2019年2月28日木曜日

消費税増税は間違い 統計不正は犯罪 衆院予算委中央公聴会

 衆院予算委は26日、中央公聴会を開きました。
 
 公述人の一人、明石順平弁護士は、17年と18年で算出方法の異なるものを比較した伸び率は、端的にいってウソの数字で、真実に反統計法違反になると述べました。
 そして家計最終消費支出は1416年にかけて3年連続で減少し、この実質賃金の大きな下落戦後最悪の消費停滞を引き起こしたとしました。
 
 上西充子法政大教授は、18年1月分から実施された毎月勤労統計の手法の変更について適切な意思決定プロセスを経ておらず、官邸の不当な介入があった疑いが濃いとして、公的文書恣意的に改ざんされて信用できないのは国家的危機であると述べました。
 現状では消費税増税の是非も判断できず、予算案の審議の前提が崩れているとし、国会審議では、政権側が論点ずらし意味のない冗長な背景説明の答弁などを行っていると批判しました。
 
 浦野広明・立正大客員教授・税理士は、資本主義社会では市場で勝った人がたくさんの富を得る一方で貧困者が生まれるので、れに対応するには適正な所得再分配が必要になるがそうなっていないとしました。
 税金は、負担能力に応じて払うのが原則で所得税や法人税をはじめ、地方税、目的税など全てに適用しなければならないとし、消費税を偏重し、それら所得税や法人税を軽減した結果 税収不足が起き、税収のほぼ4割が国債費の元金と利息の返還に充てられる現状を招き、社会保障に回余裕がなくなっていると述べました。そして「全ての税金が社会保障目的税であるという原理に立ち帰るべきであるとしました。
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衆院予算委中央公聴会 消費税増税 懸念次々 統計不正解明求める声も
しんぶん赤旗 2019年2月27日
 衆院予算委員会は26日、中央公聴会を開きました。公述人からは、政府が10月に狙う消費税10%への増税について、消費低迷、経済への打撃を懸念する意見が相次ぎ、中止・見送りを求める声があがりました。さらに、厚生労働省の毎月勤労統計などの統計不正をめぐり、国の政策判断にかかわる重大問題として真相解明を行うべきだとの指摘が出されました。
明石順平上西充子浦野広明3氏の意見陳述の概要は下掲記事参照
 
 立正大学客員教授の浦野広明氏は、負担能力に応じた税制などを提起し、消費税増税を「絶対にやるべきではない」と述べました。法政大学教授の上西充子氏は「10月の消費税増税は見送るべきだ」と主張。大和総研政策調査部長の鈴木準氏は、増税は必要としつつ、2014年の8%への増税で「(景気の)回復力が非常に弱まったのではないか」と述べました。
 
 日本共産党の藤野保史議員は、食料品の値上げと増税が暮らしに与える影響について質問。浦野氏は、食料品にかかる税率として、日本の8%は欧州各国と比べても高いと紹介。「食料品(の値段)が上がり、消費税増税となれば、国民生活は破綻する状況になる」と指摘しました。
 
 弁護士の明石順平氏は、毎月勤労統計調査の不正について、調査方法の変更などの結果、賃金の伸び率が過大に示されていたと指摘。18年の実質賃金の伸び率はマイナスとの試算を示し、厚労省の公表値について「真実に反し統計法違反になるのではないか」との認識を示しました。
 上西氏は「経済統計のデータが信用ならない状況であれば、一国の経済のかじ取りの判断を誤ることにもつながる」と警鐘を鳴らしました。
 
 日本共産党の宮本岳志議員は、統計不正の解明がないままでは予算決定を判断できないのではないかと質問。明石氏は「おっしゃる通りだ。統計が信頼できないということは、地面が壊れていくようなもの」と述べました。
 
 
衆院予算委中央公聴会 公述人の意見陳述
しんぶん赤旗 2019年2月27日
 2019年度予算案を審議している衆院予算委員会で26日、公述人の意見陳述が行われました。公述人からは、応能負担原則に反する消費税の税率10%への引き上げへの厳しい批判や統計不正への不信の声などが相次ぎました。
 
