2013年12月31日火曜日

靖国参拝で安倍政権は世界から孤立 

 しんぶん赤旗が、安倍首相の靖国参拝についての米・ロ・欧州・国連・中・韓の各国政府・機関や海外紙の厳しい批判を紹介しています。
 
 また30日の中国人民網は「私利のために国益を犠牲にした安倍首相」と題した評論記事で、要旨次のように批判しました。
 
「参拝で最も損なわれたのは表面的には中日関係、韓日関係だが、本質的には日本自身の国益で中韓としては対日政策の確定が一段と容易になったので、安倍氏は在任中、近隣国との関係で長期的孤立に直面する可能性が高い。
 歴史認識に関して、ワシントンは日本の共感者ではなく、参拝の結果日米関係は弱まった。
 国内でも政治・社会・世論の分裂を招き、経済成長と国際競争力の減退を招くことになる。」  
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靖国参拝 安倍政権 世界から孤立 
「平和主義から日本を遠ざけ、アジアの新たな問題国に」
しんぶん赤旗 2013年12月30日
 安倍晋三首相が26日に行った靖国神社参拝については、かつて日本が侵略・植民地化した国だけではなく、欧米諸国、国際機関、各国メディアからも批判が噴出しています。「戦後の平和主義から日本を遠ざけた」「日本と国際社会との関係の政治的基礎にかかわる重大問題」といった厳しい主張が出ているのが特徴です。「自らの国際的立場を弱化させる」との指摘もあり、安倍政権の孤立ぶりが鮮明になっています。
 
米・ロ・欧州・国連 「失望・遺憾」いっせいに
 安倍首相の参拝から数時間後に、在日米国大使館は「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動をとったことに、米国政府は失望している」との声明を発表しました。
 歴代首相の靖国参拝で目立った対応がなかった米国政府としては、異例ともいえる表明。米本国の国務省報道官もその後、同趣旨の談話を出しました。
 
 ロシア外務省のルカシェビッチ報道局長は26日、「第2次世界大戦の結果に関する世界一般の理解と異なる流れを日本社会に押し付けようとする一部勢力の試みの強まりを背景とした今回の行動は、遺憾の意を呼び起こさざるをえない」と批判しました。
 
 国連の潘基文(パンギムン)事務総長の報道官は27日、声明を発表。日本の過去の侵略戦争を前提としながら、「潘氏は、この地域の国々(日中韓)が共有する歴史について共通の認識と理解に至るよう、一貫して主張してきた」とし、「他者の感情、とりわけ犠牲者の記憶に敏感である必要性」を潘氏が強調していることをあげました。
 
 EU(欧州連合)のアシュトン外交安全保障上級代表(外相)の報道官は26日に発表した声明で、「地域の緊張緩和や、日本の近隣諸国、とりわけ中国、韓国との関係改善に貢献しない」と指摘。「慎重な外交による紛争の処理や、緊張を高める行為の自粛」を要望しました。
 
中国・韓国 「正義に挑戦・時代錯誤」
 中国の楊潔箎(ようけつち)国務委員(副首相級、外交担当)は28日、安倍首相の靖国神社参拝を批判する談話を発表しました。
 このなかで、「日本の指導者が、国連憲章の趣旨と原則を守り、平和発展の道を進むかどうかという根本的な方向性の問題であり、日本と国際社会との関係の政治的基礎にかかわる重大な原則的問題だ」と指摘しました。
 中国政府は首相の参拝直後、26日に王毅外相が「国際正義への公然たる挑戦であり、人類の良知をみだりに踏みにじるもの」と批判していました。
 
