2015年5月31日日曜日

首相は答弁のデタラメさを自身で認識していない

 安倍首相は28日の国会でも、質問者の民主党の辻元清美議員に対して、“早く質問しろよ!”、“大げさなんだよ!”口をとがらせてヤジったということです。何んとも理解しがたい幼児性の発露です。そもそも行政府の人間が立法府の議員の発言にそんな風に干渉するとは只事ではありません。
 
 しかもその夜は自民党議員らとの会合に出席し安保関連法案の審議について「野党の攻め方は下手だ。自分たちが野党ならもっとうまくやれる」などと野党側を批判し質問の内容について「同じことばかりだった」と話したということです
 そこから分かることは、首相は国民から顰蹙を買い続けている自身の答弁のあり方について、何の自覚もないどころかあの無内容な長広舌にむしろ自信を持っているのではないかということです。恐ろしい事態というしかありません。
 
 29日付のLITERAが、首相の答弁を「デタラメで、とてもまともな議論になっていない何を聞かれても正面から答えずに話をそらす明らかな嘘をさも本当のように言い張るバカの一つ覚えのように同じ答弁を繰り返す」と痛烈に批判しましたが、いちいちうなずける話です。
 
 記事は首相の具体的な発言に即して批判していますので読み応えがあります。
 
 普通は自分の発言に矛盾があったり、論理的に破綻していればまず自らが苦痛を感じるものなのですが、それが全くなく、一定時間をかみ合わない答弁で過ごしてもまったく平気だというのは、「特異な気質」としか考えられません。
 
 LITERAの記事が、首相の、平然とウソをついても罪悪感が皆無で、自分の行動の責任をとる気が一切ないという性格の根源を、小学生時代の彼のあり方に求めているところは圧巻で、彼の中に見る異常性への疑念を氷解させるものがあります。

 それにしてもそういう人間にこの先も舵を委ねていいものなのでしょうか。
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安保法案答弁でも嘘とヤジ…
安倍晋三は小学生時代から嘘つきだったという新証言が…
LITERA 2015年5月29日.
 これではNHKが中継を躊躇したのもうなずける。安全保障法案の国会審議が26日から始まっているが、NHKは初日の中継をしなかった。各方面からの批判を受けて翌27日からはようやく一般国民も論戦が視られるようになったが、分かったのは、とにかく安倍晋三首相の答弁がデタラメで、とてもまともな議論になっていないということだった。何を聞かれても正面から答えずに話をそらす。明らかな嘘をさも本当のように言い張る。バカの一つ覚えのように同じ答弁を繰り返す
 
 例えば「専守防衛」について。政府はこれまで「相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使」する受動的なものだと説明してきた。それが今回の安保法制では、日本が直接攻撃されていない場合でも「わが国と密接な関係にある他国」が攻撃を受け、新しい3要件を満たせば、自衛隊が集団的自衛権を行使して反撃できる、としている。単純に言えば、日本が攻撃されていなくても、自衛隊が反撃できるという話だ。これに対して民主党の長妻昭代表代行が「専守防衛の定義が変わったのではないか?」と質したが、安倍は「まったく変わりはない」と即座に否定するのだった。「(他国が攻撃された場合でも)わが国の存立が脅かされる事態なのだから、これを防衛するのは、まさに専守防衛」というのが理由だというが、これで納得する国民はいるのだろうか
 
 そもそも新3要件の最初にある「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される」事態(存立危機事態)とはいったいどういう事態で、誰がどう判断するのか? 安倍の答えは驚くべきものだった。まず、存立危機事態とは「国民に、わが国が武力行使を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況」で、判断基準については「さまざまな要素を総合的に考慮し、客観的合理的に判断する」というのである。だ・か・ら、「国民に、わが国が武力行使を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況」とはいったいどういう状況で、誰がどう判断するのかを聞いているのに、安倍はいっさい答えず、同じ答弁を延々と述べる。聞いているこっちの方がイライラする。
 
 要するに、安倍は根拠がなくてもまったく気にならないのだ。得意の「アメリカの戦争に巻き込まれない」論は国会答弁でさらにバージョンアップした。「米国の戦争に巻き込まれることは絶対にない。そうした批判がまったくの的外れであったことは歴史が証明している」「戦争法案というのはまったく根拠のない、無責任かつ典型的なレッテル貼りであり、恥ずかしいと思う」とまで言い切った。根拠がないのはいったいどっちだ。
 
 バカの一つ覚えといえば、「一般に海外派兵は認められていない」も耳タコだ。集団的自衛権行使が認められても、自衛隊が他国の領土、領海、領空で武力行使することはないと言いたいらしい。20日の民主党・岡田克也代表との党首討論でも「海外派兵は一般に禁止されている」「我々は、外国の領土に上陸して、まさに戦闘作戦行動を目的に武力行使を行うことはしない、とハッキリ申し上げておきたい」とキッパリそう言い切っていた。ところが、安倍が執心するホルムズ海峡での機雷掃海について問われると、「『一般』の外だ。例外的に認められる」と言い出すしまつ。あるいは、「米軍の艦船が相手国の領海で襲われたら、自衛隊は何もしないのか?」と聞かれると、安倍は「極めて重要な当てはめをしていく」と武力行使の可能性を否定しない。平気で矛盾したことを言い切るのも、安倍答弁の特徴だ。
 
