2024年1月31日水曜日

インチキ派閥解消 の陰で自民党と岸田政権が温存する裏金づくりのシステム

 自民党は25日に臨時総務会を開き、裏金事件を受けて設置した政治刷新本部の「中間とりまとめ」を了承しました。
 しかしそれは裏金事件の真相解明や企業・団体献金の全面禁止には一切触れず、派閥の全廃にも踏み込まない(⇒「政策集団」としての存続を容認)という非常に不徹底なものでした(「真相解明なし 献金禁止なし 派閥全廃なし 裏金事件 自民『刷新』中間まとめ」しんぶん赤旗 26日)。
 国民の怒りが沸騰している中で、良くもこれほどデタラメな『政策刷新』を「中間とりまとめ」とはいえ発表できたものです。そもそも派閥解消と裏金問題は別の話であるのにそれを混然一体とさせることで誤魔化そうとすること自体不純です。

 LITERAが掲題の記事を出しました。しんぶん赤旗の指摘している内容を具体的に説明しています。
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“インチキ派閥解消”の陰で自民党と岸田政権が温存する裏金づくりのシステム! 企業団体の献金、パー券購入も不透明なまま
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 安倍派幹部が全員不起訴となったパーティ券裏金問題。会見を開いた世耕弘成・前参院幹事長は「政治資金の管理は秘書に任せきりだった」「(キックバック分は)秘書が報告していなかった」などと秘書に責任をなすりつけ、西村康稔・元経産相は「裏金は一切ありません」などと書かれたビラを地元・兵庫県明石市で配布するなど、恥知らずの言動を見せた。
 なかでも、とりわけ酷かったのが萩生田光一・前政調会長だ。報道では当初、萩生田氏の不記載額は数百万円と伝えられていたが、蓋を開けると5年間で計2728万円にものぼっていたことが判明。しかも、地元の八王子市長選が終わってから会見を開き、その額を公表するという姑息な手に出たのだ。
 そのうえ、安倍派幹部の連中は、これほどの裏金不記載の問題を引き起こしながら、揃いも揃って議員辞職を拒否。開会した国会では、テレビカメラが回っていることを知っていながら、何事もなかったかのように笑顔まで浮かべてみせたのだ。
 だが、とんでもないのは安倍派幹部だけではない。これまでダンマリだった安倍派議員たちがいまごろになって巨額の裏金不記載を次々に公表し、あらためて怒りを買っている。

 たとえば、安倍晋三・元首相とともにジェンダーフリーバッシングの急先鋒となり、最近では選択的夫婦別姓の導入やLGBT法案に反対してきたことで知られる山谷えり子・元国家公安委員長は、5年間で2403万円の不記載があったと自身のHPで公表。これには作家の平野啓一郎氏が〈普段から「美しい国、日本」だとか何とか言ってる国粋主義の政治家だが、堕落してるのは自分だろう〉と批判しているほか、ライターの武田砂鉄氏も〈2000円返し忘れたくらいのテンションで2000万円の裏金を謝る〉と、その不誠実さを指摘。

 もっと酷いのが、山谷氏と同じく差別を振りまいてきた杉田水脈・衆院議員だ。杉田議員は21日、自身のブログで「清和会総会、解散等について」と題した記事を投稿。そのなかで、安倍派の解散について〈泣きました〉などと思いを綴ったうえで、しれっと自身にも不記載があったことを記述。〈派閥の指導に従った〉〈不正や私的流用は全くありません〉などと言い訳を並べ立てただけで不記載額すら明らかにしていないのだ。
 杉田議員といえば、昨年11月にネット番組でアイヌ文化の振興事業について「公金チューチュー」などと発言。また、杉田議員はフェミニズム研究者に対して「研究費の不正使用」「反日研究」などと攻撃をおこなってきたが、昨年5月、東京高裁は研究費の不正使用やずさんな経理はなかったとし杉田氏に33万円の賠償を命じている。このように、公金の使い方についてさんざんデマを飛ばし攻撃の犬笛を吹いてきた議員が、自身の裏金不記載については金額さえも明らかにせず平然としているとは──。しかも、「週刊文春」(文藝春秋)によると、杉田議員には「1000万円前後の裏金があった」とされているのだ。

 今回、検察は不記載額3000万円以上を立件ラインにしたと言われているが、これは検察が勝手に決めた基準にすぎず、政治資金規正法への不記載は完全な違法行為だ。裏金の使途について、多くの安倍派議員は明細を明らかにしないまま「政治活動に使った」などと言い張っているが、違法な裏金で政治活動をおこなってきたという一点だけでも議員失格であり、辞職以外の責任の取り方はない。
 ところが、安倍派幹部らが立件を免れたことにより揃って不記載分の使途を明確にすることもなく開き直った結果、武田氏が指摘したように「2000円返し忘れたくらいのテンション」で水に流そうとしているのだ。異常なモラル崩壊が起こっていると言うほかないだろう。

派閥解散は論点ずらしと権力闘争! 安倍派幹部は森喜朗に泣きつき離党勧告から逃れようと…
 しかし、いま起こっている異常事態はこれだけではない。それは、派閥解散による「論点ずらし」とどさくさ紛れの「権力闘争」だ。
 ご存知のとおり、岸田文雄首相は岸田派の元会計責任者が立件されるという報道を受け、唐突に「岸田派の解散を検討する」と公表。そもそも岸田首相は昨年末に岸田派トップを退いており、なぜ派閥とは無関係の人物が解散検討を決定できるのか疑問しかないのだが、この岸田首相の発表を受け、安倍派や二階派、森山派などで“派閥解散ドミノ”が起こった

 あらためて指摘するまでもないが、派閥を解散したところで今回の裏金不記載問題の責任をとることにはまったくならない。むしろ、腐敗をもたらした構造的問題点を明らかにしないまま解散することは、たんなる論点ずらしと責任逃れだ。
 つまり、岸田首相が派閥解散の口火を切ったのは、岸田派の前会長として責任を問われることや、派閥解消を訴える菅義偉・前首相などの無派閥勢力に主導権を握らせたくないという思惑があったことは明白。ようするに、自身の責任逃れや権力闘争の道具として持ち出したにすぎない。
 しかも、岸田首相による派閥解散宣言の流れで解散を発表し、裏金問題の免罪符にしようとしたのが安倍派だが、解散を決定づけたのは森喜朗・元首相だった。25日付の日本経済新聞によると、森氏は岸田首相の表明を受けて萩生田光一・前政調会長ら「五人衆」などに電話をかけ、「君はどう思う? 私は早く解散すべきだと思う」と“天の声”を伝えていたというのだ。
 森氏といえば、今回の裏金問題で特捜部も“本丸”として捜査に乗り出していた疑惑の人物。本サイトでもお伝えしたように、安倍派会長を退いてからも裏金に関与し、詳細を把握していたと見られている。実際、森氏は特捜部の捜査がはじまって以降、北國新聞のインタビュー連載を終了したり、世耕弘成・前参院幹事長や西村康稔・前経産相と“口裏合わせ”の密会をおこなっていた。そのような人物が、安倍派解散の糸を引いていたというのである。