 韓国政府は26日の政府声明で、首相に靖国参拝に対し、「誤った歴史認識をそのまま表したものであり、韓日関係はもちろん、北東アジアの安定と協力を根本から損なう時代錯誤の行為だ」と非難。「植民地支配と侵略戦争を美化し、戦犯を合祀(ごうし)している靖国神社に参拝したことに対して、わが政府は慨嘆と憤怒を禁じ得ない」と強い調子で表明しました。
 さらに日本が国際平和に寄与しようとするなら、「歴史を直視し、日本軍国主義の侵略と植民地支配の苦痛を経験した近隣国とその国民に対して、徹底した反省と謝罪を通じて信頼を構築していくべきだ」と求めました。
 
「大戦の犯罪清算されず」改憲に警戒感 海外メディア
 仏紙ルモンド26日付(電子版)は、靖国神社について「近代日本のさまざまなたたかいで亡くなった240万人の日本人をまつっているが、とりわけ第2次世界大戦後、戦犯として認定された日本の指導者たちもまつっている」と記述。安倍首相が「平和憲法の修正を願っている」として、警戒感を示しています。
 
 ドイツの週刊紙ツァイト26日付は、参拝に対する中国、韓国の激しい抗議の理由は、「この神社の祭殿には、1853年以降の日本のすべての戦争の戦没者だけでなく、(東京裁判によって)断罪された戦争犯罪者がまつられているからだ」と指摘。さらに日本の戦後史を次のように特徴付けています。
 「日本の戦後史は、重大なことをささいなことのようにみせることを特徴としている。ドイツでは第2次世界大戦の犯罪は清算されてきたが、日本では今日に至るまで多くが成されないままになっている」
 
 インドのヒンドゥスタン・タイムズ紙27日付は、「靖国・戦争神社」と題する解説記事を掲載。同神社が「多くの人にとって受け入れがたい歴史解釈を広めようとしている」「併設されている博物館は日本を第2次大戦の被害者として描いており、アジア各国を侵略した日本軍の残虐行為について十分な言及がない」と紹介しています。
 
 米紙ニューヨーク・タイムズ27日付は、安倍首相の靖国参拝を論評した記事で、「日本は安定した同盟国になるどころか、中国との論争が原因で、米国高官にとってアジアの新たな問題国になってしまった」と指摘。さらに秘密保護法の強行などをあげ、「安倍首相は、戦後の平和主義から日本を遠ざけるという大きな政治リスクを自ら進んで冒す意思を示してきた」と警戒感を表しています。
 ワシントン・ポスト紙同日付も、「自らの国際的立場と日本の安全保障を弱化させる恐れが強い挑発的行為」と厳しい調子で批判しています。
 
 
私利のために国益を犠牲にした安倍首相
 「人民網日本語版」2013年12月30日
 日本の安倍晋三首相は先日、靖国神社を「電撃参拝」した。中韓両政府は直ちに極めて強く反応し、米国など他の国々も次々に驚きと不満を表明した。これによって最も損なわれたのは表面的には中日関係、韓日関係だが、本質的には日本自身の国益である。(文:張雲・新潟大学准教授。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
 
 第1に、中韓両国を見てみる。中日関係、韓日関係は過去1年間非常に緊張し、歴史問題や安全保障政策における安倍内閣の言動に中韓は強く警戒してきた。3カ国の最高指導部が同時に交代するという黄金の時期にあって、日本と中韓の首脳会談はまだ行われていない。安倍氏は対話のドアはオープンだと主張し続けているが、参拝の伝えたメッセージは、日本が外交的配慮において中韓をほぼ完全に無視しているということだ。中韓としては、日本側が自国を無視するとの最後の一線をすでに示した以上、対日政策の確定がかえって一段と容易になった。安倍氏は在任中、近隣国との関係で長期的孤立に直面する可能性が高い。この孤立が日本経済に影響を与えるのは必至だ。
 