公表値はウソ 統計法違反
弁護士 明石順平さん
 昨年1月に毎月勤労統計調査における賃金統計の算出方法が変更され賃金が大きくかさ上げされました。要因は(1)サンプルの一部入れ替え(2)労働者数のベンチマーク(基準)を変更(3)復元処理(不正調査の補正)。例えると、ちょっと背の高い別人に入れ替え、シークレットブーツを履かせ、頭にシリコンを入れて身長を伸ばしたことです。(3)は(不正が発覚して)修正しましたが、(1)と(2)は修正せず、そのまま2017年と比較しています。そのため賃金が異常に伸びる結果となってしまいました。17年と18年で算出方法の異なるものを比較した伸び率は、端的にいってウソの数字になります。公表値は真実に反するため「基幹統計の作成に従事する者で基幹統計をして真実に反するものたらしめる行為をした者」を処する統計法60条2項に該当し統計法違反になります。
 
 厚労省は参考値の名目賃金伸び率のみ公表し、実質賃金についてはかたくなに公表しません。「名目は参考になるが実質は参考にすべきではない」などありえません。早急に公表すべきです。公表値の伸び率は異常にかさ上げされたうその数値なので公表をやめるべきです。
 
 家計最終消費支出は14~16年にかけて3年連続で減少し、実質賃金の大きな下落は、戦後最悪の消費停滞を引き起こしています。これは国民の生活がぜんぜん向上していないことを意味します。景気回復の実感がないのは当たり前です。
 
 
政府・与党が解明を阻む
法政大学教授 上西充子さん
 毎月勤労統計の不正が昨年12月に発覚して以降、問題は広がりを見せています。不正な統計操作があったことは18年1月分から賃金水準が上振れし、その要因が探られる中で発覚したものですが、18年1月分から実施された毎月勤労統計の手法の変更についても適切な意思決定プロセスを経ておらず、官邸の不当な介入があった疑いが濃くなっています。
 
 公的な文書もデータも恣意(しい)的に改ざんされて信用できないならば、国家的危機です。国際的な信用の失墜にもつながります。経済統計のデータが信用ならない状況であれば、一国の経済のかじ取りの判断を誤ることにもつながります。現状では消費税増税の是非も判断できず、予算案の審議の前提が崩れています。このような現状において、何よりもまず必要なのは徹底した事実の解明です。再発防止は徹底した事実の解明に立脚しなければなりません。
 
 にもかかわらず、その事実解明を政府・与党が阻んでいるというのが現状です。国会では、質疑とかみ合わない論点ずらしの答弁や意味なく冗長な背景説明の答弁などで野党の質疑時間が奪われ続けています。野党の指摘が不当なものであるかのように印象付ける答弁も横行しています。
 
 私たちが主権者として国会を監視しなければ、国会の機能不全は続きます。そして不都合な事実も隠され続けます。その影響は私たちの暮らしに跳ね返ってきます。よりよい社会の構築に向けて国会が本来の機能を果たしうるために、私たちは主権者として不断の努力を重ねていきます。
 
 
負担能力に応じた税制を
立正大学法学部客員教授・税理士 浦野広明さん
 税金は、負担能力に応じて払うのが原則です。国税でいえば所得税や法人税が中心になります。応能負担原則は国税、地方税、目的税など全てに対応しなければならない原則です。
 
 税金の使途に関しては、日本国憲法の下でどう使われるか考えなければなりません。憲法25条は、国民に「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障しています。税金の使途は憲法の下では福祉・社会保障のために使われないといけません。今は資本主義社会なので、市場で勝った人がたくさんの富を得る一方で、貧困者が生まれます。この事態を改革するために、所得再分配が必要になります
 
