2013年11月30日土曜日

ツワネ原則 (国家安全保障と情報への権利に関する国際原則)

 インターネットで公表されている「ツワネ原則の概要」を紹介します。
 
(原記事)
 
2013年6月に南アフリカ共和国の首都・ツワネで示された。この原則は、アメリカの財団(Open Society Justice Initiative)の呼び掛けの下、国際連合、人及び人民の権利に関するアフリカ委員会、米州機構、欧州安全保障協力機構の特別報告者を含む、世界70か国以上の500人以上の専門家により、計14回の会議を経て作成された。
ツワネ原則は、国家安全保障への脅威から人々を保護するための合理的な措置を危険にさらすことなく、政府の情報への公的アクセスをどう保障するかという問題に対して、関連法令の起草に関わる人々への指針を提供するために作成され、秘密保全の適正な限界、内部告発者の役割、その他の諸問題についての詳細なガイドラインを示しており、国家安全保障と国民の情報へのアクセスを検討するに当たっての視点として参考となる。
 
  
 
(1)情報アクセス権とその制限
誰もが公的機関の情報にアクセスする権利を有しており、その権利を制限する正当性を証明するのは政府の責務である(原則1, 4)。
政府は、防衛計画、兵器開発、諜報機関により使用される作戦・情報源等の限られた範囲で合法的に情報を制限することができる(原則9)。
 
(2)公開により得られる公益の高い情報
政府は、国際人権法及び国際人道法の違反についての情報は決して制限してはならない。
この情報には、前政権の過去の違反についての情報及び現政府の関係者又は他者により犯された違反についての情報も含まれる。また、この情報には、違反が明らかな場合のみならず違反が疑われるような場合に、真実を明らかにするための情報も含まれる(原則10A)。
公衆に対する監視システムと監視の実施のための許可手続について、公衆は知る権利を有する。違法な監視の事実は、監視対象となった者のプライバシー権を侵害しない限り開示されるべきである(原則10E)。
安全保障部門や諜報機関を含めたいかなる政府機関も情報公開の必要性から免除されない。公衆は、全ての安全保障部門・機関の存在、それらを統制する法律及び規則、それらの予算についても知る権利を有する(原則5, 10C)。
 
(3)秘密指定と指定解除のためのルール
情報は、必要な期間にのみ限定して秘密指定されるべきであり、決して無期限であってはならない。政府が秘密指定を許される最長期間を法律で定めるべきである(原則 16)。
秘密解除を請求するための手続が明確に定められるべきである。その際、公益に関する情報を優先的に秘密解除する手続も定められるべきである(原則17)。
 
(4)裁判手続の公開
裁判手続の公開は不可欠である。裁判手続の公開という基本的権利の侵害のために、国家安全保障が発動されてはならない。公衆には裁判手続の公開の制限に対して異議を唱える機会が認められるべきである(原則28)。
刑事裁判において、公平な裁判を実現するために、公的機関は、被告人及びその弁護人に対して、秘密情報であっても公益に資すると思慮する場合は、その情報を開示すべきである。公的機関が公平な裁判に欠かせない情報の開示拒否をした場合、裁判所は、訴追を延期又は却下すべきである(原則29)。
民事裁判において、人権を侵害された者がその侵害行為への救済策を請求し又は入手することを阻害するような国家秘密等を、政府が秘密のままにすることは許されない(原則30)。
 
(5)監視機関
安全保障部門には独立した監視機関が設けられるべきである。監視機関は、実効的な監視を行うために必要な全ての情報に対してアクセスできるようにすべきである(原則 6, 31-33)。
 
(6)内部告発者の保護と情報漏えい者に対する訴追
内部告発者は、明らかにされた情報による公益が、秘密保持による公益を上回る場合には、報復を受けるべきではない。しかし、効果的な公的な不服申立て制度があるときは、内部告発者は、最初に、公的な不服申立て制度によりその問題を伝える努力をすべきである(原則40, 41, 43)。
情報漏えい者に対する刑事訴追は、明らかになった情報により生じる公益より、現実的で確認可能な重大な損害を引き起こす危険性が大きい場合に限って検討されるべきである(原則43, 46)。
公務員でない者は、秘密情報の受取、保持若しくは公衆への公開により、又は秘密情報の探索、アクセスに関する共謀その他の罪により訴追されるべきではない(原則 47)。また、公務員でない者は、情報流出の調査において、秘密の情報源やその他の非公開情報を明らかすることを強制されるべきではない(原則48)。
 
   事務局追記
     なお、日本弁護士連合会が公表している「国家安全保障と情報への権利に関
    する国際原則 (ツワネ原則)」全文の日本語訳(PDF版)は下記でご覧になれま
    す。
 