 第2に、米国を見てみる。日本の首相による靖国参拝の問題において、米国は通常と異なり明確な姿勢を初めて表明し、周辺国との関係の扱いに日本が失敗したことに失望をあらわにした。米国は、日本は戦略的対話を行えるパートナーではないと考えるにいたった。「米国は自らの力が相対的に下降する中、東アジアの安全保障において日本のプレゼンスの強化を求めており、日本が安全保障政策を『積極的』に調整すれば、歴史問題では沈黙を保つ」と安倍氏は考えているのかもしれない。だが日米同盟は安保同盟であって、歴史問題同盟ではない。歴史認識に関して、ワシントンは日本の共感者ではない。米国外交において理想主義という道義的一面は虚偽性を備えるが、基本的な道義原則を放棄することはない。その上、靖国参拝による北東アジア情勢の一層の緊張は、米国の安全保障上の利益そのものにとって現実的脅威となる。安倍氏は就任以来日米同盟の強化を仰々しく宣伝しているが、参拝の結果、反対に日米関係は弱まっている。
 
 第3に、日本国内を見てみる。靖国参拝によって、ようやく得られた国内政治の相対的な安定に分裂が生じ、貴重な政治資源・力が分散し、最重要の政治目標である景気回復の実現もぐらつく。安倍氏の首相再登板を可能にした国民の支持は、主に経済立て直しへの期待と、政治の安定への切望の2点によるものだ。自民党は衆参両院選挙で多数議席を獲得し、長年失われていた政治的安定を実現した。これは大胆な経済改革に貴重な政治資源を提供した。だが靖国問題において、日本国内の考え方には以前から重大な対立が存在する。「アベノミクス」実施の正念場において、靖国参拝は政治・社会・世論の分裂を招き、日本が発展のチャンス期を逃すことにもなる。経済成長と国際競争力が確保されなければ、日本の国益は語りようがない。
 
 安倍氏は靖国参拝について日本の長期的国益を考えてのものだと弁解するかもしれないが、周辺外交を見ても、日米同盟を見ても、さらには国内政治を見ても、この行動のもたらす客観的結果は、その主観的願望とは正反対のものだ。安倍氏は自分だけの利益のために日本の国益を犠牲にしたのである。(編集NA)
 
 

2013年12月30日月曜日

「コメント」 : 受付情報

 
月に入り下記の記事にコメントをいただきました。
 
コメントは、記事の最下段の「件のコメント」などと書かれているところをクリックすると、ご覧になれます。
 
下記の件数には事務局からの返信の分は含めてありません。
 
受付日付の降順に掲載)
記  事  の  タ  イ  ト  ル
掲 載 日
日 付
天皇誕生日にあたって
2013/12/24
1件
12/30
天皇誕生日にあたって
2013/12/24
1件
12/26
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

日本で台頭する危険な国家主義 NYT社説

 安倍晋三首相が靖国神社を参拝したことで、すでに緊張関係にあった対中国、対韓国との外交関係を一層悪化させることになりました。
 ニューヨークタイムズ(NYT) は27日の社説の中で、「安倍首相がなぜ現在靖国神社を訪問することを決心したかという点について、要旨以下の様な面白い考察をしています。
 
 安倍首相の目標の一つは、どこで領土紛争が発生しても直ちに軍事力を行使できるように軍備や憲法・法律を変えてしまうことである。
 中国尖閣諸島問題について徹底して対決姿勢をとったことは、そうした安倍政権にとって極めて好都合なことで中国の『強硬姿勢』を内外にアピールし続けることで、その目標を隠すことが出来た。
 靖国参拝は、そうした国民に対する宣伝工作がうまくいっているかどうかを確認するための、作業の一部だった。』
 
 「確認作業」の結果はご存知の通りで、中国・韓国は猛反発し折角改善の兆しが見えはじめていた日韓関係も完全に冷え切りました。
 安倍首相にとって痛かったのは、予期に反してアメリカが手厳しく批判する文書を発表したことでした。彼は就任以来一貫してアメリカに尽くし、TPPでも譲歩し続けたうえに年末には普天間基地の辺野古移転を沖縄県知事に飲ませたので、靖国参拝については容認してくれると考えたふしがあります。ですからこのアメリカの反発には落ち込んでいることでしょうが、あとの祭りです。
 