 そればかりか、森氏は自民党執行部が安倍派幹部に離党や議員辞職を求めたとする報道に激怒。25日に茂木敏充幹事長や麻生太郎副総裁らと面会し、安倍派幹部を擁護したという。ようは安倍派幹部が森氏に泣きつき、離党勧告を下させないよう釘を刺してもらったというわけだ。
 ちなみに安倍派幹部は茂木幹事長に「安倍派だけを処分する理由をどう説明するのか。(立件された)二階派、岸田派の幹部も離党させるのか。岸田首相にも『離党しろ』と言うのか」と迫ったというが(朝日新聞25日付)、本来、不記載によって元会計責任者が立件されたことの責任をとり、岸田首相や二階俊博・元幹事長も議員辞職、少なくとも除名処分を受けるべきだ。ところが、そうした当然の政治責任をとろうとしないばかりに、「秘書ガー」を連呼する無責任極まりない安倍派幹部がいまだに議員としてのさばろうとし、とっくに政界を引退した“妖怪”まで引っ張り出して離党勧告から免れようとしているのである。

自民党政治刷新本部のふざけた中間とりまとめ! 派閥全廃も連座制も政治資金パーティ全面禁止も明記せず
 このように、隅から隅まで腐り切った自民党に政治資金をめぐる政治改革など、実行できるはずがない。
 実際、岸田首相が本部長を務める自民党の「政治刷新本部」が公表した中間とりまとめでは、「派閥全廃」を明記せず、派閥が政策集団として存続することを容認。さらに「派閥事務所の閉鎖」「党役員・閣僚の派閥からの離脱」も明記されなかった。過去、何度も繰り返されてきたように、冷却期間を経て派閥が復活するのは目に見えているだろう。
 しかも重要なのは、政治資金収支報告書に虚偽記載があった場合に議員本人の刑事責任を問う「連座制」の適用や、企業・団体からの献金禁止、政治資金パーティの全面禁止が盛り込まれることがなかった点だ。

 いったい、これで何が「政治の信頼を取り戻す」だ。この自民党によるとりまとめでは、今後も議員個人が政治資金パーティを開催し、企業・団体にパー券を売ることができる。しかし、政治団体ではない企業・団体については、どれだけパー券を購入したのかを確認しようがない。口座振込ではなく現金でパー券を購入させてしまえば、それを政治資金収支報告書に記載せず裏金化することが可能になってしまう。万が一、そうした裏金が発覚しても、連座制を適用できなければ、またも議員は「秘書ガー」と言い張って無罪放免となるではないか。
 また、同じく問題なのが、自民党の中間とりまとめでは「政策活動費」にまったくメスを入れていない点だ。政治資金規正法では政治家個人への金銭の寄付を禁止しているが、例外として政党から政治家個人への寄付を認めている。さらに政治家個人の政治資金は使途を公開する義務がないため、「裏金の温床」と呼ばれてきた。事実、自民党は2022年の1年間だけで14億1630万円を政策活動費として支出し、うち計9億7150万円を茂木幹事長が受け取っているが、その使い道は明らかになっていない

 この政策活動費は自民党に限らず日本共産党以外の野党も軒並み支出してきたものだが、改革案として立憲民主党や日本維新の会などは政策活動費の廃止を打ち出している。だが、自民党はこの期に及んでも、この事実上の裏金を手放そうとしないのだ。
 さらに、政権を握る自民党には「官房機密費」という裏金も存在する。
 官房機密費は官房長官の裁量で機動的に使える予算で、情報提供者への謝礼などに使う「調査情報対策費」、情報収集のための贈答品などに使う「活動関係費」、そして「政策推進費」の3つからなり、このうち「調査情報対策費」「活動関係費」は領収書が必要となる。しかし、「政策推進費」は官房長官が自ら出納管理をおこなうもので、具体的な使途が特定されていない段階で国の会計からの支出が完了となる。つまり、国庫から引き出される金でありながら、領収書は不要、支払い先を明かす必要もなし、官房長官の判断ひとつで使える「ヤミ金」「究極のブラックボックス」と言うべき状態となっているのだ。そして、昨年11月、馳浩・石川県知事が東京五輪招致活動に絡み、官房機密費で豪華アルバムを作成しIOC委員たちにばらまいたと発言して問題となったように、官房機密費は国家の利益のためなどではなく、自民党が政治的工作のために湯水のように使っているという疑惑が指摘されてきた。
 実際、第二次安倍政権下では菅義偉官房長官が86億8000万円超を「政策推進費」に充ててきたが、注目すべきは自民党総裁選時の支出だ。菅氏は2020年9月2日に総裁選への出馬を表明したが、その前日の9月1日に菅氏は官邸内にあった官房機密費1億3200万円余のうち9020万円を、自分が自由に使うことができる「政策推進費」に振り分けていた。さらに、菅氏が首相に指名された同月16日に官房機密費の引き継ぎがおこなわれたが、それまでに菅氏が使った金額は4820万円。つまり、たったの16日間で「ヤミ金」を約5000万円も使ったのである。これは明らかに、総裁選対策に使用されたとしか考えられない。
 裏金問題を受けて官房長官は安倍派の松野博一氏から岸田派の林芳正氏に交代したが、今年秋におこなわれる自民党総裁選では、これと同じように、岸田派が総裁選工作として官房機密費を湯水のように使う可能性も考えられるのだ。