 消費税推進の理論では (1)国の財政が悪化しているのでやむを得ない (2)社会保障の財源として重要  ということが言われます。しかし、消費税は国の財政状態をより悪化し、社会保障を削減するものです。
 来年度予算案の税収をみると、足りない部分の多くを国債でまかなう状況です。応能負担の中心に置くべき所得税や法人税が減収しており、消費税が税目で1番になっています
 結果、国債の返還と利息の支払いが歳出の大きな部分を占めています。税収のほぼ4割が国債費の元金と利息の返還に充てられています。こうなると社会保障に回る余裕が出てきません
 負担能力に応じた税制と全ての税金が社会保障目的税であるという原理を、今後の予算に生かしていただきたいと思います。

安倍首相の“妄想”にラブロフ露外相が激怒


 ロシアのラブロフ外相は24日、安倍首相が6月に北方領土を含む平和条約締結問題に「必ず終止符を打つ」と意気込んでいることについて「誰も一度も、平和条約締結の枠組み案など見たことがない。プーチン大統領も私も、他の誰も、そうした発言につながる根拠は与えていない日本側が何を考えているか私には分からない」と述べました。
 
 安倍首相は年頭会見で「北方領土には多数のロシア人が住んでいる。住民の方々に、日本に帰属が変わるということについて納得、理解をしていただくことも必要です」と語りましたが、そのときもロシアから1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約を加速するとした日ロ首脳の合意の本質を乱暴に歪め、両国の世論をミスリードするものだ」と厳しい抗議を受けました中村逸郎筑波大教授ロシア政治)は、安倍首相の発言『内政干渉にあたる暴走だ』とプーチン政権は受け止めた」と述べています。
 
 ロシアの各種世論調査では北方領土の引き渡し反対が7割を超えているため、プーチン大統領は「今後、辛抱強さを要する作業が待っている。合意は両国の世論の支持を得なければならない」と交渉の長期化を強く示唆してきました。
 「北方領土」に関するロシア側の主張は旧ソ連時代から一貫していて、「第2次大戦の結果 合法的に編入した」というもので、日本も無条件に受け入れるべきとの立場です。
 
 1月14日の日ロ外相会談でも、ラブロフ氏は、国連憲章や第2次世界大戦終結を巡る国際文書により、北方4島がロシア領であることには議論の余地がない」と主張し、歯舞群島と色丹島の日本への引き渡しを定めた共同宣言を基礎にした平和条約交渉の前提として、「第2次世界大戦の結果受け入れが絶対的な第一歩だ」と日本側に要求しました。また南クリール諸島が日本の国内法で「北方領土」と明記されていることは「ロシアにとって受け入れられない」とも述べました。
 
 要するに、第2次世界大戦の正当な結果として北方領土がロシア領になったと認めない限り平和条約交渉は進めないというもので、見解の相違はあるもののロシア側の主張は論理的で首尾一貫しています。
 それに対して安倍首相(あるいは河野外相)が何か内容のある反論をしたという話は全く聞かれずに、あるのはせいぜい菅官房長官「引き続き粘り強く対応していきたい」という意味不明の言い訳だけです
 そうでありながら安倍首相は国内向けには冒頭に述べたようなことを吹聴している訳なので、ラブロフ氏が怒りの談話を出すのは尤もなことです。
 前出の中村逸郎教授は、ラブロフ氏の一連の発言から「日ロ交渉の主体はラブロフ外相ということがはっきりした」と述べています。そういう認識が日本側に全くないのであれば、この交渉の帰趨は推して知るべきでしょう。
 
