合国から教えられたものではありません」
「民主主義は我が国古来の伝統」って、一体いつから国会は歴史の珍説発表会になったのか。これだけでも呆れるが、稲田議員はさらに、 
「さる10月23日、政府主催の明治150年記念式典が開催されました」と述べると、「明治以降の150年は、欧米から学び、欧米と戦い、欧米と協力して自由世界を築いてきた150年であったと思います」と発言。ものの見事に侵略の歴史を無視してみせたのである。
「飛鳥時代から民主主義だった日本スゴイ!」というトンデモ歴史観と合わせ技で繰り出される、都合の悪い事実はなかったことにする修正主義──。これが党を代表する人物のレベルであると見せつけるとは、ある意味、安倍自民党の実態がよく理解できるというものだが、ここから稲田議員は安倍首相への猛烈なヨイショをはじめたのだ。
 
「安倍内閣は着実に外交の成果をあげ、国際会議の場では、安倍総理と話そうとする各国首脳が列をつくる状況もみられ、この6年間で世界における日本のプレゼンスは格段に向上しました」
 北朝鮮をめぐっては完全に蚊帳の外に置かれ、トランプやプーチンにはコケにされて金だけむしり取られてばかりなのに、「着実に成果をあげている」とは、果たして稲田議員はどの異世界の話をしているのだろう
 ところが、稲田議員はこの後も「総理は、これまでのところ指導者のなかで、トランプ大統領との個人的信頼関係の構築にもっとも成功されておられる」「安倍総理はプーチン大統領との個人的な信頼関係に基づいて、日露関係を力強く牽引してこられました」と、もう倒れてしまった「外交の安倍」なる看板を周回遅れで喧伝。先の日中会談を受けて、「自民党は日中関係の改善に最善を尽くしてきました」などと口にしたのである。
 
安倍首相の外交を礼賛し続けた稲田の支離滅裂な世界情勢認識
 まったくよく言うよ、だろう。日中関係の悪化は、第一次安倍政権以降、安倍首相が無用に中国を刺激しつづけてきた結果ではないか。稲田議員自身も、防衛相だった2016年に靖國神社を参拝し、中国から猛反発を受けている。それが、いざ安倍首相が日中関係の見直しに動くと「最善を尽くしてきた」と言うのだから、開いた口が塞がらない。
 
 しかも、これまでさんざん中国脅威論を振りまき、憎悪を煽ってきた張本人であるのに、安倍首相が日中会談に臨んだ途端、中国については口をつぐみ、その分の憎悪を北朝鮮と韓国に向け始めた。北朝鮮に対しては「核廃棄の見通しは立たず、日本海を隔てたすぐそこに我が国を射程に入れた数百発もの弾道ミサイルを、いつでもどこでも発射できる状況だ」と煽りに煽り、韓国に対しては、先の海上自衛隊の旭日旗掲揚問題や、30日、韓国の大法院で判決が言い渡される徴用工問題、さらに竹島への議員上陸問題を立てつづけにもち出し、韓国を非難したのだ。
 
「外交の成果」とやらを強調する一方で、外交の足を引っ張っているとしか思えない、侵略の歴史を顧みない一方的な韓国への避難……。その上稲田議員は「総理の掲げる秩序による平和と繁栄の理念は、確実に世界に拡がっているのです!」などと外交成果を誇っていたにもかかわらず、舌の根も乾かないうちに、アメリカと中国の名をあげて「我が国を取り巻く安全保障環境は急速に厳しさを増している」と言い出し、挙げ句、「いまこそ自分の国は自分で守る気概をもつべきです」と声高に叫んだのだ。
 稲田議員の頭のなかの世界情勢がどうなっているのか、さっぱり意味がわからないが、ともかく、稲田議員が過去に発言した「自分の国を守るためには、血を流す覚悟をしなければならないのです!」という考えはまったく変わっていないらしい。
 
 だが、もっとも強くツッコまずにいられなかったのは、憲法改正に話題が及んだ際の発言だろう。稲田議員は9条への自衛隊明記という安倍改憲論に対し、こんなエピソードを口にしたのだ。
「私も防衛大臣時代に南スーダンを視察しましたが、気温50℃を超える灼熱の地で黙々と道路や施設を補修する自衛隊員の姿は、現地の人びとから、世界から、称賛されていました。自衛隊の、現地の方々に寄り添った、誠実で、丁寧で、親切な活動は、まさに日本らしいものとして誇りに感じます」
 南スーダンをめぐっては、自衛隊の宿営地も危険に晒されていたことが報告されていたのに、それを隠蔽し、新たに駆けつけ警護の任務に就かせたのは稲田防衛相だ。なのに、そんな事実はなかったかのように自衛隊の現地支援だけを取り出し、「日本らしい」「誇り」と美談に仕立て上げてしまうとは。恥知らずとはこのことだろう。
 
