2013年10月31日木曜日

「秘密保護法」シールアンケートで賛成は7% 反対が60%

 秘密保護法全国投票の会 http://himith.exblog.jp/ の呼びかけで、全国各地で秘密保護法への賛否を問うシールアンケートが行われています。

 投票期間は10月19日~11月6日で、全国各地に勝手連的に実行委員会が立ち上がり、毎日のように投票が行われています
 10月29日までの中間集計では、全国48カ所で2625が投票し、投票結果は、賛成が176人(7%)、反対が1592人(60%)、分からないが857人(33%)でした

 まだ3分の1の人たちが「分からない」であるのは残念ですが、賛成の人は僅かに7%で、反対の人たちが60%と圧倒的に多く、法案の危険性が段々に浸透して行っていることが分かります。

 30日付の「Our planet」の記事を紹介します。
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「秘密保護法」シール投票で6割反対〜小学生もNO!
 Our planet 2013年10月30日 
政府が今国会での成立を目指す「特定秘密保護法案」をめぐり、賛否を問う街頭投票が全国的に広がっている。これまでに全国48カ所で実施し、子どもからお年寄りまで2625人が投票。投票者の6割が「反対」だった。

この街頭投票は、十分に知られていない「秘密保護法」に関する市民の考えを聞こうとス、山本太郎参議院議員やジャーナリストの堤未果さんなど、弁護士やジャーナリストなどの呼びかけによってスタートした。「賛成」「反対」「分からない」の三択式で、投票ボードにシールを貼るというシンプルなもの。全国各地に、勝手連的に実行委員会が立ち上がり、毎日のように投票が行われている。

10月22日には、都内で2回目となる投票が多摩センター駅前で行われた。この日は、1時間半の間に181人が参加。投票結果は「分からない」が93人と最も多く、次いで「反対」が82人。「賛成」「条件付き賛成」はわずか6人だった。「反対」にシールを貼った男性は、「あんな悪法に賛成する気持ちがわからない」とした上で、「これだけ多くの人間が「分からない」というのは、民度の低さのあらわれだ」と嘆いた。
  
 投票には小学生も参加。一人が「原発が大変な時に知りたいことを知れなくなるから反対」というと、もう一人も「汚染水の広がりを知るためにも上の人に決めて欲しくない」ときっぱり。政府に対してメッセージを求めると「「勝手に決めてんじゃねーよ」と言いたい」と、しっかりとした口調で回答した。
  
シール投票にボランティアとして参加した瀬戸雅恵さんによると、調査に協力的だったのは戦争を体験したシニア世代と好奇心旺盛な高校生などの若年層。大学生や若手社会人の関心が低かったという。「もっと、この法律に関心を持ってもれらえるように、周知していきたい」と話す。

シール投票は、10月29日までに、全国48カ所2625人を対象に実施。これまでの投票結果は、賛成が176人(7%)、反対が1592人(60%)、分からないが857人(33%)だった。投票期間は11月6日までで、投票結果は政府と全国会議員に届ける予定だ。
  

 
 
 

 

NSC法案審議 いまなぜ「戦争司令部」なのか

 元国務長官大統領補佐官を務めたコンドリーザ・ライス氏の回顧録には、9.11同時テロ(2001年)のあと、アフガニスタンへの攻撃やイラクへの侵略を強行したアメリカNSCでの議論が生々しく綴られてるということです。
 大統領が全ての決定権を持ち、世界中の要人の電話を盗聴し、各地で戦争や謀略まがいの紛争を起しているアメリカにとっては、緊急な討議が出来て大統領の政策決定に役立つNSCの制度は合っているのかもしれませんが、日本はそうした戦争司令部的な組織を必要としていません。

 総理大臣が一刻を争って物ごと決めなければならないというような事態はあり得ないのに、なぜ日本にもNSC(国家安全保障会議)を創設しなくてはならないのでしょうか。日本には既に「安全保障会議」もあるし、危機に対応する「内閣危機管理監」官邸に常駐するシステムになっています。
 新たに首相を含む4人のメンバーによる日本版NSCを作り、アメリカの要求に基づいて「秘密保護法」を作ってその内容をベールで隠そうとしているのは、アメリカの最新の軍事情報が得られるようにしようという意図にほかなりません。より深くアメリカに従属して行けば、いつかは抜き差しならない事態に立ち至る惧れは十分にあります。安倍首相はむしろそれを望んでいるのかも知れません。
 日本版NSCが『戦争司令部』と呼ばれる所以です。