 社説はまた、安倍首相などの国家主義者にとって何より大切な存在である筈の今上天皇が、前代の昭和天皇同様、靖国神社参拝を拒否されてて、天皇が80歳の誕生日を祝う席上、「平和と民主主義の大切な価値」を守り続けるため、1946年に平和憲法を制定した人々に対する「深い感謝の念」を表明されたことにもふれています
 
 そしてアメリカ政府は安倍首相のやり方が北東アジア地区にどんな恩恵も与えないものであることをはっきりとさせる必要があるとし、安倍首相の行動はアジアの国家間の信頼未来を次々と破壊していく行為に他ならないと結んでいます
 
 ニューヨークタイムズは12月16日にも、「特定秘密保護法」の制定を批判する社説 「日本の危険な時代錯誤ぶり」を掲げましたので併せて紹介します。
 
(27日社説の訳文はブログ「星の金貨プロジェクト」を借用しました)
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 ニューヨークタイムズ社説) 日本で台頭する危険な国家主義 
 論説委員会 / ニューヨークタイムズ2013年12月27日
星の金貨プロジェクト admin投稿 2013年12月29日
 
就任以来、『対外危機』を作り上げ煽り続けた安倍政権
靖国参拝は国民に対する宣伝工作がうまくいっているかどうかを確認するための試金石
アジア社会の信頼、平和、そして未来を破壊する安倍首相の政策
 
 権力の座に返り咲いて1年となる12月26日、安倍晋三首相が、日本の戦没者を祀る神社であり、第二次世界大戦中の戦犯を合祀していることで論争の的となっている神社靖国を参拝しました。
 中国と韓国は直ちにこの参拝を厳しく批判、アメリカ合衆国もこれに同調しました。
 
 諸外国が日本の侵略主義、そして植民地支配の象徴とみなす靖国神社への安倍首相の参拝は、すでに緊張関係にあった対中国、対韓国との外交関係を一層悪化させることになりました。
 アメリカ合衆国大使館は、「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに、米国政府は失望している。」との声明を公式ウェブサイトに掲載しました。
 
 問題は、安倍氏がなぜ現在靖国を訪問することを決心したかという点にあります。
 前回日本の首相が靖国神社を参拝してから7年が経ちましたが、中国と韓国がともにその存在自体を快く思わない神社に、参拝すれば中韓両国との外交関係に必ず悪影響を及ぼすと解っていながら、なぜ参拝を行ったのでしょうか?
 中国、そして韓国と日本の外交関係は、2000年代中頃より現在の方が尚悪くなっています。
 
 安倍氏が初めて首相に就任したのは20067の間でしたが、2012年2度目の首相になった時から、中国と韓国の指導者は安倍首相との会見を拒否し続けてきました。
 ひとつは東シナ海に浮かぶ尖閣諸島をめぐる領土問題、もうひとつは第二次世界大戦中、日本軍兵士の性的奴隷とされた韓国の従軍慰安婦の問題のためです。
 
 逆説的に、中国、韓国がこうした態度を明確にして圧力をかけているからこそ、安倍首相が靖国参拝に踏み切ったということが言えます。
 尖閣諸島問題について中国側が徹底して対決姿勢をとったことは、日本国民に中国の軍事的脅威について信じ込ませるために、日本政府にとっては極めて好都合なことでした
 安倍首相の目標到達点の一つは、どこで領土紛争が発生しても直ちに軍事力を行使できるように日本の軍備の形を変えてしまうことです。
 そのために安倍首相はこの一年間中国側が日本に送り続けた様々なサインを無視し続けましたが、中国の『強硬姿勢』を内外にアピールし続けることで、その事実を隠すことが出来たのです。
 靖国参拝は、そうした国民に対する宣伝工作がうまくいっているかどうかを確認するための、作業の一部だったということが言えます。
 