裏金問題を告発した上脇教授は「派閥をなくしても総裁選がある以上は裏金つくられ続ける」と指摘
 今回の裏金問題を告発した上脇博之・神戸学院大学教授は、自民党の総裁選は公選法が適用されず買収し放題であるという構造的な問題を指摘したうえで、「派閥をなくしても、総裁選がある以上は裏金はつくられつづけるのではないか」と指摘している(TBSラジオ『荻上チキ・Session』26日放送)。裏金をつくらせない仕組みをつくるうえでも、官房機密費の問題にもメスを入れなければ、自民党の体質は変わらないはずだ。
 さらに、上脇教授は「党や派閥の論理による中途半端な政治改革では、納税者・主権者である国民はたまったものではない」「泥棒に良い刑法がつくれないように、裏金をつくっていた人たちが立法を進めても良いものができるわけがない」と指摘すると同時に、「1994年の政治改革では『政党交付金を導入すればきれいな政治になる』と言っていたのが、裏金をつくっていた。もう税金を泥棒にあげるようなことはやめるべきだ」とも言及している。政党交付金という、わたしたちの税金が裏金議員を抱える自民党に投入され、支えるという仕組み自体を問い直す議論もなされるべきだ。

 29日から国会では本格議論がスタートするが、実態解明はもちろんのこと、裏金議員たちにしっかり政治責任をとらせること、そしてあらゆる裏金が生まれないようにする根本的な改革がなされるよう、徹底した監視が必要だ。派閥の解散で禊を済ませるようなことは、絶対に許してはならないだろう。 (編集部) 

現世拒否とお笑い芸人 価値観の闘争、中世絵画とルネサンス(世に倦む日々)

 世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました。
 同氏はつい20年前にはそうでなかったのに、このところ(安倍政権の登場以降)TV界は「お笑い系全盛」の時代となり、いまやお笑いのないテレビ空間はなくなったと述べます。以前はそういう人たちを見たくなければNHKに切り替えればよかったのに、彼らは受信料で経営するNHKにまで侵出し支配した結果、NHKの避難所に逃れることもできなくなったと嘆きます。
 そして「いわゆる現代のお笑いには何の価値も意味もないと思う。全てを廃絶してよく、消去してよい。それは悪の文化であり、痴愚化の文化運動であり、精神と社会の荒廃を主導する文化へゲモニー(⇒リーダー)」と明言し、「私はずっとビートたけしを批判していた。30年前の感覚として、その思想闘争に勝つことはできなくても、どこかでイーブンに持ち込めるだろうと楽観していた」がそうはならず「私の30年間は敗者の人生であり、少数派へ、異端へ異端へ追い詰められてきた人生だった」とすると同時に「松本人志は奇矯なヤクザ軍団の首領で、 知性や教養と無縁な、粗暴で凶悪な、野獣的欲望と衝動と奸計だけの、闇社会的反知性主義のレッテルに相応しい勢力の頂点の人格である」としています。

 ところでキリスト教が国教であった西欧社会には「中世の暗黒の時代」がありました。
 到底「異端審査」などでは片付け切れない「非人道」が行われ、人類の発展が大きく阻害された後にようやく「ルネッサンス」となって克服されました。
 同氏は「この30年間ほどが中世の暗黒だと確信している」と述べます。
 安倍政権によって加速されたこの事態=お笑い系全盛時代」には、かつての「河原歌舞伎者(河原乞食)」にはあった反権力指向という要素が皆無です。
 逆にひたすら「政権ヨイショ」の側に立っていて明らかに不健康です。
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現世拒否とお笑い芸人-価値観の闘争、中世絵画とルネサンス
                    世に倦む日日 2024年1月30日
現世拒否という言葉がある。ウェーバーの『宗教社会学』を大学の政治学演習で読んだとき、この表現が幾度も登場した。何度も何度も繰り返し出てきた。この四字熟語については特に辞書に説明が載ってない。ネットで検索しても、weblio 等で語義を確認することができない。Wikipedia の記述もない。Google で調べると、ただちに関連情報が並び、この言葉がウェーバーの理論(のみ)で使われる特殊な用語であることが分かる。そして、大塚久雄・生松敬三訳のみすず書房刊『宗教社会学論選に所収されている「中間考察が、ウェーバーの現世拒否論を知る上で最も参考になるテキストである。社会科学を学ぶ者にとっては必須の古典だ。読み返して、知識人の詩的な内省の文章に感動させられる。年を重ねて読むと、さらにその真価の電流に打たれる。真理の森で瞑想する気分になる。



ゼミの時間、この言葉が出ると、ギリシャとか欧州の山岳地帯の崖の上にある修道院を想起し、厳しい戒律の下で修行する修道士の姿を思い浮かべていた。世俗から切り離された孤絶空間で、質素に徹した生活を営み、人生を信仰と祈りに捧げて終わる者たちをイメージしていた。現世拒否的態度とか現世拒否的倫理とか、そういう議論に文中で(実に頻繁だったが)接したとき、宗教的情熱に身を投じた特殊な人の奇特な生き方として理解し、自分とは無縁のものと捉えていた。まさか、現世拒否的な態度や心性が自分自身のものになり、現世拒否の精神傾向が自らの後半生の日常になるとは想像もしていなかった。修道院には入ってない。宗教者にはなってない。だが、どう考えても、私はこの社会で現世拒否の人生を送っている一人であり、現世拒否を貫徹したまま世を去って行く人間だ。

テレビでお笑い系の人間が出てくると、すぐにチャンネルを他に切り換える。その行動をずっと続けてきた。拒否してきた。脊髄反射の拒絶反応を続けてきた。20年ほど前は、チャンネルを切り換えて問題解決が可能だった。NHKの避難所に何とか逃れられた。その憂鬱と不満をブログに書き綴り、嫌悪と憤懣を渾身で訴えれば、それなりに人に読んでもらえる批評となり、一定の妥当性と社会的意味を保てた。共感してもらえる地平が存在した。だが、お笑い芸能人はどんどん増殖し、活動範囲を広げ、受信料で経営するNHKにまで侵出し、支配し、お笑いのないテレビ空間はなくなった。NHKのアナウンサーがお笑い芸人に媚びを売り、追従して持ち上げ、番組が進行している。どの番組もお笑い芸人が主役になっていて、今では何がバラエティ番組で何がそれ以外なのか区別がつかない。