 30日付のしんぶん赤旗の主張を紹介します。
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主張 NSC法案審議 いまなぜ「戦争司令部」なのか
しんぶん赤旗 2013年10月30日
 アメリカのブッシュ前政権で国家安全保障担当大統領補佐官や国務長官を務めたコンドリーザ・ライス氏の回顧録が話題です。2001年9月11日のアメリカ「同時テロ」のあと、アフガニスタンへの攻撃やイラクへの侵略を強行したアメリカの国家安全保障会議(NSC)での議論が生々しくつづられています。まさに「戦争司令部」そのものです。日本でもアメリカのNSCをまねた「日本版NSC」を設置しようという法案の審議が始まりました。いったい、いまなぜ日本に「戦争司令部」をつくろうというのか。

アメリカをまねて
 日本版NSC設置法案の趣旨説明と質疑がおこなわれた先週の衆院本会議で、日本共産党の赤嶺政賢議員は、「現代版の大本営、戦争司令部をつくろうというのか」と、安倍晋三首相を追及しました。安倍首相は否定しましたが、「戦争司令部」をつくるのでなければ「日本版NSC」は必要ないし、国民の目、耳、口をふさぐ秘密保護法と一体で同法案を成立させようとする安倍首相が、アメリカといっしょに「海外で戦争する国」をねらっているのは自明のことです。

 「日本版NSC」は、「防衛」や外交など「安全保障」の基本方針を検討するために、首相、官房長官、外務、防衛の「4大臣会合」を定期的・機動的に開催、安全保障担当の首相補佐官や「国家安全保障局」を新設して、官邸主導で、「外交・安全保障政策の司令塔」役を果たせるようにしようというものです。まさにアメリカにあるNSCの“焼き直し”です。

 日本にはいまも「安全保障会議」があり、首相以下の閣僚が「防衛」問題を協議しているほか、北朝鮮のミサイル発射など「重大緊急事態」にも対処することになっています。地震や台風など自然災害や大事故に対しては、「内閣危機管理監」が首相官邸に常駐しています。安倍首相は「日本版NSC」設置の目的を、「官邸主導で」「機動的に」対処するためといいますが、それだけならいまの体制を強化するだけでもいいはずです。現にこれまでの自民党政権でも、安倍政権以外では「日本版NSC」の設置が問題になりませんでした。

 問題は安倍政権が、「日本版NSC」の設置だけでなく、「国家安全保障戦略」の作成や「集団的自衛権行使」の検討など、日本の軍事力を強化し日米軍事同盟を強化する路線を前のめりで進めていることです。安倍首相が「厳しさを増す安全保障環境に対処するには、首相官邸の司令塔機能を強化するのが不可欠」と繰り返しているように、「日本版NSC」も日本の「軍事強国」化を支えるのがねらいです。そんな「日本版NSC」を「戦争司令部」と呼ばずにいったいなんと呼べばいいのか。

戦争への道阻止するため
 「日本版NSC」をつくり、秘密保護法を制定して、安倍政権がアメリカから手に入れようとしている最新の軍事情報は、日本が海外で「戦争する国」にでもならない限り必要としないものです。アメリカのNSC同様、「日本版NSC」も戦争体制そのものです。
 憲法で戦争を放棄した日本が、「日本版NSC」のような戦争体制をつくること自体、憲法を踏みにじるものです。戦争への道を阻止するために「日本版NSC」法も秘密保護法も廃案にすべきです。
 
 

2013年10月30日水曜日

唐家セン氏が日中関係は抜本的解決が必要と

 26~27日に北京で第回北京-東京フォーラム開催され、日中両国の代表は全体会議で発言し、政治、経済、外交安全保障、メディアの4分科会で問題を直視し、率直で誠意ある意思疎通を行いました

