2020年6月30日火曜日

「爆買い」米兵器を検証 F35、無人偵察機、イージスアショア

 時事通信が米兵器の爆買いを検証する記事を出しました。
 爆買いと言えば、先ずF35戦闘爆撃機計147機、大型無人偵察機「グローバルホーク」4機、そしてイージスアショア2基(中止の方向)が挙げられます。
 時事通信は、それらは防衛力整備の必要性からではなく米国の歓心を買うことに重きを置いたことが透けて見えるとしています。

 それは、イージスアショアがつい先日配備計画が停止になったという体たらくを見ても明らかですが、F35戦闘爆撃機も18年4月の開発試験終了時点で900以上の欠陥があったのですが、19年5月時点でもまだ800以上の欠陥が残っている(うち重大欠陥は13件)という紛れもない欠陥機です。
    ⇒19年5月30日)  安倍首相が大量購入約束のF35に深刻な欠陥

 グローバルホークについても日本政府は次のような致命的なミスを犯しています。
 本来であれば偵察データを日本が自ら解析して必要な情報は米国に渡すという条件で契約すべきなのですが、現状は折角導入したもののデータは全て米国に送られるため、解析するには日本が費用を負担して米国から可視化された情報を送ってもらうしかありません。これでは一体どれ程のランニングコストが掛かるのか想像もつきません。因みに偵察機本体の購入価格は1機4百数十億円です。

 安倍内閣が米国の歓心を買うために、如何に国民の血税をデタラメに使っているのかが良くわかります。売国の政権というしかありません。
お知らせ
都合により7月1日は記事の更新が出来ません。ご了承ください。
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「爆買い」米兵器を検証 F35、無人偵察機、陸上イージス
 ―ゆがむ防衛力整備
時事通信 2020年06月29日
 秋田、山口両県への配備計画撤回に追い込まれた陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」。河野太郎防衛相による聖域なき見直しに、防衛省内では「第二のアショアは何か」との声もささやかれる。安倍政権は最新鋭ステルス戦闘機F35の大量調達を含め、巨額の米国製兵器購入に走った。検証すると、防衛力整備より米国の歓心を買うことに重きを置いたことが透ける。

◇一気に105機、1兆2000億円
 「爆買い」の象徴は、2018年に閣議了解されたF35の105機(計約1兆2000億円)追加調達だ。旧民主党政権で決まった42機から一気に3倍超の計147機になり、将来的には航空自衛隊の戦闘機の半分を占める。防衛省によると、30年間の維持費を含めた経費は総額約6兆円を超える見込みだ。
 当時、空自内では「運用構想を策定する前に、政治判断で大量取得が決まった」と驚きが広がった。防衛省幹部は「対米貿易黒字の解消に使われた」と声を潜めた。
 しわ寄せで、同省が日本主導を掲げ開発を進める次期戦闘機の調達数は、70~90機にとどまる見通しだ。国内の防衛産業からは「技術基盤を維持するには少な過ぎる」とため息が漏れる。空自内では「機種が偏るのは運用上好ましくない。F35の取得数を見直すべきでは」との意見が根強い。

◇「導入中止」押し戻す
 「大臣からはしっかり検討しろと指示されている」。武田博史防衛装備庁長官は今月、国会でこう答弁し、米国の大型無人偵察機「グローバルホーク」の調達コスト削減に向けた努力を強調した。
 安倍政権が14年に導入を決めた同機も防衛力整備にゆがみを生じさせた。当初の見積もり(3機で約510億円)よりコストが上昇し、現在は約613億円。メーカーの部品も枯渇しており、取得が遅れている。
 防衛省は一時、導入中止を検討したが、米に配慮する官邸と外務省に押し戻された。政府筋は「防衛省は中止を念頭に調整したが、日米共同の情報収集や警戒監視、同盟強化を理由に継続案件になった」と話す。
 グローバルホークは、17~18年に米国内とスペイン沖で墜落事故も起こした。アショア同様、狭い国土と過密な空域の日本に適しているのかという懸念もある。