いわゆる現代の「お笑い」には何の価値も意味もないと思う。全てを廃絶してよく、消去してよいそれは悪の文化であり、痴愚化の文化運動であり、精神と社会の荒廃を主導する文化へゲモニーだ。原理的に否定すべき汚物だ。私はずっとビートたけしを批判していた。30年前の感覚として、その思想闘争に勝つことはできなくても、どこかでイーブンに持ち込めるだろうと楽観していた。ビートたけしの「お笑い」は必ずどこかで減価償却が起き、限界を迎え、社会的多数に意味否定される瞬間が来ると願望を抱いていた。だが、その期待は全くリアルにならず、世間は逆方向に力強く旋回し、ビートたけしの子分たちがマスコミと政治世界を席巻する方向に突き進んで現在に至っている。したがって、正直に客観的に言えば、私の30年間は敗者の人生であり、少数派へ、異端へ異端へ追い詰められてきた人生だった


現世拒否と言いつつ、拒否されたのは客観的に私の方だ。それは、自分から進んで異端的立場を選び求めたわけではなく、好んで修道院に飛び込んだわけでもない。思想闘争に負けた結果、自然にそうなった。20年前はお笑い文化に抵抗する者が少なくなかった。が、絶えて行った。要するに、私は頑迷に価値観を譲らず、時代の流れに身を合わせなかった偏屈な老人という位置づけになる。逆から言えば、相当に多くの者が、時代の価値観の変化に抗するのを途中でやめ、お笑い文化を受容し、積極的に肯定する流れに身を寄せて行った事実を意味する。その潮流は、日本の政治的右傾化と軌を一にしているし、また、左派が戦後民主主義の思想を棄て、脱構築リベラルの新境地に移った変節の過程と水脈を同じくするはずだ。政治学的に観察すれば、それは転向現象に他ならない。集団転向の雪崩の連続を止められなかった。



という次第で、実のところ私は松本人志のテレビを一度も見ていない。毒を口に入れる者はいない。高血圧の者が塩の固まりを口に放り込んだりはしない。生理行動として、松本人志や吉本興業のテレビは見ない。なので、お笑いについての知識がなく、週刊文春の記事を読むまでは、個々の芸人の顔と名前も全然知らなかった。松本人志や吉本興業のお笑い芸なるものについて、私には根本的な拒絶と否定の意識がある。一方、今の日本には、その逆に、彼らの活動に対する絶対的な評価とコミットがある。帰依と偶像崇拝がある。大衆の価値観の基準軸を見せるテレビ世界の、その中心にお笑い芸人が居座っている。彼らが現代日本の文化的指導性の中核だ。真善美の価値を作り出す主体だ。私は逆に、彼らを日本の劣化と堕落と自滅のエンジンと見做し、殲滅し一掃すべき害悪と考えている。彼らと私は不倶戴天の敵の関係にある。

松本人志の事件が始まって以降、様々なテレビ人が、松本人志がいかに偉大な天才かを語った。30年間の日本のテレビ界に君臨した最高指導者であると、古舘伊知郎や鈴木紗理奈が熱弁するのを聞いた。恰も、北朝鮮中央テレビのアナウンサーが金正恩を讃えるときの絶唱と同じフレーズを聞いた。どれもこれも納得できないし、理解に通じる回路と端緒がまるでなく狼狽えさせられる。管見では、松本人志は奇矯なヤクザ軍団の首領で、俗悪な反社会系の環境と磁場で成り上がったゴロツキだ。知性や教養と無縁な、粗暴で凶悪な、野獣的欲望と衝動と奸計だけの、闇社会的反知性主義のレッテルに相応しい勢力の頂点の人格である。テレビが公共の教育機関の機能と性格と責任を持ったシステムである以上、出演者として紹介すべきタレントではなく、むしろ排除が必要な対象だろう。山口組や稲川会の組長がテレビに出る図はあり得ない。松本人志についてはその総括で十分と言える。

昔から、高校生の頃からずっと不思議に思ってきたことがある。ヨーロッパの中世の人々は、何故、あのギリシャ・ローマの美しい彫刻や絵画を捨て、幼児が描いたような下手なプリミティブな絵で満足するようになったのだろうと。どう考えても芸術の作品性が劣化している。スキルとセンスが落ちている。デッサンの技術を失い、正確な写実が不能になり、美術的レベルを落としている。知性も退化している。そこにはそれなりの理由があり、宗教の精神的支配の影響があったからだろうと背景は想像できる。宗教・イデオロギーが悪い方向に作用すると、人間の創造力はこんなにも腐って衰えるのかと嘆息する。文芸復興運動が起きてよかったと思うし、古典古代文化が復活して、勝利の鬨を迎えてよかったと思う。長い中世の暗黒の間、ギリシャ・ローマ文化の方が優れていると、声を上げられなかった者もいただろう。

そんな声を上げれば、おまえは多神教の信者かと、すぐに捕縛されて異端尋問の宗教裁判にかけられ、悪魔に魂を売ったと断罪され、残酷な拷問の末に火炙りの刑に処されていたに違いない。だから、真実や正義の声は上げられなかった。沈黙せざるを得ず、支配的イデオロギーに恭順し雌伏するしかなかったのだ。中世は長く重く続いた。私は、この30年間ほどが中世の暗黒だと確信している。もっと続くだろうと覚悟している。知性はどんどん劣化し、人間の精神は退化して動物化している。脳下垂体が萎縮している。オーウェルの『1984年』の新語法辞書のように、語彙が減っていて、表現は即物的になっている。人の会話、テレビの説明、ネットの文章が、動物の唸り声や鳴き声のようなコミュニケーション仕様になっている。思考をしなくなり、推察や分析を面倒くさがり、「陰謀論だ」や「はい論破」の思考停止で済ますようになった。

ルネサンスがあるかどうかは分からない。だが、ルネサンスを待望し、必ず嘗ての知性や学問が再び勝利する日が来ることを信じることはできる。その思想信条を固持することはできる。そんな感じで、崖の上の修道院に暮らす孤独な居士のような現世拒否の毎日を送っている。現世拒否のまま死ぬだろうと諦観していた。そんな世を恨む庶民にとって、今回の松本人志性加害事件の文春報道は吉報であり、福音の到来と呼ぶべき出来事である。価値観の転覆を実現できるかもしれない。その希望を抱かせる革命の機会の出現だ。なので、推移を情熱的に見守り、スクープの続報に齧りついている。事件が示唆しているのは、30年間続いて時代を支配してきた価値観の動揺である。視界の先に見えるのは、日本人を長く拘束してきた誤った価値観の崩壊と、その価値観を守ってきた政治権力の没落の兆候だ。