 

「秘密国家への道は廃案に」と ノーベル賞学者ら会を結成

 ノーベル賞受賞者を含む31の学者が「特定秘密保護法案に反対する学者の会」を結成し、28日、「法案は憲法の基本的人権と平和主義を脅かす立法で、直ちに廃案とすべきだ」とする声明を発表しました
 
 メンバーには、ノーベル物理学賞の益川敏英氏や、化学賞の白川英樹氏のほか、法学、経済学、哲学などの著名学者たちが名を連ね三百人以上の学者が賛同の意思を示しています。
 政治的な問題で、幅広い分野の学者が団体をつくり、反対の態度を表明するのは1950年代に、ノーベル物理学賞の湯川秀樹らが憲法問題研究会をつくって改憲反対の立場を表明して以来ということです
 
 声明では、「さまざまな国民の階層、市民の間に広く批判が広がっているにもかかわらず、何が何でも特定秘密保護法を成立させようとする政府の政治姿勢は、思想の自由と報道の自由を奪って戦争へと突き進んだ戦前の政府を髣髴とさせる。
 いったい今なぜ特定秘密保護法を性急に立法する必要があるのか何も説明されていない。外交・安全保障等に関して、短期的・限定的に一定の秘密が存在すること否定しないものの、それは恣意的な運用を妨げる十分な担保や、しかるべき期間を経れば情報がすべて開示される制度を前提とした上でのことである。行政府の行動に対して、議会や行政府から独立した第三者機関の監視体制が確立することも必要である」と訴えています。
 
 また特定秘密保護法案は、「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則 (ツワネ原則)」にもことごとく反しています。 ツワネ原則の基本(別記事参照)は
国際人権・人道法に反する情報は秘密にしてはならない
秘密指定の期限や公開請求手続きを定める
すべての情報にアクセスできる独立監視機関を置く
情報開示による公益が秘密保持による公益を上回る場合には内部告発者は保護される
メディアなど非公務員は処罰の対象外とする。
というもので、国家の安全や利益が何かを誠実に考えて合理的な秘密保護法を考えるなら必ず行きつくべき原則です。
 米国、英国、ドイツ、フランスなどの秘密保護法はツワネ原則(今年6月に発表)よりも先に制定されましたが、結果的に「ツワネ原則」に即しているといわれています
 さらに欧米は近年、むしろ情報公開を重視する方向に進んでいるということです。
 
 それを安倍政権は、何でも秘密にすることができれば政府にとって都合が良いから、というだけの低劣な功利性から秘密の範囲を最大限に広げ、その結果国民を取り締まることに専念する警察国家に逆戻りしかねない「特定秘密保護法案」の成立に躍起になっています。
 安倍首相は国会でツワネ原則に反していると糾されても、それはまだ公認されたものではないと一蹴しています。不誠実な政府というしかありません。
 
 また29日、「児童書出版関係者有志」特定秘密保護法案の廃案を求める共同声明を発表しました
 
 以下に、学者たちの会結成の記事、同声明文、児童書関係者たちの反対声明に関する記事を紹介します。
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「秘密国家へ道、廃案に」 分野超え、ノーベル賞学者ら会結成
 東京新聞 2013年11月29日
 高まる懸念を置き去りに、衆院で採決が強行された特定秘密保護法案の成立を阻むため、学者らが分野を超えて決起した。二人のノーベル賞受賞者を含む三十一人が「特定秘密保護法案に反対する学者の会」を結成。「法案は憲法の基本的人権と平和主義を脅かす立法で、直ちに廃案とすべきだ」との声明を二十八日発表した。 
 メンバーには、ノーベル物理学賞の益川敏英・名古屋大特別教授、化学賞の白川英樹・筑波大名誉教授のほか、法学、経済学、哲学などの著名学者らが名を連ねた。インターネットを通じ、三百人以上の学者が賛同の意思を示しており、さらに増える見込み。
 政治的な問題で、幅広い分野の学者が団体をつくり、反対の態度を表明するのは異例。大きなうねりとなれば、岸信介内閣だった一九五〇年代に、ノーベル物理学賞の湯川秀樹らが憲法問題研究会をつくって改憲反対の立場を表明して以来、半世紀ぶりとなる。
 
 声明では「知る権利や国政調査権が制限され、表現や学問の自由が侵害される恐れがある」と指摘。「市民の目と耳をふさぎ、『秘密国家』『軍事国家』への道を開く」と廃案を求めた。衆院で採決強行の末に法案を通過させた自民党の姿勢にも「戦争へと突き進んだ戦前の政府をほうふつとさせる」と抗議した。
 記者会見で久保亨・信州大教授(歴史学)は「日本は世界的に見て、公文書管理や情報公開の取り組みが遅れている国。なぜこんな法律をつくるのか」と疑問を投げかけた。
 改憲に反対する「九条の会」の事務局長も務める小森陽一・東大教授(文学)は「政府が憲法違反の決定をしても秘密にされる。秘密保護法ではなく『秘密隠蔽(いんぺい)法』だ」と憤った。
 