◇官邸主導の慢心
 アショアは17年に日米首脳会談を経て閣議決定された。陸自幹部は「政治判断で導入が決まり、海自の負担軽減と、陸自もミサイル防衛の正面に出た方がいいという流れになった」と振り返る。価格は2基で約2500億円。将来の維持コストを含めると約4500億円に上る。
 異論もあった。北朝鮮は日本を射程に収める弾道ミサイルを数百発、配備している。自衛隊幹部は「飽和攻撃(同時に多数発射)の対処は、護衛艦に占めるイージス艦の割合や、迎撃ミサイルの数を増やした方が効果的」と指摘する。アショア2基で発射できる迎撃ミサイルは計48発。一方、最新型イージス艦は1隻に発射装置が96発分ある。平時は多様な任務にも使える。
 本来、武器の調達は防衛力整備計画に基づき、制服組から背広組の内部部局(内局)に要望が上がる。内局が政策的見地から精査し、合理性を判断。財務省で認められないこともある。アショアではこうした手順が飛ばされ、官邸の意向を受けた内局が実務を進めた。「お墨付き」を得た慢心が、配備候補地の選定をめぐるずさんな調査や、迎撃ミサイルの技術的な問題への対応の甘さを招いた可能性もある。
 大なたを振るった河野防衛相は、今後の防衛力整備について「日本の財政を考えると防衛予算が飛躍的にこれから伸びるとは考えにくい。優先順位をしっかりと付けた上で、必要なところに必要な手当てをする」と語る。実現には官邸が「買い物」感覚で介入することも断つ必要がある。(時事通信社編集委員・不動尚史)。 


敵基地攻撃って何するの? 被害最小化へ国外拠点破壊―ニュースQ&A
時事通信 2020年06月28日
 政府は陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」計画断念を受け、安全保障戦略の見直しに着手した。自民党が繰り返し提言してきた敵基地攻撃能力保有の是非についても議論する見通しだが、与党内にも異論を抱え、コスト面などで課題も多い。

 ―敵基地攻撃って何をするの。
 ある国から弾道ミサイルなどで攻撃された事態を想定し、被害を最小限に食い止めるために、相手の領域内にあるミサイル発射装置などの拠点施設を破壊することだ。

 ―憲法9条で禁じられているのでは。
 政府の見解では、他に手段がない場合は敵基地攻撃も「自衛」に含まれ、合憲とされる。ただ、9条に基づく「専守防衛」の原則を逸脱するとの慎重論もあり、政府はこれまで「敵基地を攻撃できる能力はあえて持たない」との立場を取ってきたんだ。

 ―なぜ今、検討されているの。
 最大の要因は、中国や北朝鮮がミサイル技術を急速に高度化させていることだ。中国は迎撃困難とされる極超音速滑空兵器の開発競争で日米両国に先行北朝鮮も変則的な軌道を描いて迎撃を回避する新型ミサイルを開発している
 こうした現状への危機感から、自民党内では数年前から「ミサイル防衛網だけでは限界がある」として、敵基地攻撃能力の保有を求める意見が強まっていた。陸上イージス計画の断念を受け、安倍晋三首相も「抑止力とは何か、突き詰めて考えなければいけない」と検討を表明したんだ。

 ―今の装備で敵基地は攻撃できないの。
 自衛隊は戦闘機に搭載する長距離誘導ミサイルの整備を進めている。離島防衛が目的だけど、射程距離が約500キロの「JSM」や、約900キロの「JASSM」「LRASM」などは、敵基地攻撃に転用できる可能性が指摘されているね。
 ただし、攻撃を実行するには軍事衛星や偵察機、スパイからの情報で標的施設の位置を割り出し、正確に着弾させる能力も必要だ。攻撃を後方支援する態勢なども含め、全てを日本単独でやろうとすると、とてつもないコストがかかると言われている。連立与党の公明党が反対していることもあって、装備導入に踏み切るのは簡単ではなさそうだ

米軍撤退引き留めと沖縄への負担の押し付けに終止符を(琉球新報)

 沖縄戦から75年、日本復帰から48が経つ現在も依然として狭い沖縄に在日米軍専用施設面積の7割が集中しています
 沖縄の負担軽減はなぜ進まないのかその本質が浮かび上がる歴史の事実が米公文書を分析した東京工業大の川名晋史准教授によってまた明らかにされました。

 1971年に嘉手納基地に東京の米軍横田基地からF4戦闘機部隊が移駐しましが、米側は当初米本国や米領グアムを検討していたということですしかしそれを押しとどめたのが日本政府でした。
 在沖米軍基地面積の約7割を占める海兵隊は、上記時期の他、米兵少女乱暴事件を受けた90年代後半米軍再編協議のあった2000年代半ば以降米関係者から撤退・削減案が浮上しましたが、日本政府は水面下でそれを阻止して来ました。