その価値観の下で富み栄えてきた愚劣な一味一族の退散と消滅だ。お笑い文化のレジームの全面崩壊を祈願する立場で、興奮して、活力を与えられて新年の日々を送っている。

ガザの聖書的黙示録(賀茂川耕助氏)

 耕助のブログが掲題の記事を出しました。
 記事は、「外交政策に関して言えば、米国の大統領には2つの重要な役割がある。1つは、常に戦争を推進する軍産複合体を牽制すること。2つ目は米国が自国に代わって戦争をしてくれると期待している同盟国を牽制することである。数人の賢明な大統領はそれをするが、ほとんどは失敗する。ジョー・バイデンは確実に失敗だ」と述べ、成功した事例として、ドワイト・アイゼンハワージョン・F・ケネディを挙げました。
 一方バイデンについては、それを試みようともせずまた議会で議論しようともしないままで、ひたすら「ウクライナ戦争」の永続(兵器産業が莫大な利益を生むから)を望んでいるとしています。
 そしてイスラエルによるガザ市民の大虐殺に関しては、バイデンの失敗はさらに顕著であるとしてイスラエルに大規模な戦争犯罪を実行するための軍需品を提供し、結果的にレバノン、シリア、イラク、イラン、イエメンへと急速に対戦相手を拡大しているとしています。
 実に愚かなリーダーというしかありません。
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ガザの聖書的黙示録
                  耕助のブログNo. 2046 2024年1月31日
  Gaza’s biblical apocalypse 
   アメリカの無軌道さ、バイデンは外交政策の失敗者  by Jeffrey D Sachs
例外的な大統領だけが、この巨大な戦争マシンの終わりのない戦争営利主義に抵抗できるのだが、哀しいかな、バイデンはやろうともしない。

外交政策に関して言えば、米国の大統領には2つの重要な役割がある。1つは、常に戦争を推進する軍産複合体(MIC)を牽制すること2つ目は米国が自国に代わって戦争をしてくれると期待している同盟国を牽制することである。数人の賢明な大統領はそれをするが、ほとんどは失敗する。ジョー・バイデンは確実に失敗だ。
最も賢明な大統領の一人はドワイト・アイゼンハワーだった。1956年末、アイゼンハワーは2つの危機に同時に直面した。1つはエジプトによるスエズ運河の国有化を受け、エジプト政府を転覆させ、スエズ運河の支配権を奪還するためにイギリス、フランス、イスラエルが見当違いの戦争を仕掛けた。アイゼンハワーは、米国がスポンサーとなった国連総会決議などを通じて、連合国にその大胆かつ違法な攻撃を中止させた。2つ目の危機は、ソ連のハンガリー支配に対するハンガリー蜂起であった。アイゼンハワーは蜂起に同調しながらも、賢明にもアメリカをハンガリーから締め出し、ソ連との危険な軍事対決を回避した
1961年1月、アイゼンハワーが1961年1月に米国民に向けた歴史的な告別演説では、国民に軍産複合体の力の増大を警告した:
 政府の審議会において、軍産複合体が求める求めないにかかわらず、不当な影響力を獲得しないように警戒しなければならない。誤った権力による悲惨な台頭の可能性は存在し、今後も続くだろう。

 私たちは、この組み合わせの重みが、私たちの自由や民主的プロセスを危険にさらすようなことを決して許してはならない。私たちは、何も当然のこととして受けとるべきではない。警戒心を持つ知識豊かな国民だけが、防衛のための巨大な産業・軍事機構と私たちの平和的な方法と目標を適切に結びつけ、平和な手段と目標と調和させることができる。そのようにして安全と自由が共に繁栄するのだ。
アイゼンハワーでさえ、軍産複合体、特にCIA(中央情報局)を完全に抑制することはできなかった。これを完全に実行した大統領はいない。CIAは1947年に創設され、2つの異なる役割があった。1つは諜報機関としての役割。もう1つのひどい役割は大統領のための秘密の軍隊というものだった。後者の役割ではアイゼンハワーの時代から現在に至るまで、クーデター、暗殺、仕組まれた “カラー革命 “など一連の悲劇的な失敗を引き起こし、そのすべてが果てしない大混乱と破壊をもたらした

アイゼンハワーに続いてジョン・F・ケネディは1962年のキューバ危機を見事に解決し、ソ連との平和的解決に向け、戦争を煽る自らの助言者たちに立ち向かい、核のハルマゲドンを辛うじて回避した。翌年には、ペンタゴンの反対を押し切ってソ連との部分的核実験禁止条約の交渉に成功し、上院の批准を勝ち取り米ソを戦争の瀬戸際から引き戻した。多くの人々は、ケネディの平和への取り組みが、不正なCIA職員の手による暗殺につながったと信じている。バイデンはケネディ暗殺に光を当てるであろう何千もの文書を機密扱いにしたり、編集したりした歴代大統領の列に加わった。

それから60年、軍産複合体は米国の外交政策に鉄の支配力を持っている。最近説明したように、外交政策は内部の者たちの仕組みとなり、軍産複合体がホワイトハウス、ペンタゴン、国務省、議会の軍事委員会、そしてもちろんCIAを支配し、大手の武器製造業者と緊密に連携している。例外的な大統領だけが、この巨大な戦争マシンによる終わりのない戦争営利行為に抵抗できるのだ。

 残念なことにバイデンはそれを試みようともしない。その長い政治キャリアを通じてバイデンは軍産複合体の支援を受け、その時に選ばれた戦争、巨額の武器売却、CIAが支援するクーデター、そしてNATOの拡大を熱狂的に支持してきた
米国の外交政策の方針は定まっておらず、大統領の唯一の外交政策のレシピは戦争である。
バイデンの2024年の軍事予算はあらゆる記録を塗り替え、ペンタゴン、CIA、国土安全保障、ペンタゴン以外の核兵器プログラム、補助金による対外武器販売、その他の軍事関連支出、過去の戦争関連債務の利払いなどで、少なくとも1兆5000億ドルに達する。この軍事費の山に加え、バイデンは米国の「国防産業基盤」のために、ウクライナとイスラエルに軍需品を出荷し続けるための「緊急追加資金」としてさらに500億ドルを要求している。
バイデンはウクライナに対する現実的な計画を持っておらず、さらに、2022年3月にロシアとウクライナの間で結ばれた、ウクライナの中立を基にした和平協定を拒否した。この協定は、ウクライナがNATOに加盟しないことで紛争を終結させるものだった(ロシアがそれを受け入れることはないため)。ウクライナは軍産複合体にとってビッグビジネスであり、数百億ドル、潜在的には数千億ドルの武器契約、米国全土の製造施設、新しい兵器システムを開発しテストする機会である。そのためバイデンは、戦場でウクライナが破壊され、何十万人ものウクライナ人が悲劇的で不必要な死を遂げたにもかかわらず、戦争を続けている軍産複合体、そしてそれによってバイデンは、NATOやその他の安全保障問題(東欧への米国のミサイル配備など)に関する米ロ直接交渉が戦争を終わらせる可能性があるにもかかわらずその交渉を避け続けている。