◆国民が危機感持たねば  益川敏英・名大特別教授
 益川敏英・名古屋大特別教授は会見には出席しなかったが、二十八日、本紙の電話取材に応じた。
 政治をやる上で、秘密にし続けなければならないことはありません。外交や国防に関する内容であっても、後から必ず公開されるのが大原則です。無制限に秘密を指定できる法案を通せば、恐ろしいことが起こります。国民は、政治の決定プロセスが明らかにならないことに、だんだん慣れてしまうでしょう。社会というのはなし崩し的に変わる。安倍晋三首相の施策からは「日本を戦争ができる国にする」という意図が透けて見えます。
 今回、専門分野を超えてこれだけの学者が集まったのは、国民全般の生活に関わるからです。それだけの危機感を持たなければならない問題なのです。
 
 
「声明全文」
秘密保護法案反対 学者の会声明全文
東京新聞 2013年11月29日
 国会で審議中の特定秘密保護法案は、憲法の定める基本的人権と平和主義を脅かす立法であり、ただちに廃案とすべきです。
 特定秘密保護法は、指定される「特定秘密」の範囲が政府の裁量で際限なく広がる危険性を残しており、指定された秘密情報を提供した者にも取得した者にも過度の重罰を科すことを規定しています。この法律が成立すれば、市民の知る権利は大幅に制限され、国会の国政調査権が制約され、取材・報道の自由、表現・出版の自由、学問の自由など、基本的人権が著しく侵害される危険があります。さらに秘密情報を取り扱う者に対する適性評価制度の導入は、プライバシーの侵害をひきおこしかねません。
 民主政治は市民の厳粛な信託によるものであり、情報の開示は、民主的な意思決定の前提です。特定秘密保護法案は、この民主主義原則に反するものであり、市民の目と耳をふさぎ秘密に覆われた国、「秘密国家」への道を開くものと言わざるをえません。さまざまな政党や政治勢力、内外の報道機関、そして広く市民の間に批判が広がっているにもかかわらず、何が何でも特定秘密保護法を成立させようとする与党の政治姿勢は、思想の自由と報道の自由を奪って戦争へと突き進んだ戦前の政府をほうふつとさせます。
 さらに、特定秘密保護法は国の統一的な文書管理原則に打撃を与えるおそれがあります。公文書管理の基本ルールを定めた公文書管理法が二〇一一年に施行され、現在では行政機関における文書作成義務が明確にされ、行政文書ファイル管理簿への記載も義務づけられて、国が行った政策決定の是非を現在および将来の市民が検証できるようになりました。特定秘密保護法はこのような動きに逆行するものです。
 いったい今なぜ特定秘密保護法を性急に立法する必要があるのか、安倍首相は説得力ある説明を行っていません。外交・安全保障等にかんして、短期的・限定的に一定の秘密が存在することを私たちも必ずしも否定しません。しかし、それは恣意(しい)的な運用を妨げる十分な担保や、しかるべき期間を経れば情報がすべて開示される制度を前提とした上でのことです。行政府の行動に対して、議会や行政府から独立した第三者機関の監視体制が確立することも必要です。困難な時代であればこそ、報道の自由と思想表現の自由、学問研究の自由を守ることが必須であることを訴えたいと思います。そして私たちは学問と良識の名において、「秘密国家」・「軍事国家」への道を開く特定秘密保護法案に反対し、衆議院での強行採決に抗議するとともに、ただちに廃案にすることを求めます。
 
 
特定秘密保護法案に反体声明=児童書関係者
時事通信 2013年11月29日
 作家の角野栄子さん、森絵都さんや編集者ら約150人でつくる「児童書出版関係者有志」が29日、参院で審議中の特定秘密保護法案の廃案を求める共同声明を発表した。
 国民の知る権利の侵害などへの懸念を指摘した上で、「法制化されると、秘密だらけの息苦しい非民主的な国家ができかねない。私たちは次の世代に自由で民主的、平和的な社会を残す責務がある」として、いったん廃案にし、議論を尽くすよう求めた。
 
 

2013年11月29日金曜日

竹富町教科書問題で沖縄県教委も健闘

 28日文科省は沖縄県教育委の諸見里教育長と面会し、速やかに竹富町に対し是正要求するよう指導しました独自に中学校公民の教科書を選択した八重山地区の竹富町に対して、県教育委が是正の要求を先送りしていることに対するものです。
 