 新安保法制によって自衛隊の活動範囲は全地球に及び、武器制限も大幅に緩和される。当然、自衛隊員が人を殺し、殺されるリスクは格段に高まる。ところが安倍はそれを絶対に認めようとしない。「自衛隊員の安全に十分に配慮しており、危険が決定的に高まるといった指摘は当たらない」「後方支援は危険を回避して活動の安全を確保した上で実施する。新たな仕組み(新安保法制)はリスクとは関係がない」。安倍の理屈は、自衛隊の活動は安全な場所に限定し、危なくなったら退避するから安全だというものだが、その一方でこんなことも言っているのだ。「PKOや災害派遣など、自衛隊員は限界に近いリスクを負っている。新たな任務も命がけのものだ」。つまり、自衛隊はすでに危ない任務を負っているので、それ以上の新たなリスクが増えるわけではない、と言いたいようだ。だが、前者の「危険な場所で活動しないから安全だ」(絶対安全)と後者の「現状より危険は増えない」(相対安全)では、まったく意味が違うのは言うまでもない。
 
 そうかと思うと、「日米同盟が強化されると抑止力が高まり、(自衛隊が)攻撃される可能性がなくなる」といった珍妙なことを言い出したりもする。要は、自衛隊員の命などうでもいいと思っているのだ。その本音が出たのが「木を見て森を見ない」発言だ。野党が自衛隊員のリスクについてしつこく質問してくることに対して、自民党の役員会で思わずそう漏らしたという。そして、ついに国会の答弁でも「(自衛隊員の)リスクはないとは言っていないが、日米同盟の強化によって国民全体のリスクは減少していく」と言い始めた。国民全体(森)の安全が保たれるのだから、自衛隊員(木)のひとりやふたり死んでも構わないという発想だ。
 
 しかも、安倍本人が目の前にいる野党の質問者をやり込めることに夢中で、自分の発言が自衛隊員の命をないがしろにしていることに気づいていないから呆れるばかりだ。逆ギレや不適切発言もはなはだしい。「アメリカの戦争に巻き込まれるリスクがあるか」という再三の質問には「日米同盟強化でリスクが増えるとお考えか」と逆質問し、「なぜ、これほど急ぐ必要があるのか」という質問に答えられず、逆に「何か起こってからは遅いでしょう。あなたはそう思いませんか」と聞き返す。民主党の辻元清美議員が質問の趣旨を述べていると「早く質問しろよ」とヤジまで飛ばすしまつである。
 
 こうした状況を見かねた政治学者の山口二郎氏が、ツイッターでこうつぶやいていた。〈安倍の頭は、安保法制の審議に耐えられるだろうか。だが考えようによっては、何も考えないからこそ、論理の破綻や矛盾に苦痛を感じず、一定時間をかみ合わない答弁で過ごして平気だともいえる〉。平然とウソをつき、罪悪感が皆無で、自分の行動の責任をとる気がいっさいない。以前、本サイトが指摘したサイコパス(反社会的人格)がまた証明されてしまったようだ。
 
 このサイコパス的性格は、どうやら安倍の生育過程で培われたようなのだ。そのヒントになるのが元共同通信記者で政治ジャーナリストの野上忠興が「週刊ポスト」(小学館)に連載している「深層ノンフィクション 安倍晋三『沈黙の仮面』」だ。安倍家取材40年の野上が安倍の幼少期からの生い立ちを追い、その人格形成の過程を描いている。
 
 問題の平気でウソがつける性格は、実は小学校時代からのものだったようだ。安倍には2歳年上の兄がいる。この兄弟の性格が対照的で、夏休みの最終日、兄は宿題の日記ができていないと涙顔になっていたが、安倍は「宿題みんな済んだね?」と聞かれると、まったく手をつけていないにもかかわらず、「うん、済んだ」と平然と答えたという。ウソがバレて、学校側から1週間でさらに別のノート1冊を埋めて提出するようにと罰が出ても、本人がやらず、安倍の養育係だった女性が代わりにやってあげていたというのだ。一般人の子どもはウソをついたら必ず代償があると教育されるのが普通だ。ところが、安倍にはその経験がなかった。罪悪感が皆無で、自分のウソに責任をとらないまま、大人になってしまったようなのだ。
 
 野上のリポートには、他にも興味深いエピソードが数多く出てくる。例えば、安倍の成蹊大学時代の恩師のこんな言葉だ。「安倍君は保守主義を主張している。思想史でも勉強してから言うならまだいいが、大学時代、そんな勉強はしていなかった。ましてや経済、財政、金融などは最初から受け付けなかった(後略)」。では、安倍の保守思想はどこから来たのか。
 
 よく言われるのが、幼い頃、祖父の岸信介邸に押しかけた安保反対デモの中で「おじいちゃんは正しい」との思いを心に刻んだという話だ。野上氏のリポートには、これに加えて、家庭教師だった平沢勝栄(現自民党代議士)に連れられて東大の駒場祭に連れて行かれた時の話が出ている。当時は佐藤(栄作)内閣で学生運動が盛んな時期だった。駒場のキャンパスも「反佐藤」の展示や看板で溢れていた。そんなムードに、安倍は学生運動=「反佐藤」「祖父の敵」を感じたという。
 
