2017年8月31日木曜日

「新党憲法9条」代表 天木直人氏の野党批判3部作

 当ブログでしばしば記事を紹介させて貰っている天木直人氏は元駐レバノン日本国特命全権大使ですが、2016年8月29日に政治団体「新党憲法9条」 を設立し、その代表になっています。
 「新党憲法9条」代表としての発言はいつも極めてシビアで、認識を改めさせられることが多々あります。

 31日のブログで、「北朝鮮の弾道ミサイル発射に厳しく抗議する」と題する日本共産党の声明を手厳しく批判しました。その主旨は「北朝鮮に対する一方的非難」だけでは足りないとするものです。
 併せて30日に出した民主党代表選への批判のブログと、細野豪志・長島昭久・野間健議員の3人が新党結成を先行させるということへの批判のブログを紹介します。
 野党批判の3部作です。
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日本に本物の護憲政党は存在しない事を証明した閉会中審査
天木直人のブログ 2017年8月31日
 北朝鮮のミサイル発射に関する閉会中審査がきのう8月30日に急きょ開かれた。
 私はてっきり野党による安倍政権の対応に対する厳しい追及がなされるものと期待していた。
 なにしろ迎撃ミサイルシステムでは日本を防げないことが露呈したからだ。これ以上の税金の無駄はない。なにしろ、このまま米国と一緒になって北朝鮮に軍事的圧力をかけると、真っ先に犠牲を受けるのは日本だからだ。
 これほど国民の生命と財産をないがしろにする政治はない。

 ところが今朝の各紙を見ると、どこにも野党の追及は見られない。それどころか、与野党の全会一致で北朝鮮非難決議を採択している。いったい、この国の護憲政党は何をしているのか。
 そう思っていたら驚いた。護憲政党を売り物にしている天下の共産党が、いち早く、「北朝鮮の弾道ミサイル発射に厳しく抗議する」と題する声明を志位和夫共産党委員長の名前で出していたのだ。
 その内容はトランプ大統領や安倍首相の言っている事と同じだ。北朝鮮に対する一方的非難だ。
 どこにも北朝鮮に対する軍事的圧力への非難はない。こんな声明を出すような共産党は護憲政党ではない。
 憲法9条はもちろん北朝鮮の行為を認めない。しかし、憲法9条は、みずから核兵器を保持し、それを使って威嚇する米国と、その米国の核の傘に頼って北朝鮮との戦争を辞さない安倍首相の日本もまた、等しく認めないのだ。それが日本国前文と憲法9条に謳われている憲法9条の精神である。

 北朝鮮のミサイル発射が教えてくれた事。それはこの国の政治には本物の護憲政党が存在しないということだ。
 それだけではない。いわゆる護憲・リベラルと言われている朝日も毎日も東京も、その社説でこぞって北朝鮮を批判するばかりだ。米国との軍事同盟を最優先する安倍政権が憲法9条の精神に反している事を批判する社説は皆無だ。
 野党といい、護憲リベラル紙といい、北朝鮮は許せないという世論に迎合しているからそうなるのだ。
 世論に迎合してはいけない。世論を正しく覚醒させなければいけないのだ。
 憲法9条を世界に先駆けて持つ日本こそ、北朝鮮にも米国にも、そして中国やロシアに対しても、軍事力で平和を実現することは出来ない事を説得すべきである。それこそが日本だけしかできない平和外交である、と。
 この事を世論に気づかせる政党こそ真の護憲政党である。新党憲法9条の目指すものである(了)


前原か枝野かの選択しかない民進党代表選の不毛
天木直人のブログ2017-08-30
 いよいよ明後日9月1日に民進党の代表が決まる。
 予想では前原氏が優勢らしい。しかし前原代表ではとても安倍自民党には勝てない。なにしろ消費税10%増税を公約するようなピント外れだ。安倍首相でさえ、国民受けを狙って消費税増税見送りのサプライズを行うかもしれないと言われているのにである。
 その一方で、前原の安保政策は安倍首相となんら変わらない。これでは、逆立ちしても前原民進党は安倍自民党に勝てない。