 県教育委も竹富町教育委と同様に、文科省の圧力に屈しないでいることをうかがわせるものです。
 断固その姿勢を貫いて欲しいものです。
 
 それと好対照なのが、沖縄の自民党の国会議員団5人と県議会議委員団15人です。
 彼らはともに選挙で普天間基地の県外移設(辺野古移設反対)を公約に掲げて当選し、当選後もそれを守ってきたのですが、先日、国会議員団5人が自民党本部に呼び出され、離党勧告をちらつかせながら圧力を掛けられたところ、たちまち辺野古移設容認に転じました。
 そして27日には、今度は自民党県連が県議団の議員総会を開き、辺野古移設を容認する方針を決めました。 
 まさに我が身の安全のためには、「選挙公約」などは弊履のごとくに捨て去るというわけで、驚くというよりもただただ呆気に取られます。
 
 東京新聞の教科書問題の記事と、沖縄タイムスの怒りの社説を紹介します。
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教科書問題で沖縄県教委に指導 文科省
東京新聞 2013年11月28日
 沖縄県教育委員会が教科書採択をめぐる同県竹富町教委への是正要求を先送りしていることを受け、上野通子文部科学政務官は28日、文科省内で沖縄県教委の諸見里明教育長と面会し、速やかに是正要求するよう指導した。
 
 上野政務官は「文科省が10月に指示したにもかかわらず、是正要求していないのは遺憾だ。仮に要求しなければ県教委の法律違反になる」と強調。県教委が判断を先送りしている理由を説明するよう求めた。(共同)
 
 
社説) 自民県連 辺野古容認 恥ずべき裏切り行為だ
沖縄タイムス 2013年11月28日 
 沖縄関係の自民国会議員5人に続き、県議団(議員15人)も「県外移設」の公約をあっさり撤回した。「みんなで渡れば怖くない」を地でいくような雪崩現象だ。 
 有権者はこれから何を信じて投票すればいいのか。「信なくば立たず」という格言があるように、言ったことを守り、ウソをつかないことが政治の信頼を維持する前提だ。有権者を欺き、政治への不信感を極限まで高めてしまった責任は限りなく重い。 
 東京・永田町の自民党本部で開かれた石破茂幹事長の会見の光景は、歴史の歯車が1879(明治12)年の琉球処分まで後戻りしたような印象を抱かせた。 
 説明する石破幹事長は琉球処分官。一言も発言する機会がなく、椅子に座ったまま硬い表情の国会議員5人は、沖縄から連行され、恭順を誓った人びと…。 
 国場幸之助衆院議員ら3人は、それまで「県外移設」の公約を堅持していた。離党勧告をちらつかせた党本部の圧力に耐えきれなくなったのである 
 27日には、自民党県連(翁長政俊会長)が県議団の議員総会を開き、米軍普天間飛行場の辺野古移設を容認する方針を決めた。 
 外堀から埋めていって、「オール沖縄」の構図を崩し、政治状況が変わったことを理由に仲井真弘多知事の翻意を促す-それが、安倍政権と自民党が一体になって進めてきた沖縄対策だ 
 だが、この方針は、政府自民党の強権的な手法と強引さを際立たせる結果を生んでいる。もういちど思い起こしてみよう。 
 自民党県連は、2010年の参院選沖縄選挙区、12年末の衆院選で、党本部とは異なる「県外」の公約を掲げて戦い、衆参合わせて5人を当選させた。昨年6月の県議選で当選した15人も、そのほとんどが県外もしくは県外・国外を公約に掲げた。 
 県内41市町村の代表らは今年1月、安倍晋三首相に会い、建白書を提出してオスプレイの配備撤回や県内移設の断念を要請した。自民党県議団は、その要請行動にも他の会派と共に加わっている。 
 現在の自民党の国会議員と県議の大部分は「県外移設」を公約に掲げて当選した人びとであり、どの党にもまして県外移設に力を入れなければならない政治的な義務を負っているのである。 
 それができないのなら、関係議員は全員辞職し、あらためて辺野古移設の公約を掲げ、信を問うべきだ。それが代表制民主主義の王道である。 
 国会議員や県議団は公約撤回の理由について「普天間の固定化を避けるため」だと主張する。 
 政府自民党首脳が「県外移設を求めるなら普天間は固定化する」と指摘するのは、沖縄の声を分断し、県外移設の公約を撤回させるための政治的な揺さぶりである。脅し以上の意味はない。 
 思い通りに進まないことに対するいらだちの表れだとみたほうがいい。 
 米軍が普天間返還に合意したのは(1)訓練の制約要因が多すぎる(2)墜落事故の危険性を除去する必要がある(3)施設全体が老朽化していることなど、米軍の中にも移設しなければならない理由があったからだ。 
 そもそも普天間の固定化とは一体何を指すのか。返還計画そのものを白紙に戻すことなのか、返還が計画よりも遅れるということなのか。計画の遅延ということであれば、すでに固定化されていると言うべきだろう。 
 普天間返還を白紙化することはあり得ない。グアム移設計画を含む米軍再編そのものが頓挫し、あらゆる問題に波及するからだ。 
 仲井真知事は普天間固定化発言について「簡単に固定化を口にする役人がいるとすれば無能」「一種の堕落」であると批判した。至言である。 
 政府は辺野古が唯一の選択肢だと強調する。ならば、安倍政権は、ほかにどのような選択肢を検討したのか、どのプランのどこに問題があったのかをまず明らかにすべきである。 
 それもせず結論だけを押しつけるのは情報操作と言うしかない。
 