 日本総研会長の寺島実郎氏はかつてサンデーモーニングで「日本には安保で喰う人たちがいる」と述べました。いわば米軍が日本からの撤退を計画する度にそれを押し留めてきた勢力のことです。
 一時期(2009年8月~2012年12月)民主党政権が生まれたとき、最初の首相の鳩山由紀夫氏が何か新しい政策を目指す度に、「そんなことをすると米国が怒る」と必死に止めたのが民主党内に巣くっていたその連中でした。彼らはそれなりの使命感をもっていたのかも知れませんが、何故、そして何を怒るのかさっぱりわかりませんでした。
 ジャーナリストで民主党の成立にも関与した高野孟氏が、「怒らせておけばいいじゃないか」とブログに書いていましたが、それ以外に言いようのないものでした。

 その点、米軍の駐留経費のアップ要求に対して、「13%アップが限度。購入兵器代の支払いもコロナ禍で財政が困窮しているので遅らせて欲しい」と堂々と主張する韓国政府は立派です。
 日本の右翼(極右)は何故米軍の撤退にそれ程反対するのでしょうか。そもそも国家の自主独立を望まない右翼というのがあり得るのでしょうか。

 琉球新報が「米軍撤退の引き留めるは止めよ・沖縄への負担の押しつけに終止符を」とする社説を掲げました。
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<社説> 米軍撤退引き留め 負担押し付けに終止符を
琉球新報 2020年6月29日
 沖縄戦から75年、日本復帰から48年たつ。だが依然沖縄に在日米軍専用施設面積の7割が集中している。負担軽減はなぜ進まないのか。その本質が浮かび上がる歴史の事実がまた明らかになった。
 復帰前年の1971年5月、これにより本土から米空軍戦闘機は消え、沖縄の基地機能が強化されていった。嘉手納のF4はその後F15に変わり、これが現在に至っている。沖縄に負担を押し付ける構図に、終止符を打たなければならない。
 71年のF4移駐を巡って今回、米側が当初、米本国や米領グアムを検討していたことが分かった。東京工業大の川名晋史准教授(国際政治学)が米公文書を分析した。川名氏は、米軍撤退を不安視する日本に配慮する米側の政治的措置だったと指摘している。
 首都圏の米空軍基地を整理・統合する「関東計画」が進んでいく時期だ。日本本土では米軍関連の事故にベトナム反戦運動や安保闘争などが重なり、反基地感情が高まっていた時期でもある。国内の政治問題化を避けるため、沖縄に基地を集約させていった政府の思惑がうかがえる。
 一方、在沖米軍の撤退や削減などの負担軽減案が米政府内で何度も検討されながら、日本側が引き留めてきた歴史も外交文書や当局者の証言などで明らかになっている。
 復帰に際して、那覇空港に配備されていた米海軍P3B対潜哨戒機の移駐先として米側が岩国(山口)や三沢(青森)を検討していながら嘉手納に変更された事例がある。
 72年1月の日米協議で福田赳夫外相(当時)はこの問題に触れて、佐藤栄作首相(同)の地元岩国などへの移転は「政治的な問題を生じさせる」と拒んだ。こうした基地負担を巡る沖縄と本土の二重基準は今も続く構図である。差別以外の何物でもない。

 在沖米軍基地面積の約7割を占める海兵隊は70年代に米政府内で撤退が検討されたが、日本側が引き留めている。少女乱暴事件を受けた90年代後半、米軍再編協議のあった2000年代半ば以降も同様だ。米関係者から撤退・削減案が浮上するたびに、水面下で日本政府が阻んできた。負担軽減の芽を長年摘んできた責任は重大だ。
 F4が嘉手納に移駐した71年5月、佐藤首相は琉球政府の屋良朝苗主席から基地の整理縮小について要請を受け「本土の(基地)負担を沖縄に負わすようなことはしない」と表明した。だが約束は今も果たされてはいない。
 現在、安倍政権は県民が繰り返し示す民意に反して辺野古の新基地建設を推し進めているが、軟弱地盤の存在などで技術的にも財政的にも完成は見通せない。安倍晋三首相にとっては、大叔父に当たる佐藤首相の約束を今こそ果たし、沖縄への負担の押し付けを改める好機であるはずだ。