 国内では多数を背景に滅茶苦茶な政治手法が事実上通用するので、安倍首相は見境いがなくなったようですが、外交では国家が相手なのでそんなことは通用しません。「外交の安倍」が如何に無内容であったかの証明です。
 日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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安倍首相の“妄想”に露外相激怒 平和条約締結は決裂一直線
日刊ゲンダイ 2019年2月26日
 どうやらカンカンのようだ――。安倍首相が「領土問題を解決して平和条約を締結する」と表明していることに、ロシアのラブロフ外相がブチ切れている。
 もはや“牽制”というレベルを超え、ほとんど安倍首相のことを“ウソつき”呼ばわりだ。
 ラブロフ外相は、ベトナムと中国の歴訪前に、両国メディアのインタビューに答え、24日にロシア外務省が公表した。
 安倍首相は6月に平和条約の枠組み合意を目指しているが、ラブロフ外相は「誰も一度も、枠組み案など見たことがない。日本側が何を考えているか、私には分からない」と一蹴。安倍首相が北方領土を含む平和条約締結問題に「必ず終止符を打つ」と意気込んでいることについて、こうこき下ろした。
「正直言って、その確信がどこから来ているのか分からない。プーチン大統領も私も、他の誰も、そうした発言につながる根拠は与えていない」
 要するに、「何も決まっていないのに、なに勝手なこと言ってんだ!」ということだ。
 
■「勝手に話を作るな」と言っているに等しい
 筑波大の中村逸郎教授(ロシア政治)が言う。
「ラブロフ外相は、これまでも4島の主権や北方領土という呼称について発言してきましたが、今回は質が違います。『勝手に話を作るな』と言っているに等しい。ロシア側が一切根拠を与えていないのに、平和条約締結について、確信に満ちて語る安倍首相の姿勢と人格を批判しているのです。安倍首相があまりにも話を盛り、しかも繰り返して口にするので、さすがに堪忍袋の緒が切れたのでしょう
 
 さらにラブロフ外相は畳みかけた。
「日本は米国主導の反ロ的な国連決議には賛成するのに、ロシアの提案には反対か棄権ばかり」
「5月のトランプ大統領訪日時、ロシアとの平和条約もテーマだという。日本にそこまで独立性がないとは、(呆れて)何も言えない」
 中村教授が続ける。
「日本では、ラブロフ外相に“強硬論”を言わせて、最後はプーチン大統領がうまくまとめるという見方がありますが、違うと思います。日本人は自分たちに都合よく解釈しすぎです。2人のスタンスは同じでしょう」
 安倍首相は25日、ラブロフ発言について「いちいち反応するつもりはない」とダンマリ。国民は現実を直視した方がいい。 

28- 辺野古 即時中止を 東京・小平市議会が意見書を可決

 東京都の小平市議会は25日の本会議で辺野古新基地建設の即時中止と、普天間の代替施設が必要かどうかを含めて国民的な議論を行うことを求める請願と意見書を賛成多数で可決しました。意見書の可決は小金井市に続き2例目となります
 請願した「辺野古問題を考える小平市民の会」の針谷幸子代表(恩納村出身)は、「沖縄の人はやるべきことをした。今度は私たちがどうするべきなのかが突き付けられている」と述べました
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辺野古、即時中止を 東京・小平市議会が意見書を可決
                    小金井市に続き2例目
琉球新報 2019年2月26日
【東京】東京都の小平市議会は25日の本会議で辺野古新基地建設の即時中止と、国内外に普天間の代替施設が必要かどうかを含めて国民的な議論を行うことを求める請願と意見書を賛成多数で可決した。米軍普天間飛行場の代替施設の必要性や移設先について国民的な議論を求める「新しい提案」の実践に基づくもので、意見書の可決は小金井市に続き2例目となる。24日に投開票された県民投票とともに、沖縄の基地問題についての全国的な世論喚起につながりそうだ。
 
 請願理由では、沖縄県民が基地があることによるさまざまな不安や危険にさらされて生活しており「新たに造られる米軍基地建設に反対することは当然」だと指摘した。国民の多くが沖縄に集中する米軍基地に疑問を抱くことなく戦後70年以上が経過したとし「当事者意識を持った国民的議論を行い、解決への道を開きたい」とした。
 