 

オランダ慰安婦の体験集 「折られた花」 日本でも出版

 第2次世界大戦中、日本軍によって従軍慰安婦にされたオランダ人女性8人の体験談を集めた「折られた花」が28日までに日本で出版されました。元慰安婦支援に携わったオランダのマルゲリート・ハーマーさんがまとめました
 
 日本軍が侵攻した当時のインドネシアは300年あまりにわたってオランダの植民地となっていました。オランダ(Dutch)は当時日本に対して経済封鎖を行ったABCD包囲陣の1角とされていたので、インドネシアに居留していた約9万人のオランダ人は敵国人として捕虜収容所に強制収容され、若い女性たちはそこから従軍慰安婦として日本軍によって強制連行されました。
      ※ アメリカに言われインドネシア産出石油の対日輸出制限をしました
 
 終戦直後のオランダ軍法裁判では、被害女性は35人と認定されましたが、オランダ政府は1994年に入り、日本軍占領下のインドネシア各地の慰安所で働いていたオランダ人女性は200~300人とする報告書を出しました。
 
 10月はじめにオランダ軍法裁判「バタビア裁判・第106号事件」に関する公的な資料が、国立公文書館(東京)に保管されていることが分かり、強制連行の証拠資料として話題になりました。
 
 以下に東京新聞の記事を紹介します。
 
  (関連記事)
     2013年8月18日 オランダ人慰安婦問題にはどう対処するのか 
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オランダ慰安婦の体験出版 「折られた花」
東京新聞 2013年11月28日
 【ロンドン共同】第2次世界大戦中、インドネシアを占領した日本軍によって従軍慰安婦にされたオランダ人女性8人の体験談を集めた「折られた花」が28日までに日本で出版された。元慰安婦支援に携わったオランダのマルゲリート・ハーマーさんがまとめた。
 
 タイトルは元慰安婦のエルナさん(仮名)が2006年に書いた詩から取った。「花」は少女時代の命の輝きを象徴し、エルナさんはそれが日本軍の性的奴隷となってしまったことで「永久に折られてしまった」と表現した。エルナさんは詩をしたためた数カ月後、84歳で亡くなった。

写真

2013年11月28日木曜日

特定秘密保護法案 街頭投票で反対73%

 「秘密保護法全国投票の会」14都府県で行った街頭シール投票の結果によると、期間前半の10月19日~11月10日の投票では反対が62%であったのに対して、後半の11月10日~24日では、反対が73%と10ポイントもアップし、大勢を占めたということです。
 
 政府は、法案の内容が知られると成立に支障があるとして、閣議決定するまで明らかにしませんでした。驚くべき身勝手・狡猾さです。
 マスメディアもまた内容について殆ど報道しなかったので、当初は世論調査などでも「秘密保護法の内容が分からない」という回答がかなりの部分を占めました。しかし内容が知られるようになってからは反対も増えました。まさに政府の狡猾さを裏付けるものです。
 
 マスメディアが本当に秘密保護法案の廃案を望むのであれば、いまこそ世論調査を大々的に行うべきでなのではないでしょうか。
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秘密法案、街頭投票で反対70% 市民団体「拙速は暴挙」
東京新聞 2013年11月27日
 14都府県の街頭で特定秘密保護法案の賛否を問う「シール投票」を実施した市民団体が27日、東京都内で記者会見し、今月10日~24日の投票で反対が73%に上ったことを明らかにした。これに先立つ10月19日~11月10日の投票では62%で、反対が増えた。
 団体は「秘密保護法全国投票の会」。事務局長の野田隆三郎岡山大名誉教授は「法案の内容が周知されるにつれ、反対が増えている。大急ぎで成立させるのは暴挙だ。安倍首相は反対の動きが盛り上がらないうちにと思って急いでいるのだろう」と批判した。(共同)
 