イスラエルでは、バイデンの失敗はさらに顕著である。イスラエルは、イスラエル人とパレスチナ人が二つの主権国家で平和で安全に共存するべきという二国家解決を軽蔑する過激派政府によって率いられている。実際には、パレスチナ人に政治的権利を与えるあらゆる解決策も嫌悪している。二国間解決は、国連安全保障理事会や総会の決議を含む国際法に深く組み込まれており、おそらく米国の外交政策にも組み込まれている。アラブやイスラムの指導者たちは、二国家解決という文脈でイスラエルとの関係を正常化し、安全な関係を確保することにコミットしている
しかしイスラエルは、ヨルダン川西岸、ガザ、東エルサレムを含む今日のパレスチナの全土を神がイスラエルに与えたというメシア的主張をする暴力的な狂信者たちによって率いられている。そのためこれらの狂信者たちは、自分たちの中にいる何百万人ものパレスチナ人に対する政治的支配、あるいは彼らの消滅や追放を主張しているのだ。ネタニヤフとその同僚たちは自分たちの大量虐殺の意図を隠そうともしないが、ほとんどの外国人観察者は、イスラエルの指導者たちが現在進行中のパレスチナ人の大量虐殺を正当化するために持ち出している聖書の引用を完全には理解していない。
イスラエルは現在、南アフリカが国際司法裁判所に提訴したジェノサイド(大量虐殺)の罪で、非常に信頼性の高い訴追を受けている。南アフリカやその他の国々が提出した文書記録は、ゾッとするほど明確である。イスラエルの政治はプラグマティズムの政治ではなく、平和の政治でもない。聖書の黙示録の政治なのだ。

それにもかかわらずバイデンは、イスラエルに大規模な戦争犯罪を実行するための軍需品を提供している。アイゼンハワーのように行動し、ジェノサイド条約を含む国際法に反する虐殺をやめるようイスラエルに迫る代わりに、バイデンは軍需品の出荷を続け、議会の審査を最大限に回避している。その結果、米国は世界から外交的に孤立し、レバノン、シリア、イラク、イラン、イエメンへと急速に、そしてあまりにも予想通りに拡大しつつある戦争への米軍の関与が強まっている。パレスチナ人の政治的自決を支持する最近の国連総会の投票では、米国とイスラエルは2票を除いて単独で反対した。2票とはミクロネシア(米国との協定に縛られて米国と同じように投票することになっている)とナウル(人口12,000人)だ。

米国の外交政策は無軌道であり、大統領は戦争しか外交政策のレシピを持っていない。米国はすでにウクライナと中東での戦争に首まで突っ込んでおり、バイデンはまた、「台湾への長期的な武器売却政策は行わない」という42年前の米中共同コミュニケでの公約を含め、一帯一路に対する米国の長年の公約に違反することになると中国が強く反対しているにもかかわらず台湾への武器輸出を増やすつもりでいる。アイゼンハワーの悲痛な予言が実証された。軍産複合体は、私たちの自由と民主主義、そして生存そのものを脅かしているのだ。

Gaza’s biblical apocalypse: America rudderless, Biden a foreign policy failure 

トランプ主義を機関化しリベラルエリート支配と戦う米共和党(田中宇氏)

 田中宇氏が掲題の記事を出しました。
 同氏は「今回は本来有料記事の番なのだが、こんな重要な話を皆さん全体に伝えないのは残念すぎる」として無料記事にしています。
 「トランプ主義の機関化」なる表現は初めての登場と思われます。文中で「これまでトランプ主義はトランプ個人に依拠する部分が大きく、政策全体のまとまりに欠けていたが、ヘリテージ財団はトランプ主義を機関化して共和党の中心的な政策にしていく云々」と述べています「理論化した上で同財団の方針にしていく」という意味のようです。
 まさかトランプが英明なリーダーであるとは思っていないでしょうが、彼はバイデンとは違ってかつてのモンロー主義を思わせる孤立主義を主張し、在任中に新たな戦争を仕掛けることをしませんでした(その点はノーベル平和賞を貰ったにもかかわらず在任中多くの国々に紛争を仕掛けたオバマとは対照的でした)。
 別掲の記事にもあったように、この先バイデンに任せておくとどこまで中東の国々との戦争が拡大するのか見当もつきません。取り敢えずは、トランプが一旦大統領に就くべきでしょう。
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トランプ主義を機関化しリベラルエリート支配と戦う米共和党
                 田中宇の国際ニュース解説 2024年1月26日
1月15-19日のダボス会議は、地球温暖化や次のパンデミックなどインチキを口実に反対派を潰す全体主義の世界支配を加速する欧米の(リベラル)国際エリートたちが、米欧の草の根右派や非米側によって退治されていく流れの始まりになった観がある。
‘Laughable’: Heritage Foundation Leader Bashes World Economic Forum During Davos Event

ダボス会議を主催するWEF(世界経済フォーラム)は、もともと企業家たちの独創性を国際政治に活かすためにダボス会議を始めたが、途中から、ネオコン的な隠れ多極主義の実現に協力し始めた。
温暖化対策やコロナ超愚策や諸々の「大リセット」は、人類の大多数を占める草の根の人々を怒らせることが究極の目的だ。WEFは、ダボス会議に集めた国際エリートたちが全体主義的な世界支配の構造を作るよう誘導し、草の根がエリート支配を引き倒す劇を歴史にしようとしているWhy I Am Going to Davos