 その一方で枝野氏はどうか。
 ひょっとしてリベラル派の巻き返しで逆転勝利するかもしれない。しかし、その枝野氏は、北朝鮮のミサイル発射を見て何と言ったか。
 「日米同盟を中心に関係諸国との連携を深め・・・毅然とした対応を取るべきだ。具体的な安全保障論は今の自民党と大きな違いはない・・・」と。
 驚いた。こんな発言をする者がリベラルと言えるのか。

 前原、枝野のどちらが民進党の代表になっても、とてもじゃないが、自民党と戦って政権政党になれる可能性はゼロだ。民進党代表選が盛り上がらない理由がここにある(了)


ろくでもない新党ばかりになる日本の政治
天木直人のブログ 2017年8月30日
 驚いた。細野豪志議員が長島昭久議員、野間健議員と三人で新党結成を先行させるという。
 長島昭久議員の事は知っている。自民党議員でもおかしくない親米・保守だ。
 しかし、野間健という政治家は知らない。
 調べてみて驚いた。改憲論者であり、核武装論者であるらしい。改憲論者だけならまだいい。改憲論者の中でもまともな議員はいる。
 しかし、改憲に加えて核武装を唱えるような政治家は、それだけで私の基準では政治家失格だ。 そんな野間健という議員と新党を作ろうとしている細野豪志議員は、それだけで終わりだ。
 若狭議員の新党と合流することはないだろう。もし合流したら小池新党もまた終わる。

 そして、その小池新党も、歴史認識問題で大きな欠陥を白状してしまった。小池新党は名古屋の河村たかしなどと組むという。そうなれば安倍首相と同じ歴史認識の集まりになる。

 どうして、新党はみな安倍首相と同じ様な議員の集まりになろうとするのか。絶望的な日本の政治である(了)

31- アベノミクスの本質は人の道を外したもの

 経済学者の植草一秀氏のブログ「植草一秀の知られざる真実」に、29日に開かれた「安倍やめろ! 8・29緊急市民集会」の報告が載りました。

 集会第一部の概要報告に加えて、第二部 「今私は訴える!」でご自分が講演された内容を紹介しています。
 そこでは三つの理由をあげて安倍首相は退場するべきだしています。
 特に3番目の理由として「安倍政権の政策運営が暴走を続けていること」を挙げ、安倍政権が推進してきた政策は、戦争、弾圧、搾取の三つであり、経済政策で推進してきたのが弱肉強食の推進、搾取推進であるとしました。
 安倍首相は、成果として
 1.失業率が下がったこと
 2.有効求人倍率が上がったこと
 3.大企業利益が拡大し株価が上昇したこと
得意になって繰り返すが、それは国民生活の浮上とはまったく結びついていないとして、その実態を数量的に分かりやすく説明しています
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人の道外すアベノミクス本質は「畜生道」にあり
植草一秀の「知られざる真実」 2017年8月30日
(阿修羅 30th Aug 2017 市村 悦延 · @hellotomhanks より転載)
昨日、8月29日(火)午後2時から、衆議院第一議員会館で「森友告発プロジェクト」主催「安倍やめろ! 8・29緊急市民集会」が開催された。400名を超す市民が参集し熱気溢れる集会となった。

冒頭、主催者を代表して森友告発プロジェクト共同代表の藤田高景氏が主催者挨拶をした。
中 略
オールジャパン平和と共生の顧問にもなっている弁護士の伊藤真氏は、
「安倍首相は「圧力」「圧力」と言うが、「対話」よりも「圧力」とばかり強調しているために現状が生じているのではないか。この国を戦争する国にしてはならない。そのためには何としても安倍政権をつぶさなければならない」
と指摘した。