 

山梨県でベアテさんの映画上映

 故ベアテ・シロタ・ゴードンさんのドキュメンタリー映画「ベアテの贈りもの」が30日、山梨県北杜市で上映されます
 
 オーストリア生まれのベアテさんは少女時代を日本で過ごし、終戦後日本国憲法の草案作成に携わり憲法に「女性の権利」「男女平等」の概念を盛り込みました。
 そうした活躍が明らかにされたのはかなり後になってからでしたが、その後は招待に応じて何度か来日して各地で講演を行いました。
 
 昨年に89歳で死去しました。
(ベアテ 関連記事)
   2012年7月20日【憲法制定のころ5】 憲法調査会におけるベアテ参考人の陳述
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憲法の「成り立ち」知って 山梨、ベアテさん映画上映へ
朝日新聞 2013年11月27日
  日本国憲法の草案作成に携わり、憲法に「男女平等」の概念を盛り込んだ、故ベアテ・シロタ・ゴードンさんのドキュメンタリー映画「ベアテの贈りもの」(2004年・藤原智子監督)が30日、北杜市の生涯学習センターこぶちさわで上映される。映画の製作委員会副代表・落合良さんの講演もある。
 
 ベアテさんはオーストリア生まれ。1929年に来日し、大学進学のため渡米したが、連合国軍総司令部(GHQ)の民間職員として日本に赴任した。戦後、22歳のときに日本国憲法草案委員として、法の下の平等や男女の平等につながる内容を起案した。昨年12月に89歳で死去した。
 
 上映会は、(山梨)県内では見る機会が少ない名画を選んで自主上映する市民グループ「シネ・やまなし」が主催する。北杜市や富士川町で、25年にわたり上映会を開いてきた。今回の作品は、憲法改正の議論がされるなか、その成り立ちを知ってもらうために選んだという。代表の笠松みよこさん(69)は「特に若い人たちに見て考えてほしい」と話す。
 
 上映会は午後1時半と午後4時から。落合さんの講演は午後3時10分から。前売り800円(当日千円)、高校生以下無料。問い合わせ先は笠松さん(0551・32・2738)。
 
 

民意をおそれぬ強行採決は民主主義の土台を壊す

 27日の各紙社説は、特定秘密法案の衆院強行採決への批判の一色でした。
 例えば朝日新聞は(要旨)「数の力におごった権力の暴走で、前日の公聴会で全員から反対の訴えを聞いたばかりなのに、そうした民意を踏みにじる採決強行である。
 大量の秘密の指定は、実質的に官僚の裁量に委ねられ、「情報の闇」が官僚機構の奥深くに温存される。疑問を抱いた公務員の告発や、闇に迫ろうとする市民の前には、厳罰の壁が立ちはだかるという不合理と不正が現出する。
 法案はツワネ原則(国家安全保障と情報への権利に関する国際原則)にもことごとく反している。それなのに『知る権利を担保すれば個人の生存や国家の存立が担保できない』などという欺瞞を口にして恥じない。決して成立させてはならない法案である」と述べ、合わせて4面あまりを批判の記事で埋めています。
 他の各紙も同様な記事仕立てにしたのではないでしょうか。
 
 一方日刊ゲンダイは26日の夕刊で、(要旨)「大マスコミは、いまになってこの法案の危険性について反対キャンペーンを張っているが、あまりにも遅すぎる。首相がこの悪法を国会に提出する意向を表明したのは、半年以上も前の衆院予算委である。法案の骨格はとっくの昔にできていて、その危険性は弁護士らが早くから指摘していた。それから7ヶ月間、大マスコミがが法案の危うさを徹底的に暴き、国民に周知させ、憲法無視の悪法を葬り去るためのキャンペーンを張れば、事態は変わったはずなのだ」と、取り組みの遅さを批判しています。
 確かにその通りで昨年末の参院選でも、NHKを先頭にマスメディアは「ねじれ」の解消がテーマとばかりに、自民党の補完勢力どころか翼賛勢力であることが明らかにされた、みんなの党や維新の会の勢力伸張に熱心に協力したのでした。
 