 このすりこまれた「左翼=身内の敵・おじいちゃんの敵」という生理的嫌悪感が、今も辻元らを相手にすると頭をもたげ、ついムキになってしまうということらしい。
 
 国会答弁も、保守的な政治スタンスも結局、ようは小学生の幼稚なメンタリティの延長……。こんな薄っぺらい男の薄っぺらい考えによって、日本は「戦争をする国」に引きずられていくのだろうか。  (野尻民夫)
 

沖縄「慰霊の日」に高校生が平和行進、小学生は合唱、

 太平洋戦争における沖縄戦の組織的戦闘が終結した194523にちなんで、沖縄県は6月23日を「慰霊の日」に定めています。
 戦後70年を迎え体験者が高齢化する中、沖縄県教委と県は平和への思いを継承し、次世代との非戦の誓いの共有に向けた取り組みに力を入れています。
 今年は次世代の子どもたちに平和の尊さを継承していくことをテーマに、初めて高校生平和行進を呼びかけ、これまでは献花の間は「さとうきび畑」のCDを流しましたが、今年は小学生たちが式典に参加して合唱する予定にしています。
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慰霊の日に高校生が平和行進へ 小学生、式典で合唱
琉球新報 2015年5月30日 
 戦後70年の節目となる6月23日の「慰霊の日」に、(沖縄)県教育委員会(泉川良範委員長)は県内の高校生による平和行進など平和教育に重点を置いた事業を新たに行う。一方、県は同日、糸満市摩文仁の平和祈念公園で開く沖縄全戦没者追悼式で、子どもたちが合唱する場を設ける。例年は献花の間に森山良子さんの「さとうきび畑」のCD音源を流しており、追悼式の中で合唱が披露されるのは初めて。戦後70年になり、体験者が高齢化する中、県教委と県は平和への思いを継承し、次世代との非戦の誓いの共有に向けた取り組みに力を入れる構えだ。
 
 高校生による平和行進は糸満南小学校から出発し、途中で戦没者の遺族会の平和行進と合流する。那覇以南の県立高校から生徒約100人の参加を呼び掛けている。「慰霊の日」に県教委の事業で高校生が平和行進をするのは初めて
 諸見里明県教育長は「沖縄戦の記憶の風化が叫ばれる中、沖縄戦の実相を子どもたちに伝えていかなくてはいけない。県の未来を創造するために歴史を学ぶのは基本だ」と強調した。
 
 全戦没者追悼式での合唱は、地元の糸満市立西崎小と南城市立大里南小の3~6年生の計約40人が参加する予定。平和の尊さを歌った「月桃の花」など3曲が披露される。
 県平和援護・男女参画課によると、ことしの追悼式は次世代の子どもたちに平和の尊さを継承していくことがテーマ。これまでも地元の小中高生は献花で参加していたが、課内で「参加の場面を増やすべきだ」との声が上がり、合唱での参加を決めた。同課は「子どもたちの歌声を通じ、平和継承への思いを伝えたい」と意気込む。(中里顕、安富智希)
 

「たかつ九条の会」10周年 平和運動も正念場 来月3日、記念の集い

東京新聞 2015年5月30日
 憲法九条を守ろうと川崎市高津区の住民らが結成した「たかつ九条の会」が発足十周年を迎え、六月三日に記念の集いを開く。代表の山本武彦さん(76)は、他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法案の国会審議などを踏まえ「九条を守り生かす運動も正念場」と話し、集いへの参加を呼び掛けている。 (山本哲正)
 
 同会は、自民党の新憲法起草委員会が二〇〇四年から〇五年にかけて自衛隊を「自衛軍」とし、軍事裁判所を設置する案を出すなど改憲への動きを強めたことに対抗し、〇五年に発足。会員は約八百人で、月一回、九条関連の話題をまとめた会員向けニュースを発行してきた。
 
 〇六年の一周年集会ではイラクで武装勢力に拘束され「自己責任」とバッシングされたイラク支援ボランティアの高遠菜穂子さんの講演を企画。一四年には閲覧制限問題で話題になった原爆の悲惨さを伝える漫画「はだしのゲン」の実写版映画の上映会を開いた。
 
 山本さんは、安全保障関連法案の成立に向けて審議を急ぐ安倍晋三政権に「世界中に軍隊を送る米国に付き合うと敵側から反撃やテロの対象になる。今まで九条により付き合いを断れたが、法案が通ると断れなくなる。その危険性を伝えたい」と話す。
 
 山本さんは小学一年で終戦を迎え、母は弟二人を戦争で亡くした。「高校一年の孫が戦争に行くのは困る。少しでも良い日本を残したい」
 
 集いは高津市民館で午後六時半から。九条の会事務局長の小森陽一東京大大学院教授が「夏目漱石と憲法九条」と題して講演する。「草枕」などを取り上げ戦争に際して国家が個人を軽視していくことを漱石が描写していたとし、個人と国家の対立という難問に憲法九条が答えを出したと指摘する。
 