 始めに唐家セン元国務委員(中日友好協会会長)が基調講演を行い、その中で
「現在中日関係は厳しい局面にあり、どちらの道を選ぶかの重要な岐路に立っている。『中日平和友好条約』など中日間の4つの政治文書の含意と精神を再び温め、確認し、両国関係の正しい発展の方向性をよりしっかりと把握し、現在抱えている問題を適切に処理する必要がある」と指摘し、中日関係を正常な発展の軌道に戻す方法については、「問題を直視し、障害を取り除く」「認識を正し、相互信頼を再構築する」「小異を残して大同につという面で双方が努力すべきであると提案しました。(人民網記事)
 唐氏は、日本政府が「中国の脅威を誇張して別の(人には言えない政治的目的を達成しようとしているのではないことを望む」とも述べています。

 こうした冷静な見方が、なりふり構わぬ暴走を始めている安倍政権への阻止力になって欲しいものです。
 自民党のなかで秘密保護法案に反対している村上誠一郎議員(元行革担当相)に関するニュースとともに紹介します。
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唐家セン氏:中日関係は抜本的解決必要 日本は方向性明確化すべき
「人民網日本語版」 2013年10月28日
 第9回北京-東京フォーラム(主催:中国日報社、日本・言論NPO)が26日に北京で開催された。唐家セン元国務委員(中日友好協会会長)は開幕式での基調講演で「近年中日関係に問題が頻発しているのは決して偶然ではない。深いレベルの原因は、互いの認識と位置づけに問題が生じたことにある。両国関係を改善するには表面的な解決に止まらず、根本的な解決がより必要だ。現在は特に日本側が一層の努力をし、2つの戦略的方向性の問題をしっかりと解決することが必要だ」と指摘した。

 「まず、日本は一体中国をライバルと見ているのか、それともパートナーと見ているのか?中国の発展をチャンスと見ているのか、それとも脅威と見ているのか?」。唐氏は「ここしばらく、日本国内では『中国のもたらすチャンス』を論じる声が減り、『中国の脅威』を誇張する論調が増えている。ある日本メディアは、安倍政権の内外政策の随所に中国牽制、中国への防備の意図が透けて見え、外交面では他の国と連携して中国を『封じ込め』ようとすらしている、と指摘した」と述べた。

 「こうした現象の原因は2つ以外にない。中国に対する認識に偏りが生じたのか、『中国の脅威』を誇張して人には言えない政治的目的を達成しようとしているのかだ。前者であることを望む。後者は通用しないだけでなく、非常に危険で、日本さらには地域全体の利益を顧みない表われであり、他国を損ない、自国にもマイナスだからだ」。 

 「次に、日本は一体東アジアの国なのか、それとも域外の大国の代弁者なのか?東アジアの発展に奉仕するのか、それとも域外の大国の地域戦略に奉仕するのか?」。唐氏は「近年、アジアの地位が高まり、少なからぬ域外の大国がこの地域に焦点を合わせ、投入を積極的に強化している。われわれは東アジアの発展への域外国の参加と支持を歓迎する。だが政治・安全保障上の敏感な議題を煽ることに熱中し、この地域でもめ事を引き起こし、離間を煽り、東アジアの統合プロセスに障害を設けている国もごく一部ある」と述べた。

 「まさにこの時、地域の主要先進国である日本がどのような役割を演じるのかを、人々は強く注視している。現在日本国内には、日本は域外の大国に頼って地域での優勢を維持すべきだとの論調がある。アジアの発展は最終的にはやはりアジア諸国自身に頼る必要があると私は考える。この地域に人為的に緊張をもたらす、いかなる国の企ても人心を得ず、実現は不可能だ」。

 唐氏は「われわれは日本が西側の一員であることを理解し、米国を含む域外国と正常な関係を発展させることにも賛同している。だがもし日本側が、そうすれば万事めでたしと考えて、中国などアジア隣国との関係を軽視するのなら、自らの進む道を狭めていくだけだ。われわれは日本側が真に自らをアジアの一員と見なし、アジアの振興を自らの任務と捉え、隣国との関係を適切に処理し、地域の平和・安定の大局の維持と地域経済統合プロセスの推進に建設的役割を発揮することを希望する」と指摘。

 最後に「中国にとって平和的発展路線の堅持は自らの根本的利益に基づく戦略的選択であり、われわれは様々な外来の妨害を排除し、断固この道に沿って歩んでいく。中国の発展は地域と世界にさらなる発展のチャンスをもたらし続ける。日本側が客観的、理性的な対中認識を確立し、積極的な対中政策を遂行し、『互いに協力パートナーであり、互いに脅威とならない』『相手国の平和的発展を互いに支持する』との中日間の4つの政治文書における重要な共通認識を真に政策に具体化することを希望する」と強調した。(編集NA)