安倍首相が御法度の改憲論を語るための出来レース質問も
 しかも、稲田議員はこの無茶苦茶なエピソードを披露したあと、「自衛隊を、誰からも憲法違反などとは言わせない。そのためにも憲法改正は急務だと思いますが、総理のご所見を伺います」と述べたのだ。
 大前提として改憲案について行政府の長である総理大臣がどうこう言っていること自体がアウトなのに、その安倍首相に憲法改正について述べよ、って、三権分立の原則を稲田議員は理解していないのだろうか……。そもそも、こんなことを「総理として」訊かれたほうも困るだろう。
 そう思っていたのだが、実際は違った。安倍首相は「憲法改正の内容について、私が内閣総理大臣として、この場でお答えすることは差し控えたい」と言いながら、こうつづけたのだ。
「お尋ねですので、あえて私が自民党総裁として、一石を投じた考えの一端を申し上げたい
 おいおい、結局、言うのかよ──。こうして安倍首相は「自衛隊を合憲と言い切る憲法学者は2割にとどまり、多くの教科書に合憲性に議論があるとの記述がある」という、いつもの主張をはじめたのだ。
 ようするに、この質問、安倍首相に改憲論をぶたせるために、安倍と稲田の間であらかじめシナリオができあがっていたのであるいや、改憲の話題だけではない。安倍首相の答弁をみていると、前述したトンデモ歴史観や世界観にもとづく質問も、安倍首相のお墨付きや指示があったとしか思えなかった
 
 安倍首相の寵愛を受けて防衛相にまで駆け上がり、引責辞任しても再び“自民党の代表”としての立場を与えられた稲田議員。今回の代表質問で、あからさまな安倍首相の「ともちんラブ」ぶりを久々に見せつけられた格好だが、今後、憲法改正に向けて、こうした気持ちの悪い連携プレーが展開されていくことは間違いないようだ。(編集部)

暗雲漂うなかで船出した臨時国会(五十嵐仁氏)

 五十嵐仁氏が、臨時国会は安倍首相にとって暗雲漂う中での船出となったとして、安倍首相の3つ暗雲(悩みや焦り)を挙げました。
 第1の暗雲は「漂流を始めた外交」として米中両国の板挟みにあって揺れていることと、この先朝鮮半島の宥和や中國との関係改善が進めば、そのまま安倍首相の従来の北朝鮮敵視、中国敵視の基本姿勢との整合性が問われ転換を求められるという悩みです。安倍首相自身が招来したものであるのは言うまでもありません。
 第2の暗雲は国会が序盤から高市議運委員長名が出した安倍首相を援護する政府寄りの国会改革試案をめぐって紛糾したことで、これもまた森友・加計学園疑惑や閣僚の資質などへの追及を恐れる安倍首相の焦り」が、高市氏をしてそうした行動に走らせ結果です
 第3の暗雲は、経済界の要求に基づき外国人労働者の受け入れ拡大に向けての出入国管理法改正案をめぐり、自民党内でも反対や懸念、慎重意見などが続出して紛糾していること、これも早く成果を出したいという安倍首相の焦り」が生み出した混乱です。
 他にも10%への消費増税「売り物」だったアベノミクスが何の成果もあげていないという負い目があり、前途は暗澹としています。
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暗雲漂うなかで船出した臨時国会
五十嵐仁の転成仁語 2018年10月10月30日
 10月24日に安倍首相の所信表明演説が行われ、昨日から代表質問が始まりました。3選を実現して3期9年間という最長の任期を視野に入れて発足した第4次改造内閣ですが、その前途は容易ではありません。
 長期政権の驕りや緩み、安倍首相自身の焦りなどが随所で垣間見えるからです。臨時国会は暗雲漂う中での船出となりました。
 