 日本が従軍慰安婦問題に真摯に向き合おうとしない態度に対する韓国側の厳しい批判が延々と続いていること、そしてパク・クネ大統領が安倍首相との会談を拒否し続けている態度は、日本の一般国民に対し、韓国に対する不信感を植えつけることになりました。
 それは世論調査の結果、日本人回答者の約半数が、韓国もまた日本に対する「軍事的脅威」であるとする結果に表れています。
 日本人有権者のそうした意識は、安倍首相に中国政府や韓国政府の反応にとらわれること無く、思い通りに振る舞う自由を与えることになりました。
 
 日本の主要な日刊新聞である毎日新聞、朝日新聞、読売新聞の3紙は、安倍首相の就任以来、靖国参拝には否定的な論調を続けてきました。
 もっと重要な問題、それは安倍首相やその取り巻きの国家主義者にとって何より大切なはずの存在である今上天皇が、前代の昭和天皇同様、靖国神社参拝を拒否していることです。
 安倍首相が最終的に目指すもの、それは現在の平和憲法を書き換えることです。
 この憲法は第二次世界大戦後のアメリカ軍による占領期間に交付されたもので、国家の交戦権を禁じています。
 そして天皇は憲法の定めにより国政に参加する権限は持っていませんが、今上天皇もまた日本が戦争することを認めてはいないのです。
 安倍首相が靖国神社参拝を行う数日前、今上天皇は80歳の誕生日を祝う席上、「平和と民主主義の大切な価値」を守り続けるため、1945年に平和憲法を制定した人々に対する「深い感謝の念」を表明されたのです。
 このような状況を考えれば、中国と韓国は歴史の解釈の問題について、日本国内に賛同者を見つけることは可能です。
 中国も韓国も安倍首相と会談する機会を設け、正面から立ち向かうべきなのです。
 これ以上会談を拒否し続ければ、安倍首相がさらに思い通りの政策を実現するための口実を与えることになってしまいます。
 
 日本の軍事的な冒険は、アメリカの支持が無ければ可能ではありません。
 アメリカ政府は安倍首相のやり方が、北東アジア地区にどんな恩恵も与えないことをはっきりとさせる必要があります。
 アジアの建設的な未来は、国家間の信頼関係を築いていくことの中にこそあります。
 安倍首相の行動は、その信頼と未来とを次々と破壊していく行為に他ならないのです。
 
(ニューヨークタイムズ社説) 日本の危険な時代錯誤ぶり
ニューヨークタイムズ 2013年12月16日
 安倍晋三首相の政府は今月、国会で秘密保護法をゴリ押しして通過させた。この法律は日本の民主主義の理解が根本的に変えられることを示唆している。この法律の文言は曖昧で非常に広範囲にわたるものであり、政府が不都合だと思うものを何でも秘密にすることを許すことになる。秘密を漏らした公務員は10年まで投獄されうる。報道関係者が、「不当」な方法で入手したり、秘密指定されていると知らない情報を得ようとしたりすることでさえ5年まで投獄されうる。この法律は国家安全保障を取扱い、スパイ行為やテロも含まれる。
 
 この法案が通る直前に、与党自民党幹事長の石破茂が、自身のブログで11月29日、秘密保護法案に反対して合法的にデモを行う人たちをテロリストになぞらえた。言論の自由に対するこのような無情なまでの軽視は、安倍政権が本当は何をやろうとしているのかについての懐疑心を大いにかき立てた。日本の公衆はこの法律が報道の自由と個人の自由を侵害することを恐れていることは明確のようだ。共同通信が行った世論調査によると、回答者の82%が、法律は廃案か見直すべきだと答えている。
 
 しかし安倍氏は、傲慢なことに公衆の不安をものともしない。法案通過後に「この法律で日常生活が脅かされることはない」と語った。自民党の古参議員の中谷元は、「政府が関与する事柄と一般市民が関与する事柄は区別されるものだ」と表明し、民主主義についての驚くべき無知を露呈した
 