 シャンソン歌手の紫村千恵子さんが、谷川俊太郎さん作詞の反戦歌「死んだ男の残したものは」などを歌うコンサート「平和への願いをこめて」もある。参加費五百円。問い合わせは、たかつ九条の会=電080(1213)5133=へ。
 
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会員向けのニュースを手にする山本武彦さん
 

2015年5月30日土曜日

矛盾だらけの首相の説明・言語破綻 安保法案

 安倍首相と同郷の作家田中慎弥氏小説『宰相A』で、宰相に「戦争こそ平和の何よりの基盤」、「戦争の中にこそ平和を見出せると語らせています※1
※1 3月25日 「宰相 A」 安倍晋三の実像と虚像
 ジョージ・オーウェルの近未来小説「1984」では、某国は「戦争は平和である」、「無知は力である」というスローガンを掲げているということです。
 こういう全くあり得ない話でもそれを繰り返していれば国民はやがて矛盾を感じなくなるものなのです。
 東京新聞の27日付「こちら特報部」は、日本ではいまそれが現実になりつつあると述べています。
 
 安倍首相は、安保法制によって「アメリカとの連携が深まり抑止力が高まるので、戦争に巻き込まれなくなる(より安全性が高まる)」と得意そうに語りますが、これほどデタラメな話もありません。
 今日、軍事的超大国であるアメリカに攻撃を仕掛けるような国はありません。逆にアメリカこそが、第二次大戦後の70年間ひたすら他国に対して戦争を仕掛けてきた張本人でした。今後はアメリカと歩調を合わせるということであれば、そのまま日本もアメリカと同様の戦争国家になるだけの話です。
 
 東京新聞は、首相の説明は「矛盾だらけ」、「奇妙な理屈」、「言語破綻」、「はぐらかし」、「言いくるめ」、「黒を白と言う」、「支離滅裂」 等々と、マスメディアがなぜか必死に抑制している批判の言葉を忌憚なく並べ尽くしています。
 
 普通は「論理の破綻」という言い方をするものですが、安倍首相の場合は、そこにあるのは「放言」とでも言うべきもので「論理」と呼べるようなものはありません。なるほど、「言語破綻」の方が似合います。
 新聞の投書欄でも、「首相の答弁は放漫で不誠実。その場しのぎ。聞かれていないことを長々としゃべる」などの批判が目立ちます。問題は本人にその自覚が全くないことで、むしろ無意味な長広舌を得意になっているように見える点です。
 マスメディアはこれを何処まで放置しようというのでしょうか。これでは彼が在任中、国民は延々と言語破綻の長広舌を聞かされることになります。
 「政治における日本語は死んだ」(ブログ:村野瀬玲奈の秘書課広報室)の最たるものが安倍氏に当てはまります。
 
 東京新聞が「こちら特報部」で安倍首相の言語破綻の実例を丁寧に紹介してます。
 
追記) あいば達也氏は彼の29日付ブログ「世相を斬る」で、首相のことを次のようにこき下ろしています。
 安倍の最大の強みは“無教養に気づかないほど無教養”なので、論理の破綻や矛盾なんて、まったく意に介さない。そして、滔々と噛み合わない答弁を苦にせず話せる。普通以上のIQがあれば、「あれっ!なんか言っていることがヘンチクリ?」と田中直紀のように右往左往するのだが、そういう心配もない。
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首相説明矛盾だらけ 後方支援「安全確保」奇妙な理屈 
安保関連法案審議入り 政権内 相次ぐ言語破綻 
こちら特報部 東京新聞 2015527
 はぐらかし、言いくるめ…最後は「私が総理」 
 政治こそ「存立危機事態」
 
 平和を守れるかのみならず…そもそも議論が成り立つのか「安全な場所で後方支援」という首相のせりふがある。
 安全かどうか、一体誰に聞くのか。
 
 党首討論では、政府説明が正しい根拠を「私は総理大臣だから」と言ってのけた。
 論理も言語も破綻している
 日本の政治こそ「存立危機事態」にあるように映る
 
 一般に海外派兵は認められていない」
 「外国の領土に上陸していって、戦闘行為を行うことを目的に武力行使を行うことはない」(20日党首討論)
 だがペルシャ湾機雷除去は「『一般』の外」。
 PKOも「武力行使は決して行いません」(14日記者会見)だが、法案では武器使用条件緩和でかけつけ警護
 後方支援:しっかりと安全が確保されている場所で実施…
 だが戦争で相手側の兵たん部門を狙うのは常、安全か否か、敵に聞くのだろうか
 
 安保法制によって「抑止力が高まり、戦争に巻き込まれなくなる」も、奇妙な理屈
 自らの戦力は「戦争をしない」張り子のトラだと宣言すれば、抑止力となりようがない
 米軍が日米安保条約の枠組みで、日本の抑止力になっていることは分かる。
 しかし、日本が米国と集団的自衛権を行使できるようになって、どう抑止力が高まることになるのか
 