30- 安倍政権の答弁拒否 7年半で計6532回(日下部智海氏)

 憲法第63は「閣僚らは議院で答弁又は説明のため出席を求められたときは出席しなければならない」としており、それは誠実に答弁する義務を負っていることを意味します。
 議院は、衆参本会議のほか計17の常任委員会・特別委員会からなり立っています。
 ジャーナリストの日下部智海氏が、首相・大臣・副大臣・大臣政務官、政府参考人(官僚)答弁拒否した件数を、議事録から検索し集計しました。大変な労作です。
 それによると安倍政権が発足した12年以降、答弁拒否は年々増加し、計6532件に及んでいます。
 個人別の拒否回数は、安倍首相が614件でトップ2位は岸田文雄元外務・防衛の276件)、件名別では森友学園問題が450件でトップ(2位は原発281件連続拒否回数では森まさこ法相がダントツの36回黒川検事長の定年延長)でした。

 文中の太字強調個所は原文に拠っています。
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「答弁拒否」で民主主義を破壊する安倍政権。7年半で計6532回
 日下部智海 ハーバー・ビジネス・オンライン 2020.06.28
安倍政権の「答弁拒否」を徹底検証
 首相や閣僚には、国会に出席し、答弁する義務があるとされている。しかし近年の国会では、首相や大臣、副大臣、大臣政務官、政府参考人(官僚)といった政府の代表者が、委員の質問に対し「お答えを差し控える」や「答弁を控えさせていただきます」と答弁拒否する光景を目にするのが増えた。
 そこで本連載では、安倍政権の約7年間を「控え」という単語をキーワードに、誰が、どのような質問から逃げてきたのかを検証し、政府が国民に対し何を隠そうとしてきたのかを探っていく。本記事はその第一弾

首相や閣僚は答弁義務を負っている
 本題に入る前に、首相や閣僚の出席義務について説明しておこう。
 国会には、議院の最終的な意思決定をする”本会議”と、本会議での最終決定を行う前に、予算・条約・法律案などの議案を専門的に審査する機関である”委員会”がある。
 委員会には大きく分けて常任委員会と特別委員会があり、名称は少し異なるが衆参ともに17の常任委員会が設けられ、必要と認められた時に特別委員会が設置される。
 そして、首相や閣僚は、議会への出席を求められた場合に出席義務が存在すると日本国憲法第63条に規定されている。

 1975年6月5日の参議院法務委員会で、吉國一郎内閣法制局長官は、「憲法63条におきましては、内閣総理大臣その他の国務大臣の議院出席の権利と義務を規定いたしております。このことは、内閣総理大臣その他の国務大臣が議院に出席をいたしました場合には、発言をすることができ、また政治上あるいは行政上の問題について答弁し説明すべきことを当然の前提といたしておるのでございます。つまり、答弁し説明をする義務があるというふうに考えております」と答弁している。

 また、2008年福田康夫内閣の『衆議院議員平野博文君提出閣僚等の答弁・説明義務及び「あたご」事故の調査等に関する質問に対する答弁書』には、「憲法第六十三条において、内閣総理大臣その他の国務大臣は、議院で答弁又は説明のため出席を求められたときは出席しなければならないとされており、これは、国会において誠実に答弁する責任を負っていることを前提としていると認識している」とある。首相や閣僚には、出席義務のみならず答弁義務も存在していると繰り返し述べられてきたのだ。

 このように、委員(委員会に所属している国会議員)からの質問に対し首相や閣僚が誠実に答弁することで、民主主義の根幹である国会での議論が成り立っている。

2012年以降、答弁拒否が年々増加 計6532件
 安倍政権下での答弁拒否の総数を調べるために、国会会議録検索システムで期日を第2次安倍内閣が誕生した2012年12月26日から執筆現在の2020年6月17日(近日中の議事録はまだ反映されていない可能性がある)に指定し、検索の抜け穴を生じさせないために検索キーワードを『控え』に設定し検索した。すると、13,901件も該当した。
 13,901件の中には、2016年5月8日の決算委員会で元気がトレンドマークのアントニオ猪木議員が、委員長から名指しで「大声は控えてください」と怒られ、「国会にいると元気がなくなってしまうな」といじけてしまうやり取りなど、答弁拒否と関係のない「控え」も含まれていた。
 そこで13,901件を1件ずつチェックすると、質問への回答や説明から逃れるために「答弁を控える」、「お答えは差し控えさせていただく」、「回答は控えさせていただきたい」、「差し控えたい」、「控えます」など多種多様な言い回しで、政府側の答弁者が追求から逃れていた。