落語家の古今亭菊千代氏は、北朝鮮にも平和を求めている民衆はいることを指摘したうえで、
「北朝鮮はあんな国だけれども、本当は平和を求める人がたくさんいるのにと言われているが、これからは、日本はあんな国だけれども、日本にも平和を求める人がたくさんいるのにと、他国の人から言われるようなことになってしまうのではないか。」
と述べた。

その後、ノンフィクション作家で加計疑惑について取材、執筆活動をしている森功氏から特別講演があった。
さらに、「今治加計獣医学部問題を考える会」共同代表の黒川敦彦氏から、加計学園による50億円を上回る補助金詐取疑惑について、黒川氏がさまざまな活動を通じて入手した資料をもとに、疑惑を決定的に裏付ける証拠の数々が提示された。
加計学園の補助金詐取疑惑について、多数の市民が連帯して刑事告発することにより、
文部科学省の獣医学部設置認可が困難になり、その結果として安倍政権を退陣に追い込むことが可能になるとの見解が示された。

さらに、第2部でも賛同者からの訴えが行われた。
私は以下の三つの理由で、安倍首相は退場するべきだと訴えた。

第一は、安倍首相が人の道を外していること
安倍首相夫妻は森友学園の籠池泰典理事長夫妻と蜜月の関係を続けてきた。
安倍首相は国会答弁で、
「妻から森友学園の先生の教育に対する熱意はすばらしいという話を聞いております。」
「私の考え方に非常に共鳴している方で、その方から小学校をつくりたいので安倍晋三小学校にしたいという話がございました」
と述べている。
安倍昭恵氏は森友学園で3回も講演し、新設小学校の名誉校長に就任し、新設小学校の国有地賃貸、取得問題にも深く関与したと見られている。
ところが森友学園の国有地を財務省が不正に安く払い下げたとの疑惑が生じ、その責任を問われる可能性が浮上したとたん、手のひらを返して、すべての責任を籠池氏夫妻に覆いかぶせ、国家権力を用いて籠池氏夫妻を犯罪者に仕立て上げる動きを示している。これを「人の道に反する」と言わずして何と言うことができるのか。

仏教に「六道輪廻(りくどうりんね)」という考え方がある。
天の道の下に人間道、人間の道がある。この下に「畜生道」、「餓鬼道」、「地獄道」が連なる。
畜生道とは「弱肉強食が繰り返され、互いに殺傷しあう世界。人を蹴落としてでも、自分だけ抜け出そうとする世界。」
まさに、安倍政権が推進している世界は、この「畜生道」の世界である。
さらに、「餓鬼道」は「嫉妬深さ、物惜しみ、欲望の塊の世界。」その下に「地獄道」がある。
「地獄に堕ちろ」とは言わないが、このような人の道を外す行動を改めぬなら「地獄に堕ちる」のではないかと推察することはできる。
安倍昭恵氏は、頻繁に「祈ります」の言葉をメールで送っていたとのことだが、その真意は、「獄に繋がれ、犯罪者に仕立て上げられるように 祈ります」ということだったのではないか。

安倍首相が退場するべき第二の理由は、安倍首相が一国の首相としての器を備えていないことである。
「息を吐くようにウソをつく」というのは、器以前の問題であると言える。普通の人以下ということになる。
大きなことを言うが、いざとなると、正面から立ち向かおうとせず、ただひたすら逃げる。
8月15日付中日新聞全面インタビューのなかで、作家のなかにし礼氏は、敗戦後に満州でソ連軍が侵攻してきた際、
「牡丹江からハルビンに逃亡する軍用列車がソ連軍の機銃掃射に襲われたとき、
われ先に逃げたのはふんぞり返っていた少佐らしい軍人だった」
と指摘しているが、これとまったく同じ姿が示されている。