村上元行革相が秘密保護法案批判 「30年封印、検証できず」
東京新聞 2013年10月29日
 情報漏えいをした公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法案をめぐり、自民党衆院議員の村上誠一郎元行革担当相は29日、共同通信の取材に応じ「特定秘密に指定されれば30年も封印される。国民の目線で検証できなくなるのではないか」と批判した。

 安倍政権が同法案とともに日本版「国家安全保障会議」(NSC)の設置や、集団的自衛権行使容認の検討を進めていることに「周辺国から戦争の準備ばかりしているとみられる」と指摘。「自民党の良さは多様性だったのに、今は右向け右で一色になる」と話した。
(共同)

自民・村上氏:秘密保護法案 「首相の趣味」身内も批判
毎日新聞 2013年10月24日
 安全保障に関する国家機密の漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法案について、自民党衆院議員の村上誠一郎元行革担当相(61)が毎日新聞の取材に「財政、外交、エネルギー政策など先にやるべきことがあるのに、なぜ安倍晋三首相の趣味をやるのか」と述べ、今国会での成立を目指す安倍内閣の姿勢を痛烈に批判した。25日の閣議決定を前に、法案に身内から強い反発が出た形だ。

 村上氏は特定秘密保護法案と国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案について「戦争のために準備をするのか。もっと平和を考えなければいけない」と懸念を表明。さらに「(特定秘密保護法案には)報道・取材の自由への配慮を明記したが、努力規定止まりだ。本当に国民の知るべき情報が隠されないか、私も自信がない。報道は萎縮する。基本的人権の根幹に関わる問題だ」と、国民の「知る権利」が侵害を受ける危険性に言及した。

 村上氏は22日、自民党総務会を途中退席して法案了承に反対の意向を示した。村上氏は「党総務会は官邸の意向を振りかざし、熟議のないまま進んでいる。慎重な上にも慎重にしなければいけない」と合意を急いだ党運営を批判。退席者が自分一人だったことには「小選挙区制では党が公認、カネ、人事の権限を握る。政治家の良心として言わねばならないことも言えなくなっている」と話した。衆院本会議での採決については「懸念する点が解消される修正があるかどうかだ」と審議を見守る考えを示した。

 村上氏は衆院政治倫理審査会長。愛媛2区選出で当選9回。新人時代の1986年11月、谷垣禎一氏(現法相)、大島理森氏(元党幹事長)ら自民党中堅・若手国会議員12人の一員として、中曽根康弘内閣の国家秘密法案への懸念を示す意見書を出した。【青島顕】
 
 

日本版NSCへの大いなる懸念

 佐賀新聞が、「日本版NSC検証の仕組みづくりを」という論説を掲げました。それを読むと「安倍首相の悲願」といわれる日本版NSCのイメージが良く理解できます。
 日本版NSCは、首相と外相、防衛相、官房長官の4者会議に、日本の安全保障と外交に関する最高の決定が与えられ、それに必要な情報首相に集中させるという体制です。国家安全保障局や内閣情報調査室も新設されます。

 大統領制を敷き、全世界に諜報網を張り巡らしつつ世界各地で随時謀略まがいの作戦まで行うという、アメリカにとっては必要な体制かも分かりませんが、議員内閣制を取っている日本がそのまま真似る必要などはあるのでしょうか。日本には一刻を争って緊急に決断しなければならない事態などは何も考えられません。
 それなのに4人というごく一部の人間たちで、国の対応を決めるシステムにするとは・・・何か物に憑かれたかのように見える安倍首相に、一体そんな決定権を与えてよいものだろうかという心配の方がにわかに高まります。マスメディアも大いに警告を発するべきです。