 請願した「辺野古問題を考える小平市民の会」の針谷幸子代表(恩納村出身)は、24日の県民投票で辺野古の埋め立てに反対する人が多数だったことに触れ「沖縄の人はやるべきことをした。今度は私たちがどうするべきなのかが突き付けられている」と指摘し、議論の輪の広がりに期待を込めた。

2019年2月27日水曜日

辺野古 今度は国が立ち止まる番 政府は米国と仕切り直せ+

 神戸新聞は「今度は国が立ち止まる番だ」とする社説で、民意明確に示されたなかでこれ以上工事を強行するのは県民の意思を踏みにじることで、民主主義で許されないとしました。
 辺野古移設には憲法上も大きな問題があります。憲法95条特定の地方公共団体に適用される法律の制定には住民の過半数の同意が必要としています。政府は、辺野古移設は法律でなく、「日米地位協定」に基づく施設提供という見解ですが、「地方公共団体の運営に関する事項は法で定めるとした憲法92条を踏まえれば、基地建設にはその地域だけの特別法が不可欠(木村草太教授)であり、95条の住民投票で同意を得る必要があります。
 
 また県内移設では沖縄全体の負担解消につながらず、辺野古が完成しても普天間が直ちに返還されない可能性が、日米合意文書に記されているとも指摘しています(滑走路では2センチのギャップも許されないといわれるなかで、完成後も不同沈下が避けられない辺野古には、軍が移動しない可能性の方が大きいかも知れません)。 
 海面下70mを限度とする不完全な地盤改良でも、建設費は25兆円に膨らみ工期は5年から実に13年に延びます。事実上、計画は大きな壁に突き当たっていて、もはや「唯一の解決策」でもないし、「これ以上引き延ばせない」とは真逆に大幅遅れの事態になっています
政府は今度こそ立ち止まらねばならない」と述べています
 
 高知新聞の社説「沖縄基地ノー 政府は米国と仕切り直せ」を併せて紹介します。
 
 +「住民投票にはわが国の最高法である憲法上の拘束力がある」(小林節・名誉教授)を追加しました
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社説 沖縄県民投票 今度は国が立ち止まる番だ
  神戸新聞 2019年2月26日
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古沖移設を巡る県民投票は、「反対」が43万票を超え、有効投票総数の約72%を占めた。辺野古反対を掲げ、県知事選で過去最高となった玉城デニー知事の得票数をも上回っている。
 結果に法的拘束力はない。安倍晋三首相は知事と会談する意向を示す一方、工事強行の姿勢は変えていない。
 だが民意は明確に示された。これ以上の強行は県民の意思を踏みにじることになる。民主主義で許される行為なのか。
 政府は直ちに工事を中止するべきだ
 辺野古移設で普天間の危険性は除去される。これ以上先送りできない-。政府はそう主張してきた。
 しかし今回の投票では、普天間の地元・宜野湾市でも移設への反対が66・8%と多数を占めた。政府の論拠に現場でも疑問符がついたといえる。
 そもそも県内移設では沖縄全体の負担解消につながらない。辺野古が完成しても普天間が直ちに返還されない可能性が、日米合意文書に記されている
 宜野湾の反対は、そうした問題点を県民が認識している証しだろう。
 
 面積では日本の0・6%にすぎない沖縄に、在日米軍専用施設の74%が集中する。その現状を安全保障の観点からやむなしとする声は、本土に根強い。
 普久原均・琉球新報編集局長は本紙への寄稿で、全く異なる米軍の見方を明らかにした。2006年に日米で在日米軍再編に合意する前、沖縄の海兵隊を九州や北海道に移すことを米軍が提案したというのだ。
 しかし政府は本土の反発を恐れ、検討しようとしなかったという。沖縄の声は軽視し、本土の反発は回避する。普久原氏はこれを「ダブルスタンダード」(二重基準)と表現する。そうした状況は、今も大きく変わっていない
 
 12年に森本敏防衛相(当時)が、普天間の移設先は「軍事的には沖縄でなくてもいいが、政治的には最適だ」と述べたのも同じ理屈だろう。
 安全保障の負担を特定の地域に押しつけることに、多くの国民が疑問を持とうとしなかったことが、沖縄の苦悩を生みだした一因といえる。
 