 米国の戦争に巻き込まれることは「絶対にあり得ない」…安保法制に関する首相の発言には、白を黒といいくるめる強引さがある。
 首相の支離滅裂ともいえる発言は現在の安保法制に限らない。
①70年談話について「歴史認識は村山談話の基本的な考え方を引き継いでいく」と同時に、「国策を誤り」「痛切な反省」という文言は退け、
②「解釈改憲は立憲主義の否定」との指摘に「立憲主義にのっとって政治を行うのは当然」とはぐらかし
③13年9月IOC総会、福島原発事故の汚染水について「状況はコントロールされている」と語った。
 猪瀬都知事(当時)は「必ずしもアンダーコントロールではない」と指摘したが、どちらが正しかったかは周知の通り。
 
 こうした「安倍話法」ともいえる言葉の破綻は、周辺にも伝搬している。
 こうした無責任とも言える発言が首相や周辺から発せられながらも、政権の支持率は高い。
なぜか?
 「インターネットの普及で、感情やムードが世相を支配するようになった。それに伴い、政治家の問題発言を深く考える傾向が薄まっている」。小林正弥(千葉大・政治哲学)。
 「報道する側も優等生や官僚的な思考の人間が増え、政権の揺さぶりに反応し、追及が甘い。これらが悪循環し、慣らされてしまっているのでは」。
 
 ではどうすべきか。
 「ムードに支配されないためには、人間の理性や教養を一から立て直さないとダメだ。メディアの自覚とともに…一人一人が考えねば」
 
 「(関連法案の説明が)間違っている」と岡田代表に指摘された首相…「何をもって間違っているというのか分からない。われわれが提出する法律(案)についての説明は全く正しいと思いますよ。私は総理大臣なんですから」。
 首相であることが、なぜ、正しさを担保するのか。
 
 現在の政治こそ存立危機事態
 
デスクメモ
 「戦争は平和である」「無知は力である」。
 これは英作家ジョージ・オーウェルの近未来小説「1984」(一九四九年刊行)で、架空の全体主義国家「オセアニア」が掲げるスローガンだ。
 国民は事の矛盾を感じぬよう洗脳される。
 想定から約三十年遅れ、悪夢は現実になりつつある。
 

参院憲法審査会:議論百出、審議進まず 与野党対立で

毎日新聞 2015年05月27日 
 参院憲法審査会が27日開かれ、今国会初の実質審議を行った。憲法改正を視野に2院制のあり方を議論したい自民党と、安全保障関連法案を巡り、憲法9条の解釈変更で政府を追及したい野党側の意見は折り合わず、各党の意見表明にとどまった。次回以降、2院制のあり方について各党が意見表明し、参院のあるべき姿について議論を本格化させる。
 
 審査会の審議は昨年11月以来。自民党の阿達雅志氏は、参院のあり方と選挙制度を併せて議論するよう提案した。最高裁は2013年参院選の「1票の格差」が違憲状態と判断したが、参院自民の若手議員は都道府県単位の選挙区の維持を求めており、「最高裁の憲法解釈と異なる制度を構築するなら、憲法改正が必要だ」と主張した。公明党の西田実仁氏も参院改革で「行政監視機能を強化すべきだ」と言及した。
 
 これに対し、民主党の前川清成氏は関連法案を念頭に「歯止めがない解釈変更を許したら憲法がルールではなくなる」と批判。共産党の仁比聡平氏も「多くの国民が『戦争法案』に反対だ」として審査会の開催に反発した。社民、生活両党も「関連法案は憲法違反だ」と主張した。
 
 一方、無所属クラブの水野賢一氏は衆参統合の1院制の実現を主張。維新の党、日本を元気にする会、次世代の党も改憲論議に前向きな姿勢を示した。
 
 終了後、柳本卓治審査会長(自民)は「各党の合意が得られておらず、当面は改憲を念頭に置いた議論はしない。参院らしく腰を落ち着けた議論を進めたい」と語った。【高橋克哉、田中裕之】
 

安保法案に反対し、平和と人権及び立憲主義を守るための日弁連宣言

 29日日本弁護士連合会は、「安全保障法制等の法案に反対し、平和と人権及び立憲主義を守るための宣言」を出しました。
 
 日弁連のホームページには、長文の「提案理由」も併せて掲載されています。
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安全保障法制等の法案に反対し、平和と人権及び立憲主義を守るための宣言
 
戦後70年を迎えた今、平和と人権及び立憲主義はかつてない危機に瀕している。
 
政府は、2014年7月1日に集団的自衛権の行使容認等を内容とする閣議決定を行い、これを受けて現在、安全保障法制や自衛隊の海外活動等に関連する法制を大きく改変する法案を国会に提出している。これは、日本国憲法前文及び第9条が規定する恒久平和主義に反し、戦争をしない平和国家としての日本の国の在り方を根本から変えるものであり、立法により事実上の改憲を行おうとするものであるから、立憲主義にも反している。
 
先の大戦は国内外で多くの戦争被害者を生んだ。日本はアジア・太平洋地域への侵略により、同地域の多くの人々に重大かつ深刻な被害を与えた。また、日本軍の多くの兵士や関係者も死傷し、国内では沖縄における地上戦、広島・長崎への原爆投下、大空襲等により、膨大な数の人々が被害を受けた。
 