 以下に佐賀新聞の論説を、朝日新聞の社説とともに紹介します。
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論説) 「日本版NSC」検証の仕組みづくりを  
佐賀新聞 2013年10月29日
 日本版NSC(国家安全保障会議)創設関連法案の審議が衆院特別委員会で始まった。安倍晋三首相の悲願というべき政策で、官邸の外交・安全保障政策の司令塔機能強化を目指す。野党に異論が少ないとはいえ、国のかたちを大きく変える可能性もある。 
 一番の柱は首相と外相、防衛相、官房長官の4者会議を制度化するところ。これまでの安全保障会議があくまで「協議の場」で、閣議を経なければ決定されなかったのに比べ、国の意思決定が早まり、首相の権限も強化される。 
 そのために必要なのは正確な情報の集約である。内閣官房に事務局として「国家安全保障局」を新設、防衛や外務などの省庁からスタッフを集める。併せて各省庁に情報提供義務を持たせる構想だ。政策立案を含めて危機管理の専門集団になる点も大きな強みだ。 
 直接のモデルは米国の国家安全保障会議(NSC)である。ホワイトハウスの主要部局で、外交・安全保障に関する最高の意思決定機関。中国政策やアフガニスタンからの米軍撤退などが、NSCの検討を経て最終的に大統領の決断で決まっている。 
 重要政策は基本的にNSCにかけられ、会議日程や議題さえも機密指定されているという。国民に直接選ばれる大統領制と異なって、日本の場合は議院内閣制である。安保・外交の権限と情報を首相に集中させることの適否が、まず論点になる。 
 尖閣諸島周辺で繰り返される中国公船の領海侵入、北朝鮮のミサイル発射実験など、日本の安全保障をめぐる環境は厳しさを増している。この現実を踏まえた場合、迅速で合理的な意思決定が必要なのは確かだろう。 
 その半面、誤った判断になる可能性も否定できない。国益を追求したものであっても統治する側の都合を優先した発想が、国民の不都合を生み出すケースも想定される。判断の当否を含めて、歴史的な検証ができるように情報公開の仕組みを求めたい。 
 事務局は複雑な国際情勢を分析して政策を検討し、それを絞り込んだ形で首相に提示する役割を果たすことになる。組織構成や活動内容についても検討が必要だが、各省庁との職務分担など組織の制度設計はまだこれからである。 
 また、NSCは同盟国や友好国と高度な情報を交換することを想定している。このため、関係閣僚や職員に厳密な機密保持を求める「特定秘密保護法案」もセットで審議される。特定秘密の設定が国民の「知る権利」と対立するのは確実だ。 
 安全保障で情報管理が重要になっているのは分かるが、そこは厳密な歯止めが必要だろう。首相の権限強化の一方、外交や防衛すべてが機密の名の下に隠されては官僚の情報支配が進むばかりで、民主主義の危機である。 
 国会審議で組織や職務の詳細を明らかにしつつ、知る権利をどう保障するかの論議に重点を置いてほしい。 
 NSCは年内の発足を目指している。特別委員会は連日の開会が可能で、審議時間を確保しやすい。特別委を審議の場にしたのも、成立にかける首相の意志の表れだろう。ただ、臨時国会は会期が限られている。NSC設置とずれることになっても、特定秘密保護法案は慎重に審議すべきだ。(宇都宮忠) 


(社説) 日本版NSC―軍事の司令塔にするな 
朝日新聞 2013年10月29日
 国家安全保障会議(日本版NSC)の設置法案をめぐり、衆院特別委員会の審議がきのう始まった。
 米国などのNSCと連携しながら外交・安全保障の司令塔として省庁間調整にあたり、議長である首相を助ける。 
 扱うテーマは対中関係や北朝鮮の核・ミサイル問題、領土問題など。武装した漁民が無人島に来た場合、まず警察や海上保安庁が対応するが、エスカレートすれば自衛隊が出動し、短時間で切れ目のない対応をとる――。安倍首相が描くのはこんなイメージのようだ。 
 たしかに、こうしたケースも全く想定できないわけではない。省庁の縦割りが迅速な危機対応を阻んできた経験を踏まえれば、内閣の調整機能を高める狙いは理解できる。 
 だが、気掛かりな点は多い。 
 まず、軍事偏重の向きはないか。むろん侵略やテロへの備えは必要だが、それだけが安全保障ではあるまい。エネルギー問題や金融不安、食糧、災害、感染症といった多様な危機にあたっては、軍事、外交、経済などさまざまな角度から検討されなければならない。 
 軍事の司令塔のようになってしまっては、現代の複合的な危機には対処できない。 
 NSC法案とセットとされる特定秘密保護法案の問題もある。政府が常に正しい判断ができるとは限らない。失敗すれば特に、国民への説明責任が生じる。後世の歴史的な検証に付されるのは当然のことである。 
 だがNSCの議論に、米国などから得た機密情報が含まれ、それが特定秘密に指定されている可能性は高い。いまの特定秘密保護法案が通れば、どんな情報を得て、どんな議論が交わされ、その判断に至ったかを検証することは難しい。 
 さらに安倍政権の視線の先をたどっていくと、NSC法案は安保政策の大転換に向けた最初の一歩とも言える。 
 この法案が通れば、次に特定秘密保護法案の成立をはかり、日米同盟のさらなる強化に踏み出す。年末に策定する国家安全保障戦略には武器輸出三原則の見直しを盛り込む。集団的自衛権の行使をめぐる憲法解釈を変更し、来年末までに見直す日米防衛協力のための指針(ガイドライン)に反映させる。 
 政権が描くのはそんな道筋であり、NSC法案はその入り口になる。 
 日米同盟の軍事的な一体化をどこまで進めるのか。これからの論議が、日本の方向性を決めることになる。
 