 第1の暗雲として漂流を始めた外交を挙げることができます。日中首脳会談と日印首脳会談を立て続けに開催するなど順調に進んでいるように見えますが、実はそうではありません。
 トランプ政権による米中新冷戦への対応に苦慮し、米中両国の板挟みにあっているからです。一方で中国との関係改善を進めながら、他方でインドとも関係を強化して中国包囲の姿勢を示すなど、安倍外交は揺れています。
 トランプ米大統領の顔色をうかがいながら中国に急接近する安倍首相に、外務省がストップをかけようとしたのが「3原則」をめぐる行き違いです。この先、朝鮮半島での南北接近と緊張緩和の進展や中国との関係改善がすすめば、安倍首相による北朝鮮や中国への「敵視政策」、安保法制・改憲、軍備増強・基地強化などの好戦的な軍事大国化路線との整合性が問われ、政策転換が迫られることになるでしょう。
 
 第2の暗雲は序盤から与野党が激突して本会議の開会が45分も遅れてしまったことです。そのきっかけを作ったのは、安倍首相の側近で衆院議院運営委員長に抜擢された高市早苗氏でした。
 衆院本会議に先立って開かれた理事会において、議運委員長名で高市氏が出した国会改革試案をめぐって紛糾したからです。この試案は政府提出法案の審議を優先し、一般質疑は会期末前にするとの内容を含んでいたため、立法府の役割や議運委員長の役割が公正公平で行政監視機能を果たさなければいけないということを理解していないなどと野党は強く批判し、試案の撤回と謝罪を求めました。
 森友・加計学園疑惑などで国会による行政監視が不十分で行政の私物化と暴走が大きな問題となっているときに、高市氏は政府寄りの提案をして安倍首相を援護射撃しようとしたわけです。中立であるべき議運委員長の立場を逸脱する暴挙で批判されて当然ですが、森友・加計学園疑惑や閣僚の資質などへの追及を恐れる安倍首相の焦りを反映したものだと言って良いでしょう。
 
 第3の暗雲は出入国管理法改正案をめぐる混乱です。これは外国人労働者の受け入れ拡大に向けて新たな在留資格創設を柱とするものですが、自民党内でも異論や懸念、反対、慎重意見などが続出して法務部会が紛糾し、議論は4時間も続きました。
 この問題は代表質問でも取り上げられ、「新たな移民政策ではないのか」という懸念を安倍首相は打ち消しました。しかし、与党内でも異論があり、自民党内で安倍首相を支えてきた右派議員からの批判もあって亀裂が生まれました
 この改正案は内容だけでなく、来年4月からの実施を予定するというスケジュールについての異論も強く、臨時国会での審議の行方は不透明です。このような形で急ぐのも、早く成果を出したいという安倍首相の焦りの表れかもしれません。
 
 臨時国会はまだ始まったばかりですが、ここに挙げた問題以外にも10%への消費増税や「全世代型社会保障改革」など重要な課題が目白押しです。会期が12月10日までと短いことも、安倍首相の焦りを生んでいる要因かも知れません。
 それとも、6年間も政権を担当してきたのに、「売り物」だったアベノミクスも外交も上手くいかず、誇るべき成果が何もないことに気が付いたのでしょうか。このままでは、モリ・カケだけが国民の記憶に残ってしまうかもしれないのですから。

31- 国民は気づかない米軍の日本支配(天木直人氏)

 日本は独立国でありながら、沖縄をはじめ国内に多数の米軍基地が置かれ、ベトナム侵略戦争、アフガニスタン報復戦争、イラク侵略戦争などで米国の無法な戦争の根拠地とされてきました。
 日本に駐留する米軍は、海兵隊、空母打撃群など、日本の防衛とは無関係の、他国侵略のための部隊が主力です。
 そして米本国では認められないオスプレイ等の市街地での低空飛行や戦闘機の夜間の離着陸訓練などが、誰憚らずに行われています。
 米兵や軍属は、税関のチェックを受けることなく米軍横田基地から直接入出国することが出来、彼らは犯罪をおかしてもその多くが裁かれないまま放置されたり、犯罪者が即座に帰国して処罰を逃れるなどしています。
 また、年間約6500億円の米軍駐留経費を日本が負担しているほか、F35戦闘機やオスプレイ、あるいはイージスアショアなどの不要乃至は役に立たない兵器を法外な値段で山ほど買わされています。
 こうした米軍の驚くべき特権と無法は、全て日米安保条約と日米地位協定に基づくもので、日本がいまだに完全な独立国となれていないと言われる所以です。
 