 この法律は安倍氏の、日本を「美しい国」に作り替える聖戦における不可欠な要素である。それは、市民に対する政府の権力の拡大と個人の権利保護の縮小、すなわち愛国的な人々に支えられる強い国家を想定するものだ。彼が公言してきた目標は、約70年前、占領中に米陸軍に課された国家の憲法を書き換えることである。
 
 昨年4月に発表された自民党の憲法草案は、基本的人権の保証についての既存の条項を取り除いている。草案は、国旗と国歌を尊重しなければいけないとする。また、国民は「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」とする。さらに、総理大臣が緊急事態を宣言し、通常法を一時停止する権限を持つとされている。
 
 安倍氏の目的は「戦後レジームの脱却」である。日本で批判する人々は、彼が1945年以前の国家を復活させようとしていると警告する。時代錯誤的で危険な思想だ。
 
 

2013年12月29日日曜日

NHKは政権に擦り寄り、メディア幹部は首相と会食

 NHKは今度の安倍首相の靖国参拝に関しても、ひたすら安倍氏の擁護に走り、彼の言い分だけを伝えるという態度を徹底しました。
 直接言葉で肯定したり持ち上げるということこそしないものの、細心の配慮のもとに、報じることと報じないことを峻別してさりげなく報じるので、何気なく視聴する人たちを「洗脳」する効果はその分大きいといえます。
 
 そして安倍首相12月、内閣支持率の低下と歩調を合わせるようにマスメディア幹部との会食やしています。秘密保護法の強行や靖国神社参拝などで国民や多くのメディアから強い批判が起きるなか、メディア対策に躍起になっているわけです。
 靖国神社参拝をした26日夜にも、ANAインターコンチネンタルホテル東京内の日本料理店で報道各社の政治部長らと会食しました。
 16日にも山王パークタワー内の中国料理店でNHK解説委員、「読売」論説委員長、日本テレビ報道局長、時事通信解説委員、「毎日」専門編集委員、「朝日」政治部長らと会食したばかりです。
 
 その他にも、当然メディア・トップ会食するなど、マスメディアのトップスや幹部との癒着ぶりは相変わらずです。
 
 しんぶん赤旗の二つの記事を紹介します。
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おかしいぞ NHK報道 靖国の性格・歴史伝えず
しんぶん赤旗 2013年12月29日
 安倍晋三首相の靖国参拝をめぐるNHK報道に批判が殺到しています。過去の侵略戦争を美化・正当化する靖国神社の問題点にはほとんど触れずに、安倍首相のインタビューをそのまま伝え続けたからです。安倍首相が参拝した26日と、翌27日の「ニュース7」「ニュースウオッチ9」の報道内容を見ると―。
 
タイミングばかり
 「二度と再び戦争の惨禍によって人々の苦しむことのない時代をつくるとの決意を込めて『不戦の誓い』をした」「戦犯を崇拝する行為だと誤解に基づく批判がある」「中国、韓国の人々の気持ちを傷つける考えは毛頭ない」(26日、首相)
 「ニュース7」「ニュースウオッチ9」は、26日のそれぞれトップニュースで安倍首相の靖国参拝を報道しましたが、中身は安倍首相のこうした言葉をそのまま流すのが中心でした。
 政治記者の解説は「どうして、このタイミングか」という参拝時期に焦点を当てたものばかり。
 首相の靖国参拝を視聴者が考える上で不可欠のはずの、「靖国神社に参拝することが、なぜ問題なのか」「神社の歴史や性格はどういうものなのか」「アジア・太平洋戦争を推進したA級戦犯(東条英機元首相ら14人)を合祀(ごうし)している問題をどう考えるのか」―などの事実には、まったくというほど触れませんでした。
 両ニュース番組は、靖国報道の多くの時間を割いて中国、韓国、アメリカなど諸外国の反応を報道しましたが、日本自身の深刻な“歴史認識の問題”として向き合うのではなく、あたかも外国が批判するから政治問題化するのだと言わんばかり。
 