 

2013年10月29日火曜日

秘密保護法案は憲法の3原則を否定するもの

 「秘密保護法案は憲法の三つの基本原理である基本的人権、国民主権、平和主義と真っ向から衝突し侵害する (反対声明)」

 学者たちの間で秘密保護法案の制定に反対する動きが広まっています。28日の段階で約270人の学者たちが反対声明に賛同しました。
 「秘密保護法案は軍事立法だ」という学者もいます。
 国民の間でもようやく反対運動が盛り上がって来ました。憲法の三つの原理が秘密保護法案で簡単に壊されようとしているのですから当然のことです。

 政府はこれまで秘密保護法案の内容を秘密にしてきました。それは法案が憲法に違反し、国民の主権と基本的人権を制限するものであることが明らかになれば、国民の間に広範な反対運動が起きることを恐れたからです。
 24日に上野で行われた街頭シールアンケート(約2時間)では、結果が「賛成23票」「反対105票」「わからない133票」で「わからない」がトップだった(田中龍作 BLOGOS24日)ということですから、政府の目論みは成功したといえます。
 しかし憲法をないがしろにする法律が成立するなどは許されることではないので、内容が明らかになれば必然的に反対運動も盛り上がります。

 もうひとつ政府には企みがありませす。
 それは国家安全保障基本法のなかで集団的自衛権の行使をうたうことです。これも法律の制定によって、結果として憲法(9条)をないがしろにすることであ、許されない暴挙です。

 世論の盛り上がりで先ずは秘密保護法案の成立を阻止したいものです。
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秘密保護法案 265人反対 憲法の3原則侵害
東京新聞 2013年10月29日
 憲法・メディア法と刑事法の研究者が二十八日、それぞれ特定秘密保護法案に反対する声明を発表した。声明に賛成する研究者は憲法・メディア法が百四十人、刑事法が百二十人を超えた。憲法の「知る権利」や「国民主権」を損なう法案の実態が明らかになるにつれ、成立を急ぐ政府とは逆に反対の声が広がっている。

 反対声明は憲法・メディア法と刑事法の研究者が二十八日、国会内で合同で記者会見して発表した。
 憲法・メディア法研究者の声明は呼び掛け人が二十四人、賛同者百十八人の計百四十二人。刑事法は呼び掛け人二十三人、賛同者百人の計百二十三人。
 会見で、憲法・メディア法の呼び掛け人の山内敏弘一橋大名誉教授は「法案は憲法の三つの基本原理である基本的人権、国民主権、平和主義と真っ向から衝突し侵害する」と指摘。刑事法の呼び掛け人代表の村井敏邦一橋大名誉教授は「(軍事機密を守る目的で制定された)戦前の軍機保護法と同じ性格。戦前の影響を考えれば、刑事法学者は絶対反対しなければならない」と呼び掛けた。

 声明はいずれも法案の問題点として、特定秘密を第三者の点検を受けず政府の判断で指定し、漏えいや取得に厳罰を科して、調査活動をする市民や記者も罪に問われる点を挙げた。その上で「国民の『知る権利』を侵害し憲法の国民主権の基盤を失わせ、憲法に基づいて国民が精査すべき平和主義に反している」などと批判した。憲法・メディア法は奥平康弘東京大名誉教授、東北大や東大などで教授を歴任した樋口陽一氏、杉原泰雄一橋大名誉教授、刑事法は斉藤豊治甲南大名誉教授ら研究者が呼び掛け人、賛同者に名を連ねた。