卑屈で卑劣で卑怯でずるいのだ。安倍首相は2月17日の衆院予算委員会で、
「繰り返しになりますが、私や妻が関係していたということになれば、まさに私は、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員もやめるということははっきりと申し上げておきたい。」
と繰り返した。
しかし、その後に、森友学園の国有地問題に安倍昭恵氏が深く関係していたとの客観的状況証拠が明らかになった。
安倍首相は自身の発言に従って、潔く責任を明らかにするべきであるし、辞任しないというなら、安倍昭恵氏に説明責任を果たさせることが必要だ。堂々たる行動、問題に真正面から向き合う断固たる姿勢が皆無なのだ。加計疑惑では加計孝太郎氏の証人喚問が必要不可欠である。
主権者の大半がそう判断している。しかし、安倍首相は堂々と対応せず、こそこそと逃げ回っているだけなのだ。

第三の理由は、安倍政権の政策運営が「暴走」を続けていることだ。
これが本質的にもっとも国民生活に直結する問題である。
第2次安倍政権が発足してからの5年弱の期間に、安倍政権が推進してきた政策は、かむろてつ氏が指摘するように、戦争、 弾圧、 搾取 の三つである。
集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更を強行し、戦争法制を強行制定した。
さらに、憲法そのものを破壊しようとしている。「改憲」ならぬ「壊憲」である。
これと並行して、特定秘密保護法強行制定、刑事訴訟法改悪、共謀罪強行制定を実行してきた。
刑事訴訟法改悪+共謀罪創設=新治安維持法 と言ってよい。
弾圧も戦争遂行体制確立の一環であると言ってよい。

そして、経済政策で推進してきたのが弱肉強食の推進、搾取推進である。
「畜生道」とは「弱肉強食が繰り返され、互いに殺傷しあう世界。人を蹴落としてでも、自分だけ抜け出そうとする世界」だと記述した。アベノミクスとは言い換えれば、まさにこの「畜生道」政策なのだ。
安倍首相は
1.失業率が下がったこと
2.有効求人倍率が上がったこと
3.大企業利益が拡大し株価が上昇したこと
を馬や鹿の一つ覚えのように繰り返すが、このことは国民生活の浮上とはまったく結びつかない

国民生活の視点からは、経済成長の実績と、実質賃金の推移が何よりも重要である。
経済成長の実績を見ると、四半期ごとに発表される経済成長率の平均値は、あのあまりパッとしなかった民主党政権時代が+1.8%であったのに対し、2012年12月の第2次安倍政権発足以降は+1.5%に低下している。第2次安倍政権が発足して以降の日本経済は、あの民主党政権時代よりも悪いのである。
国民生活そのものとも言える実質賃金の推移をみると、民主党政権時代は実質賃金指数がほぼ横ばいで推移したのに対して、第2次安倍政権発足後は、なんと5%も減少しているのである。労働者の生活は大幅に悪化したというのが、偽りのない真実である。

安倍政権は2012年11月から景気回復が続き、この8月で56ヵ月になったとしている。これは、1965年から70年にかけての「いざなぎ景気」に並ぶものだとしている。ここまでくると「狂気」の範疇に入る。
1964年から1970年にかけて、日本のGDPは70%超も拡大した。これに対して、2012年から2017年のGDP拡大はわずかに約5%。エベレストと高尾山の比に近い。5年間登り続けたことだけを比較して、登った高さを比較しない。これも「詐欺」のひとつだ。

さらに重大なことは、GDP成長率統計、鉱工業生産統計を踏まえれば、2014年1月以降、日本経済は明確に消費税増税不況に突入している。生産指数は2014年1月から2016年5月まで2年半も下落し続けた。
つまり、「景気回復が56ヵ月続いている」という話自体が真っ赤っかのウソ、フェイクなのだ。したがって、この景気の正式名称は「イカサマ景気」ということになる。
以上の理由により、安倍政権を即刻退場させることが必要不可欠である。