 第2次安倍内閣が誕生してからの国会の会期1,694日間において、上記のような説明を拒むために使われる言い回しを首相・大臣・副大臣・大臣政務官、政府参考人(官僚)が使った合計は、6,532件だった。
 年別にみると、2012年は0件(会期3日)、2013年は448件(会期211日)、2014年は829件(会期207日)、2015年は670件(会期245日)、2016年は712件(会期236日)、2017年は1046件(会期190日)、2018年は1312件(会期230日)、2019年は957件(会期222日)、2020年は558件(会期150日)と、年を重ねるごとに答弁拒否の回数が増加し、2018年には5年前の約3倍にまで増えた。
 2017年と2018年に答弁拒否数が増加したのは、森友・加計学園問題、南スーダン・イラクPKO日報隠蔽問題という政権が吹っ飛んでもおかしくない不祥事が続き、答弁を控え時間を稼ぐことしか乗り切る方法が存在しなかったからだ。

 2012年の民主党野田政権における答弁拒否389件(会期248日)と比較しても、安倍政権が真摯に国会での論戦に向き合っていないことがわかる。人によってはこの状況を長期政権のおごり緩みと評するかもしれないが、これは明らかに日本政治の劣化であり議会制民主主義の危機だと筆者は感じる。

拒否の回数、安倍首相が614件でトップ
 人物別でみると安倍首相が614件(任期2,734日)で最も多く、岸田文雄元外務・防衛大臣の276件(任期1,682日)、河野太郎防衛・元外務大臣の239件(任期1,356日)、稲田朋美元防衛大臣の147件(任期612日)、麻生太郎財務大臣の145件(任期2,734日)と続く。

 安倍首相の任期が長いため答弁拒否回数が増えるのも仕方ないと感じるかもしれないが、任期が全く同じ麻生財務大臣と比較すれば、安倍首相が繰り返し答弁から逃げてきたのがわかる。
 答弁拒否回数で安倍首相がトップである理由は、政府の最高責任者であり全ての事柄で説明が求められる点や、安倍首相が当事者である森友・加計問題や桜を見る会といった疑惑の追求を受けたからだ。また防衛・外務大臣のランクインについては、国家機密や安全保障、他国との関係という理由で答弁拒否する機会が多いからだ。

連続拒否回数の記録保持者は森まさこ法相
 連続答弁拒否の記録保持は、2020年3月6日の参議院予算委員会における森まさこ法務大臣の36回。社民党の福島瑞穂議員から東京高等検察庁黒川検事長の定年延長について質問され、「個別の〜」を理由に36回連続で答弁を控えた。
 「個別」を理由とした答弁拒否は全体の19.9%を占めており、主に企業の不正や社会でおきている問題について質問された時、「個別の企業、個別の事案のためお答えを控える」と使用されるのが安倍政権下でも一般的だった。

 これまでの前例から考えると、誰の前で黒川氏が定年延長の同意書に同意したのかという政府内での人事について、森法務大臣が「個別」を持ち出し、答弁を控えたのは異例のことだ。安倍政権内での「個別」の範囲が、本来明らかにすべき政府の意思決定プロセスにまで広がっており不透明さが増していると言える。

森友学園問題での答弁拒否がトップの450件
 次にどの話題に対し答弁を拒否してきたかを調査したところ、森友学園問題が450件と最も多く、原発(再稼働、再処理など)281件、TPP256件、沖縄基地移設問題246件、北朝鮮問題(核開発、弾道ミサイルなど)210件、集団的自衛権192件、加計学園問題192件、北方領土165件、桜を見る会114件、拉致問題98件がトップ10にランクインした。
 通年で国会の議題に上がっていた原発や沖縄基地移設問題、北朝鮮問題に比べ、2017年に初めて国会で話題に上がった森友学園問題が2位以下にダブルスコアーをつけトップだった。森友学園問題には安倍政権がどうしても隠しておきたい不都合な事実が存在していることが答弁拒否の数字から伺える。