世界的なエリート支配の強化を見て暗澹とした気持ちになっている人が多いかもしれないが、心配することはない。エリートたちは、当然の報いとして極悪のレッテルを貼られ、インチキ全体主義の体制もろとも、これから負けて潰れていく。こうしたエリートの今後の敗北を、うれしそうに予測した著名人の一人が、米ヘリテージ財団のケビン・ロバーツ会長だ。
ロバーツらは、共和党の好戦派エリートのシンクタンクだったヘリテージを、トランプ主義を機関化して草の根右派を代弁する組織に大転換し、ダボス会議に象徴されるエリート支配に宣戦布告して潰そうとしている。ロバーツは、そのためにダボス会議にやってきて、エリートたちに喧嘩を売って帰った。リベラルな米側マスコミは、この吉報(エリートにとって凶報)を無視した。Devlin: What Heritage President Roberts Told Me About Crashing Experience

ヘリテージ財団は、ソ連を「悪の帝国」と敵視しつつ冷戦終結に持ち込んだレーガン政権の世界戦略を立案して権威を得た。軍事強硬策で覇権を維持強化する30年間の米国の試みの源泉(の一つ)がヘリテージだった。
米諜報界の自作自演的な911テロ事件を機に、敵性諸国を次々と軍事的に政権転覆しようとしたブッシュ政権もこの系統だったが、過激に稚拙にやって未必の故意的に失敗させる隠れ多極派のネオコンに入り込まれて失敗した。
Heritage Foundation head defends Trump, scolds 'elites' at World Economic Forum: 'You're part of the problem'

この失敗でヘタった共和党を乗っ取ったのが2016年に当選したトランプで、彼は、それまで共和党の中心にいた好戦派エリートを追い出し、孤立主義(覇権放棄)につながる草の根右派を党の中心に据えた
好戦派は共和党を捨てて民主党に(再)鞍替えし、民主党は2020年の大統領選で郵送投票制を悪用して不正をやってトランプを負けさせ、バイデン政権を作った。米国のネオコン的な軍産好戦派の中心は民主党(リベラルエリート)に移り、バイデン政権下でウクライナ戦争、ガザ戦争など、米国の軍事戦略を過激に稚拙に歪曲的にやって覇権を自滅させる策をやりまくっている。
Have Our Elites Lost The Mandate Of Heaven?

共和党の元エリートたちは、好戦派に乗り移られた民主党がトランプを不正に負けさせて政権をとった後、稚拙な策を連発してリベラルエリート支配体制ごと自滅していくのを受け、下野させられたトランプを押し立てて復権する策を考えた。
これまでトランプ主義は、トランプ個人に依拠する部分が大きく、政策全体のまとまりに欠けていたが、ヘリテージ財団はトランプ主義を機関化して共和党の中心的な政策にしていく
Inside the Heritage Foundation’s Plans for ‘Institutionalizing Trumpism’

このことを知った時、私はまず「今年の米大統領選挙では、民主党が不正をやって再度トランプを不正に負けさせることが難しくなった」と考えた。トランプ主義を機関化して共和党の中心に据えるには、まずトランプを不正に落選させる民主党の策を阻止する必要がある。
トランプが何をするかより、トランプの不正敗北を阻止することの方が重要だ。ヘリテージ財団は、トランプが再び不正に負けさせられることを防げると考えているはずだ。そうでなければロバーツは、トランプが草の根を率いてエリート支配を潰すぞ、と高笑いできない。
Watch: "You Are The Problem" - Conservative Speaker Slams Davos Globalists To Their Faces

バイデンは全く人気がない。トランプは非常に人気がある。2020年をはるかにしのぐ大規模な選挙不正をやらない限り、バイデンは再戦できない。
民主党と欧米リベラルエリートは、全力で米国の不正選挙をやろうとする。だが、それが失敗してトランプが返り咲くと、ダボス会議に来ている国際リベラルエリートたちの世界支配も崩れる。連動して、米国側マスコミの権威失墜も加速する
そういう新たな可能性が、ヘリテージ財団の動きから感じられる。具体的に何がどうなるかは、これから顕在化していく。

WEFの大リセットなどのインチキ全体主義は、エリート支配ごと大失敗するために用意されていた隠れ多極主義の策だったのだ。イラク侵攻からガザ戦争までの凄惨な大量殺戮や、コロナワクチンの副作用による世界での大量の死者も、いずれも現実ではあるが、政治的な茶番を作るための演出だった観がある
新しい事象なので書き散らかしてしまった。さらに考える。

今回は本来、有料記事の番なのだが、こんな重要な話を皆さん全体に伝えないのは残念すぎる。こういうことになるので、今年から有料記事を半額化した。有料会員の皆さんごめんなさい。

31- ウクライナ戦争 兵器性能・生産力で劣る米国がギリシャや日本に兵器を供給させる

 ウクライナ軍の敗北が決定的になる中で、ゼレンスキーはザルジニー最高司令官を排除しようとしています。しかし英国は逆にゼレンスキーを退場させてザルジニーに代わらせようとする一方で、バイデンの周辺はゼレンスキーを支えているということです。いずれにしてもこんな風にトップで内紛が起きていては、命を懸けて戦わされている兵士たちは救われません。
 そもそもウクライナ戦争は、2014年2月にバラク・オバマ政権が仕掛けたクーデター(バイデン副大統領らが実行)に始まって22年2月にロシア軍がロシア人保護のために侵攻するに至るまで、すべて米国が仕組んたものでした。侵攻の早い段階で停戦がまとまりかけましたがそれを潰したのも米英独仏でした。
 窮地に陥ったバイデンは、ギリシャ2億ドルの援助と引き換えにギリシャ軍が保有するソ連製兵器をウクライナへ譲渡するように頼む一方で、日本にはライセンス生産している迎撃ミサイル「PAC3」を米国に輸出するように要求しました。それがウクライナに供与されるのは明らかです。
 櫻井ジャーナルの2つの記事を紹介します。
 要するにウクライナへの武器の供与は、いまや自転車操業状態に陥っているということです。現実的な案に基づく停戦交渉こそを目指すべきでしょう。
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ウクライナと中東で窮地に陥っているバイデン政権 
                         櫻井ジャーナル 2024.01.31
 ウクライナではウクライナ軍のバレリー・ザルジニー最高司令官を排除する動きがあるようだ。ヨーロッパ諸国の大使になるという条件でザルジニーは辞任を求められたが、拒否したという。内紛が勃発した理由は言うまでもなく、ウクライナ軍の敗北が決定的だからだ。
 本ブログでも繰り返し書いていることだが、ザルジニーは11月1日付けエコノミスト誌に意見を掲載イギリスの支配層がウォロディミル・ゼレンスキー大統領からザルジニー司令官へ乗り換えようとしているのではないかと噂された。ゼレンスキーはイギリスの対外情報機関MI6のエージェントだと言われているが、同国の支配層は彼に見切りをつけたのかもしれない。現在、ゼレンスキーを支えているのはジョー・バイデン米大統領の周辺だと言われている。
 イギリスのベン・ウォレス前英国防相は10月1日、戦場で戦うウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えているとテレグラフ紙に寄稿した記事の中で指摘した。平均年齢は42歳だと言われ、戦場では50歳代や60歳代のウクライナ兵が戦っている。ロシア軍の兵士によると、戦場で妊婦のウクライナ兵を見つけたという。