2017年8月30日水曜日

あえてJアラートを使った安倍政権の意図

 29日早朝、スマホを持っている人たちは大音量のJアラートで叩き起こされました。しかし一体何のための警報であったのかと疑問に思った人たちが大半でした。

 5時58分頃、北朝鮮が中距離弾道ミサイルを発射し、北海道の襟裳岬上空を通過し(6時7分には日本上空を離脱)、発射から14分後に北海道東方約1200キロの太平洋に落下しました。テレビは一斉にミサイル発射を報じ、各種の交通機関は30分ほども動かなくなりました。特にNHKは、朝ドラも中止して延々と数時間もこの問題を引っ張りましたが、見るべき内容はほとんどありませんでした。

 安倍首相は発射の直後に官邸に到着し我が国に北朝鮮がミサイルを発射し」などと発言しました。そのあとの会見でも「わが国を飛び越えるミサイル発射という暴挙はこれまでにない深刻かつ重大な脅威」、盛んにその脅威を煽りました
 その一方で、小野寺防衛相はイージス艦や地対空誘導弾PAC3などで破壊措置を実施しなかったことについて、「わが国に向けて飛来する恐れがないと判断したからだ」と明確に説明しました
 日本に飛来するか否かは発射してから数分が経てば見分けがつくことです。そうであればその後のこうした騒ぎは一体何だったのでしょうか。
 これを好機にして北朝鮮の脅威を最大限に煽りたい、そうした官邸の意図が透けて見えます。

 日本のメディアも官邸と同様に北朝鮮の一方的な挑発行為だと断じていますが、北朝鮮にすれば、米・韓が度重なる北の抗議にも関わらず斬首作戦を含む米韓合同軍事演習を強行したことへの抗議と対抗の意思表示という言い分がある訳で、無数にあるミサイル飛翔のルートの中で、本州と北海道の間の海峡の上空を通り、なるべく日本の国土の上を通らないコースを選んだのもそれなりの配慮と見ることが出来ます。

 LITERAによれば、官邸は韓国からの情報で「事前にミサイルが発射されることを知っていた」ということです。
 それで普段は殆ど公邸を使わない安倍首相が、27日から泊まり込むようになり、28日には諜報、外交、安保関係の要人と次々に面会し、午後6時台には公邸に入って、そのまま29日の朝を迎えました。まるで早朝に起こる事態を見越したかのような動きでした。
 そして、安倍首相は、北朝鮮からミサイルが発射されるすぐさま官邸に向かい、記者団に対して例の芝居がかかったセリフを口にし、国民の危機を最大限煽ったというわけです。

 事前に察知したのであれば、それをきちんと公開してする方法もあったかも知れません。ところが、安倍首相は実際に発射されるまでその情報を隠し、それを自らのために利用しました。いわゆる政権浮揚に利用したわけです。
 あまりに見え透いた行動で国民を愚弄するものです。
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役立たず「Jアラート」を使ったのは
北朝鮮危機を煽りたい安倍政権のパフォーマンスだった!
LITERA 2017年8月29日
 本日8月29日早朝の北朝鮮による弾道ミサイル発射は、日本の国民にかつてない恐怖感を与えた。何しろ、早朝から、全国瞬時警報システム「Jアラート」と緊急情報ネットワークシステム「エムネット」が発動したのだ。
 北海道や東北、北陸、北関東地方の広範囲で警報が鳴り、新幹線や在来線なども運転を停止。Jアラートを受けたNHKや民放各局も「国民の保護に関する情報」の速報を打った。黒塗りの画面の白抜き文字とともに、「ミサイル発射。ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射された模様です。頑丈な建物や地下に避難して下さい」なる無機質なアナウンスを聞いて、一瞬、パニックに近い状態なった人も少なくなかったはずだ。