 それはともかくとして、いまはなにより参院での成立の阻止に向けて、マスメディアも全力を注いで欲しいものです。
 
◇27日の主な社説タイトル
特定秘密保護法案 国民軽視の強行突破だ  東京新聞  
秘密保護法案強行 暴挙が危険性浮き彫りにした しんぶん赤旗
秘密保護法案衆院通過 民主主義の土台壊すな  毎日新聞  
特定秘密保護法案 民意おそれぬ力の採決  朝日新聞  
秘密保護法案の採決強行は許されない  日経新聞  
特定秘密法案採決 強行は国民主権の冒涜だ  新潟日報  
秘密法衆院通過 世紀の悪法を許すな 良識の府で廃案目指せ  琉球新報  
秘密法案衆院通過 数の暴挙は許されない  沖縄タイムス  
秘密法案衆院通過 強行採決は巨大与党の横暴  熊本日日新聞  
秘密法案衆院通過 問題は残されたままだ  佐賀新聞 
秘密保護法案衆院通過「知る権利」の後退は確実だ  宮崎日日新聞  
秘密保護法案 あらためて廃案を求める  西日本新聞  
秘密保護法案衆院通過 強行採決は説明責任の放棄だ  愛媛新聞  
秘密法案衆院通過 「知る権利」 踏みにじるな  徳島新聞  
秘密保護法案 将来に禍根残す強行採決  高知新聞  
秘密保護法案採決 国民の懸念置き去りに     中国新聞  
秘密保護法案 なぜ拙速に成立急ぐのか  山陽新聞  
秘密法案採決「数の力」 で押し切るのか  神戸新聞  
秘密保護法案 数の横暴は許されない  京都新聞  
特定秘密保護法案 国民の「知る権利」が危機  岐阜新聞  
特定秘密保護法案強行可決 強権政治、知る権利どこへ  福井新聞
秘密保護法 採決強行 議会政治の自滅行為だ  信濃毎日新聞  
秘密法の衆院可決 立法府の魂を捨てるな  神奈川新聞  
秘密保護法案衆院通過「知る権利」極めて危うい  茨城新聞  
秘密保護法案 禍根を残す採決強行だ  秋田魁新報  
秘密法案衆院通過 恐ろしい社会への一歩  岩手日報  
秘密法採決強行/疑念払拭へ審議を尽くせ  河北新報  
国民の懸念を置き去り「秘密法案」 衆院通過  東奥日報  
秘密保護法案、衆院通過 ノーを突き付けて廃案に  北海道新聞  
 
 朝日新聞と毎日新聞の社説を紹介します。
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特定秘密保護法案 民意おそれぬ力の採決
朝日新聞 2013年11月27日
 数の力におごった権力の暴走としかいいようがない。
 民主主義や基本的人権に対する安倍政権の姿勢に、重大な疑問符がつく事態である。
 特定秘密保護法案が、きのうの衆院本会議で可決された。
 報道機関に限らず、法律家、憲法や歴史の研究者、多くの市民団体がその危うさを指摘している。法案の内容が広く知られるにつれ反対の世論が強まるなかでのことだ。
 ましてや、おとといの福島市での公聴会で意見を述べた7人全員から、反対の訴えを聞いたばかりではないか。
 そんな民意をあっさりと踏みにじり、慎重審議を求める野党の声もかえりみない驚くべき採決強行である。
 繰り返し指摘してきたように、この法案の問題の本質は、何が秘密に指定されているのかがわからないという「秘密についての秘密」にある。これによって秘密の範囲が知らぬ間に広がっていく。
 
■温存される情報の闇
 大量の秘密の指定は、実質的に官僚の裁量に委ねられる。それが妥当であるのか、いつまで秘密にしておくべきなのかを、中立の立場から絶え間なく監視し、是正を求める権限をもった機関はつくられそうにない。
 いま秘密にするのなら、なおのこと将来の公開を約束するのが主権者である国民への当然の義務だ。それなのに、60年たっても秘密のままにしておいたり、秘密のまま廃棄できたりする抜け穴ばかりが目立つ。
 こうして「情報の闇」が官僚機構の奥深くに温存される。
 「これはおかしい」と思う公務員の告発や、闇に迫ろうとする記者や市民の前には、厳罰の壁が立ちはだかる。
 本来、政府が情報をコントロールする権力と国民の知る権利には、適正なバランスが保たれている必要がある。
 ただでさえ情報公開制度が未成熟なまま、この法案だけを成立させることは、政府の力を一方的に強めることになる。
 
■まずは国家ありき
 「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」という文書がある。
 この6月、南アフリカのツワネでまとめられた。国連や米州機構、欧州安全保障協力機構を含む約70カ国の安全保障や人権の専門家500人以上が、2年にわたって討議した成果だ。
 テロ対策などを理由に秘密保護法制をととのえる国が増えるなか、情報制限の指針を示す狙いがある。
 国家は安全保障に関する情報の公開を制限できると認めたうえで、秘密指定には期限を明記する▽監視機関はすべての情報にアクセスする権利を持つ▽公務員でない者の罪は問わないなど、50項目にのぼる。
 法案は、この「ツワネ原則」にことごとく反している。
 安倍首相は国会で、欧米並みの秘密保護法の必要性を強調したが、この原則については「私的機関が発表したもので、国際原則としてオーソライズされていない」と片づけた。
 これだけではない。国会での政府・与党側の発言を聞くと、「国家ありき」の思想がいたるところに顔を出す。
 町村信孝元外相はこう言った。「知る権利は担保したが、個人の生存や国家の存立が担保できないというのは、全く逆転した議論ではないか」
 この発言は、国民に対する恫喝(どうかつ)に等しい。国の安全が重要なのは間違いないが、知る権利の基盤があってこそ民主主義が成り立つことへの理解が、全く欠けている。
 