憲法の条文踏まえ
 住民投票が強制力を持つ場合を示す憲法の条文がある。特定の地方公共団体に適用される法律の制定には住民の過半数の同意が必要とする95条の規定だ。
 住民の意思に基づく地方自治の「本旨」を守るための定めとされている。
 政府は、辺野古移設は法律でなく、「日米地位協定」に基づく施設提供との見解を示している。だが移設後は国内法が適用されず、自治体の行政権も及ばない。
 地方公共団体の運営に関する事項は法で定めるとした憲法92条を踏まえれば、基地建設にはその地域だけの特別法が不可欠であり、95条の住民投票で同意を得る必要がある-。憲法学者の木村草太首都大学東京教授はそう指摘する。
 
 95条の住民投票を経て制定された法律は、戦後の復興期に15本ある。兵庫県内では1950(昭和25)年に神戸国際港都建設法、翌51年に芦屋国際文化住宅都市建設法が公布された。
 ただいずれも都市計画に地域の特色を反映させて国も支援する趣旨だ。神戸と芦屋の住民投票では当時の新聞に「賛成の票が圧倒的」「輝く新生のスタート」などの文字が躍り、政府と対立する問題ではなかった。
 住民投票が実施されたのは、憲法施行から日が浅く、尊重する気風があったからだろう。
 それから60年余。反対への民意が明確になっても、政府は県の反対を無視し住民の意思も聞かずに工事を進める。
 安全保障は国の専権事項であり、地元の意向を考慮する必要はない。そうした考えは、憲法が掲げる地方分権や民主主義の理念に反する恐れがある。
 
地位協定も見直せ
 辺野古計画では新たな問題点も浮上した。予定海域の軟弱地盤が判明し、政府は想定外だった約7万7千本のくい打ち込みを計画している。
 県の試算では、地盤改良に伴う建設費は計画の「3500億円以上」から2・5兆円に膨み、工期は5年から13年に伸びる。だが野党の質問にも政府は明確に答えようとしない。
 事実上、計画は大きな壁に突き当たっている。もはや「唯一の解決策」と言える状況ではない。政府は今度こそ立ち止まらねばならない
 沖縄に「寄り添う」というのなら、政府は基地を沖縄に集中させる必要性があるのか米国と真剣に議論すべきだ。同じ第2次世界大戦の敗戦国でもドイツやイタリアは駐留米軍に国内法を適用している。地位協定の見直しも急務といえる。
 なぜ、沖縄だけに過剰な負担を強いるのか。県民投票が示した課題を、本土に住む私たちも考える必要がある
 
 
社説 沖縄「基地ノー」 政府は米国と仕切り直せ
 高知新聞 2019年2月26日
 「基地ノー」を貫き、国の強権には屈しない。沖縄県民は揺るぎない意思を改めて示した。
 米軍普天間飛行場(宜野湾市)を名護市辺野古に移設する計画の是非を問うた沖縄の県民投票は「反対」が7割を超えた。投票条例が有効とする投票資格者の4分の1も大きく上回った。
 沖縄の基地問題は、民主主義や国と地方の関係の在りようを問うてきた。安倍首相は「県民投票の結果を真摯(しんし)に受け止める」と言うのなら、県民に誠実に向き合い直し、その言葉にふさわしい対応を取らなければならない。
 
 辺野古移設に限った初の県民投票は、市民グループが有権者の署名を集め、県に直接請求して実現した。安倍政権に近いとされる5市が不参加を表明したため、当初の賛否の選択肢に「どちらでもない」を加えて3択にしたことで、県全域の投票にこぎ着けた経緯がある。
 政権与党の自民党は反対派を勢いづかせまいと、静観を決め込み、投票率の低下を狙った。それでも、投票率は50%を超え、「どちらでもない」は1割に満たなかった。県民の側ではなく、政権に沿おうとした思惑を県民は退けた。
 