 官邸の姿勢も緊迫感に拍車をかけた。安倍首相は官邸に到着したときの会見で「我が国に北朝鮮がミサイルを発射し」などと発言。そのあとの会見でも「わが国を飛び越えるミサイル発射という暴挙はこれまでにない深刻かつ重大な脅威」と記者団に語った。
 こうした官邸の姿勢にひきずられるように、テレビ局も朝から報道特番体制をしいて、この問題を大々的に報道。「これまでにない脅威」「日本にとって非常に深刻な事態」と首相そっくりのコメントを垂れ流した。

 もちろん、北朝鮮が事前通告もなく日本の上空にミサイル発射したことは、国際法違反のみならず、国際社会で大きくなっていた対話の動きをひっくり返すものであり、徹底的に批判する必要がある。
 しかし、同時にこの日本の騒ぎ方、危機の煽り方にも違和感をおぼえざるをえない。象徴的なのが、首相のコメントだ。上空を通過したミサイルを「我が国に発射」というのは明らかに言い過ぎだし、「かつてない脅威」というのも事実ではない。そもそも北朝鮮は日本全域を射程にしたミサイルを10年以上前から開発しており、今回のことで脅威が高まったわけではない。日本上空を越えてミサイルが発射されたのも過去に2回あり、1998年には今回と同様、事前予告がなかった。安倍首相の様子は明らかに芝居がかかった表現で危機を煽ろうという意図がみえみえだった。

全く役に立たないJアラートをなぜ発動したのか
 さらにもうひとつ、違和感を覚えたのはJアラートだ。ホリエモンはじめ、早朝から警報音で起こされたことに不満の声をあげている国民も多いが、必要な情報なら叩き起こされてもやむを得ないだろう。しかし、本当にこんなものが必要だったのか。
 何しろ、ミサイル発射時間は午前5時58分頃なのに、Jアラートによるアナウンスがあったのは6時2分。6時5〜7分頃には、ミサイルが北海道上空を通過していたのだ。わずか4分で、どうやって「頑丈な建物や地下に避難」しろというのか。

 安倍首相は会見で「発射直後から北朝鮮ミサイルの動きは完全に把握していた。国民の生命と安全を守る万全な態勢を取っている」と胸をはっていたが、実際はなんの役にもたたなかったのだ。それどころか、時間が通勤ラッシュと重なっていたら、パニックを引き起こしていた可能性もある。
 100億円以上の予算がつぎ込まれてきたJアラートだが、もともと導入時からミサイルからの避難などには全く役に立たないと言われていた。まさにそのことを証明してしまったわけだが、にもかかわらず、政府が今回、Jアラートを強硬に発動したのはなぜか。

 そもそも、これまで北朝鮮ミサイル関連でJアラートを発動したのは、北朝鮮が事前にミサイル発射を通告していた2012年12月12日と2016年2月7日の2回だけ。今年の5月14日に中距離弾道ミサイルが発射され、日本海に落下したときにも、Jアラートは発動されなかった。
 5月の発射の際、菅義偉官房長官は「日本に飛来しないと判断し、Jアラートは使わなかった」などと述べていたが、しかし、ならば今回も同じだったはずだ。実際、小野寺五典防衛相はきょうの会見で、イージス艦や地対空誘導弾PAC3などで破壊措置を実施しなかったことについて、「わが国に向けて飛来する恐れがないと判断したからだ」とはっきり説明していた。
 5月も今回も同じように「飛来する恐れはない」という認識を持ち、破壊措置を行わなかったのに、今回だけ、全く役に立たないのを承知で、Jアラートを発動したのだ。いったいなぜか。

Jアラート発動は政権浮揚のためのパフォーマンスだった
 考えられるのはただひとつ、安倍政権による北朝鮮危機の政治利用のためだ。安倍政権はこの間、森友学園疑惑、加計学園義に対する国民からの反発をかわすために、北朝鮮危機を必要以上に煽ってきた。今回も全く同じで、疑惑に蓋をし、支持率を回復させるために、この北朝鮮ミサイル発射を利用して、Jアラートで危機を煽ろうとしたのではないか。
 実際、ミサイル飛来などの国民保護事態案でのJアラートは菅義偉官房長官が率いる内閣官房が判断を下すことになっているが、その内閣官房が事前に、Jアラートの発動を決定していたという情報がある。
 