 インターネット政党「新党憲法9条」を立ち上げ、そのリーダーとなっている天木直人氏は、10月に入って「日米安保条約」こそが諸悪の根源で、破棄しなくてはならないとする5つのブログを発表しました。ここにきて頻繁に語られるようになったのは、日米安保条約の弊害がそれだけ頻繁に表面化し出したということです。
 
 因みに10月1日のブログ「沖縄知事選後の政治を占う(問題の本質は日米同盟の是非だ)」では、次のように語っています。
 
 (前 略) それに対し、野党共闘はどうか。打倒安倍の立場から、辺野古反対の気勢を上げるだろう。
 しかし、本気で辺野古移設に反対するなら日米安保反対にまで至らなければウソだ。
 しかし日米安保に反対するのは共産党と社民党だけだ。
 そして社民党は村山政権時に日米安保を容認したトラウマを抱えたままだ。
 共産党を除くすべての政党が日米安保容認の中で、どうして辺野古阻止ができるだろう。
 かくて辺野古阻止の不毛な政局が役者を変えて再び始まる。
 
 おりからきょう10月1日に横田基地にオスプレイが正式配備される。横田の普天間化だ。日本本土の沖縄化だ。必ず都心で事故が起きる。しかし起きてからでは遅いのだ。
 繰り返していう。いまこそ日米安保体制を見直す時である。(後 略)」
 
 今回は10月30日のブログを紹介しますが、それ以外の4つのブログは下記の通りです。
 
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一冊の本にでもしなければ国民は気づかない米軍の日本支配
天木直人のブログ 2018-10-30
 日本は骨の髄まで米軍に支配されている。この、あまりにも不愉快、不都合、不正義な報道を見ない日はない。
 たとえばきょうの東京新聞「ニュースの追跡だ」
 米軍と日本の各省の官僚たちで構成される日米合同委員会という密室会議が、自衛隊の宮崎県新田原基地などを米軍施設として整備する事を決めたという。
 普天間返還に伴う機能移転であるが、普天間以上の機能を与えるという。いわゆる焼け太りだ。焼け太りはそっくりそのまま辺野古に出来る米軍新基地だ。
 
 たとえばきのうの東京新聞だ。
 安倍政権米国の言い値で次々と買わされている高額兵器のツケが、たまりたまって単年度では払いきれず、後年度に分割して負担(リボ払い)させられている。その残高が5兆円を超えたという。
 
 たとえばきのうの日刊ゲンダイだ。
 陸上配備型迎撃ミサイルシステムイージスアショア)の配備先である山口と秋田が受け入れに反対しているから、防衛省は水質汚染や電磁波の人体への影響がないか調査をするという。しかし、調査したところで変更は出来ない。
 イージスアショアは日本を守るためではなく、北朝鮮から発射される米国向けのミサイルの迎撃が目的で米軍が決めた場所だからだ。そこに設置するしかないのだ。
 
 このほかにも、不都合、不愉快、不正義な日本の主権放棄の例は数えきれない。
 たとえば米軍の横田基地上空は米軍の管制下にあるから民間機が自由に飛べないのだ。ついに米国は観光誘致の増便まで駄目と言って来た。
 
 たとえば米軍の横田基地にオスプレイが10月1日から正式配備された。
 しかし、これは沖縄に配備されているオスプレイと違って敵地攻撃用だ。事故率が高い。
 しかも日本の防衛ではなく中国攻撃するためだ。
 そして中国への攻撃は起こらないから訓練ばかりしている。
 つまり都心の上空がオスプレイの低空訓練場になっているのだ。
 
 これらひとつひとつがバラバラに報道されるから国民は気づかない。
 しかし、それを、まとめて一冊の本にして、「ここまで日本は米軍に支配されている。それでいいのか」とタイトルをつけて売り出せば、さすがの国民も気づくだろう。
 このままでは、戦争が起きなくても日本国民は米軍に生活を奪われると。
 憲法9条など、もはやあってもなくても、変えても変えなくても、どうでもいいのだ。
 日米安保条約をなくさない限り、米軍の支配はこれからも進む一方なのだ。
 それを国会で警鐘を鳴らし、安保反対と叫ぶ政党が出て来ないのが不思議である(了)