 森友学園問題が国会で初めて話題に上がった2日後の2017年2月17日の衆議院予算委員会において、安倍首相が「私や妻がこの認可あるいは国有地払い下げに、もちろん事務所も含めて、一切かかわっていないということは明確にさせていただきたいと思います。もしかかわっていたのであれば、これはもう私は総理大臣をやめるということでありますから、それははっきりと申し上げたい、このように思います」と見切り発車的に発言した。
 その後、首相や首相夫人と森友学園との疑惑が浮かび上がり野党から厳しい追求を受けた時、首相を守るために様々な政府関係者が答弁を控えることに終始し、回数が積み上がっていった。さらにほとぼりが冷めかけた時に、財務省理財局による決裁文書の改竄や自殺した近畿財務局職員の遺書公開などの新事実が明らかになり、国会での追求が加熱した。
 今年に入ってから安倍首相や麻生財務大臣は森友学園問題の再調査を拒否したが、この問題に対し450件の答弁拒否を国会論争において行なっており、国民への十分な説明責任を果たしたとは言えない。

 森友学園問題の他にも説明責任を果たしていない疑惑や、議論が深まる前に強引に通した法律が数多くあり政府への厳しい追求を野党が行なっていた。しかし、質問には答えず、提出を求めた文書は黒塗り(桜を見る会の資料やTTP交渉資料)、極めつけは公文書の改竄・隠蔽(財務省理財局による決裁文書の改竄、南スーダン・イラクPKO日報隠蔽)と与えられる情報がわずか、かつその中に嘘が混じっており、政府の信頼性が地に落ち国会での政策論議が深まっていないのが現状だ。<文/日下部智海>

1997年生まれ。明治大学法学部卒業。フリージャーナリスト。特技:ヒモ。シリア難民やパレスチナ難民、トルコ人など世界中でヒモとして生活。社会問題から政治までヒモ目線でお届け。Twitter:@cshbkt

2020年6月29日月曜日

陸上イージスがダメなら「敵基地攻撃能力保有」とは小学生並みの論理

 安倍政権はイージス・アショアの配備計画中止をきっかけに、敵のミサイル発射拠点を破壊する「敵基地攻撃能力」の保有を声高に叫びはじめました。それは敵国がミサイルを発射しそうだと認識したときに、敵のミサイル基地を先制攻撃するというものです。
 そんな史上空前の戦争国家の米国なら振り回すかもしれない論理を、何故日本が大真面目に取り入れようとするのでしょうか。
「危険を感じたから先制攻撃を掛けた」では国際法上も容認されないし、そもそも戦争を放棄した日本国憲法にも明確に反します。
 何よりもイージス・アショアが使えなければ敵基地攻撃能力を持つしかないというのは、余りにも飛躍した小学生並みの論理です。
 LITERAが取り上げました。

 天木直人氏によれば、元自衛艦隊司令官が27日夕のTBSの報道特集で、「敵基地攻撃はやるなら徹底的にやらなければかえって危険だなぜなら徹底的にやらないと反撃を食らってこちらがやられるからだ語ったということです。
 言われてみればその通りで、敵基地を攻撃すれば明らかな戦争行為なので当然「敵国」は総力を挙げて反撃しますそれに対抗できるためには、日本は軍事国家になるしかありません。
 それこそは「いつか来た道」で、考えるも愚かなことです。
 ごく一部の人たちは戦前回帰の願望を持っているようですが、それはもはや「狂気」と呼ぶべきものです。