「そもそも、Jアラートは、ミサイルへの警告で使用するのはかなり困難で、事前に察知していないと、発動するのは無理、という見方が強いんです。これまで事前通告のあった2回しか使っていないのもそのためではないか、といわれています。ところが、今回は韓国からの情報で、事前に発射を察知できた。それで、官邸はミサイルが発射されたら必ずJアラートを使うことに決めていたようです」(全国紙政治部記者)
 たしかに、韓国の朝鮮日報(日本語版)の報道によれば、今朝のミサイル発射に先立って「北朝鮮のミサイル発射の兆候をとらえた」との報告を受けた文在寅大統領は、午前2時の段階ですでに軍を待機させ、対応態勢を指示していたという。事実ならば、日本政府も同じ頃には北朝鮮ミサイル発射の情報を、かなりの確度で得ていたはずだ。
「ただ、コースまでははっきり特定できなかったので、広範囲で警告を鳴らしたんでしょう。実際、今回は、ミサイルが上空を通過した北海道からおよそ千キロも離れている長野県でも警告が鳴ったわけですからね。こんなおおざっぱな警告じゃ、なんの対策にもならないと思いますが(笑)」(前出・全国紙政治部記者)
 ようするに、あの何の役にも立たない警告音は、安倍政権のパフォーマンスでしかなかったわけだ。
 いや、Jアラートだけではない。安倍首相自身も明らかに事前に発射を察知し、パフォーマンスを準備していたフシがある。

ミサイル発射を事前に察知してパフォーマンスを用意していた安倍
 というのも、普段から公邸をあまり使わない安倍首相が、昨日27日から今朝にかけては官邸に隣接する公邸に泊まっていたからだ。しかも、昨日は午前10時に官邸に行くと、正午には北村滋・内閣情報官、午後4時15分に石川正一郎・拉致問題対策本部事務局長、午後5時17分に兼原信克・国家安全保障局次長と金杉憲治・外務省アジア大洋州局長、同30分に薗浦健太郎・首相補佐官(安保重要政策担当)など、諜報、外交、安保周りの要人と面会し、午後6時台には公邸に入って、そのまま永田町で朝を迎えた
 誰がどうみても、本日早朝を見越したような動き方だ。そして、安倍首相は、北朝鮮からミサイルが発射されるや、すぐさま官邸に向かい、記者団に対して例の芝居がかかったセリフを口にし、国民の危機を最大限煽ったというわけだ。

 もし、安倍首相が北朝鮮のミサイル発射を「これまでにない深刻かつ重大な脅威」ととらえ「国民の生命と安全を守る万全な態勢をとる」などというなら、事前に察知したミサイル発射情報をきちんと公開して、国民に冷静な対処を呼びかけるべきだろう。ところが、安倍首相は実際に発射されるまで情報を隠し、それを自らのために利用したJアラートを使って不必要な国民の不安を煽ると同時に、自らの「迅速な対応」や「毅然とした態度」をメディアで大げさに宣伝し、政権浮揚のきっかけにしようとしたのだ。
 改めて繰り返しておくが、北朝鮮のミサイル発射自体は危険極まりなく、世界平和を求める国際社会の一員として、冷静に批判していかねばならない。しかし、一連の北朝鮮危機と生活者の不安を煽って、好戦的な世論形成と支持率上昇に利用しようとしている安倍政権の企みもまた、平和主義にとって危険きわまりない。

 早朝から叩き起こされたことに腹を立てたホリエモンは、「クソ政府」とつぶやいて炎上しているが、それとはちがう意味で安倍政権はまさに「クソ政府」である。(編集部)