2018年10月30日火曜日

米からの兵器購入額のローン(年賦)残高5兆円を突破

 米国から購入する高額兵器はローン(年賦)で払いますが、その残高が18年度で5兆円を突破(予算ベース)し、19年度には5兆3000億円に達する見込みです。
 安倍政権は、ここにきて、敵地侵入用に開発されたオスプレイ、重戦車型戦闘機といわれ空戦能力が極めて劣るF35系戦闘機、そしてマッハ5以上のミサイルの迎撃は出来ないとトランプ氏自らが公言したイージスアショア等々を爆買いしていますが、これらは極めて高価であるものの全て不要か役に立たないものばかりです。しかもすべて「対外有償軍事援助(FMS)」に基づいてアメリカの言い値で買い取るもので、その価格はあってなきがごとし・・・アメリカがぼろ儲け出来る仕組みになっています。
 
 アメリカの軍需産業は、一時期「アメリカ1強」を築き上げたのに甘んじ、その後は金儲けに奔った結果、兵器は高額化の一途を辿りましたが、その実、性能は相対的に低下しました。いまではロシアの兵器に及ばないと言われています。
 シリアの要請でロシアが参戦してから、アメリカなどが後押ししていた反政府武装勢力がたちまち劣勢になり、最後の拠点であるイドリブからも国外退去を余儀なくされいるのはその良い例です。
 無用乃至は役に立たない兵器に巨額な資金を投じるのは、国費をドブに捨てるようなものです。
 東京新聞の二つの記事を紹介します。
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米から購入 安倍政権で急増 兵器ローン残高、5兆円突破
東京新聞 2018年10月29日
 防衛予算で戦闘機やミサイルなど高額兵器を導入する際、費用を複数年度に分けて支払う「後年度負担」の残高が二〇一八年度予算で初めて五兆円を突破し、一九年度は五兆三千億円に達する見込みであることが分かった。輸送機オスプレイなど安倍政権で急増した米国製の高額兵器導入が、大きな要因となっている。兵器の輸入拡大に伴い、毎年の後年度負担の支払いも増加しており、防衛費の大幅増につながっている。(「税を追う」取材班)
 
 日本は近年、米国政府の「対外有償軍事援助(FMS)」に基づき、兵器を多く輸入している。一九年度は最新鋭戦闘機F35A(六機・九百十六億円)、早期警戒機E2D(二機・五百四十四億円)、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」(二基・二千三百五十二億円)などの購入契約を結ぶ方針だ。
 FMSの契約額は一二年度予算で千三百八十一億円だったが、同年末に安倍政権が発足してから急増。防衛省は一九年度予算で、一二年度の五倍の六千九百十七億円を要求している。
 
 兵器の購入費は最長五年間に分割して米政府に支払っており、二年目以降のローン残高が後年度負担と呼ばれる。米国製兵器の導入拡大に伴い、国内調達分を含めた後年度負担の残高も急増。一九九八~二〇一二年度までは三兆円前後で推移していたが、一三年度以降は右肩上がりで、一九年度は五兆三千三百七十二億円と六年間で約二兆一千億円も増える見通しだ。
 残高全体に占めるFMSの割合は、一三年度の5・9%から一九年度28・3%と急速に拡大している。
 
 防衛予算は安倍政権下で毎年増大。一九年度の要求額は五兆二千九百八十六億円で、六年間で約五千四百億円増えた。だが防衛費の借金とも言える後年度負担の残高は一八年度時点で年間予算に匹敵する額に膨らみ、予算を圧迫している。
 政府は年内に、向こう十年程度の防衛力整備の指針となる「防衛大綱」を見直し、一九~二三年度の装備品の内容や総額を示す中期防衛力整備計画(中期防)を策定する。兵器増強や防衛予算の硬直化を解消するため、防衛費のさらなる増大を打ち出すとみられる。
 来年十月に消費税率が10%に引き上げられる。税金は正しく使われているのか。シリーズ「税を追う」では初めに、増え続ける防衛費の流れを追い、無駄や利権がないか検証する。
 
◆日米の軍事一体化で加速
 急増する米国からの兵器導入が防衛費を押し上げている。国産の装備品も含めたローン残高は年間の防衛予算に匹敵するまでに増大しており、返済が追いつかない状況になっている。
 
 政府は防衛力増強の理由に北朝鮮のミサイル開発や中国の軍備増強を挙げ、日米の一層の軍事一体化を進める。二〇一五年の安全保障関連法の成立後、米艦船や米機の護衛など自衛隊の任務は大きく拡大した。さらに拍車をかけたのが、兵器売り込みで対日貿易赤字の解消を迫るトランプ大統領の登場だ。圧力に押されるように、日本は後年度負担という名の「兵器ローン」で、輸入を加速させている。
 そのツケとも言うべき毎年の支払いが、国家予算に重くのしかかる。国と地方の借金は一千兆円を超え、社会保障制度の安定や財政再建はまったなしだ。後年度負担が今のペースで増え続ければ、防衛費増大に歯止めがかからなくなる。 (鷲野史彦)
 