戦争は最大の人権侵害であり、人権は平和の下でこそ守ることができる。
 
これは、先の大戦の余りにも大きく痛ましい犠牲に対する真摯な反省と、そこから得た痛切な教訓であり、この反省と教訓を胸に私たちの国は戦後の歴史を歩んできた。
 
憲法前文及び第9条が規定する徹底した恒久平和主義は、この悲惨な戦争の加害と被害を経験した日本国民の願いであり、日本は二度と戦争を行わないという世界に向けた不戦の誓いの表明である。これまでも幾度か憲法第9条を改正しようとする動きがあった中で、今日に至るまで恒久平和主義を堅持してきたことが、アジアのみならず世界の人々の平和国家日本への信頼を育んできた。
 
ところが、戦後70年を迎え、日本国憲法の恒久平和主義に、今大きな危機が迫っている。
 
今般、国会に提出された安全保障法制を改変する法案は、憲法上許されない集団的自衛権の行使を容認するものであり、憲法第9条に真正面から違反する。
 
また、自衛隊の海外活動等に関連する法制を改変する法案は、自衛隊を海外のあらゆる地域へ、しかも「現に戦闘行為を行っている現場」以外であれば戦闘地域を含めどこにでも派遣し、弾薬・燃料等の軍事物資を米国及び他国軍隊に補給することを可能とするものである。これは外国で戦争をしている他国軍隊の武力行使に対する積極的協力であり、他国軍隊の武力行使と一体となり当該戦争に参加するに等しいものであって、憲法第9条に明らかに違反する。また、このような戦争をしている他国軍隊への積極的協力は、相手側からの武力攻撃を誘発し、我が国が外国での武力紛争に巻き込まれる危険を伴い、現場の自衛官は、武器を使用して他国の人々を殺傷する立場に追い込まれ、自らが殺傷される危険に直面する。全世界の国民が平和的生存権を有することを確認し、国際紛争を解決する手段として戦争と武力行使を永久に放棄し、戦力の保持を禁じ、交戦権を否認している日本国憲法の下で、このような事態を起こしかねない法制への改変は到底許されない。
 
このように、最高規範である憲法の恒久平和主義に反する極めて重大な問題であるにもかかわらず、主権者である国民に対して十分な説明が行われないまま、2014年7月1日に閣議決定がなされ、それを受けた与党協議を経た安全保障法制等を改変する法案が第189回国会に提出されたが、米国との間で「日米防衛協力のための指針」の見直しが先行して合意された。政府の方針が、主権者への不十分な説明のまま、対外的に決定され、憲法改正手続を経ることなく、法律の制定、改廃によって憲法第9条の改変が事実上進められようとしている。これは立憲主義に反するものであり、到底容認することができない。
 
戦前、弁護士会は、言論・表現の自由が失われていく中、戦争の開始と拡大に対し反対を徹底して貫くことができなかった。戦後、弁護士及び弁護士会には弁護士法第1条の「基本的人権を擁護し、社会正義を実現する」という使命が与えられた。この使命は、国民からの期待と信頼に応えるものであり、今、弁護士及び弁護士会が「基本的人権を擁護し、社会正義を実現する」という立場から意見を述べ行動しなければ、弁護士及び弁護士会は、先の大戦への真摯な反省と、そこから得た痛切な教訓を生かせないことになる。
 
私たちは、1950年の第1回定期総会(広島市)に引き続いて開催された平和大会において、日本国憲法の戦争放棄の崇高な精神を徹底して、平和な世界の実現を期することを宣言した。私たちはこの決意を思い起こし、憲法の恒久平和主義や基本的人権の保障及び立憲主義を守り抜くために、集団的自衛権の行使等を容認し自衛隊を海外に派遣して他国軍隊の武力行使を支援する活動等を認める、今般の安全保障法制等を改変する法案に強く反対するとともに、平和と人権、そして立憲主義を守る活動に国民と共に全力を挙げて取り組む。
 
以上のとおり宣言する。
2015年(平成27年)5月29日
日本弁護士連合会
 

2015年5月29日金曜日

6月4日衆院憲法審査会の参考人は長谷部恭男氏ら3人に

 6月4日の衆院憲法審査会での参考人は、早大教授の長谷部恭男氏、笹田栄司氏、慶大名誉教授の小林節氏の3人に決まりました。
 
 朝日新聞から著作権の侵害を申し立てられましたので、紙面のコピーは削除します。(15.7.15)

君が代不起立2件 処分は違法の合理的判決

 28日、東京高裁は卒業式で君が代を斉唱する際に起立しなかったことを理由に、教育委員会元教員女性)を停職6か月の懲戒処分にしたことについて、「個人の思想や良心の自由の実質的な侵害につながる」として、取り消す判決を言い渡しました。
 
 また25日には東京地裁が、都立高校の元教職員が卒業式などでの君が代斉唱で起立しなかったことを理由に、教育委員会定年退職後に再雇用しなかったことについて、「個人の思想信条に従った行為を理由に、大きな不利益を科すこと量権の範囲を超えるもので違法として、1人当たり200万円余りの賠償を東京都に命じました。
 
 思想信条の自由が司法の場で改めて認められたのは、あまりにも当然のこととはいえ喜ばしいことです。
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君が代不起立で懲戒処分 高裁が取り消す判決 
NHK NEWS WEB 2015年5月28日
東京の公立学校の卒業式で君が代を斉唱する際に起立しなかったことを理由に、元教員の女性が教育委員会から受けた停職6か月の懲戒処分について、東京高等裁判所は「個人の思想や良心の自由の実質的な侵害につながる」として、取り消す判決を言い渡しました。
 