■世界の潮流に逆行
 一連の審議は、法案が定める仕組みが、実務的にも無理があることを浮き彫りにした。
 いま、政府の内規で指定されている外交・安全保障上の「特別管理秘密」は42万件ある。特定秘密はこれより限られるというが、数十万単位になるのは間違いない。
 これだけの数を首相や閣僚がチェックするというのか。
 与党と日本維新の会、みんなの党の修正案には、秘密指定の基準を検証、監察する機関を置く検討が付則に盛り込まれた。
 首相はきのうの国会答弁で第三者機関に触れはしたが、実現する保証は全くない。
 有識者会議の形で指定の基準を検証するだけでは、恣意(しい)的な指定への歯止めにはならない。役所が都合の悪い情報を隠そうとする「便乗指定」の懸念は残ったままだ。
 独立した機関をつくるならば、膨大な秘密をチェックするのに十分な人員と、指定解除を要求できる権限は不可欠だ。
 この法案で政府がやろうとしていることは、秘密の保全と公開についての国際的潮流や、憲法に保障された権利の尊重など、本来あるべき姿とは正反対の方を向いている。
 論戦の舞台は、参院に移る。決して成立させてはならない法案である。
 
 
社説:秘密保護法案衆院通過 民主主義の土台壊すな
毎日新聞 2013年11月27日
 あぜんとする強行劇だった。
 衆院国家安全保障特別委員会で特定秘密保護法案が採決された場に安倍晋三首相の姿はなかった。首相がいる場で強行する姿を国民に見せてはまずいと、退席後のタイミングを与党が選んだという。
 与党すら胸を張れない衆院通過だったのではないか。採決前日、福島市で行った地方公聴会は、廃案や慎重審議を求める声ばかりだった。だが、福島第1原発事故の被災地の切実な声は届かなかった。
 審議入りからわずか20日目。秘密の範囲があいまいなままで、国会や司法のチェックも及ばない。情報公開のルールは後回しだ。
 国民が国政について自由に情報を得ることは、民主主義社会の基本だ。法案が成立すれば萎縮によって情報が流れなくなる恐れが強い。審議が尽くされたどころか、むしろ法案の欠陥が明らかになりつつある。
 この法案について首相はさきの参院選で国民に十分説明せず、今国会の所信表明演説でも触れなかった。ところが今、成立ありきの強硬路線をひた走っている。衆参のねじれ状態が解消して4カ月での与党のおごりである。
 一部野党が安易な合意に走ったことも消せぬ汚点だ。日本維新の会、みんなの党両党との修正合意は法案の根幹を何ら変えていない。維新の会と「検討する」と合意した秘密指定の妥当性を判断する第三者機関の設置も確約されたとは言えない。
 秘密指定の最長期間が60年となるなど、改悪となりかねない部分すらある。これではまるで与党の補完勢力ではないか。
 衆院は通過したが、法案の必要性を改めて吟味する必要がある。
 国の安全が脅かされるような情報を国が一定期間、秘密にするのは理解できる。
 情報漏えいを禁じる法律は、国家公務員法、自衛隊法、日米相互防衛援助協定(MDA)秘密保護法があり、懲役の最高刑はそれぞれ1年、5年、10年だ。一方、政府は、過去15年で公務員による主要な情報漏えい事件が5件あったとの認識を示した。この三つの法律の枠内で、起訴猶予になったり、最高刑を大幅に下回る刑の言い渡しを受けたりしている。
 現行法の枠内で、情報が漏えいしないような情報管理のシステムを各行政機関内で構築して規律を守ることが先決だ。
 法案では、防衛・外交情報のほか、テロ活動防止などの名目の公安情報も特定秘密の対象となる。監視活動が中心の公安捜査は、国民の人権を制約する。
 情報を知ろうとする国民が処罰されるような強い副作用を覚悟の上で、新たな法律を今作る必要が本当にあるのか。
 「知る権利」に対する十分な保障がなく、秘密をチェックする仕組みが確立されていないなど問題点や疑問はふくらむばかりだ。