<対外有償軍事援助(FMS)> 米国政府が同盟国に軍事援助の一環で武器を売る制度。米国防総省の国防安全保障協力局が所管している。買い手は高性能の武器が購入できる半面、▽価格、納入期限は米政府の都合で変わる▽代金は納品前に支払い-など米国に有利な内容となっている。
 
◆今の環境で削減困難
<防衛省会計課の話> 後年度負担が増えている要因は、北朝鮮のミサイルに対応する装備品が増えたためだ。装備品が高性能化して単価が上がったことも一因。後年度負担の削減に向けた取り組みは続けているが、今の安全保障環境で減らしていくのは難しい。
 
 
<税を追う> 取引先1位は米政府 装備品、「言い値」で高騰度々
東京新聞 2018年10月29日
 防衛省の最大の取引先は国内企業ではなく、アメリカ政府-。安倍政権で米国の「対外有償軍事援助(FMS)」に基づく兵器導入が急増し、米国は二〇一五年度から三年連続で契約先のトップに立つ。「バイ・アメリカン(米国製品を買おう)」。兵器購入を迫るトランプ米大統領に応じてきた安倍晋三首相。だが、米側の「言い値」で決まりがちな価格など、米国主導の取引により、防衛予算の借金が膨らんでいる。 (「税を追う」取材班)
 
 「安倍政権の米国製装備品の積極的な購入は、事実が物語っている」。今年六月の参院外交防衛委員会。井上哲士(さとし)議員(共産)が防衛省から取り寄せた資料を基に切り出した。
 地方防衛局分を除いた防衛省の装備品契約額。一二~一四年度は国内最大手の三菱重工業が一位で、米国政府は一三年度の二位(千六十九億円)が最高だった。それが一五年度からはトップに居続ける。一七年度は三千八百七億円で、二位の三菱重工業に一千億円以上の差をつけた。
 「(ミサイル防衛の)イージスシステムやF35A戦闘機といったわが国を守るために必要な装備品はFMSでしか調達できない」。小野寺五典(いつのり)防衛相(当時)はそう答弁し、「今後とも米国と連携する」と日米一体化を強調した。その一つが一九年度に契約予定の地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」だ。
 
 防衛省は秋田市と山口県萩市・阿武町にある二つの演習場に配備する方針で、価格は二基で計二千三百五十二億円。だが一九年度に支払うのは五十七億円だけで、残る二千二百九十五億円は二〇年度以降、四年に分けて支払う。
 「北朝鮮は核兵器を放棄せず、対応策は必要だ」。元航空自衛隊空将の織田(おりた)邦男氏は地上イージスの意義は認めつつ、「米国は秘の部分は教えてくれない。問題は価格の中身が分からないことだ」と案ずる。
 
 FMSでの兵器の取引価格は米側が見積もるため、値段は言い値になりがちだ。日本向けに部品を作り直すなどの理由で、当初の見積もりから価格が高騰することも度々ある。日本側が適正価格を検証するのは難しく、米側の圧倒的優位は動かない。
 
 米国製兵器の導入拡大により、複数年度で支払う後年度負担(ローン残高)は急増。一九年度の支払いは国産を含め、二兆七百八億円と予算全体の四割を占める。これに人件費と糧食費を合わせると八割が固定的な経費となり、新たな装備品の購入などに使える「自由枠」は二割しかない。
 防衛省では、予算の硬直化への懸念が広がる。ある幹部はつぶやく。「後年度負担に圧迫され、これ以上切り詰められないところまで来ている」
 
<イージス・アショア> イージス艦に搭載している迎撃ミサイルを地上に配備し、大気圏外で弾道ミサイルの迎撃を図るシステム。防衛省は2024年度ごろに山口、秋田両県に2基を配備し、日本全域のカバーを目指すが、強力なレーダー波による健康被害を懸念する声も出ている