この裁判は、東京・町田市の市立中学校の教員だった女性が、平成19年の卒業式で君が代を斉唱する際に起立しなかったことを理由に、東京都教育委員会から停職6か月の懲戒処分を受けたのは不当だと訴えていたものです。
1審は、元教員は過去にも減給や停職1か月と3か月の処分を受けたにもかかわらず、再び起立しなかったとして訴えを退けました。
28日の2審の判決で、東京高等裁判所の須藤典明裁判長は「処分を機械的に重くしていくと最後は免職処分になり、自分の思想を捨てるか、教員の身分を捨てるかの選択を迫られる。憲法が保障している個人の思想や良心の自由の実質的な侵害につながるものだ」と判断して、懲戒処分を取り消すとともに10万円の賠償を東京都に命じました。
判決について、元教員は「都の教育委員会が処分を機械的に重くすることに対してストップをかける内容で、うれしい」と話していました。
一方、東京都の中井敬三教育長は「誠に遺憾だ。教職員の職務命令違反に対しては、今後も厳正に対処していく」とするコメントを出しました。 
 
 
君が代斉唱 “不起立で再雇用しないのは違法” 
NHK NEWS WEB 2015年5月25日
東京の都立高校の元教職員が卒業式などでの君が代斉唱で起立しなかったことを理由に、定年退職後に再雇用されなかったのは不当だと訴えた裁判で、東京地方裁判所は「教育委員会の判断は裁量権の範囲を超えるもので違法だ」として、1人当たり200万円余りの賠償を東京都に命じました。
 
この裁判は、都立高校の元教職員22人が平成18年度から20年度にかけて卒業式や入学式での君が代斉唱で起立しなかったことを理由に、定年退職後に再雇用されなかったのは不当だと主張して都に賠償を求めていたものです。
25日の判決で東京地方裁判所の吉田徹裁判長は「個人の思想信条に従った行為を理由に、大きな不利益を科すことには慎重な考慮が必要だ。式の進行は混乱しておらず、都の教育委員会が起立しなかったことだけを不当に重く扱ったのは、裁量権の範囲を超えるもので違法だ」と判断し、都に対し、1人当たり200万円余りの賠償を命じました。
判決について、原告の1人は「教育委員会の言うことを聞かなければ再雇用されず、学校現場が萎縮していたが、違法だと明確に示してくれたので影響は大きい」と話していました。
一方、東京都の中井敬三教育長は「大変遺憾だ。内容を精査して対応を検討する」とのコメントを出しました。 
 

戦争法案 海外での戦闘の危険性明らかに

 安倍首相は20日の党首討論やそれに先立つ会見等で、今国会に上程された戦争法案について、「一般に海外派兵は認められていない。他国の領域で戦闘行為を目的に武力行使を行うことはない」と明言しました。しかしそんなことは勿論法案には書かれていません
 
 特定秘密保護法の時も安倍首相は法案が成立した後のテレビ会見で、「国民の皆さんを処罰するようなことは絶対にありません(要旨)」と発言していましたが、法律のどこにもそんなことは書かれていませんでした。
 首相は法案を出す内閣の最高責任者なのですが、法律のあり方自体を良く理解していないとしか思えません。
 
 衆院平和安全法制特別委員会27日、安全保障関連法案実質審議に入りましたが、「海外で戦うことはない」という首相の説明は次々と崩れました。
 
 近隣国の領海で米艦が攻撃された際に日本が反撃する可能性を否定しませんでした。
 敵基地攻撃が許されないわけではないと明言しました。
 中東・ホルムズ海峡での戦時の機雷掃海について、他国領域での武力行使が例外的に認められるとしました。
 また自衛隊が戦争法案にもとづいて「戦闘地域」で米軍への「後方支援」を行えば、結果として戦闘を行うことになるという指摘に明確に反論できませんでした。
 首相は盛んに「自己保存型武器使用」を強調しますが、「自己保存のための武器使用戦闘ではない」という国際認識などはありません。
 
 国民の目をゴマカシてなんとか国会を通してしまおうとする安部首相の態度は許されません。
 
 しんぶん赤旗の「戦争法案の危険性 浮きぼりに・・・」の記事と、朝日新聞の社説「安保法制国会 リスクを語らぬ不誠実」を紹介します。
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「後方支援」は武力行使と一体 戦争法案の危険性 浮きぼりに
首相、自衛隊への攻撃 武器使用認める
しんぶん赤旗 2015年5月28日
衆院特別委 志位委員長が追及
 「自衛隊が現実に攻撃され、『殺し、殺される』危険が決定的に高まることは明らかだ」―。日本共産党の志位和夫委員長は27日の衆院安保法制特別委員会の総括質疑で、自衛隊が戦争法案にもとづいて「戦闘地域」で米軍への「後方支援」を行えば、結果として戦闘を行うことになると迫りました。安倍晋三首相は質問に正面から答えず、憲法9条が禁じた「武力の行使」に発展していく危険性が鮮明になりました。 
 