秘密保護法案研究者271氏「反対」 憲法・メディア法、刑事法
しんぶん赤旗 2013年10月29日
 国民の目・耳・口をふさぐ秘密保護法案に反対―。憲法・メディア法研究者と刑事法研究者が28日、国会内の記者会見で声明を明らかにし、秘密保護法案反対を訴えました。憲法・メディア法研究者による声明には142氏、刑事法研究者の声明は129氏、合わせて271氏が賛同(28日現在)しています。

 呼びかけ人の田島泰彦上智大学教授(憲法・メディア法)は、「メディアや市民の情報発信・抗議などで世論も変化してきたが事態はかなり緊迫している」と危機感を表明。「(秘密保護法案が通れば)極端な秘密主義国家、情報独裁国家になってしまう。秘密を官僚が独占するだけでなく、国民が知らなければならない情報を官僚が決め、差しさわりがあれば国民を処罰する仕組みだ。形の上での民主主義も崩される」と訴えました。

 会見で「秘密保護法案は『軍事立法』だ」と述べたのは村井敏邦一橋大学名誉教授(日本刑法学会元理事長)。刑事法研究者による声明の呼びかけ人代表として、「国家安全保障会議設置法案とあわせて審議されるところに(軍事立法としての)意図は明確だ。戦前の軍機保護法と性格を一にしている。そもそもこういう法律を作っていいのか」と述べました。

 山内敏弘一橋大学名誉教授(憲法学)は、「この法案で市民生活が警察の取り締まり対象になれば、市民生活の自由とダイレクト(直接的)に抵触する。マスメディアの手足をもぎとるような法案であり、この法案が通れば、『集団的自衛権の行使』という既成事実がつくられてしまう。戦前の大本営発表と同じ事態になる」と批判しました。

 新倉修青山学院大学教授(刑事法)は、「(盗聴で)アメリカが情報を集めて世界を操作していることが明らかになっているときに、アメリカと歩調を合わせて情報を秘匿して国民を操って、何から安全を守るのかわからない社会をつくろうとしている」と述べました。
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秘密保護法案反対 声明の呼びかけ人
 (学者の名簿は省略)
 
 

秘密保護法案は憲法を踏みにじるもの 法学者らが声明

 安倍政権が国会に提出した特定秘密保護法案について法学者たちが28日、「基本的人権の保障、国民主権、平和主義という憲法の基本原理をことごとく踏みにじる危険性が高い」として、制定に反対する声明を発表しました。
 
 それとは別に刑事法の研究者たちもこの日、同法案は「刑事法の人権保障をも侵害する恐れが大きい」として反対声明を発表しました。呼びかけ人・賛同者は計129人にのぼりました。
 それぞれの声明に、全国の大学教授や弁護士ら計270人以上が賛同しています。

 以下に25日に出された日弁連会長の声明とともに紹介します。
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秘密保護法案、憲法踏みにじる 法学者ら270人が反対声明
東京新聞 2013年10月28日
 政府が今国会に提出した特定秘密保護法案に反対する法学者ら10人が28日、東京の衆院議員会館で記者会見し「法案は基本的人権の保障、国民主権、平和主義という憲法の基本原理をことごとく踏みにじり、傷つける危険性の高い提案」などとする声明を出した。

 憲法・メディア法と刑事法の研究者が、それぞれ声明を作成。全国の大学教授や弁護士ら計270人以上が賛同した。
 記者会見では、「21世紀の治安維持法」、「どこからのチェック機能も働かない法案は認めるわけにいかない」などの反対意見が相次いだ。(共同)


特定秘密保護法案の閣議決定に対する会長声明 2013年10月25日)