日中首脳会談「3原則」の大ウソ 誰からも信頼されなくなる

 安倍首相は日中首脳会談で「日中関係の道しるべとなる3つの原則を確認した」として「競争から協調へ」「互いに脅威とならない」「自由で公正な貿易体制の発展」を挙げましたが、外務省は26日、「一連の会談で『3原則』との言葉でこれら諸点に言及したことはない」と否定する文書を発表しました。
 要するに3つの原則を合意した事実はないということで、外務省が即座に否定したのは勿論「事実に反する」からですが、それだけではなく、来年6月に期待される習近平主席の訪日の際にはこの3原則を基本文書化するようにと厳命されているものの、中国がそれに応じるという保証がないからということです。外務省としては、アメリカとの関係も考慮したのでしょう。
 
 天木直人氏は、安倍首相としては、過去の四つの歴史的基本文書につぐ五番目の文書をつくりたかったが間に合わなかったため、3原則の合意が出来たと改ざん発言して、今度の訪中の成果を誇大宣伝したかったのだとしています。
 
 この「事件」は、日米首脳会談で非関税貿易障壁も含めた二国間協議(FTA)を受け入れさせられたのに、それを国内向けには、農産品などの関税に限定された協議(TAG)であるとごまかした事例に似ています。アメリカはFTAで迫ると決めているので、敢えて日本政府が国内向けに独自の新用語を使っても意に介さなかったのでしょうが、今度の日中間の「3原則の合意」云々は、それと同一に考えるわけにはいきません。
 日刊ゲンダイは、2012年末に政権に返り咲いて以降一貫して海外に向けて「中国脅威論」を唱えるなどこれまで中国に対して敵意ムキ出しだった人間が、突然「3原則」を言っても中国側が信用するはずがないと述べています。
 
 米ワシントン・ポスト紙は今度の日中首脳会談を、「トランプ氏の盟友の日本の首相が中国首脳にすり寄ろうとしている」と報じたということです。
 ただ「強いものにつく」ということでは誰からも信用されません。近隣諸国との友好関係は必須だという原則に立つという気概を持つべきでしょう。
 22日から北朝鮮を訪問していた「福岡県日朝友好協会訪問団」北原守団長26日、北の外務省幹部が日朝会談の実現について、「安倍政権の姿勢では厳しい」と話したことを明らかにしました安倍首相は北朝鮮を弱小国と見くびって、あれだけ好き勝手に批判してきたのですから、おいそれと日朝首脳会談が出来る筈がありません。そうなると今度トランプ氏にとりなしを頼む(当然高いものにつきます)というのでは、相手に足許を見られるだけ、児戯に等しい行為です。
 
 日刊ゲンダイの記事と天木直人のブログを紹介します。
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日中首脳会談「3原則」の大ウソ 安倍首相は米中で信頼失う
日刊ゲンダイ 2018年10月29日
「これからの日中関係の道しるべとなる3つの原則を確認した」――。安倍首相が日中首脳会談の“成果”をこう強調していることに対し、外務省が火消しに躍起になっている。安倍首相は習近平国家主席や李克強首相との会談で、今後の日中関係について「競争から協調」「互いに脅威とならない」「自由で公正な貿易体制の発展」の3原則を確認したといい、首相官邸フェイスブックで発信したり、フジテレビのインタビューでもアピールしたりしていた。
 ところが、外務省は先週26日、〈一連の会談で『3原則』との言葉でこれら諸点に言及したことはない〉と否定する文書を発表。翌27日にもわざわざ記者に「『3原則』とは言っていない」と念押ししたほどだ。
 
「首脳会談で決まった内容は条約に匹敵するほど重い。外務省が否定しているということは、日中間で合意には至っていないということ。恐らく功を焦った安倍首相がつい口を滑らしたのでしょう。仮に中国側が『そんな原則は決めていない』と発表したら、大変な問題になりますよ」(元外交官の天木直人氏)
 
 日中関係の改善は結構だが、そもそも対中関係を悪化させてきた張本人は安倍首相自身だ。2012年末に政権に返り咲いて以降、「中国脅威論」をタテに防衛費を拡大させ、尖閣上陸を念頭に自衛隊内に離島奪還専門部隊の「水陸機動団」を発足させた。中国包囲網を築くため、中国を取り囲むようにモンゴルや中央アジアなどにカネをバラまき、中国主導の現代版シルクロード構想「一帯一路」を牽制してきたのだ。今まで敵意ムキ出しだった男が突然、「3原則」を言っても中国側が信用するはずがない
 