 LITERAの記事と天木直人氏のブログを紹介します。
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安倍政権がイージス・アショア停止を利用して「敵基地攻撃能力」保有を主張するペテン! 安倍首相も「先に攻撃したほうが圧倒的有利」
LITERA 2020.06.28
 呆れ果てるとはこのことだろう。配備計画が「停止」となった陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の問題で、25日、河野太郎防衛相が自民党の国防部会などの合同会議の場で涙ぐみ、「本当に取り返しがつかない。申し訳ない」と声を詰まらせて昨年の参院選において秋田選挙区で落選した前議員に謝罪したというのだ。
 河野防衛相が声を詰まらせて謝罪すべき相手は落選議員ではなく、無茶な計画でさんざん振り回してきた秋田県や山口県の住民に対して、だろう。さらには安全面とコストを問題にイージス・アショア配備を事実上中止にしたのなら、同じように安全面とコストの問題がある辺野古新基地建設の工事をすぐにでも止めるべきだ。
 しかし、新基地建設工事の見直しどころか、安倍政権はむしろイージス・アショアの配備計画中止をきっかけに、敵のミサイル発射拠点を破壊する「敵基地攻撃能力」の保有を声高に叫びはじめた
 実際、安倍首相は18日の総理会見でイージス・アショアの配備計画中止について「我が国の防衛に空白を生むことはあってはならない」などと言い出し、敵基地攻撃能力の保有にかんしても「抑止力とは何かということを私たちはしっかりと突き詰めて、時間はないが考えていかなければいけない」「政府においても新たな議論をしていきたい」と発言。その後、政府や安倍自民党から敵基地攻撃能力の保有の議論を求める声が噴出し、たとえば24日付のテレビ朝日の報道によると、敵基地攻撃能力の保有について政府高官は「守るより攻めるほうがコストは安い」などと語っている。

 言っておくが、イージス・アショアの安全性に対しては数々の疑問・指摘が投げかけられていたにもかかわらず、安倍政権はそうした声を無視して押し進めてきたのだ。イージス・アショアの配備計画中止を受けて、いま見直されるべきは、こうした安倍政権による強引な防衛・安全保障政策にほかならない。
 にもかかわらず、話を「防衛の空白」「コストが安い」などとすり替えて、従来から主張してきた敵基地攻撃能力の必要性を訴えるきっかけにしてしまうとは……。

 そもそも、この敵基地攻撃能力の議論は、朝鮮戦争から6年後の1956年に、当時の鳩山一郎首相が「誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべき」との政府見解を出したことに始まる。だが、ミサイルを撃つ前の基地や拠点を「危なそうだから」という理由で破壊すれば、これは「先制攻撃」であり、明確な憲法違反かつ国際法にも抵触する。事実、2015年7月28日の参院特別委員会で当時の岸田文雄外相も「他国から武力攻撃を受けていない段階で自ら武力の行使を行えば、これは国際法上は先制攻撃に当たる」と答弁している。
 しかも、敵基地攻撃能力は法理上可能であったとしても、実際には「自衛権」の範囲とするために発射直後(上昇中)のミサイル破壊を目指すことになる。現実的には、これは高度な偵察や情報収集技術、あるいは妨害電波などを駆使して初めて可能な行動であり、また、すべてのミサイルをその瞬間に破壊することは不可能だ。安倍首相は「抑止力」などという言葉を使ったが、「敵基地攻撃能力は抑止力になる」との論は破綻しているのである。無論、コストがさらにかかることは言うまでもない。

 つまり、敵基地攻撃は国際法にも憲法にも反する先制攻撃にほかならず、第二次世界大戦の反省から日本が原則としてきた専守防衛から逸脱するものであり、安倍首相自ら「100年に一度の国難」と呼ぶ新型コロナによって国民の健康と生活が脅かされているなかでわざわざ俎上に載せて議論するような問題ではそもそもないのだ。

安倍首相は、イージス・アショア停止と北朝鮮情勢を利用して敵基地攻撃能力保有と改憲を狙う
 だが、安倍首相にしてみれば、新型コロナでの失策を安全保障の問題でカバーしようとしているのではないか。いや、それどころか、自身の理想をかたちにするまたとないチャンスだと考えていることは間違いない。実際、この国の防衛戦略の基本姿勢である専守防衛も、さらには国際法上も憲法上も認められない先制攻撃についても、安倍首相は容認するかのような発言をおこなってきたからだ。
 たとえば、安倍首相は2018年2月14日の衆院予算委員会で、専守防衛について「純粋に防衛戦略として考えれば大変厳しい」と言い、「あえて申し上げたい」と前置きして、こんな主張を繰り広げていた。
「(専守防衛は)相手からの第一撃を事実上甘受し、かつ国土が戦場になりかねないものでもあります。その上、今日においては、防衛装備は精密誘導により命中精度が極めて高くなっています。ひとたび攻撃を受ければこれを回避することは難しく、この結果、先に攻撃したほうが圧倒的に有利になっているのが現実であります」
「先に攻撃したほうが圧倒的に有利」って、そんなことをしでかしたほうが国土は火の海になり、国際社会からも「ならず者国家」として非難を浴びる。よくもまあこんな物騒な答弁をしたものだと思うが、この答弁が象徴するように、安倍首相の感覚はとっくに憲法を逸脱したものなのだ。
 そして、安倍首相の狙いは、今回の敵基地攻撃能力保有の議論を憲法改正につなげることにほかならない。ようするに、敵基地攻撃能力の保有を訴えるなかで、宿願だった戦力不保持を明記した憲法9条2項の削除にまで踏み込もうとしているのではないか。