権力監視できない
 26日「ニュース7」は、日本共産党の志位和夫委員長の「歴史逆行の本性があらわになった。第2次世界大戦後の国際秩序に対する挑戦であり、アメリカも含めて支持されない。世界全体を敵に回すことになる」とのコメントを伝えたものの、同日の「ニュースウオッチ9」はこのコメントをカット。靖国神社の性格についても「幕末から太平洋戦争までに戦死した軍人や民間人など246万人余がまつられる」などと説明し、A級戦犯合祀の事実にさえ触れませんでした。
 翌27日の「ニュース7」「ニュースウオッチ9」は、諸外国からの批判の高まりに対し安倍首相が「戦場で散っていった方々のために冥福を祈り、手を合わす。世界共通のリーダーの姿勢だろう」(27日)と居直ったコメントを無批判に、そのまま報道しました。
 首相や政府の見解を無批判に報道するだけでは、国民の知る権利に応え、政治権力を監視するジャーナリズムの役割を発揮することはできません。
 安倍政権は今、侵略戦争に無反省なまま、軍事大国化への道をひた走ろうとしています。しかし、NHKの靖国報道を見る限り、こうした事実を積み重ねることで危険な動きに迫る報道姿勢はうかがえません。(佐藤高志)
 
 
安倍首相、メディア対策躍起 “批判封じ”へあの手この手
しんぶん赤旗 2013年12月29日
 安倍晋三首相と新聞・テレビなどマスメディア幹部との会食が12月、内閣支持率の低下と歩調を合わせるように増えています。秘密保護法の強行や靖国神社参拝、沖縄への米軍新基地押しつけなどで国民や多くのメディアから強い批判が起きるなか、安倍首相がメディア対策に躍起になっている姿が浮かびあがります。
 
来年度予算65億円 新聞・テレビ局幹部と次々会食
 首相は靖国神社参拝後の26日夜、東京・赤坂のANAインターコンチネンタルホテル東京内の日本料理店「雲海」で報道各社の政治部長らと会食しました。
 わずか10日前(16日)、東京・永田町の山王パークタワー内の中国料理店「溜池山王聘珍樓(へいちんろう)」でNHK解説委員、「読売」論説委員長、日本テレビ報道局長、時事通信解説委員、「毎日」専門編集委員、「朝日」政治部長らと会食したばかりです。
 
 「読売」グループの渡辺恒雄会長・主筆とも12月中に2度も会食。20日には、東京・新宿区のフランス料理店「オテル・ドゥ・ミクニ」で「産経」の清原武彦会長、熊坂隆光社長らと会食するなどメディア・トップとの癒着も相変わらずです。
 安倍首相は会食以外でも、「読売」東京本社ビルの新社屋竣工(しゅんこう)式典(11月28日)や5日に東京・虎ノ門のホテルオークラの宴会場で「日経」、テレビ東京など主催の「年末エコノミスト懇親会」に足を運ぶなど、マスメディア幹部との接触も強めています。
 
 NHK経営委員人事では、安倍首相と思想的に近いとされる人物など4人を送り込み、「安倍カラー」を色濃く打ち出しました。これと前後して、秘密保護法や靖国参拝、沖縄新基地問題などでのNHKの報道には「安倍政権の報道官のようだ」との批判が相次いでいます。
 また、「官邸主導による広報の強化」と称してメディア対策を強める政府は2014年度予算案で前年度比21億円増の65億円を計上。「主要な広報テーマ」としてアベノミクス、消費税増税、環太平洋連携協定(TPP)、エネルギー問題、安全保障などを予定しています。税金を注ぎ込み、原発推進や秘密保護法の世論誘導も狙っています。