 現在のウクライナは2014年2月にバラク・オバマ政権が仕掛けたクーデターで誕生した体制下にある。ネオ・ナチを使い、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したのだが、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民はクーデターに反発、抵抗を始めた。反クーデター軍は強く、アメリカ/NATOはクーデター体制の戦力増強に乗り出す。そのための時間稼ぎに使われたのがミンスク合意だ。
 アメリカ/NATOは8年かけてクーデター体制の戦力を増強、ドンバス(ドネツクやルガンスク)周辺に要塞線を築いた。アゾフ大隊が拠点にしたマリウポリや岩塩の採掘場があるソレダル、その中間に位置するマリーインカには地下要塞がある。
 2022年の初めからウクライナ軍がドンバスの周辺に集まり、2月に入ると砲撃を激化させた。総攻撃が近いと少なからぬ人が推測していたが、そうした中、2月24日にロシア軍はドンバスで軍事作戦を開始した
 ロシア軍は航空兵力やミサイルの攻撃で終結していたウクライナ軍や軍事基地、生物兵器の研究開発施設などを攻撃、地上での戦闘はドンバスの現地軍、チェチェン軍、あるいは傭兵のワグナー・グループ。戦力を比較するとドンバス側はキエフ側の数分の1だったと言われているのだが、ウクライナ軍は劣勢。そこで2月の終わりには停戦交渉が始まっている。これをアメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどが潰したのだ。この辺の事情は本ブログでも繰り返し書いてきたので、今回は割愛する。
 2023年にウクライナ軍はアメリカ/NATOの圧力で「反転攻勢」試みるが、「大惨事」に終わったのだが、その間、アメリカ軍がキエフの周辺に配備したパトリオット・システムやC-RAM(カウンターRAM)をロシア軍はミサイルやドローンで破壊、アメリカの防空システムは無力化されていると見られている。

 シリアとヨルダンの国境近くにあるアメリカ軍のタワー22基地が1月28日に攻撃され、アメリカ兵3名が死亡、25名以上が負傷したと発表されている。損害の程度から攻撃に使われたのはドローでなくミサイルだと推測する人もいるが、ヨルダン政府はそうした攻撃があったことを否定している。アメリカ軍との関係が明らかになるとヨルダン政府が窮地に陥る可能性があり、否定したのかもしれない。
 この攻撃でアメリカ軍の防空システムが作動していないことに注目、ウクライナでロシア軍がアメリカ/NATOの防空システムを無力化することに成功していることと関連づける人もいる。アメリカやイスラエルが戦争を中東全域に広げた場合、無惨なことになると警告したのではないかというのだ。


兵器の性能も生産力も露国より劣る米国はギリシャにソ連製兵器を供給させる
                         櫻井ジャーナル 2024.01.29
 ギリシャのキリアコス・ミツォタキス首相はギリシャ軍が保有するソ連製兵器をウクライナへ譲渡するように指示したと伝えられている。その前にアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官がミツォタキス首相に対し、2億ドルの援助と引き換えに兵器の譲渡・売却を提案していたという。それだけウクライナ軍は兵器が不足しているということだ。
 アメリカ政府の圧力で日本はアメリカへ迎撃ミサイル「PAC3」を輸出する。そのため、岸田文雄政権は12月22日、防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の運用指針を改定した。「ライセンス生産」した完成品をライセンス元の国へ輸出することもできるようにしたのだ。これはウクライナへ防空システムを供給するためだろう。韓国はウクライナへ155ミリ砲弾などを供給している。

 昨年中からウクライナの武器弾薬不足は深刻になっていた。ロシア軍がウクライナの兵器庫を爆撃していることもあるが、アメリカ/NATOの生産力はロシアの数分の1にすぎず、アメリカを含むNATO諸国も兵器が枯渇している。
 性能の面でもアメリカ/NATOの兵器はロシアより数十年遅れていると言われている。ソ連の消滅で戦争の相手は航空兵力を持たない弱小国だけになったと思い込んだのか、高性能兵器ではなく高額兵器をアメリカは作るようになったようだ。その象徴が「空飛ぶダンプカー」と呼ばれているF-35戦闘機だ。戦闘機だけでなくミサイルでもロシアはアメリカを圧倒している。「ロシアがアメリカとの技術格差を埋めた」というような状態ではないのだ。

 イギリスのベン・ウォレス前英国防相は10月1日、戦場で戦うウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると​テレグラフ紙に寄稿した記事​の中で指摘、もっと多くの若者を前線へ送り出せと要求している。平均年齢は42歳だと言われ、戦場では50歳代や60歳代のウクライナ兵が戦っている。ロシア軍の兵士によると、戦場で妊婦のウクライナ兵を見つけたという。

 ロシア軍は1月16日にウクライナのハリコフを攻撃、ウクライナの軍事施設のほか、情報機関や軍関係者が滞在していた旧ハリコフ・パレス・ホテルを破壊したが、その旧ホテルには200人外国人傭兵が滞在していたと言われている。戦闘員の大半はフランス人傭兵で、そのうち60名が死亡、20人以上が医療施設に搬送されたという。西側の武器を扱えるようにウクライナ兵を訓練する余裕はなく、そうした兵器を扱えるオペレーター、パイロット、整備士などを派遣する必要もある。旧ハリコフ・パレス・ホテルで死亡した傭兵はそうした人びとだろう
 ウクライナ軍は戦える状態ではない。そこで大統領をウォロディミル・ゼレンスキーからバレリー・ザルジニー最高司令官へ交代させ、戦闘を終結させようとする動きがある。そうした中、ロシア軍のIL-76輸送機がフランス製のSAMP-T対空ミサイル2機によって撃墜され、捕虜交換に向かうウクライナ兵65名、乗員6名、ロシア軍の付添兵3名が死亡している。