本日、政府は、特定秘密保護法案(以下、「法案」という。)を閣議決定した。

当連合会はこれまで複数回にわたり法案に強く反対する旨の意見を表明してきた。そこでは、法案には、
①保護対象となる「特定秘密」の範囲が広範・不明確であること、
②「特定秘密」の指定が行政機関の長により恣意的になされうること、
③指定の有効期間5年を延長し続ければ指定が恒久化すること、
④内部告発や取材等行為についての処罰範囲が広く、厳罰に処するものであるため、表現の自由及び報道の自由や知る権利等憲法上の権利が侵害されること、
⑤適性評価制度により重大なプライバシー侵害が生じるおそれがあること、
⑥行政機関の長の判断で「特定秘密」を国会に対しても提出を拒むことができることになっていることにより国会の国政調査権が空洞化され、国権の最高機関性が侵されるおそれがあること
等の問題を指摘し、本年10月23日に公表した意見書では、秘密保護法制を作る以前に、情報管理システムの適正化の実行、公文書管理法の見直しや情報公開法、国会法の改正などにより情報管理全体を適正化するよう、具体的に提案した。

これに対して、このたび閣議決定された法案では、9月26日に明らかにされた原案から次のとおり内容が変更されたが、当連合会が指摘した問題点の根本的な見直しはなされていない

第一に、秘密指定に関して、「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し、統一的な運用を図るための基準を定めるものと」し(18条1項)、その「基準を定め、又はこれを変更しようとするときは、(中略)優れた識見を有する者の意見を聴かなければならない。」(同条2項)とされた。

第二に、有効期間の延長に関して、「指定の有効期間が通じて30年を超えることとなるときは、(中略)内閣の承認を得なければならない。」(4条3項)とされた。

第三に、知る権利等に関して、「国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない。」(21条1項)とされ、「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする。」(21条2項)こととされた。

しかし、18条については、「優れた識見を有する者」の意見を聴いて決められるのは抽象的な運用基準でしかなく、実際に行われる個々の秘密指定については、これをチェックする機能はなく、恣意的な秘密指定がなされ得ることに変わりはない

4条については、指定期間が30年を超える場合には内閣の承認を必要とするとしても、指定権者である行政機関の長の判断を追認する形で内閣の承認がなされることが予想され、指定が恒久化してしまう危険性が高い

21条1項の報道又は取材の自由に十分配慮するとの規定も、抽象的な訓示規定に過ぎず、これにより報道又は取材の自由が担保される保障は何もない

また、同条2項の「専ら公益を図る目的」という主観的要件については、その有無はまず捜査側が判断することであって、どのようにも解釈可能である。しかも、「著しく不当な方法」という文言自体が非常に抽象的なものであることから、どのような行為が「著しく不当な方法」と評価されるのか事前に予測することが困難である上、やはり恣意的な解釈が可能である。したがって、訴追された場合に裁判所により最終的に「専ら公益を図る目的」があり、「著しく不当な方法によるものとは認められない」と認定されたとしても、恣意的な解釈・運用によって捜査対象となることに変わりはなく、それだけで取材に対する萎縮効果は測り知れない。
さらに、「出版又は報道の業務に従事」しない者である一般市民や市民運動家、市民ジャーナリスト等には適用されず、不合理な差別となっている。

以上のとおり、これらの規定等の追加によっても特定秘密保護法案の危険性はなお高いものと言わざるを得ない。

国民の権利を侵害し、国会の最高機関性を侵す危険性を含む本法案について、これらの危険性が払拭されないまま閣議決定がなされたことは誠に遺憾である。当連合会が従前から主張している情報管理全体の適正化こそが急がれるべきであり、この適正化のための公文書管理法や情報公開法の改正がなされない状況で特定秘密保護法が制定されることに強く反対する。
2013年(平成25年)10月25日
日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司


2013年10月28日月曜日

秘密保護法案 今国会で成立に賛成は12・9%

 共同通信が行った世論調査で、特定秘密保護法案に反対が50・6%と半数を超え賛成35・9%を大きく上回りました。
 また「国会で慎重審議を求める」が82・7%にのぼり、「今国会で成立させる」は僅かに12・9%にとどまりました。
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秘密保護法反対が半数超 慎重審議求める意見82%
共同通信 2013年10月27日
 共同通信社が26、27両日に実施した全国電話世論調査によると、政府が今国会に提出した特定秘密保護法案に反対が50・6%と半数を超えた。賛成は35・9%だった。慎重審議を求める意見は82・7%を占め、今国会で成立させるべきだとする12・9%を上回った。東京電力福島第1原発の汚染水漏れに関し「全体として状況はコントロールされている」との安倍晋三首相の説明を「信頼できない」とした人は83・8%で、「信頼できる」は11・7%だった。