 外務省が「3原則発言」に神経をとがらせているワケは他にもある。米国との関係だ。中国と激しい貿易戦争を繰り広げているトランプ大統領が、習近平国家主席と笑顔で握手しながら「やっぱり保護貿易はダメだ」なんて笑っている安倍首相の姿を見たらどう動くか。トランプ大統領は早速、日本が市場を開放しない場合、日本車に20%の関税をかけると警告しているが、年明けに始まる日米貿易交渉でも影響が出るだろう。
 
〈トランプ氏の盟友、日本の首相が中国首脳にすり寄ろうとしている〉。米ワシントン・ポスト紙は日中首脳会談の様子をこう報じていたが、米国が強ければ対米従属し、中国の力が強くなれば中国にも尻尾を振る。日本としての確固たる信念も何もない。米中のどちらにもいい顔をした結果、日本だけがババを引くことになりかねないだろう。一体、どこが「外交のアベ」なのか。 
 
 
読売と毎日が報じた安倍首相の訪中成果改ざん発言
天木直人のブログ 2018年10月28日
 鳴り物入りで行われた安倍訪中も終わった。
 その安倍訪中をきのう10月27日の大手紙は一斉に社説で限定的に評価した。
 前進した事は良かったがすべてはこれからだと。
 棚上げした困難な問題を克服できるかはこれからだと。
 経済協力だけで乗り切れるのか、米中対立が激しくなる中で日本は板挟みになるおそれはないかと。
 それでも最悪の関係から一歩前進した事は評価できると。
 私もそう思う。
 誰もが考える評価であり、誰もが抱く懸念だ。
 
 そんな中で、ひとり産経の社説だけが、「今度の安倍訪中は砂上の楼閣に終わる」と否定的に評価をした。
 それからわずか一日たって、やはり産経が正しかった。
 そう思わせるスクープ報道を、奇しくもきょう10月28日の読売と毎日が書いた。
 その要旨はこうだ。
 つまり、安倍首相は李克強首相、習近平主席との会談の後、自らのツイッターやフェイスブックで書き、ご丁寧にフジテレビのインタビューでも自慢した。
 今度の訪中では、今後の日中関係の道しるべとなる三原則を確認したと。
 
 その三原則とは次の三つだ。
 1.競争から協調へ
 2.日中はパートナーであり、互いに脅威とならない
 3.自由で公正な貿易体制の維持
 本当に、この三原則で合意したなら、今度の安倍訪中は歴史的な前進である。
 ところが、三原則で合意したとは、中国外務省の発表にはどこにも出て来ない。
 李克強首相も習近平主席も、三原則などという言葉を発していない。
 どうなっているのか。
 そこを同行記者団からつかれた西村康稔官房副長官は、「三原則という言い方はしていない」と釈明し、外務省幹部も、「原則は呼びかけたが三原則という言葉は使わなかった」と重ねて否定したというのだ。
 
 これは重大な食い違いである。
 なぜ、このような食い違いが起きたのか。
 それは明らかだ。
 安倍首相としては、過去の四つの歴史的基本文書につぐ五番目の文書をつくりたかったが間に合わなかった。
 そこで、口先だけでも三原則の合意が出来たと改ざん発言して、今度の訪中の成果を前のめりに誇大宣伝したかったのだ。
 その矛盾を突かれ、なぜ西村官房副長官や外務省幹部は、安倍首相の発言を否定せざるをえなかったのか。
 もちろん、それは事実に反するからである。
 しかし、それだけではない。
 来年6月に期待される習近平主席の訪日の際にはこの三原則を文書にして第五の基本文書を何としてでも作りたい。
 そう安倍首相から西村官房副長官や外務省は厳命されている。
 しかし、果たして中国がそれに応じるか保証はない。
 後退した表現に終わると日中関係が前進どころか停滞したと受け止められる恐れがあるからだ(毎日)。
 
 おまけに、はたして習近平主席は来年6月に訪日するのか。
 今回の首脳会談で安倍首相は招待したけれど、習近平主席は確約しなかった。
 きょうの読売と毎日のスクープ報道が教えてくれた事。
 それは今度の安倍訪中は、安倍首相お得意の、事実を改ざんしてまで宣伝する日中友好関係の構築外交に過ぎなかったのだ。
 「砂上の楼閣」だと書いた産経の社説が正しかったのだ。
 ところが、この改ざん発言を、産経は書かない。
 インタビューまでしているのにである。
 やはり産経はダメ新聞である(了)