 戦争法案は、自衛隊の活動地域を「戦闘地域」にまで広げ、これまでできなかった弾薬の提供や武器の輸送も可能にします。
 首相は、自衛隊活動の実施区域について「戦闘行為がないと見込まれる場所」を指定すると弁明しましたが、志位氏は「そんなことは法案には一言も書いていない」と批判。法案では「(自衛隊が活動している場所で)戦闘行為が行われるに至った場合」を想定して対応方針を明記しているとして、「自衛隊が攻撃される可能性を想定しているということだ」とただしました。
 
 首相は「(攻撃される)可能性が100%ないと申し上げたことはない」と述べ、攻撃される可能性を認めました。さらに、首相は「(攻撃を受けた場合は)自己保存型の武器の使用になる」と、武器使用の可能性にも言及しました。
 また、防衛省は、志位氏の追及に、陸上自衛隊がイラク・サマワに持っていった武器には拳銃、小銃、機関銃にとどまらず、12・7ミリ重機関銃、110ミリ個人携帯対戦車弾、84ミリ無反動砲といった重火器まで含まれていたことを初めて明らかにしました。志位氏は「『戦闘地域』での『後方支援』となれば、さらに強力な武器を持っていき、必要な場合は反撃する。これが戦闘でなくて何なのか」と迫りました。
 
 首相は「武器の使用は、自己保存型だ」と繰り返すだけ。志位氏はさらに、外務省が提出した文書で「国際法上、自己保存のための自然権的権利というべき武器の使用という特別な概念や定義はない」と認めていることをあげ、「『自己保存のための武器使用だから戦闘ではない、武力の行使ではない』などという理屈は、国際社会では通用しない」と批判しました。
 
 志位氏は「戦場でまっさきに犠牲にされるのは未来ある若者だ。若者を戦場に送ることは絶対に認められない」と強調しました。
 
海外派兵自衛官 自殺者54人
 アフガニスタン、イラクの両戦争への派兵任務を経験し、帰国後に自殺した自衛官が2015年3月末時点で54人にのぼることが分かりました。防衛省が27日の衆院安保法制特別委員会で、日本共産党の志位和夫委員長への答弁で最新の数字を明らかにしました。
 内訳は、アフガニスタン戦争時のインド洋派兵経験者が25人(海上自衛隊)、イラク派兵経験者が29人(陸上自衛隊21人、航空自衛隊8人)。本紙が14年7月にこの問題を報じた際、同省はインド洋派兵自衛官の一部について「文書が残っておらず不明」としていましたが、この日も「統計の関係で04年度以降(の数字)だ」と断り、自殺者数がさらに増える可能性も残しました。
 国民平均と比べ約9~18倍(14年内閣府統計)、自衛官全体(13年度)でも約5~11倍の高い割合で、自殺者が出ている異常な実態が鮮明になりました。
 

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(社説) 安保法制国会 リスクを語らぬ不誠実
朝日新聞 2015年5月28日
 新たな安全保障法制の整備によって、海外に派遣された自衛隊員の危険が増すのではないか――。野党側の追及に対して、政府側は「リスクの増大」を明言しようとしない。
 
 安保法制を審議する衆院の特別委員会がきのう始まったが、論議がかみ合わない。原因はもっぱら、安倍首相や中谷防衛相らの不明確な答弁にある
 法案がめざすところでは、自衛隊員の派遣先は世界規模となり、任務の幅も広がる。自衛隊の他国軍への後方支援はこれまで「非戦闘地域」に限られていたが、法案では「現に戦闘の行われていない地域」に広げている。派遣地域の治安を守るための巡回、検問など新たな任務も加わる。
 自衛隊員のリスクが高まるのは明らかであり、そのことを前提としなければ、およそ現実味に欠ける。このままでは論戦自体が成り立たない
 賛否いずれの立場をとるにせよ、特別委員会はそれを判断するために議論を尽くす場である。政府はその材料をきちんと提供しなければならない。
 
 リスク論争で焦点となっているのが、他国軍への弾薬の補給などの後方支援である。中谷氏は「安全が確保された所に補給基地があって支援するので、前線から離れている」と説明するが、具体的にどの程度の距離を想定しているのか。政府は一定の目安を示すべきだ。
 補給基地やそこに至るルートは、攻撃の対象となりえる。中谷氏は「戦闘現場は動く」とも説明しており、当然リスクはある。戦闘現場になりそうな場合は休止、中断し、武器を使って反撃しながらの支援継続はしないと説明するが、休止の判断は的確になされるか、それで本当に安全が確保されるのか。
 
 安倍首相はまた、法整備によって「日本の抑止力が高まり、国民のリスクが下がる」とも主張している。だが、抑止力が万能であるかのような説明は大いに疑問だ。
 たしかに日米安保の強化は全体的な抑止力につながるかもしれないが、それで国民のリスクが下がるかどうかは別問題だ。たとえば、テロリストに対して抑止力は意味をなさない。踏み込んだ後方支援で日本の立場が鮮明になればかえってテロの危険性が高まる恐れもある。
 
 その意味で、問題は自衛隊員にとどまらず、国民全体にかかわる。政権はその説明を避けたまま、海外の紛争への関与を強める大転換を図ろうとしている。リスクを語らぬ姿勢は不誠実と言わざるをえない。