 凄惨(せいさん)を極めた地上戦が繰り広げられ、傷ついた島に在日米軍専用施設の7割が集中する。米軍機の事故は後を絶たず、県民の尊厳を踏みにじる米軍関係者の凶悪犯罪も相次ぐ。県民は繰り返し「基地は要らない」と訴えてきた
 過去2回の県知事選でも基地反対の意思を明確に示した。その上になお、県民投票にまで踏み切らなければならなかった。今回の県民投票で半数近くの有権者が棄権したのもまた事実だ。国家権力が地方の民意をないがしろにし、住民を分断させてきた。その責任は重い
 
 首相は県民投票結果を受けてもなお「移設をこれ以上、先送りはできない」と強硬な方針を変えていない。民主主義の国で、民意を排除するような強権的な振る舞いを容認するわけにはいかない。
 政権側は玉城知事との会談に再び応じる構えを見せはする。だが、これまでも面談を骨抜きにしながら、埋め立てを強行してきた。住民に無力感を植え付けるかのように、既成事実化を図ってきたのだ。見せかけの対話は許されない。
 埋め立て予定海域の軟弱地盤の改良のため、約7万7千本もの杭(くい)を海底深く打ち込まなければならない工事計画が発覚した。辺野古は適地なのか、という根本的な疑問が浮かぶ。県民投票の結果と合わせ、政府は米国と基地を巡る議論を仕切り直すべき時だ
 米国の日系4世の青年が辺野古埋め立ての一時停止を求める署名を米政府に提出し、タレントのローラさんら日本の著名人たちも賛同の意を公表した。沖縄の基地の苦悩を共有し、解決の道を共に探り出していこうという呼び掛けだ。その問いは本土にこそ向けられている

ここがおかしい 小林節が斬る!  
住民投票にはわが国の最高法である憲法上の拘束力がある
小林節 日刊ゲンダイ 2019年2月27日
 在日米軍普天間飛行場の辺野古移設の是非を問う沖縄県民投票の結果は、「反対」が実に72%を超えた。
 それでも、安倍政権はそれを無視して移設工事を続行する構えを崩していない。その背景に「県民投票には法的拘束力がない」という認識と「安全保障は国の専権事項だ」という認識があることは確かである。
 しかし、県民投票には、わが国の最高法である憲法上の拘束力があることを忘れてはいないだろうか。
 憲法95条は「ひとつの地方自治体のみに適用される国の法律は、その自治体の住民投票で過半数の同意を得なければならない」(つまり、自治体住民には拒否権がある)と定めている。つまり、それが国策として必要だと国会が判断しても、その負担を一方的に負わされる特定の自治体の住民には拒否権があるという、極めて自然で当然な原則である
 
 もちろん、辺野古への米軍基地の移設は形式上は「法律」ではない。それは、条約上の義務を履行しようとする内閣による「行政処分」である。しかし、それは形式論で、要するに、「国の都合で過剰な負担をひとつの地方自治体に押し付けてはならない」という規範が憲法95条の法意であり、それは、人間として自然で当然な普遍的常理に基づいている。
 アメリカ独立宣言を引用するまでもなく、国家も地方自治体も、そこに生活する個々の人間の幸福追求を支援するためのサービス機関にすぎない。そして、国家として一律に保障すべき行政事務と地域の特性に合わせたきめ細かな行政事務をそれぞれに提供するために、両者は役割を分担しているのである。
 そこで、改めて今回の問題を分析してみると次のようになろう。まず、わが国の安全保障を確実にするために日米安保条約が不可欠だという前提は争わないでおこう。しかし、だからといって、そのための負担を下から4番目に小さな県に7割以上も押し付けていていいはずはない。そこに住民が反発して当然である。だから、政府としては、憲法の趣旨に従って、「少なくとも県外への移設」を追求すべき憲法上の義務があるのだ。