 いまは新型コロナの話題に飽きたワイドショーも北朝鮮情勢に夢中になっており、まさに安倍首相にとって敵基地攻撃能力の保有問題は支持率挽回と憲法改正に持ち込むための格好のテーマであり、今後、さらに血道を上げることだろう。新型コロナ対応の責任から目を逸らそうとする安倍首相のこの行動を、市民はこれからしっかりと監視してゆく必要がある。(編集部)


本格的防衛論戦が始まれば露呈する防衛強化論者の自己矛盾
天木直人のブログ 2020-06-28
 私が国家安全保障局(NSC)の前身であった内閣安全保障室に外務省から課長級として出向していた1988年から1990年ごろは、まだシビリアンコントロールは健在だった。
 すなわち、事実上の軍人である自衛隊制服組が日本の防衛政策に影響を与える発言をすれば、たちまち国会で追及され、国会審議がストップしたり、場合によっては自衛官幹部が更迭されたりした。
 ところが、いつの間にかこのシビリアンコントロールは死語になり、特に安倍政権になり、制服組が背広組(文官)と対等になって外交や防衛政策論争に堂々と発言できるようになった。
 そしていよいよ彼らの出番が来たのだ。
 勘違い政治家である河野防衛相の突然の陸上イージス白紙撤回発言によって、怪我の功名なのか、渡りに船なのか、焼け太りなのか、どういう表現がぴったりくるかは知らないが、安倍首相が突然、あらたな防衛大綱をつくり直すと言い始めた。
 それにともなって自衛隊の制服組幹部がどんどんメディアで発言し始めた。
 驚いたことに現職自衛隊幹部が記者会見で、陸上イージスが白紙撤回されてもミサイル防衛の必要性はますます高まる、などとメディアで平気で語り始めた。
 とんでもないことになってきたのだ。

 本来ならば、そう激しく非難するところだが、今回ばかりは私は、がぜん面白くなってきたと大喜びだ。なぜか。彼らが発言すればするほど、防衛力を強化すべきだと主張することの自己矛盾が露呈するからだ。
 きのう6月27日夕のTBSの報道特集で、香田洋二という元自衛艦隊司令官(海将)が出演して語っていた。
 敵基地攻撃はやるなら徹底的にやらなければかえって危険だと。なぜならば、それは敵の中枢を攻撃するわけだから、徹底的にやらないと反撃を食らってこちらがやられるからだと。
 しかし、いまの自衛隊には、敵基地を徹底攻撃できる組織力も、情報収集能力も、装備も技術力も、士気も、なにもかも無い。そんな現状で敵基地攻撃を行うことは自殺行為だと。
 その時の香田海将の正確な表現は忘れたが、彼がいわんとするところはそういうことだ。

 この発言は日本全国の国民が知っておかなくてはいけない発言である。
 なにしろ、ついこの間まで海上自衛隊のトップにいて日本の防衛力の現状を一番よく知っている人の発言である。
 この発言を論破できる専門家は今の日本では誰もいないはずだ。その人物が、テレビの前で国民に向かって、日本は敵基地攻撃を出来ない国だと証言したのである。
 もちろん、香田元海将が言いたいことは、だから日本も米国や中国並みにあらゆる面で防衛力を強化すべきだということなのだ。
 しかし、日本がいまさらそんな事をやろうとすれば、いくら予算があっても足りない。 敵基地攻撃力を高める前に、日本と言う国が崩壊することになる。
 どっちに転んでも、敵基地攻撃を可能にする防衛力の強化は、あり得ない政策なのだ。
 野党は来るべき国会審議で、まっさきに6月27日夕に全国放映されたTBS報道特集の香田元海将の発言を取り上げるべきだ。
 そして香田海将を国会に招致して証言させるべきだ。
 俄然、おもしろくなってきた。
 敵基地攻撃論争は、始まったとたんに終わるということである(了)